生まれ変わったら、能力が底上げされてたので面白おかしく生きてやる!!
今を生きるオレ
・・・なぜ・・どうしてこんなことに・・・
・・・あのとき、ああしていれば・・・
・・・もう間違えない・・・
・・・もし・・もしも、生まれ変わることができるなら・・・
・・・そのときは、オレは絶対・・・・・・
「うぅ~~ん」
窓から差し込む朝日に顔を照らされて、オレはダルそうな声を出した。
窓にはカーテンをしていたが、隙間から日がさして、部屋は明るくなっていた。
「・・嫌な夢をみたな・・・」
オレの今の心境とは正反対の部屋を見て、思わず声が漏れた。
部屋は朝日に照らされて、神々しいまでに輝いている。
「夢だけじゃなく、太陽までオレの敵なのか・・・なんてな」
軽い冗談をつぶやいて、沈んでいた気持ちを持ち上げ、オレはベッドから上半身を起こした。
ベットの横に足を下ろして立ち上がると、大きく背伸びをし、身体を伸ばす。
そうして、朝食を食べるため下に行こうとすると、
「お兄ちゃん、ご飯できたよ~~」
階段の下から、声が聞こえてきた。
いま行く、と答えるとオレは階段を下り、リビングに入る。
「お兄ちゃん遅い、学校に遅れるよ」
リビングに入るなり、いきなりしゃべってくる優花に少し戸惑いながらも、オレは少しうれしく思う。
相変わらず世話焼きな妹だ。
「むしろ遅れて行ったほうが教室に入るときに注目を浴びて、かっこよくね?」
妹のおせっかいを兄であるオレは、冗談でスルーし受け流す。
いつもの会話だ。
「そんなこと言って、中学校のときも遅刻が結構あったのに、入学初日から遅刻する気?」
分かってるって、と答えると、オレは母親が作ってくれた朝食を食べだす。
妹の優花は今年で中学1年、オレ、月田優真は高校1年生だ。親は、父親が小さな会社の社長をしていて、母親が専業主婦、普通の家庭よりも少し金銭に余裕があること以外は、どこにでもある普通の家庭。子供は妹とオレの2人兄妹で、普通の日常に、めんどくさいと言いながらもある程度満足している。
朝食を食べ終わると、学校に行く身支度を整え、靴を履き、玄関の扉を開ける。
「優花、早く行くぞ。それじゃあ母さん、いってきます」
「すぐ行くって。じゃあママ、行ってくるね」
いってらっしゃい、と母さんが言うと、オレは扉を閉める。
それからオレたちは、2人ならんで学校まで歩きだす。
「おまえの方が食べるの早かったのに準備遅すぎ。なんでそんな遅いんだよ?」
「女の子には色々と準備があるの。髪をとかしたり、まぁ、男のお兄ちゃんには分からないだろうけどね」
そんな雑談をしながら、2人で歩いていく。
優花の通っている中学校は、オレのこれから行く高校の通学路の道沿いにある。だから、途中までは一緒に登校する。
そんな雑談をしながら、歩いていると、
「なあ、頼むよ、金貸してくれよ」
「いいだろ、ちょっとぐらいさあ」
どこからか、そんな声が聞こえてきた。声のする方を見てみると、女子高生が1人、男3人に囲まれていた。男は20代ぐらいで、見るからにがらが悪く、明らかに不良だ。住宅街の中の公園のためか、人気がなく、助けも呼べない。
「や、やめてください、お願いします」
そんな声も聞こえてくる。助けたい気持ちは山々だが、もし助けに行っても、返り討ちにあうだけだろう。そればかりか、妹の優花まで危険が及ぶかもしれない。オレは少し離れてから、警察に電話することを決意する。
そう思っていると、
・・・そのときは、オレは絶対・・・・・・
ふと、朝に見た夢が頭をよぎる。
――――――そうだ、オレは決めたじゃないか・・・
そうして、少し悩んだ後、オレは新たな決意をする。
「お兄ちゃん、どうしよう」
となりにいて、一緒に現場を見ている優花は怖いのか、オレの腕をつかむ。
その顔はとても不安で心配そうだ。
「少し離れてから、すぐに警察に電話しよう。警察ならきっと助けてくれるはずだ」
オレは、優花の腕をつかんで公園が見えなくなる位置まで連れてくると、すぐに携帯を取り出して、警察にに電話をかけた。
「もしもし、警察ですか、女の子が男数人に囲まれて、今にも襲われそうになっているんです。場所は―――」
警察に連絡し終わると、ぎゅっとオレの腕をにぎりしめて、不安そうにしている優花の頭を撫でる。
「警察に電話したからもう大丈夫だ。すぐに来て助けてくれるってさ」
そう言うと、少し安心したのか腕をにぎる力が弱まった。
「ここにいたら危ないから、優花は先に学校に行きな。警察が来たらオレが話してなんとかしておくから」
「・・うん、わかった。お兄ちゃんを信じるよ」
優花は少し心配そうだったが、納得してくれたのか、先に歩き出した。
優花が見えなくなった頃合いをみて、オレはもう1度決意を固める。
「・・・さてと」
オレは、目を閉じ息を大きく吐くと、ゆっくりと目を開けた。気持ちのスイッチを切り替え、行動に移すために。
