合同籠球マネージャー
第81話 エース失格
ベンチに戻って来た選手たちは絶望感溢れた表情で戦意を完全に喪失していた。
高橋先輩や筒香先輩は息を大きく肩で吐きながらコートの床をただじっと見つめていた。
「クソッ!」
一方で、自分のエリアでやられてしまった航一はベンチの端でタオルを地面にたたきつけ、悔しさをあらわにしていた。
「小野寺、大塚と変われ。」
「は、はい!」
「っ!待ってください!まだ俺は出来ます!」
「今のお前の状態ではチームを乱しかねない。一度頭を冷やせ」
相沢さんが航一を睨みつけるように言うと、そのまま高橋先輩たちの元へ向かい指示を送って行く。
俺はがっくりとうなだれる航一の姿をずっと見つめていた。
航一はプルプルと体を震わせて、手に持っているペットボトルを握りつぶしそうな勢いで歯を食いしばって怒りを抑えていた。
相沢さんからの指示を受けた川見の5人が第4クォーターへ向けて、気合いを入れ直し、コートへと入っていった。
相沢さんは航一を気にする素振りも見せず、そのまま自分の椅子へと腰かけてしまった。
俺はその姿をただボオっと眺めていることしか出来なかったが、航一の方をもう一度見る。
航一は歯を食いしばったまま全く動かなかった。
俺はそんな姿を見てケンケン足で航一の方へと向かって行く。
「ちょっと…大樹!?」
梨世が制止しようと声を掛けてきたが、俺は耳を貸さずに航一の元へと向かって行く。
相沢さんも俺が航一の元へ向かっているのは気が付いているのであろうが、何も言ってこなかった。
俺は第4クォーターが始まったにもかかわらず、航一の元で足を止める。
航一は足元の気配に気が付いて、上を向いた。
「なんだよ??」
不貞腐れたような態度で航一が俺を睨みつけてきた。
「お前はこんなところで、何やってんだよ」
「何って、しょうがねぇだろ!出るなって言われたんだから!」
「そう言うことを聞いてるんじゃねーんだよ!お前は何一人で失敗を抱え込んでやがるんだってことだよ!」
俺は思わず航一に対して怒鳴っていた。ベンチにいた他のメンバーが思わず、黙りこくる。
「別に、抱え込んでねーし。」
「ちょっと二人とも!」
慌ててスコアラーをしていた梨世が俺と航一を止めに入る。しかし、俺はそれでも言葉を続ける。
「そうやって、自分で勝手に責任しょいこんで、チームの和乱して、最悪だなお前・・・俺はお前がそんなクソプレイヤーだとは思わなかったぜ」
流石の航一も我慢の限界に来たのが鬼の形相で俺を睨みつけてきた。
「んだとてめぇ!大体といえばお前がな!」
航一は俺の左膝目掛けてグーパンチをお見舞いする。
「大樹!!」
俺は必死に痺れるような痛みをこらえながら歯を食いしばり、航一のパンチを食らった。
「大体お前がこんな怪我さえしなければ…」
「それがどうした?」
「はぁ?」
「俺が怪我したからってなんだってんだ?今は俺の話じゃなくて川見高校男子バスケット部員としての話をしてるんだろうが、この大会が終わったら高橋先輩たちは引退だ。余計お前に負担がかかってくるのは間違いねぇ。だけどな、真のエースってのは、そののしかかる重圧を乗り越えてこそ真のエースに成長するんだよ。それに比べて今のお前はどうだ?勝手に自分よがりで悔しがって、挙句の果てには他人のせいにして責任を押し付けて、エース失格だ。」
俺がそう言い放つという言葉をなくして航一はうなだれた。
俺は膝の痛みを抑えながらも、航一の肩に手を置いて航一の顔をじっと見た。
「先輩たちがどれだけ俺たちを必要としてるか考えたことあるか?俺だけじゃない、梨世だって先輩たちが必要としてくれたからこの舞台に立てたか?俺と梨世がプレーできなくても必要としてくれた先輩たちに、お前ができることはなんだ?最後までエースとしてコートで役割を全うすることじゃねーのか?」
