合同籠球マネージャー
第16話 北条静の本性 梨世vs静
そうこうしているうちに、試合形式の練習が終わったようで、古田さんが静をこちらへ呼び寄せてきてくれた。
歩いてくるほどにわかる彼女の身長の高さと威圧感、そしてキリッとした表情はとても自身に満ちたバスケットに対する情熱が見えた。それを見た梨世以外の3人がかたずをのみこんで見つめている。
しかし、引き締まった体に艶やかな白い肌をしたスラっとした腕と足。モデルとかにいそうな体系をしている静の唯一残念なのは、男子に混ざっても全く目立たない女性特有の膨らみがないことであろうか…横から見ると真っ平らな胴体である。成長分が全部身長にいっちゃったんだね。まだ、諦めないで!
そんなことを考えていると静が俺の元へやってきた。
「大樹…久しぶり。」
「よ、久しぶりだな。静」
連絡は取り合っていたが実際に会うのは3カ月ぶりくらいだ、車いすに座っているせいだろうか前にあった時よりもさらに背丈が伸びている気がした。
練習中に掻いた汗を手でぬぐいながら、静の方も俺を全体的に見わたしていた。
「怪我の調子はどう??」
「まあ、ぼちぼちって感じかな」
「そうなの??でも、膝…包帯…」
静は手術後の左膝を心配そうに見ている。
「心配ないって、これでも毎日の地道なリハビリのおかげで曲げたり伸ばしたりできるようになってきたんだぜ??」
俺は車いすに座ったまま左足を伸ばしたり曲げたりして見せる。
「そう、なら、よかった。」
声のトーンはいつものように低いままだが、静は少し安心したようでほっとした表情を見せた。
「それで、合同チームの件なんだけど…」
「うん、先生から話は聞いてる。コーチが大樹だって聞いて驚いた」
静は低いトーンのまま、少しにこやかな表情は変えずに言葉を続ける。
「でも、また大樹とバスケが一緒にできる、うれしい」
どうやら静は、合同チーム結成に関して前向きらしい。
「静は合同チーム結成に関しては賛成なんだな」
「うん、だって合同チーム作れば公式戦に出れる、練習は大樹が教えてくれる、より頑張れる。一石二鳥。」
グットサインを出しながら、メリットが多いことを説明してくる。
すると突然、静の表情が少し暗くなる。
「でも、この状態じゃ大樹にあれできない…残念…」
静はしばし何かを考え、はっ!っとひらめいたかと思うと。俺の目の前に立ち、顔をじーっと見つめてきた。どうやら、あれをする方法を思いついたらしい。車いすに座っているため静から見下ろされていると普段よりも威圧的なものを感じる。
そんなことを思っていると静は立膝になり、俺が座っている車いすに近づいてきて、俺の脚と脚の間に腰のあたりを侵入させてくる。そして、場の空気を全く考えることなく俺の背中に両腕を回しバグをしてきた。
「なっ!」
「////」
その場にいた全員の空気が凍り付く。そりゃそうだ、だって体育館の入り口で静に抱きしめられてるんだもん。
静は小学生くらいの頃から、俺に対してこうやってスキンシップを取ってくるのが日課であった、最初の頃は手を握ったり頭をクシャクシャと掻きまわしたりなど軽いスキンシップだったのだが、小学校の高学年くらいに上がったころから過激になっていき、気が付けば会った時には毎回ハグをしてくるのが静のお決まりの挨拶みたいになっていた。
久々にハグされたので少々照れくさくはあったものの、中学時代まで毎日のようにやられていたことなので、特に抵抗はない。しかし、高校生にもなって人目もはばかることもなく、こういうことをされるのは…さずがに、俺もどうなのかとは思ってしまった。
「ん~大樹のいい匂い」
静はびっしょと汗をかいているが、全く気にした様子はなくすりすりと俺の胸に顔をこすりつけながら俺の匂いを堪能しているようだった。ほのかに静の甘い香りと汗の甘酸っぱい匂いが俺の鼻孔を刺激する。やばい熱中症かと勘違しそうだ。なんかクラクラしてきたかも…
まあ、中学の頃は毎日こんなことをしているおがげで…
「あなたたち…そういう関係だったの?」
ほら、こういう勘違いされちゃうじゃん。お願い倉田様、人をゴミ虫のようにさげすむような目で見ないで!ってか古田さんも困っちゃってじゃん。
「なんと大胆な・・・」
渡辺はそんなことを口に出しながら手で顔を隠しつつチラチラと覗いている。
「私の大樹くんが、私の大樹くんなんだから…私のものなのに…コロス」
もう一人は小声で何か呪いの呪文のような言葉を唱えながら、下を向いてうろたえている。ってかちょっと怖いセリフが聞こえたんだけど本田さん!?
