平穏を求める実力者

月田優魔

犯人

 特別ゲームが始まって二日の朝6時、オレは学校に来ていた。


「おはよう川瀬」


「…………」


 無視ですか。


「おはよう月田くん」


「おはよう天羽。誰か来たか?」


「いや、まだ俺たち以外誰も来てないみたいだよ」


 オレ達は教室に入らず、廊下の陰に隠れて教室に入る人を監視していた。


「ちっ。来るなら早く来やがれってんだ」


「落ち着けって健人。待ち伏せは根性だぜ」


 中島に藤原も来ている。どうやら、よほど犯人が気になるようだ。


「月田くん。あなたも突っ立ってないで隠れなさい」


 ようやく喋ったかと思ったら、命令される。
 オレはおとなしく隠れて様子をうかがう。
 しかし、なかなか人が来る気配がない。


「もしかしたら来ないかもな」


 オレがボソッと呟くと中島が反応する。


「はぁ!?犯人来るんじゃねぇのかよ!来るって言うからこんな朝早くに無理して来たっつうのに!」


「落ち着いて。来る可能性があるっていうだけで張り込む価値はあるよ。俺たちのクラスで誰も犯人を見つけなかったら賞金が1円も貰えないんだから」


 天羽が中島をなだめる。
 お金は誰だって欲しい。そう、人は金のために動く奴隷なのだ。金のため、生きるために仕事をし、毎日クタクタに疲れて帰ってくる。それが、ゲームに勝つだけで大金がもらえるなら、みんなこぞって参加するだろう。


 すると、四組の教室に人影が近づく。


「マジかよ」


 オレは声を上げた。今教室に入っていったのは、なんと佐竹だった。


「あいつが犯人か!問い詰めてやっ!?」


 中島が教室に入ろうとするのを川瀬が制服の襟を引っ張って止める。


「何すんだよっ!」


「やめておきなさい。どうせ探偵だと言うだけよ」


 オレ達はそーっと廊下を歩きドアから教室を覗き込む。
 佐竹がボタンの前に立っている。


 するとーーーーー佐竹がボタンを押した。


「まさか佐竹が犯人だったなんて」


「あの子、あなたの知り合い?」


「あぁ、友達だ」


 友達と言いきるのは、少し気恥ずかしかった。


「とりあえず、犯人候補は見つけたし頃合いを見て俺たちも教室に入ろうか」


 オレ達は外で時間を潰してから、みんなが登校する時間に合わせて教室に入った。



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