航一は生唾を飲みこみ、唇を噛む。
「先輩たちはお前がコートに戻ってくるまで必死に耐えてる。その姿を見て何も思わないのか?」
俺が指さした方向では、高橋先輩をはじめとする3年生と国吉くん田中くんの1年生が必死にディフェンスをして、エースがコートに戻ってくるまで必死に食らいついていこうというガッツあふれるプレーを見せていた。
「ああ・・・」
航一は顔をゆがめ、ついには目から涙を流していた。
俺が片から手を離すと、肩を揺らしてうなだれる。
「バカだ俺…今まで勝手に一人で抱え込んで・・・仲間にこんなに支えられているのに…」
嗚咽を吐きながら航一は涙を手で拭っていた。その姿を見て、俺は安心したように肩の力を抜いた。
「そこのお二人さん、頭はちゃんと冷やしたかね?」
振り返ると、手を後ろに回した相沢さんが俺たちを睨みつけていた。
航一は相沢さんの方を向いて頭を下げた。
「相沢さん、すいませんでした。俺もうあんな真似は絶対にしません。」
「残り、7分だ。逆転してきてくれるか?」
相沢さんは表情一つ変えずにただ航一にそう聞いた。
「はい…」
喉の奥底から込み上げてくる声を震えさせながら航一がそう答えると相沢さんが口角を上げて破顔した。
「そうかい、じゃ、行ってきなさい。」
「はい!」
そう言い残して航一は立ち上がり、交代へと向かって行った。
その姿を俺と梨世はただただ眺めていた。
相沢さんが俺の方をチラッと見てベンチへと戻っていった。
「ありがとう、大樹君、桜君。君達がいてくれて、助かったよ。」
去り際に相沢さんにそう言われ、俺と梨世は顔を合わせた。
「…はい!」
「…はい!」
そうして、元気よく返事を返して、俺たちはベンチへと戻っていったのであった。
高橋先輩や筒香先輩は息を大きく肩で吐きながらコートの床をただじっと見つめていた。
「クソッ!」
一方で、自分のエリアでやられてしまった航一はベンチの端でタオルを地面にたたきつけ、悔しさをあらわにしていた。
「小野寺、大塚と変われ。」
「は、はい!」
「っ!待ってください!まだ俺は出来ます!」
「今のお前の状態ではチームを乱しかねない。一度頭を冷やせ」
相沢さんが航一を睨みつけるように言うと、そのまま高橋先輩たちの元へ向かい指示を送って行く。
俺はがっくりとうなだれる航一の姿をずっと見つめていた。
航一はプルプルと体を震わせて、手に持っているペットボトルを握りつぶしそうな勢いで歯を食いしばって怒りを抑えていた。
相沢さんからの指示を受けた川見の5人が第4クォーターへ向けて、気合いを入れ直し、コートへと入っていった。
相沢さんは航一を気にする素振りも見せず、そのまま自分の椅子へと腰かけてしまった。
俺はその姿をただボオっと眺めていることしか出来なかったが、航一の方をもう一度見る。
航一は歯を食いしばったまま全く動かなかった。
俺はそんな姿を見てケンケン足で航一の方へと向かって行く。
「ちょっと…大樹!?」
梨世が制止しようと声を掛けてきたが、俺は耳を貸さずに航一の元へと向かって行く。
相沢さんも俺が航一の元へ向かっているのは気が付いているのであろうが、何も言ってこなかった。
俺は第4クォーターが始まったにもかかわらず、航一の元で足を止める。
航一は足元の気配に気が付いて、上を向いた。
「なんだよ??」
不貞腐れたような態度で航一が俺を睨みつけてきた。
「お前はこんなところで、何やってんだよ」
「何って、しょうがねぇだろ!出るなって言われたんだから!」