ようやく満足したのか、静は俺から顔を離す。
「あ、ごめん、汗シャツに付いちゃった…でもいいよね?大樹、私の汗のにおい嫌いじゃないって昔言ってくれたし」
「…」
甘い雰囲気が漂っている。なんだこのラブコメみたいな展開は…
「こらぁぁぁぁ!!!!!」
そんな空気を突風のように吹き飛ばしたのは梨世だった。
「相変わらず変わってないわねあんたは!!!みんな勘違いするでしょう!!!!」
「あ、梨世いたんだ…」
どうやら静は、梨世の存在を完全にシャットアウトしていたらしい。
「いいから大樹から離れなさい!!」
梨世は、俺を車いすごと大きく後ろに引いて、静を引きはがした。
「あ、大樹…」
静は背中に回していた両腕が離れ、地面に崩れ落ちた。
「はぁ…た、助かった・・・」
俺はホッとため息を付いた。
そう、これが素の北条静の本性である。普段は、ぼーっとしていて何を考えているのかわからないような不思議な雰囲気をまといつつ、俺に対してのスキンシップするときは行動的になるという謎が多い女の子である。バスケやってればすげーカッコよくて、魅力的なのに…ホントどうして俺の幼馴染達は、バスケやってる時以外はこう残念なやつらなんだ…
「全くもう・・・付き合ってもないのにそういうことしないの!」
梨世は静にお叱りをする。まあ、もっともなことを言ってるけど。こいつもこいつで結構ぶっ壊れてるところあるからなぁ…と思っていると、同じくそれを知っている静は空気を読まずに言ってしまった。
「え?でも、梨世だって中学の頃は大樹にバクしてたじゃん」
「え!?」
俺以外全員の驚きと、若干引いたような冷たい視線が梨世に向けられる。
そう、中学時代はよく俺に抱き付いてきた静を梨世が引きはがして、『私の大樹に何してんの!』とかいって梨世にもバグをされていたのを思い出す。
そのおかげで中学のやつからは『毎日幼馴染二人に愛されてますなー』といじられたものだ。
俺は中学時代、特にかっこいいわけでもなく平凡にも関わらず、二人にだけはこう過保護みたいにひっつかれてた記憶があるんだよな…なんでだ??でも、中学で一番モテててたのは、航一だったな…女子のファンクラブがあったほどだしなぁ。懐かしいな…などと考えているとみんなの視線を受けている梨世は恥ずかしそうにしながら体をモジモジさせている。
「そ…それは…もう高校生だし…恥ずかしいから…」
「え?そうなの??違う高校になってからてっきり梨世が私がいないところで毎日バグしてるのかと…」
「なわけあるか!!」
梨世が突っ込む。
「あれは、アンタが毎日汗かいた部活着で抱き付くからその汚れを私で除菌してあげてただけだから!」
「え?そうだったの??でも、お前ハグしてた時まんざらでもない顔して…」
「大樹は黙ってて!!」
「は…はい…」
梨世に鬼の形相で怒鳴られシュンっと小さくなる俺。除菌ってどんないい訳だよ。何どこかの強力消臭剤でも梨世には備え付けられてるの??
