フォーレン エンジェル

illusion

第2話 聖剣


魔物フューリズの巨大な眼球が、 ビルの断崖絶壁に立つリカを捉えた。
魔物の周囲に、8つの巨大な幾何学模様の円環状、降魔陣ソーサリー・サークルが出現する。

同時に、リカの頭上と足元に、薄青い降魔陣が出現する。
そして、彼女の左手の指先に、幾筋もの光条が収束されていく。
すると、リカの左手に、薄青く光り輝く聖剣ショートソードが出現する。
まるで、氷の結晶のような、彫刻のような剣身。
リカはそれを片手で握り締める。
ソーサリー・ソードは、焔光に輝く降魔の剣である。
万応の構成元素エーテルを凝縮させて創生された聖炎の剣である。

フューリズの降魔陣から、赤黒い灼熱の焔の柱のような巨大な熱線が6条飛び出してくる。
リカ は跳躍して、その熱線をかわす。
空中を飛翔するリカのすぐ側を、熱線がゴウという唸りをあげて次々と通り過ぎていく。
そのうちの2発は、ビルのコンクリートに直撃し、燃え盛る灼熱の焔の海となって大爆発を起こす。
フューリズの侵略で蹂躙され、虐殺された人間モルモットどものお陰で、今回の敵の情報データーと能力はある程度収集し、解析でき、把握出来た。
あとは戦闘を開始し、この邪悪なる魔物にして殺戮の天使を仕留めるのみ。

ビルから飛び降りたリカは、そのまま猛スピードでアスファルトに向かって落下していく。
蛹から孵化した蝶が羽根を広げて舞い上がるように、あるいは、
天空から舞い降りし天使のように、華麗で優雅に宙を舞う。

タンッ つま先から路面に着地したリカ は、両手で剣を握りしめ、疾走する。
爆発の硝煙に紛れ、猛スピードで、直線的に、鮮血の滴るアスファルトを駆け抜けていく。
射程圏内にまで接近してきたリカめがけて、数匹の邪竜の獰猛な顎が襲いきってきた。
上空から捕獲しようと、急降下してくる。
リカは慌てて踵で路面を踏みしめ、急ブレーキをかける。
ビシャッ  鮮血の海が跳ね上がり、飛び散った。
硝煙の隙間から、邪竜の頭部が姿を現した。
それに反応して、リカが、左上段から右袈裟斬りの剣閃を放つ。
剣閃が薄青の軌道を描き、対角線上に剣が降り下ろされる。
ビシュッ
邪竜の左顎が切り裂かれ、咆哮する。
その傷口から虹色の輝きが噴水のように吐き出される。
今度は左側から、2匹目の邪竜が両顎を大きく開いてリカに噛み付いてきた。
リカは身を翻すと、流れるような動きで左横薙ぎを一閃し、邪竜の頭部を八つ裂きにする。
シャアアアーッ
同じく七色の血飛沫をあげ、邪竜は咆哮する。
外敵の脅威を認識したフューリズが、今度は残り6匹全員の邪竜を駆使して一斉に襲いかかってきた。

リカが、身体能力を強化する降魔術ソーサリー、スピリット・フュージョンを詠唱し、構築する。
リカの左手薬指にはめている指輪、魔導護符・指輪型アミュレット・タイプ リングが起動し光り輝く。      すると彼女の頭上と足元に降魔陣ソーサリー・サークルが出現し、それと同時にリカの身体を、オーロラのような虹色の光彩が包み込む。
魔導護符アミュレットは、魔女ソーサレスの戦闘行為全般、特に、降魔術ソーサリーの詠唱と展開を支援する装置のことである。
魔導護符はウェアラブル端末の一種で、人類の最先端技術の粋を極めて開発された超高性能小型デバイスである。
ソーサレスは、この魔導護符アミュレットを装着し、補助手段アシストとして用いることにより、通常より格段に強力で効果の大きいソーサリーを構築し、物理化することが可能になる。
リカは、上空から次々と迫り来る後続の邪竜の群れを、上段の構えから剣の諸刃で左右に弾いて受け流す。
邪竜の甲殻と鋼鉄の刀身が響鳴し合い、火花を散らす。
リカは身軽にサイドステップで左右にかわしながら、距離を維持しつつ連続して小刻みに剣を繰り出し続ける。
まるで水面で美しい妖精がダンスを踊るように。
優雅で華麗に剣を振る。
凶暴で凶悪な両顎を持つ邪竜の1匹にでも捕まれば、少女の華奢な肢体は無惨に引き裂かれ、残酷に惨殺される。
少女は無理矢理恐怖を押し殺し、冷や汗を流しながら苦い唾を飲み込む。
たとえるなら、氷でできたか細い糸の上をつま先だけで歩いている状態。
足を滑らせればどこまでも暗黒が続く奈落の底へと急転直下してしまう。

