合同籠球マネージャー
第20話 初練習
練習初日、まずは基本的な二人組のパス練習から初める。
バスケ経験者にとってはさほど難しくない練習であるが、未経験者にとっては違った、特に形原は、パスをする際にボールを両手で持ち、肘を大きく左右に開いてしまい、腕の力だけでパスを出していた。そのため、ペアを組んでいた小林の元へ2回、3回とバウンドして届いた。
一方の小林は、パスの投げ方がとにかく汚なかった。両手でボールを持ち、体全体を使ってパスをしているのはいいのだが、体を大きく反らして、ボールを肩の上に持っていき投げている。まるで、陸上の投てき選手のような投げ方であった。
これは、色々指導には骨が折れそうだ・・・
次に行ったのは基本的なレイアップシュートの練習だ、スリーポイントあたりからボールを持っている人がフリースローラインにいる選手にパスをする。パスを受けた選手は、パスをした選手がゴール前に走りこんできたタイミングに合わせてパスを返し、もう一度ボールを受け取った選手はそのままレイアップシュートへ持っていくという比較的簡単な練習だ。
しかし、これも問題ありの選手が約2名…形原はボールを再び受け取りシュートへ持っていく間にドリブルを付こうとするが、ボールが体の動きについていかず、体の後ろ側へ行ってしまう。結局、そこでボールを掴んでしまい、レイアップシュートではなく普通のゴール下のシュートになってしまっていた。 でも、そのシュートは入るんですねこれが・・・
もう一人は、すでにバテバテになりながら練習をしているツインテールを揺らしている彼女だ。本田は開始3分ですでに息を大きく口で呼吸しながら練習をしていた。本田の体力向上も今後の大きな課題だな…
一方で小林はサッカー部だったこともあり、走り込みのタイミングやパスのタイミングなどもしっかりとしており、レイアップシュートもなかなかの腕前で驚いた。
様々な問題点が浮き彫りになっていく中で、次に実戦形式のハーフコートでの4対4に入る。
組み合わせは、梨世、本田、黒須、小林チームと、静、倉田、渡辺、形原のチームに分けた。
俺がサイドからボールを出して、受け取るところから始まる。
先行は梨世のチーム。
「開始!」
ピッっと笛を鳴らし、俺がパスコースを探す。
黒須が倉田を振り切り、パスを要求する。
俺は黒須が要求したスペースへパスを出す。
パスを受け取った黒須は左足を軸にして動かさず、右足を動かしながらピボットを踏み周りの状況を確認する。
マッチアップしている倉田はボールを奪おうと懸命に黒須に手を伸ばした。
しかし、黒須はその瞬間を狙っていたかのようにドリブルを開始する。一瞬反応が遅れた倉田は、懸命に黒須を追いかける。
黒須のドリブルは、それほどスピードはないが、相手にドリブルのコースに入られないように上手く体を使っていた。周りをきょろきょろと見渡しながらじわじわとゴール前へと近づいていく。
ゴール前では静が陣取るように待ち構えていた。
黒須は力強いドリブルを一回つき、躊躇することなく静がいるゴール前へ突っ込んだ。
その間に、倉田も黒須へ追いつく。黒須はシュート体制に入るため右、左と脚を踏み込みジャンプする。
それに合わせて追いついた倉田と静がシュートブロックの体制に入り、ジャンプした。
黒須はそれを確認すると、左手で持っていたボールを冷静に右手に持ちかえて腰の下あたりに右手を下げて手首でスッとパスをする。そこにいたのは、梨世だ。
梨世はパスを受け取ると、ノーマークのゴール下で丁寧にシュートを放ち決めた。
俺は、正直驚いていた。
黒須亜美…周りの状況を確認しながら二人を引きつけ、空中でボールを逆の手に持ち変えパスを出すとは…女子でできる選手は中々いない、さすが城鶴高校バスケット部員といったところだ。