「はぁ…大体の状況は把握したわ…2つ目の問題とはこういうことだったのね」
倉田が呆れかえり、はぁっと大きなため息を漏らす。
「常々噂は聞いてたんですけど…ここまでとは…」
黒須さんが若干ひいている。やっぱり噂って、その方面の噂だったんですね。
「大樹くんと毎日ハグ…ですって…聞き捨てならないわ…フフフフフフフ」
俺が他の人の状況を確認している間にも、静と梨世の言い争いは続いていた。
「大体ね!練習後によくそんなに抱き付けるわね!乙女としての恥じらいとかないわけ??」
といいつつ梨世は俺のことを後ろから腕を回して抱き付いてきた。やっぱり静とハグしたの、気にしてんじゃねーか!!
「別に汗のにおい気にならないって大樹は言ってくれたよ??むしろ私の汗のにおいを嗅いで大樹も満更でもないみたいだし。」
な、何言っちゃってるの静。
「それ、本当なの?大樹…?」
梨世がジト目でこちらを睨みつけてくる。
「な、なわけないだろ…はははは…・」
確かに部活後の女子の汗の匂いって、どうして男子のむさ苦しい感じと違って嫌な感じがしなくて、むしろいい香りがするんだろうって思ったこともなくはないですけど…ってかさっきバグされた時もちょっといい匂いだなって思っちゃった変態フェチですはい…と自己嫌悪していると梨世が呆れたような表情でこちらを見て。
「変態」
と一言だけ言ったのであった。
こうかばつぐんだ。大樹の心はすでにズタズタで瀕死状態だ。
「たくしょうがないわね…」
すると梨世は後ろから回していた腕をさらに体が密着するように強くする。
「わ、私もここに歩いてくるまでに汗かいちゃってるから…その…恥ずかしいけど…これでいい?」
ちょっと、そんなに近づかれたら…梨世のかすかに漂う汗ばんだ匂いと柑橘系の甘い香りが・・・それに、背中に梨世の控え目なやわらかい胸の感触が当たって…あぁぁぁぁ!!!沈まれ、俺の煩悩。
「あーずるいー」
静が起きあがりながら羨ましそうに俺の方をみる。
「ふん、言ったでしょ除菌よ除菌!」
「むー」
静は顔をぷくっと膨らませている。何その表情可愛い。
「ど…どう??」
梨世は暑さで暖まった体を俺に押し付けながら聞いてくる。どうといわれましても…最高です。
また俺の周辺一帯に甘い空気が漂う…だからなんだよこのラブコメ展開は…
「大樹いいぃぃぃぃ!!!」
そんな甘い雰囲気を次に壊したのは本田であった。
本田は梨世を大樹から引き剥がしぜぇぜぇと息を切らしている。
「あんたたち、毎日大樹君とバグとか…なんという羨ましいイベントを…許せないわ!」
「はぁ!?べ、別に中学時代の話だし」
「今も抱き付いてたでしょうが!」
「そ、それは除菌であって」
「そうやっていい訳をつけて大樹に近づいて、ずるいよ梨世ちゃん」
「まぁまぁ・・・3人とも落ち着いて」
「大樹は、黙ってなさい!」
「は、はい…」
俺はまた黙ってシュンっと小さく丸くなる。
「あの…えっと…」
形原はアワアワと3人の言い争いを止めに入ってくる。
「あはははは…大樹君もいろいろと大変だね」
渡辺は苦笑しながら俺に同情してきた。
「三人で一人の男を取り合って熱いバトル…いいね!燃えてきてるよ!」
小林は楽しそうに3人の様子を見ながら陽気に笑っていた。
「さてと…私は業務に戻ろうかな…」
古田さんは何も見なかったのように逃げるように去っていった。あの人、教師なら止めてくれよ。
「うちのエースがご迷惑をかけてすいません…」
「いえいえ、うちの馬鹿どもが本当にすいません…」
「はぁ…」
「はぁ…」
倉田と黒須は、同時に大きなため息を付いている。どうやら違う意味で絆が深まったみたいだ。
こうして、合同チーム結成は波乱の予感を呈し、全員が揃ったのであった。
歩いてくるほどにわかる彼女の身長の高さと威圧感、そしてキリッとした表情はとても自身に満ちたバスケットに対する情熱が見えた。それを見た梨世以外の3人がかたずをのみこんで見つめている。
しかし、引き締まった体に艶やかな白い肌をしたスラっとした腕と足。モデルとかにいそうな体系をしている静の唯一残念なのは、男子に混ざっても全く目立たない女性特有の膨らみがないことであろうか…横から見ると真っ平らな胴体である。成長分が全部身長にいっちゃったんだね。まだ、諦めないで!
