これがあたしの王道ファンタジー! 〜愛と勇気と装備変更と〜

プリティナスコ

前略、道中と山賊と

「それにしても」


 曰く、次の目的地である大きめの街への道中に、リリアンが唐突に


「それにしても『セツナドライブ』は恥ずかしいですね。ありえないです。」


 あたしの必殺技の悪口を言い始めた。いきなりなんてこと言うんだこのメイド!


「自分の名前を入れるのは少し、いえ大分恥ずかしいです。」


 だめかなぁ……カッコいいと思ったんだけどな……『セツナドライブ』……


「ですが、名前をつけるのはいいことです。あるのとないのでは大違いですよ。それより」


 気づいてますか?とリリアン、ん?なにかな?


「貴方の武器、昇格してますよ。」


 言われて、スキルボードを確認する。穀物と風の村『コガラシ』を救ったこと、新種の発見と共存を選んだこを女神が気に入り、あたしの装備できる武器のランクを1つ昇格し、対応する武器をランクアップさせる旨が書かれていた。昇格、そんなパターンもあるのか!


「お、おぉ〜〜!!」


 なんか嬉しい!強さが認められるより、共存をわかり合うことを認めてもらったことが。装備のランクアップももちろん嬉しいけど。


「ちょっとカッコよくなってる!」


 腰から片手剣を抜いてみる。カッコいい!その喜びのまま次々に装備変更、これは……いいね!!
 背中のカゴも軽く感じますよ!


「ん?」


 ウキウキ気分のまま歩いていると、前方に3つの人影。あたし達との距離はどんどん近づいて。


「お前ら、冒険者だな。金目の物だしな」


 おぉ、テンプレの悪役のセリフ。山賊だねこりゃ


「ありません。」


 キッパリとリリアン。確かに無一文である。


「お前には聞いてねぇよ!奴隷が!」


 確かに、少し見慣れてきたけどリリアンの服装はメイド服に首輪、両手両足の枷にそれをつなぐ鎖。奴隷にみえなくもない見た目だ。中身を知ればそんなことは絶対に言えないけど。知らないってことは罪である。


「面白いことを言いますね、虫ケラのくせに。」


 やってしまいなさい、とリリアン


「え、あたしが戦うの?」


 てっきりリリアンが制裁するものだと


「やらないなら今日の特訓は20倍です。」


「よし!かかってこい虫ケラ共め!」


 戦う面倒さと死、比べるまでもない。


「それじゃあ剥ぎ取ってやるよ!」


 飛びかかる山賊、装備変更、双剣を構える。


「いくよ!」


 正面の山賊の剣を片手の剣でいなし、もう片方で斬る!すぐさま装備変更、右の山賊へは片手剣で弾いて、いつもの投石!頭突き!渾身の薙ぎ払い!


「よし!上々!まだまだいくよ!」


 まだ距離のある左の山賊へは必殺の!
 装備変更!駆ける!飛ぶ!世界は加速する!
 大怪我させたらいけないから1歩で。


「セツナドライブ!」


 安心しな、峰打ちだよ! 
 そして装備変更、硬直を消して振り返る、最初に倒した山賊が起きようとしてたので両手剣でコツン。ノシておく。


「及第点です。」


 すこしだけ気分良さそうな、リリアンの足元にいる山賊が起き上がる。危ないーー!


 ガッ!!→山賊の腹にリリアンの拳が刺さる
 ドンッ!→そのままリリアンが馬乗りになり
 ガスッ!ガスッ!ひたすらタコ殴りに


「やめてリリアン、もう意識ないよ!!」


 全理で止めに入る、リリアンの方を襲うなんて危ない真似を


「失礼、虫ケラに苛立ってしまい。」


「虫ケラ虫ケラって俺達にも名前があんだよ!」 


「マンティッロ!」「ディーボ!」「プリモン!」


 なんで山賊のくせにちょっとオシャレな名前なんだよ。モブの名前じゃないでしょ、とくにマンティッロ。


「雑魚1、雑魚2、雑魚3で記憶しました。」


「それでは、2度と姿を見せないで下さい。」


 リリアンは山賊に言い放つ。覚えてろーー!お決まりのセリフと共に逃げ出そうとする山賊を


「お待ちなさい。」


 呼び止めるリリアン、殴り足らないのかな?


「金目の物と食料を置いていきなさい。」


「悪魔かお前!?」


 悪魔がいた。


 夜になり、山賊から奪った食料で腹を満たす。ごめんね、山賊。


「火は見ておくので先に寝ていて下さい。」


 少しづつ認めてくれてるのかな、前よりリリアンの優しさがわかるようになってきた。
 こういう時は下手に言い争っても負けるだけだ。お言葉に甘えよう。


「ありがとう、リリアンも早く寝なよ?」


「言われるまでもありません。」


 少し距離が近くなった女の子のことを考えながら眠る。この旅が終わるまでに何かできることはあるのかな?
 考えても答えはでなかったので。旅の終わりまでの宿題にすることにした。

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