後攻、静チームの攻撃。
ピッと再び俺が笛を鳴らして開始する。
今度は倉田が黒須の体を抑え込み。スペースを作ってパスを要求する。
俺は黒須が届かないように、倉田が作ったスペースへパスを供給する。
倉田はパスを受け取ろうとするが、黒須は手を伸ばし俺からのパスをカットしにかかる。
倉田はいち早くそれに気づき、なんとか体を入れ直しボールを受け取る。
黒須は守備も上手いのか…そう感心しているうちに、本田を振り切った渡辺がパスを要求する。倉田は体を大きく横に反らし、左腕を懸命に伸ばして、渡辺へバウンドパスを出した。
渡辺はパスを受け取る。
「はい!」
大きな声がゴール前から聞こえる。
そこには、梨世よりも頭一つ抜けた静が、完璧に体で梨世を抑え込み、パスをゴール前で受ける体制を整えていた。
渡辺は、躊躇なく静へ山なりで浮き球のパスを供給する。
静は、ジャンプして渡辺からのパスを受け取ると、梨世の体を左側で抑え込み、右足をすっと後ろへ引き、見事なターンで梨世を置きざりにしてレイアップシュートを放つ。
ボールはリングのボードへ当たって跳ね返り、ゴールへ吸い込まれた。
これは…静のチームが強すぎるな…梨世がおもちゃみたいに遊ばれちゃっているな…
男子部員と対峙してきた静にとっては、梨世くらいの身長の女子部員など全くプレッシャーに感じないのであろう。何事もなかったかのように汗をぬぐっている。
「ぐぬぅぅぅぅぅぅl!!!」
梨世が悔しそうにしている。梨世、今回はマッチアップが悪かった。ご愁傷様。
このあと、梨世、本田、黒須、小林チームはマッチアップが悪く攻めあぐね、4本のうち、小林が形原を振りきり、レイアップシュートを決めた1本のみ。一方の静、倉田、仲川、形原のチームは、静を中心にボールを集め攻撃していく、梨世とのミスマッチを利用して4本中3本を見事に沈めた。トータル4対8で、静チームがリードを広げていく。
梨世チームの攻撃。今度は、梨世が外でボールを受ける。静を外に引き出して、中のスペースを空ける作戦に出たようだ。梨世が静との一対一の体制に入る。
スリーポイントラインからの一対一で、梨世と静のマッチアップは、圧倒的に梨世のようが有利であり、静の方がミスマッチといえる。梨世はドリブルを左サイドに移動しながらゆっくりと開始した。静も抜かれないように、間を取りながら守っている。
しかし、その間合いでは梨世にとっては全く問題ない。
梨世は、一突きゆっくりとドリブルを付いた次の瞬間、一気に静を抜きにかかる。
静は反応したものの、静が梨世に反応した時点で梨世はすでに静の足元をすり抜ける寸前であった。
早い!
これが梨世の一番の特徴であるスピード突破のドリブルだ!50メートル6・5秒という女子では信じられない足の速さを持つ梨世にとって、高校女子バスケットの中ではトップクラスのドリブルスピードいっても過言ではないだろう。
梨世は、静を簡単に抜き去りゴール前へものすごいスピードへ向かう。
しかし、カバーにきた渡辺がゴール前で待ち構えていた。
梨世はスピードに乗ったまま、渡辺を抜きにかかる。
渡辺は、梨世が抜きにかかる方向を瞬時に読み、コースを塞ぎにかかる。梨世は一瞬ためらったため、渡辺にコースを防がれってしまった。渡辺の守備の読みは、この中で一番うまい。
梨世はドリブルを止めずに後ろに一歩下がったかと思いきや、ジャンプシュートを試みる。梨世がシュートの体制に入ると、渡辺が慌ててブロックに行く。
すると梨世は、目線をゴールへ向けたままボールを両手で持ち、右サイドにパスを送った。ノールックパスだ!
右ゴール前に出されたパスの先に走りこんできたのは、今まで空気のように存在が消えていた本田だ!
