合同籠球マネージャー

さばりん

第24話 猛練習とくだらない勝負

「はぁ…はぁ…はぁ…暑い…」
「川沿い1週って結構あるんですね…」
「よし、本田はもう1週!」
「えぇぇぇ!!もう1週!?」
「つべこべ言わずにほらスタート!」
「はぁぁぁ」

不満をぶつぶついいながら、3週目をスタートさせる。
本田と形原には、体力強化のために川の周りを公園から左側の橋を渡り、対岸の川沿いを走り、次の橋を渡りこちら岸へ戻ってきて川沿いを公園まで走ってくるランニングを命じていた。

約1キロほどのコースであるが、本田は1週目の時点でバテバテになっており、2週目にはヘロヘロになりながら公園に到着した。しかし、こんな程度で力尽きてしまっていては困るので、本田にはスパルタ覚悟で練習を課した。

「よしっ、形原。」
「はい!」
「次はボールをドリブルしながらこのさっきのコースをもう一周してみよう!」
「えぇ!?ドリブルしながらですか!?」
「あぁ、通行人もいるから、当たらないようにボールを見ずに前を見ながらドリブルを付いて進まないといけないからね、ドリブルが苦手な形原にとってはそれが成長するためには一番効率のいい練習なんだ、はい、ボール」
「はい…」

俺が形原にボールを手渡すと、形原はとても不安そうに俺を見つめてきた。

「出来る自信ないです」
「俺も最初からうまくいくとは思ってないし、何度でも失敗したっていいよ」

俺は優しく形原に語り掛ける。

「あと橋を渡るときはドリブルしなくていいからね。川にボール落っことしちゃったら大変なことになっちゃうから…」
「わ…わかりました」
「よし、じゃあスタート!」
「は、はいぃぃぃぃ!!」

形原は目をぐるぐるさせながら、おぼつかないドリブルランニングを開始した。

「次はっと・・・」

コートの中を見ると、二人組になって練習を行っている。

手前側のゴールでは、渡辺と黒須が一対一の練習を行い。
真ん中のセンターサークルあたりでは、コートを横に使って、倉田が小林にディフェンスを指導している。
奥のゴールでは、梨世と静が一対一を行っていた。

昨日の練習で、黒須はドリブルのカットインと周りを見る状況判断、パス、ディフェンスに関しては卓越した技術を持っていたのだが、一対一の練習になるとどうしてもシュートまで持っていくことが出来ずにボールを取られてしまう傾向が目立った。そのため、同じくディフェンスの読みは卓越しているが、オフェンスが得意ではない渡辺と組ませ、お互いの得意分野と弱点を同時に強化するトレーニングするのが最適だと考えた。

「はっ!」

黒須がシュートを放つが渡辺のプレッシャーに負けて、大きくシュートを外している。
渡辺の方も、ドリブル突破をはかるものの、カットインが大回りになってしまい。黒須にドリブルコースを防がれてしまい、なかなかゴールへ近づけない。遠い位置から無理やりシュートを放つが、ボールはリングにもあたらずに大きく外れていく。
お互いがオフェンスを終えたところで、俺は二人にアドバイスをする。

「黒須はシュートする時に、反対の手で相手を抑えながら体は反らないで前に押し込むように思いっきりよく打ってみよう、渡辺は、カットインする時に、出来るだけ黒須の真横をすり抜けるのを心がけて!」
「はい!」

二人は真剣に俺のアドバイスを聞き再び練習を開始する。
黒須はカットインすると、渡辺を一度振り切るが追いつかれた。しかし、強引に右手で渡辺の体を抑え、左手でレイアップシュートを放つ。ボールは見事ゴールに吸い込まれた。

「おっけ!大分よくなって来た、その調子だ!」

渡辺は、大回りする距離は減ったが、まだ黒須を抜き切るには至らない。

「渡辺!もっと黒須の体にぶつかっていくくらいで行け!」

俺がそう叫ぶと渡辺は、今後は黒須の右側すれすれを通り、抜きにかかる。

「いいぞ、そのまま強引に行け!」

渡辺はそのまま強引にシュートまで持っていった。
惜しくもリングにはじかれてシュートは外れたものの、渡辺もようやくいい感じになって来た。

「いいぞ!渡辺もだいぶ良くなってきた。あとはシュートを落ち着いて、力を抜いてしっかりゴールを見て確信して打て。」
「はい!」

真剣な眼差しで俺の指導を聞いてくる渡辺を見て、つい指導も熱くなる。

「さてと」

次に俺は、コートの真ん中あたりで練習している倉田と小林の元へ向かう。
倉田がドリブルを突き、小林がディヘェンスの練習を行っている。

小林はサッカーをやっていたこともあり、パスを受け取るタイミングや基本的なレイアップシュートとジャンプシュートに関してはバスケを高校から始めたとは思えないほど様になっているのだが、どうしてもディヘェンスでボールを奪おうとボールを追いすぎてしまう傾向と、手で人を止めようとしてファールをしてしまう癖が見受けられた。
そのため、倉田にディヘェンスの基礎を小林に叩きこんでもらうことにしたのだ。