そんなことを考えていると静が俺の元へやってきた。
「大樹…久しぶり。」
「よ、久しぶりだな。静」
連絡は取り合っていたが実際に会うのは3カ月ぶりくらいだ、車いすに座っているせいだろうか前にあった時よりもさらに背丈が伸びている気がした。
練習中に掻いた汗を手でぬぐいながら、静の方も俺を全体的に見わたしていた。
「怪我の調子はどう??」
「まあ、ぼちぼちって感じかな」
「そうなの??でも、膝…包帯…」
静は手術後の左膝を心配そうに見ている。
「心配ないって、これでも毎日の地道なリハビリのおかげで曲げたり伸ばしたりできるようになってきたんだぜ??」
俺は車いすに座ったまま左足を伸ばしたり曲げたりして見せる。
「そう、なら、よかった。」
声のトーンはいつものように低いままだが、静は少し安心したようでほっとした表情を見せた。
「それで、合同チームの件なんだけど…」
「うん、先生から話は聞いてる。コーチが大樹だって聞いて驚いた」
静は低いトーンのまま、少しにこやかな表情は変えずに言葉を続ける。
「でも、また大樹とバスケが一緒にできる、うれしい」
どうやら静は、合同チーム結成に関して前向きらしい。
「静は合同チーム結成に関しては賛成なんだな」
「うん、だって合同チーム作れば公式戦に出れる、練習は大樹が教えてくれる、より頑張れる。一石二鳥。」
グットサインを出しながら、メリットが多いことを説明してくる。
すると突然、静の表情が少し暗くなる。
「でも、この状態じゃ大樹にあれできない…残念…」
静はしばし何かを考え、はっ!っとひらめいたかと思うと。俺の目の前に立ち、顔をじーっと見つめてきた。どうやら、あれをする方法を思いついたらしい。車いすに座っているため静から見下ろされていると普段よりも威圧的なものを感じる。
そんなことを思っていると静は立膝になり、俺が座っている車いすに近づいてきて、俺の脚と脚の間に腰のあたりを侵入させてくる。そして、場の空気を全く考えることなく俺の背中に両腕を回しバグをしてきた。
「なっ!」
「////」
その場にいた全員の空気が凍り付く。そりゃそうだ、だって体育館の入り口で静に抱きしめられてるんだもん。
静は小学生くらいの頃から、俺に対してこうやってスキンシップを取ってくるのが日課であった、最初の頃は手を握ったり頭をクシャクシャと掻きまわしたりなど軽いスキンシップだったのだが、小学校の高学年くらいに上がったころから過激になっていき、気が付けば会った時には毎回ハグをしてくるのが静のお決まりの挨拶みたいになっていた。
久々にハグされたので少々照れくさくはあったものの、中学時代まで毎日のようにやられていたことなので、特に抵抗はない。しかし、高校生にもなって人目もはばかることもなく、こういうことをされるのは…さずがに、俺もどうなのかとは思ってしまった。
「ん~大樹のいい匂い」
静はびっしょと汗をかいているが、全く気にした様子はなくすりすりと俺の胸に顔をこすりつけながら俺の匂いを堪能しているようだった。ほのかに静の甘い香りと汗の甘酸っぱい匂いが俺の鼻孔を刺激する。やばい熱中症かと勘違しそうだ。なんかクラクラしてきたかも…
まあ、中学の頃は毎日こんなことをしているおがげで…
「あなたたち…そういう関係だったの?」
ほら、こういう勘違いされちゃうじゃん。お願い倉田様、人をゴミ虫のようにさげすむような目で見ないで!ってか古田さんも困っちゃってじゃん。
「なんと大胆な・・・」
渡辺はそんなことを口に出しながら手で顔を隠しつつチラチラと覗いている。
「私の大樹くんが、私の大樹くんなんだから…私のものなのに…コロス」
もう一人は小声で何か呪いの呪文のような言葉を唱えながら、下を向いてうろたえている。ってかちょっと怖いセリフが聞こえたんだけど本田さん!?