邪竜の1匹が、リカめがけて魚雷のように突進してくる。リカは右側にクルリと一回転して、それをかわすと、垂直に剣を切り上げて後方まで伸びきった邪竜の胴体を切り裂く。

シャアアア〜
悪魔精霊フューリズの側面から、蝙蝠のような 翼が生えてきて、咆哮をあげながら上空へと飛翔する。
空中で紅い巨大な眼球を輝かせると、前方の空間に降魔陣を12個出現させ、熔岩のような赤黒い熱線を同じ数発射させた。
いつしかリカの手にする剣は光の滴にかわり、弾けて消滅する。
かわりに、真っ直ぐにのばした左手のその先に、円環状の降魔陣が出現するとともに、半透明の魔導力の盾が出現する。
氷の結晶のような、オーロラの光芒のような、光り輝く平面状に圧縮された
構成元素の盾である。
リカの前方に出現した魔導のオーロラ・シールドは、悪魔精霊の放つ熱線の雨をまるで自動車のフロントガラスのように次々と弾き返す。
道路やビルの外壁で熱線が誘爆し、燃え上がる。

フューリズは再び、熱線を放出する。
今度は膨大なすべての魔導力を一点に凝縮させた、灼熱の熔岩のような 巨大な球状の塊を、砲弾のように発射させる。
迫り来る煉獄の灼熱の塊に対して、今度は魔導のオーロラ・シールド
を貼らない。
左横方向へと、新体操選手のように宙返りで一回転して球弾をかわす。
まず半回転して路面に左手の指先を軽く添え、さらにその指先を支点に時計のようにもう半回転する。
スカートを翻し、つま先から水面に降りるように着地する。
魔導の盾を張らずに身軽に動けることでリカは素早く反撃にでられる。
リカが真上の上空に向かって垂直に跳躍する。
蝶のように、フワリと宙を舞う。
掌を軽く広げ、真っ直ぐに左腕を突き出した。
暗闇の中で、リカの身体が光芒に包まれる。
そして、彼女の前方に、再び幾何学模様の円環状、降魔陣が6つ出現し、拡大する。
降魔陣が何重層にも組み合わさり、歯車のように連動する。

降魔陣は、ソーサリーの始鍵であり、認証コード(解除コード)である。
展開される降魔術ソーサリーの種類や性質、基礎構造、エレメントの構成要素などを言語や図形にして簡略化したソーサリーの動作手順プログラムである。
魔女ソーサレスは、降魔陣を魔導制御機構に転送し、格納された情報データーを走査し解析処理スキャニングさせることにより、その動作手順プログラム
に基づいた降魔術ソーサリーを構築し物理化する事が可能になる。

降魔陣の前方の空間から、同じく薄青い6条の閃光、聖炎の烈光ホーリネス・リンケージ・レイが迸り、垂線となって暗闇を駆け抜ける。
詠唱され、発射された 聖炎の烈光は、悪魔精霊フューリズの甲殻に
突き刺さるように炸裂し、誘爆する。
爆発とともに聖炎が溢れだし、魔物の巨躯を包む。
魔物の裂傷から、噴水のように虹色の生命力エナジーが放出される。
キェェアア〜
この世ならざる者の、断末魔の咆哮。
魔物は墜落する気球のように、虹色の構成元素エレメントを噴出させながら、道路に落下して、最後に大爆発する。
トンッ
空中をゆっくりと降下しながら、つま先から路面に静かに着地したリカは、安堵の溜息をもらす。
人々の悲鳴と自動車のクラクション、救急車のサイレンの音は、まだ続いている。
「こっちは、仕留めたわよ」
そして、もう一人の魔女が彷徨っている方向に視線を向けて、小さく呟いた。

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