平穏を求める実力者
犯人
次の日の朝、教室に入ると佐竹と樟葉が一緒にいた。
「おはよう、もう大丈夫か?」
昨日のことを少し訊いてみる。
「おはよう月田さん。うん、もう大丈夫だよ」
「あの後、美春は私の部屋に泊まっていったの。一人にしておくと私が不安だったから」
樟葉がその後のアフターケアをしてくれていたようだ。
佐竹はいつも通りになっていた。
オレは自分の席に座る。
「優希、昨日はなにがあったの?」
席に座るとすぐに後ろから声をかけられる。
昨日いきなりいなくなったんだから気になっても不思議じゃない。
「佐竹がまた虐められてたみたいで助けに行ってたんだ」
佐竹と聞いても誰かわかっていない様子の翔太。
「そういえば佐竹のこと知らなかったな。公園で絡まれてたあの子の名前だよ。佐竹美春っていうんだ」
「そうだったんだね。それにしてもよく絡まれる子だね。何か理由があるんじゃないの?」
翔太も疑問に思ったようでオレに尋ねる。
確かに佐竹は気弱そうで虐めの標的になりやすい。けど学校の外でも中でも狙われて、虐められるのは何か理由があるはずだ。
それに、空き地のときに絡んでいたやつと、前に朝登校するときに尾行して狙っていたやつは別人だった。
こんなたくさんの人に狙われるだろうか。
おそらく裏で糸を引いている奴がいるはずだ。
「そうだな、もしかしたら何か理由があるのかもな」
オレははっきりとした答えは返さなかった。
休み時間になり、オレは佐竹の席に向かう。
「なぁ佐竹、色んな教室をまわってみないか?」
「…どういうこと?」
訳がわからずオレに尋ねる。
「マスクしていたとはいえ、顔は見てるんだから教室を回って色んな人の顔を見れば誰だったのかわかるかもしれない。誰かわかればやめさせることができる」
「そういうことだったんだね。…ちょっと怖いけど、でも月田さんとだったら大丈夫な気がする…」
「私も行くね」
樟葉が横から割り込んで話に入ってきた。
「私も一応顔見てるし、それに二人だけだったらなんか心配だから」
確かにオレ一人だったら頼りないかもしれないな。樟葉もいてくれたほうが佐竹が安心するだろう。
しかし、この言葉は別の意味にも受け取れる。オレと佐竹を二人きりにするとオレが佐竹に何かするんじゃないか、という意味での心配だ。
オレ、そんなに信用されてないか?
まぁ、今はどっちでもいいか。
「わかった、じゃあ一緒に行こう」
オレ達は教室を出て隣のクラスに向かう。
佐竹はオレの背中の陰に隠れてついてきている。
「どうだ?分かりそうか?」
オレは後ろの佐竹に訊いてみる。
「……わからない…。あの時は怖くて顔を覚える余裕なんてなかったから…」
「まだ最初のクラスだしな。一応全部のクラスをまわってみよう」
オレ達はクラスを一つずつ見てまわった。
上級生の可能性もあるから、上の学年のクラスもまわる。
全部のクラスを見終わったところで佐竹に訊いてみる。
「どうだ?何かわかったか?」
「ごめんなさい、分からなかった…」
「樟葉は?」
「私も同じ。誰なのか分からなかったよ」
どちらも犯人は分からなかったようだ。
「無理もないか、マスクしてたんだもんな。悪かった、変なことに付き合わせて」
「そ、そんなことないよ!もともと私の問題なのに力を貸してくれて…。私、すごく嬉しいよ」
巻き込んでるのは私だよ、と佐竹が付け加える。
「月田くんが謝る必要はないと思うな」
樟葉もそんな風にに言ってくれる。
「じゃあ、教室に戻ろうか」
オレ達は教室に戻る。
オレが佐竹を連れて教室をまわったのには別の意図があった。
犯人を見つけるという目的は変わらないが、佐竹が見つけるのではなくオレが見つけるため。
オレは教室をまわりながら周りから向けられる視線に注意していた。佐竹を虐めたやつなら佐竹を見る視線に違和感が出るはずだからだ。
だが、オレは異質な視線を感じとる。
関係ないやつとも、虐めたやつとも違う視線。
「ねぇ、月田くんは何か気づいた?」
樟葉がオレに尋ねる。
「いや、なにも分からなかった」
その視線の持ち主はおそらくこの虐めの裏で糸を引いているやつに他ならない。
「そっか、何か気づいたまず私に教えてね」
そうか、お前だったのか。
「おはよう、もう大丈夫か?」
昨日のことを少し訊いてみる。
「おはよう月田さん。うん、もう大丈夫だよ」