ようやく満足したのか、静は俺から顔を離す。
「あ、ごめん、汗シャツに付いちゃった…でもいいよね?大樹、私の汗のにおい嫌いじゃないって昔言ってくれたし」
「…」
甘い雰囲気が漂っている。なんだこのラブコメみたいな展開は…
「こらぁぁぁぁ!!!!!」
そんな空気を突風のように吹き飛ばしたのは梨世だった。
「相変わらず変わってないわねあんたは!!!みんな勘違いするでしょう!!!!」
「あ、梨世いたんだ…」
どうやら静は、梨世の存在を完全にシャットアウトしていたらしい。
「いいから大樹から離れなさい!!」
梨世は、俺を車いすごと大きく後ろに引いて、静を引きはがした。
「あ、大樹…」
静は背中に回していた両腕が離れ、地面に崩れ落ちた。
「はぁ…た、助かった・・・」
俺はホッとため息を付いた。
そう、これが素の北条静の本性である。普段は、ぼーっとしていて何を考えているのかわからないような不思議な雰囲気をまといつつ、俺に対してのスキンシップするときは行動的になるという謎が多い女の子である。バスケやってればすげーカッコよくて、魅力的なのに…ホントどうして俺の幼馴染達は、バスケやってる時以外はこう残念なやつらなんだ…
「全くもう・・・付き合ってもないのにそういうことしないの!」
梨世は静にお叱りをする。まあ、もっともなことを言ってるけど。こいつもこいつで結構ぶっ壊れてるところあるからなぁ…と思っていると、同じくそれを知っている静は空気を読まずに言ってしまった。
「え?でも、梨世だって中学の頃は大樹にバクしてたじゃん」
「え!?」
俺以外全員の驚きと、若干引いたような冷たい視線が梨世に向けられる。
そう、中学時代はよく俺に抱き付いてきた静を梨世が引きはがして、『私の大樹に何してんの!』とかいって梨世にもバグをされていたのを思い出す。
そのおかげで中学のやつからは『毎日幼馴染二人に愛されてますなー』といじられたものだ。
俺は中学時代、特にかっこいいわけでもなく平凡にも関わらず、二人にだけはこう過保護みたいにひっつかれてた記憶があるんだよな…なんでだ??でも、中学で一番モテててたのは、航一だったな…女子のファンクラブがあったほどだしなぁ。懐かしいな…などと考えているとみんなの視線を受けている梨世は恥ずかしそうにしながら体をモジモジさせている。
「そ…それは…もう高校生だし…恥ずかしいから…」
「え?そうなの??違う高校になってからてっきり梨世が私がいないところで毎日バグしてるのかと…」
「なわけあるか!!」
梨世が突っ込む。
「あれは、アンタが毎日汗かいた部活着で抱き付くからその汚れを私で除菌してあげてただけだから!」
「え?そうだったの??でも、お前ハグしてた時まんざらでもない顔して…」
「大樹は黙ってて!!」
「は…はい…」
梨世に鬼の形相で怒鳴られシュンっと小さくなる俺。除菌ってどんないい訳だよ。何どこかの強力消臭剤でも梨世には備え付けられてるの??