「ナイスパス!」
本田は、待ってましたというようにボールを受け取り、レイアップシュートをノーマークで放った。
ボールはリングの淵の下に当たってしまい。そのまま跳ね返り、本田の顔面に直撃してコートの外へ転がっていった。
あ、シュート外した・・・
「ぐへぇ!!」
本田は、その場で顔を手で覆いながらしゃがみこむ。
「香凛ちゃん…大丈夫・・・」
「えぇ、平気よ…」
「ああいうの地味に痛いし、一番恥ずかしいんだよな…」
本田はしばらく痛みと恥ずかしさから顔を覆い隠したまま、その場でプルプル震えながらしゃがみこんでいたが、呼吸を整えるとゆっくりと立ち上がる。
「さ、次!いくわよ!」
あ、さっきのプレーなかったことにしようとしてる。
次の守備に移ろうと歩き出した本田に声を掛けたのは倉田だった。
「香凛…」
本田は倉田のほうを振り向く。
「何よ…」
「鼻血出てるわよ…」
倉田は自分の鼻を指さしながら伝えた。
本田は鼻の下を手で吹いてみる。
すると、手にたっぷりと血が付いている。
「…一回休憩しようか…」
ちょうどなんかタイミングがよくなっちゃったので休憩を取ることにした。
バスケ経験者にとってはさほど難しくない練習であるが、未経験者にとっては違った、特に形原は、パスをする際にボールを両手で持ち、肘を大きく左右に開いてしまい、腕の力だけでパスを出していた。そのため、ペアを組んでいた小林の元へ2回、3回とバウンドして届いた。
一方の小林は、パスの投げ方がとにかく汚なかった。両手でボールを持ち、体全体を使ってパスをしているのはいいのだが、体を大きく反らして、ボールを肩の上に持っていき投げている。まるで、陸上の投てき選手のような投げ方であった。
これは、色々指導には骨が折れそうだ・・・
次に行ったのは基本的なレイアップシュートの練習だ、スリーポイントあたりからボールを持っている人がフリースローラインにいる選手にパスをする。パスを受けた選手は、パスをした選手がゴール前に走りこんできたタイミングに合わせてパスを返し、もう一度ボールを受け取った選手はそのままレイアップシュートへ持っていくという比較的簡単な練習だ。
しかし、これも問題ありの選手が約2名…形原はボールを再び受け取りシュートへ持っていく間にドリブルを付こうとするが、ボールが体の動きについていかず、体の後ろ側へ行ってしまう。結局、そこでボールを掴んでしまい、レイアップシュートではなく普通のゴール下のシュートになってしまっていた。 でも、そのシュートは入るんですねこれが・・・
もう一人は、すでにバテバテになりながら練習をしているツインテールを揺らしている彼女だ。本田は開始3分ですでに息を大きく口で呼吸しながら練習をしていた。本田の体力向上も今後の大きな課題だな…
一方で小林はサッカー部だったこともあり、走り込みのタイミングやパスのタイミングなどもしっかりとしており、レイアップシュートもなかなかの腕前で驚いた。
様々な問題点が浮き彫りになっていく中で、次に実戦形式のハーフコートでの4対4に入る。
組み合わせは、梨世、本田、黒須、小林チームと、静、倉田、渡辺、形原のチームに分けた。
俺がサイドからボールを出して、受け取るところから始まる。
先行は梨世のチーム。
「開始!」
ピッっと笛を鳴らし、俺がパスコースを探す。
黒須が倉田を振り切り、パスを要求する。
俺は黒須が要求したスペースへパスを出す。
パスを受け取った黒須は左足を軸にして動かさず、右足を動かしながらピボットを踏み周りの状況を確認する。
マッチアップしている倉田はボールを奪おうと懸命に黒須に手を伸ばした。
しかし、黒須はその瞬間を狙っていたかのようにドリブルを開始する。一瞬反応が遅れた倉田は、懸命に黒須を追いかける。
黒須のドリブルは、それほどスピードはないが、相手にドリブルのコースに入られないように上手く体を使っていた。周りをきょろきょろと見渡しながらじわじわとゴール前へと近づいていく。
ゴール前では静が陣取るように待ち構えていた。
黒須は力強いドリブルを一回つき、躊躇することなく静がいるゴール前へ突っ込んだ。
その間に、倉田も黒須へ追いつく。黒須はシュート体制に入るため右、左と脚を踏み込みジャンプする。
それに合わせて追いついた倉田と静がシュートブロックの体制に入り、ジャンプした。
黒須はそれを確認すると、左手で持っていたボールを冷静に右手に持ちかえて腰の下あたりに右手を下げて手首でスッとパスをする。そこにいたのは、梨世だ。
梨世はパスを受け取ると、ノーマークのゴール下で丁寧にシュートを放ち決めた。
俺は、正直驚いていた。
黒須亜美…周りの状況を確認しながら二人を引きつけ、空中でボールを逆の手に持ち変えパスを出すとは…女子でできる選手は中々いない、さすが城鶴高校バスケット部員といったところだ。
後攻、静チームの攻撃。
ピッと再び俺が笛を鳴らして開始する。