「そう言うことを聞いてるんじゃねーんだよ!お前は何一人で失敗を抱え込んでやがるんだってことだよ!」
俺は思わず航一に対して怒鳴っていた。ベンチにいた他のメンバーが思わず、黙りこくる。
「別に、抱え込んでねーし。」
「ちょっと二人とも!」
慌ててスコアラーをしていた梨世が俺と航一を止めに入る。しかし、俺はそれでも言葉を続ける。
「そうやって、自分で勝手に責任しょいこんで、チームの和乱して、最悪だなお前・・・俺はお前がそんなクソプレイヤーだとは思わなかったぜ」
流石の航一も我慢の限界に来たのが鬼の形相で俺を睨みつけてきた。
「んだとてめぇ!大体といえばお前がな!」
航一は俺の左膝目掛けてグーパンチをお見舞いする。
「大樹!!」
俺は必死に痺れるような痛みをこらえながら歯を食いしばり、航一のパンチを食らった。
「大体お前がこんな怪我さえしなければ…」
「それがどうした?」
「はぁ?」
「俺が怪我したからってなんだってんだ?今は俺の話じゃなくて川見高校男子バスケット部員としての話をしてるんだろうが、この大会が終わったら高橋先輩たちは引退だ。余計お前に負担がかかってくるのは間違いねぇ。だけどな、真のエースってのは、そののしかかる重圧を乗り越えてこそ真のエースに成長するんだよ。それに比べて今のお前はどうだ?勝手に自分よがりで悔しがって、挙句の果てには他人のせいにして責任を押し付けて、エース失格だ。」
俺がそう言い放つという言葉をなくして航一はうなだれた。
俺は膝の痛みを抑えながらも、航一の肩に手を置いて航一の顔をじっと見た。
「先輩たちがどれだけ俺たちを必要としてるか考えたことあるか?俺だけじゃない、梨世だって先輩たちが必要としてくれたからこの舞台に立てたか?俺と梨世がプレーできなくても必要としてくれた先輩たちに、お前ができることはなんだ?最後までエースとしてコートで役割を全うすることじゃねーのか?」
航一は生唾を飲みこみ、唇を噛む。
「先輩たちはお前がコートに戻ってくるまで必死に耐えてる。その姿を見て何も思わないのか?」
俺が指さした方向では、高橋先輩をはじめとする3年生と国吉くん田中くんの1年生が必死にディフェンスをして、エースがコートに戻ってくるまで必死に食らいついていこうというガッツあふれるプレーを見せていた。
「ああ・・・」
航一は顔をゆがめ、ついには目から涙を流していた。
俺が片から手を離すと、肩を揺らしてうなだれる。
「バカだ俺…今まで勝手に一人で抱え込んで・・・仲間にこんなに支えられているのに…」
嗚咽を吐きながら航一は涙を手で拭っていた。その姿を見て、俺は安心したように肩の力を抜いた。
「そこのお二人さん、頭はちゃんと冷やしたかね?」
振り返ると、手を後ろに回した相沢さんが俺たちを睨みつけていた。
航一は相沢さんの方を向いて頭を下げた。
「相沢さん、すいませんでした。俺もうあんな真似は絶対にしません。」
「残り、7分だ。逆転してきてくれるか?」
相沢さんは表情一つ変えずにただ航一にそう聞いた。
「はい…」
喉の奥底から込み上げてくる声を震えさせながら航一がそう答えると相沢さんが口角を上げて破顔した。
「そうかい、じゃ、行ってきなさい。」
「はい!」
そう言い残して航一は立ち上がり、交代へと向かって行った。
その姿を俺と梨世はただただ眺めていた。
相沢さんが俺の方をチラッと見てベンチへと戻っていった。
「ありがとう、大樹君、桜君。君達がいてくれて、助かったよ。」
去り際に相沢さんにそう言われ、俺と梨世は顔を合わせた。
「…はい!」
「…はい!」
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