「はぁ…大体の状況は把握したわ…2つ目の問題とはこういうことだったのね」
倉田が呆れかえり、はぁっと大きなため息を漏らす。
「常々噂は聞いてたんですけど…ここまでとは…」
黒須さんが若干ひいている。やっぱり噂って、その方面の噂だったんですね。
「大樹くんと毎日ハグ…ですって…聞き捨てならないわ…フフフフフフフ」
俺が他の人の状況を確認している間にも、静と梨世の言い争いは続いていた。
「大体ね!練習後によくそんなに抱き付けるわね!乙女としての恥じらいとかないわけ??」
といいつつ梨世は俺のことを後ろから腕を回して抱き付いてきた。やっぱり静とハグしたの、気にしてんじゃねーか!!
「別に汗のにおい気にならないって大樹は言ってくれたよ??むしろ私の汗のにおいを嗅いで大樹も満更でもないみたいだし。」
な、何言っちゃってるの静。
「それ、本当なの?大樹…?」
梨世がジト目でこちらを睨みつけてくる。
「な、なわけないだろ…はははは…・」
確かに部活後の女子の汗の匂いって、どうして男子のむさ苦しい感じと違って嫌な感じがしなくて、むしろいい香りがするんだろうって思ったこともなくはないですけど…ってかさっきバグされた時もちょっといい匂いだなって思っちゃった変態フェチですはい…と自己嫌悪していると梨世が呆れたような表情でこちらを見て。
「変態」
と一言だけ言ったのであった。
こうかばつぐんだ。大樹の心はすでにズタズタで瀕死状態だ。
「たくしょうがないわね…」
すると梨世は後ろから回していた腕をさらに体が密着するように強くする。
「わ、私もここに歩いてくるまでに汗かいちゃってるから…その…恥ずかしいけど…これでいい?」
ちょっと、そんなに近づかれたら…梨世のかすかに漂う汗ばんだ匂いと柑橘系の甘い香りが・・・それに、背中に梨世の控え目なやわらかい胸の感触が当たって…あぁぁぁぁ!!!沈まれ、俺の煩悩。
「あーずるいー」
静が起きあがりながら羨ましそうに俺の方をみる。
「ふん、言ったでしょ除菌よ除菌!」
「むー」
静は顔をぷくっと膨らませている。何その表情可愛い。
「ど…どう??」
梨世は暑さで暖まった体を俺に押し付けながら聞いてくる。どうといわれましても…最高です。
また俺の周辺一帯に甘い空気が漂う…だからなんだよこのラブコメ展開は…
「大樹いいぃぃぃぃ!!!」
そんな甘い雰囲気を次に壊したのは本田であった。
本田は梨世を大樹から引き剥がしぜぇぜぇと息を切らしている。
「あんたたち、毎日大樹君とバグとか…なんという羨ましいイベントを…許せないわ!」
「はぁ!?べ、別に中学時代の話だし」
「今も抱き付いてたでしょうが!」
「そ、それは除菌であって」
「そうやっていい訳をつけて大樹に近づいて、ずるいよ梨世ちゃん」
「まぁまぁ・・・3人とも落ち着いて」
「大樹は、黙ってなさい!」
「は、はい…」
俺はまた黙ってシュンっと小さく丸くなる。
「あの…えっと…」
形原はアワアワと3人の言い争いを止めに入ってくる。
「あはははは…大樹君もいろいろと大変だね」
渡辺は苦笑しながら俺に同情してきた。
「三人で一人の男を取り合って熱いバトル…いいね!燃えてきてるよ!」
小林は楽しそうに3人の様子を見ながら陽気に笑っていた。
「さてと…私は業務に戻ろうかな…」
古田さんは何も見なかったのように逃げるように去っていった。あの人、教師なら止めてくれよ。
「うちのエースがご迷惑をかけてすいません…」
「いえいえ、うちの馬鹿どもが本当にすいません…」
「はぁ…」
「はぁ…」
倉田と黒須は、同時に大きなため息を付いている。どうやら違う意味で絆が深まったみたいだ。
こうして、合同チーム結成は波乱の予感を呈し、全員が揃ったのであった。
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