今度は倉田が黒須の体を抑え込み。スペースを作ってパスを要求する。
俺は黒須が届かないように、倉田が作ったスペースへパスを供給する。
倉田はパスを受け取ろうとするが、黒須は手を伸ばし俺からのパスをカットしにかかる。
倉田はいち早くそれに気づき、なんとか体を入れ直しボールを受け取る。
黒須は守備も上手いのか…そう感心しているうちに、本田を振り切った渡辺がパスを要求する。倉田は体を大きく横に反らし、左腕を懸命に伸ばして、渡辺へバウンドパスを出した。
渡辺はパスを受け取る。
「はい!」
大きな声がゴール前から聞こえる。
そこには、梨世よりも頭一つ抜けた静が、完璧に体で梨世を抑え込み、パスをゴール前で受ける体制を整えていた。
渡辺は、躊躇なく静へ山なりで浮き球のパスを供給する。
静は、ジャンプして渡辺からのパスを受け取ると、梨世の体を左側で抑え込み、右足をすっと後ろへ引き、見事なターンで梨世を置きざりにしてレイアップシュートを放つ。
ボールはリングのボードへ当たって跳ね返り、ゴールへ吸い込まれた。
これは…静のチームが強すぎるな…梨世がおもちゃみたいに遊ばれちゃっているな…
男子部員と対峙してきた静にとっては、梨世くらいの身長の女子部員など全くプレッシャーに感じないのであろう。何事もなかったかのように汗をぬぐっている。
「ぐぬぅぅぅぅぅぅl!!!」
梨世が悔しそうにしている。梨世、今回はマッチアップが悪かった。ご愁傷様。
このあと、梨世、本田、黒須、小林チームはマッチアップが悪く攻めあぐね、4本のうち、小林が形原を振りきり、レイアップシュートを決めた1本のみ。一方の静、倉田、仲川、形原のチームは、静を中心にボールを集め攻撃していく、梨世とのミスマッチを利用して4本中3本を見事に沈めた。トータル4対8で、静チームがリードを広げていく。
梨世チームの攻撃。今度は、梨世が外でボールを受ける。静を外に引き出して、中のスペースを空ける作戦に出たようだ。梨世が静との一対一の体制に入る。
スリーポイントラインからの一対一で、梨世と静のマッチアップは、圧倒的に梨世のようが有利であり、静の方がミスマッチといえる。梨世はドリブルを左サイドに移動しながらゆっくりと開始した。静も抜かれないように、間を取りながら守っている。
しかし、その間合いでは梨世にとっては全く問題ない。
梨世は、一突きゆっくりとドリブルを付いた次の瞬間、一気に静を抜きにかかる。
静は反応したものの、静が梨世に反応した時点で梨世はすでに静の足元をすり抜ける寸前であった。
早い!
これが梨世の一番の特徴であるスピード突破のドリブルだ!50メートル6・5秒という女子では信じられない足の速さを持つ梨世にとって、高校女子バスケットの中ではトップクラスのドリブルスピードいっても過言ではないだろう。
梨世は、静を簡単に抜き去りゴール前へものすごいスピードへ向かう。
しかし、カバーにきた渡辺がゴール前で待ち構えていた。
梨世はスピードに乗ったまま、渡辺を抜きにかかる。
渡辺は、梨世が抜きにかかる方向を瞬時に読み、コースを塞ぎにかかる。梨世は一瞬ためらったため、渡辺にコースを防がれってしまった。渡辺の守備の読みは、この中で一番うまい。
梨世はドリブルを止めずに後ろに一歩下がったかと思いきや、ジャンプシュートを試みる。梨世がシュートの体制に入ると、渡辺が慌ててブロックに行く。
すると梨世は、目線をゴールへ向けたままボールを両手で持ち、右サイドにパスを送った。ノールックパスだ!
右ゴール前に出されたパスの先に走りこんできたのは、今まで空気のように存在が消えていた本田だ!
「ナイスパス!」
本田は、待ってましたというようにボールを受け取り、レイアップシュートをノーマークで放った。
ボールはリングの淵の下に当たってしまい。そのまま跳ね返り、本田の顔面に直撃してコートの外へ転がっていった。
あ、シュート外した・・・
「ぐへぇ!!」
本田は、その場で顔を手で覆いながらしゃがみこむ。
「香凛ちゃん…大丈夫・・・」
「えぇ、平気よ…」
「ああいうの地味に痛いし、一番恥ずかしいんだよな…」
本田はしばらく痛みと恥ずかしさから顔を覆い隠したまま、その場でプルプル震えながらしゃがみこんでいたが、呼吸を整えるとゆっくりと立ち上がる。
「さ、次!いくわよ!」
あ、さっきのプレーなかったことにしようとしてる。
次の守備に移ろうと歩き出した本田に声を掛けたのは倉田だった。
「香凛…」
本田は倉田のほうを振り向く。
「何よ…」
「鼻血出てるわよ…」
倉田は自分の鼻を指さしながら伝えた。
本田は鼻の下を手で吹いてみる。
すると、手にたっぷりと血が付いている。
「…一回休憩しようか…」
ちょうどなんかタイミングがよくなっちゃったので休憩を取ることにした。
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