「あの後、美春は私の部屋に泊まっていったの。一人にしておくと私が不安だったから」
樟葉がその後のアフターケアをしてくれていたようだ。
佐竹はいつも通りになっていた。
オレは自分の席に座る。
「優希、昨日はなにがあったの?」
席に座るとすぐに後ろから声をかけられる。
昨日いきなりいなくなったんだから気になっても不思議じゃない。
「佐竹がまた虐められてたみたいで助けに行ってたんだ」
佐竹と聞いても誰かわかっていない様子の翔太。
「そういえば佐竹のこと知らなかったな。公園で絡まれてたあの子の名前だよ。佐竹美春っていうんだ」
「そうだったんだね。それにしてもよく絡まれる子だね。何か理由があるんじゃないの?」
翔太も疑問に思ったようでオレに尋ねる。
確かに佐竹は気弱そうで虐めの標的になりやすい。けど学校の外でも中でも狙われて、虐められるのは何か理由があるはずだ。
それに、空き地のときに絡んでいたやつと、前に朝登校するときに尾行して狙っていたやつは別人だった。
こんなたくさんの人に狙われるだろうか。
おそらく裏で糸を引いている奴がいるはずだ。
「そうだな、もしかしたら何か理由があるのかもな」
オレははっきりとした答えは返さなかった。
休み時間になり、オレは佐竹の席に向かう。
「なぁ佐竹、色んな教室をまわってみないか?」
「…どういうこと?」
訳がわからずオレに尋ねる。
「マスクしていたとはいえ、顔は見てるんだから教室を回って色んな人の顔を見れば誰だったのかわかるかもしれない。誰かわかればやめさせることができる」
「そういうことだったんだね。…ちょっと怖いけど、でも月田さんとだったら大丈夫な気がする…」
「私も行くね」
樟葉が横から割り込んで話に入ってきた。
「私も一応顔見てるし、それに二人だけだったらなんか心配だから」
確かにオレ一人だったら頼りないかもしれないな。樟葉もいてくれたほうが佐竹が安心するだろう。
しかし、この言葉は別の意味にも受け取れる。オレと佐竹を二人きりにするとオレが佐竹に何かするんじゃないか、という意味での心配だ。
オレ、そんなに信用されてないか?
まぁ、今はどっちでもいいか。
「わかった、じゃあ一緒に行こう」
オレ達は教室を出て隣のクラスに向かう。
佐竹はオレの背中の陰に隠れてついてきている。
「どうだ?分かりそうか?」
オレは後ろの佐竹に訊いてみる。
「……わからない…。あの時は怖くて顔を覚える余裕なんてなかったから…」
「まだ最初のクラスだしな。一応全部のクラスをまわってみよう」
オレ達はクラスを一つずつ見てまわった。
上級生の可能性もあるから、上の学年のクラスもまわる。
全部のクラスを見終わったところで佐竹に訊いてみる。
「どうだ?何かわかったか?」
「ごめんなさい、分からなかった…」
「樟葉は?」
「私も同じ。誰なのか分からなかったよ」
どちらも犯人は分からなかったようだ。
「無理もないか、マスクしてたんだもんな。悪かった、変なことに付き合わせて」
「そ、そんなことないよ!もともと私の問題なのに力を貸してくれて…。私、すごく嬉しいよ」
巻き込んでるのは私だよ、と佐竹が付け加える。
「月田くんが謝る必要はないと思うな」
樟葉もそんな風にに言ってくれる。
「じゃあ、教室に戻ろうか」
オレ達は教室に戻る。
オレが佐竹を連れて教室をまわったのには別の意図があった。
犯人を見つけるという目的は変わらないが、佐竹が見つけるのではなくオレが見つけるため。
オレは教室をまわりながら周りから向けられる視線に注意していた。佐竹を虐めたやつなら佐竹を見る視線に違和感が出るはずだからだ。
だが、オレは異質な視線を感じとる。
関係ないやつとも、虐めたやつとも違う視線。
「ねぇ、月田くんは何か気づいた?」
樟葉がオレに尋ねる。
「いや、なにも分からなかった」
その視線の持ち主はおそらくこの虐めの裏で糸を引いているやつに他ならない。
「そっか、何か気づいたまず私に教えてね」
そうか、お前だったのか。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
32
-
-
516
-
-
2813
-
-
29
-
-
104
-
-
1168
-
-
1978
-
-
75
-
-
127
コメント