一方で、倉田の方もカットインしてくるスピードタイプの相手になかなかディフェンスで付いていけない傾向があり。瞬発力があり、すばしっこい小林が相手ならば粘り強くついていく練習には最適と考えこのペアを組ませた。

俺は小林にアドバイスを出す。

「ボールだけを見るな、無理にボールを取りに行くんじゃなくて付いていくことを意識しろ!」

倉田はドリブルを開始する。小林は懸命についていく。倉田は緩急を付けながらスピードを上げたり下げたりしながら。小林をかわすタイミングを伺っている。

倉田はドリブルを一回ゆっくりと突いた後、一気に小林を抜きにかかった。
小林は倉田の緩急についていけず完全に出足が遅れた。しかし、懸命に追いつこうと懸命に付いていく。そのディフェンスはボールを奪おうとするディフェンスではなく相手に必死に食らいつくディフェンスに変わっていた。

「抜かれたが、悪いディフェンスではなかったぞ。その調子でディフェンスは粘り強くやるように!」
「おっけい!任せな!」

生意気な返事ながらも、小林は素直に俺のアドバイスに耳を傾けて、必死に上達しようと努力していた。
攻守が変わり、倉田のディフェンス。小林はドリブルの駆け引きがバスケを始めて3カ月とは思えないほど上手く、緩急を使ったドリブルもそれなりに駆け引きが出来ていた。おそらくサッカーで培ってきた技術を巧みにバスケットでも反映する能力があるのだろう。そんなことを感心していると、小林が一気に倉田を抜きにかかる。ドリブルの切れ味も悪くない、倉田が必死に小林に抜かれまいとついていく。倉田も大分粘り強く相手に粘り強くついていくディフェンスができるようになってきていた。

「いいぞ、倉田。その調子だ!」
「・・・」

倉田は何も発しなかったが、こくりと俺へ頷き、すぐさま練習へ戻る。
このペアも問題なさそうだな…
そして、問題は奥のコートなんだが…奥のコートでは梨世と静の一対一が永遠と行われていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」
「これで、昨日から通算で私の40対38。ここで私が決めれば4点差で私の勝ち」

静が梨世に向かって最後の攻撃だということを言わんとばかりに宣言する。

「ふん、あんたの攻撃パターンなんて見飽きたわ、次こそは絶対に止めて見せる」

この二人・・・昨日の体育館での練習で一対一のペアを組ませたのだが…
梨世は自慢のスピードを生かして、静を完全に振り切り。レイアップシュートの応酬。一方で、静の方は、梨世と30センチ近くある身長差を生かして体をゴールの背に向け、梨世を完全に押さえつけながらドリブルでじわりじわりと向かっていき、ゴール前に来たところでゴールの方へターンをして梨世が届かない位置から打点の高いゴール前のシュートを放ち決めるという、姑息な手段で徹底した攻撃をしているのだ。

お互い負けず嫌いのため、4点差がつくまで勝負を辞めないと言い張り、結局昨日もずっと続けていたのだが、体育館の使用時間が近づき結局18対18のドローで次に持ち越しということになって、今日その延長戦をしているのだが…

「早く、違う練習したいから、そのバトル早く終わらせてくれないかな…」

俺がため息を付きながら二人に言う。

「待って、次で終わるから」
「次では絶対終わらせない。私が3連続得点で絶対に終わらせるんだから!」

俺は頭を掻きながら二人に突っかかる。

「わかった、じゃあ。次静が決めたら静の勝ち。もし止めれたら梨世に2ポイント加点。その後の梨世の攻撃で梨世が決めたら梨世の勝ち。それでいいか…」
「…わかった」
「え~梨世のほうがそれ有利じゃない??」

静が不満を言ってくる、だから俺は静を煽った。

「いいじゃねーか、次静が決めたら勝ちなんだし、それとも決める自信がないのか??」
「むぅ…」

静が不機嫌そうに顔を膨らませてこちらを睨みつけた。どうやら俺の挑発に乗ってくれたらしい。

「わかった、これで終わらせてあげる」

すると、静は今までとは顔つきがまるで別人のような表情を見せる。どうやら静が本気モードになったらしい。
それを見た梨世は生唾を飲みこみふっと一息つき表情を締める。
静は、梨世からボールを受け取ると真剣なまなざしで梨世と対峙するのであった。

「合同籠球マネージャー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く