オレは、公園にむかってゆっくりと歩き出す。
まず、さっきの警察への電話だが、あれは連絡していない。携帯画面のダイヤルパッドに、110と入力したのを、自然に優花に見えるようにして、発信ボタンを押すふりをした後、すぐに耳にあて、1人芝居をしていたのだ。
 もし仮に、警察を呼んでいたとしても、近くの交番からこの公園までは、15分はかかる。
 それだと、間に合わない上に、目撃者が増えて、事後処理に余計な手間がかかる。
オレは、前髪をかきあげて、オールバックにして、イメチェンの為に持ち歩いている、伊達メガネをかけて、軽く変装をした。
 面倒ごとは出来るだけ避けたい。
 オレは最善策と思われる方法をとる。
「あの・・・嫌がってるみたいなんで、やめてもらってもいいですか?」
 そう声をかけると、男たちはこちらに気づいて、近づいてきた。
「なんだお前、俺たちになんか用か?」
「その子、嫌がってるじゃないですか」
「そんなわけないだろ、なあ!」
 男は嫌がっている女の子に強引に肩を組み、アピールしてくる。
 これだから、こういう人間のクズは嫌いなんだ。
「助けてくださいっ!」
 震える身体をこらえて、女の子は喉の奥から声を絞り出す。
「ほら、嫌がってるぞ」
「違う違う、こいつはシャイなだけなんだよ」
 ダメだ、こいつとは会話にならない。
 説得する気が少しはあったが、もう失せた。
 もう我慢しない。
 「説得するつもりだったがやはりクズには無駄だったようだな」
 「この野郎っ、言わせておけばいい気になりやがって。痛い目にあいたいようだな。やれ!お前ら!!」
 男の指示を受け、2人が襲いかかってくる。
 どうやら、手下のようだ。
 明らかに喧嘩慣れしていそうな雰囲気の男が2人。
 一方オレは、喧嘩などしたことはないし、武道の経験があるわけでもない。
 普通なら、簡単にやられてしまうだろう。
 ------そう、普通なら。
 オレは、顔面めがけてふるってくる右拳を素早い動きで避けると、腹部めがけて拳を繰り出す。
 みぞおちに、拳がめり込む。
「グッ!!!、オエェッ!!」
 男が腹部を押さえてうずくまり、嘔吐した。
 しはらくはまともに動かないだろう。
「野郎っ!!」
 もう1人の男が、横腹めがけて回し蹴りを繰り出す。
 オレはその回し蹴りを、左ひじと左ひざで勢いよく挟み込む。
「ゔぐぅぅぁあああっっ!!」
 相手の足は、ひじとひざで挟み込まれ、骨が折れる。
 男は、自分の足を抱え込み、倒れ込んだ。
 その足では痛くて歩けないだろう。
 オレは、2人を一瞬で片付けると、リーダー格の男に近づいた。
「テメェ、いい気になってんじゃねえぞ!!」
男は冷静さを失い、襲いかかってくる。
オレは、拳の威力を正面から受け止め、拳を握る指に力を入れ、握力で拳を握りしめる。
「ぐっ、ゔゎあぁぁぁぁぁぁ」
 両膝から崩れ落ち、必死にオレの腕を離そうとしてくるが離せない。
 オレは、目の前で跪き、蹴りやすい位置にある顔面に、蹴りを叩き込んだ。
「がっ!!!」
 男は、蹴りの衝撃で吹っ飛び、気絶した。
「早く!ここから逃げようっ!!」
 オレは、女の子にそう声をかけると、腕を掴み、走り出し、その場を後にした。
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「はぁ、はぁ、助けていただいて、本当にありがとうございます」
 公園が見えなくなる所まで走ると、そう声をかけられた。
「別にいいって。ああいう連中が嫌いなだけだから」
「そんなわけには。さっきは本当に助かりました!何かお礼をしたいんですが・・・」
「じゃあ、1つお願いを聞いてもらってもいいかな?」
「お願い、ですか?」
「さっき起こったことを周りの人に言わないでもらえるかな。正当防衛とはいえ、暴力をふるったのを知られたくないから」
「そんなことでいいんでしたら、喜んで受けますけど。本当にそんな事でいいんですか?」
「別に大したことはしてないからね。それじゃオレはこれで」
「あ、待ってください。せめてお名前だけても」
「いいって、いいって」
 そんなやりとりをした後、オレは学校に向かって歩き出した。
 ・・・そう、本当にただ自分の為、オレがああいう連中が嫌いで許せないから助けただけで、あの子を助けたい気持ちは二の次だった。
 そう、オレは決めたんだ。
 ・・・そのときは、オレは絶対・・・・・・
 自分の気持ちに正直に生きようと。
 もう自分の気持ちを抑え続けない。自分を殺さない。妥協しない。諦めない。
 理屈で考えず、自分の心の声に従って生きようと・・・。
 周りの状況に流されず、自分を見失わないで生きようと・・・。
そう、、、決めたんだ。
 
 
 
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