平穏を求める実力者

月田優魔

警戒

 特別ゲームの結果が発表された次の日の朝、オレはいつも通りの時間に登校した。
 教室に入ると空気が違うのを感じる。
 オレは席に座る。


「なんか変じゃないか?」


 後ろの席の翔太に声をかける。


「優希もそう思う?」


 翔太も気付いていたようでそう答える。


「ああ。なんか空気が張り詰めてる感じがする」


「きっと昨日のことだと思うよ」


「昨日のことって?」


「この教室の中に密かに145万円も手に入れたひとがいるんだから注意深くもなると思うよ」


 昨日のことがまだ尾を引いているようだ。


「そっか。そうだよな」


 一応共感しておく。オレだけ犯人で周りと違うから空気の違いの原因がわからなかった、とバレるわけにはいかない。
 オレは前を向き直り、しゃべっている川瀬や天羽たちのもとへ向かう。


「あ、月田くん。昨日は先に帰ったけどどうかしたの?」


 天羽がこちらに気づき声をかけてきた。


「ちょっと用事があってさ」


「どうせくだらない用事でしょ」


 いつも通りの川瀬の返しが飛んでくる。


「まったく失敬だな。それより教室が変じゃないか?」


「そう。今そのことについて川瀬さんと話してたんだよ。四組の教室がギスギスしてる。それに見て」


 天羽が視線を向ける方を見てみると、おそらく他クラスであろう人がこちらを観察している。


「他のクラスの人も四組が気になるみたいでこっちを覗いてるんだ」


「こっちが知りたいぐらいなのに、私たちを観察しないでもらいたいものね」


 川瀬がため息をつく。


「よぉ、ここが四組か」


 突然知らない男が教室の中に入ってくる。
 着崩して制服を着ており、明らかに不良だ。取り巻きが三人程いる。


「何か用かな?」


 天羽が先陣きって話しかける。


「俺は三組の御堂隆也みどうたかや。別に用ってほどじゃねぇ。ちょっと四組の連中を見にきただけだ」


 そう言うと教室の中をぐるっと一周見回してニヤッと笑う。


「この中にいるんだろ、犯人さんよ。必ずテメェを見つけ出してやるからな」


 大声で教室中に聞こえるように言うと、そのままどこかへ行ってしまった。


「なんだったのかしらね」


「さぁな」


 オレも川瀬も何がしたかったのかわからなかった。















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