平穏を求める実力者
秘密
チャイムが鳴り、先生と思われる人が教室に入ってくる。
教壇に立ち、教室をぐるりと一周見た後自己紹介を始める。
「私が今日から君たちの担任をすることになった榎本遥だ、よろしくな。担当教科は数学を教える」
サバサバした口調の女の先生だった。
一瞬オレと目があったような気がしたが気のせいか…
まあ、目が合うことぐらいあるだろう。
そのまま数学の授業を始めだした。
退屈な授業を終え、放課後になる。
オレは思い切って宮崎くんに声をかけることにした。
「なぁ宮崎、一緒に帰らない?」
「うん、いいよ。僕も誘おうと思ってたんだ」
同じ気持ちだったことが少し嬉しかった。
快く承諾してくれて、オレ達は帰り支度をする。
帰り支度も終わり帰ろうと廊下に出ると榎本先生に声をかけられる。
「月田、悪いが今から生活指導室に来てくれ」
急に話しかけられて、しかも生活指導室。
オレは正直訳がわからなかった。
言うことだけ言うと、そのまま榎本先生は歩いて行ってしまった。
「月田くん、何かしたの?」
宮崎が不安そうに尋ねてくる。
「いや、何もしてないはずだけど…。ちょっと行ってくるよ」
思い当たる節がなくそう答えるしかなかった。
「わかった、じゃあ靴箱のところで待ってるね」
「ありがとう、なるべく早く済ませるよ」
そう言うと、オレは生活指導室に向かった。
生活指導室に入ると中には榎本先生がいた。
ドアを閉めると外の音が全く聞こえなくなる。
どうやら、この部屋は防音設備になっているようだ。
「よくきた月田、まぁ座れ」
そう促されてオレはイスに座る。
先生の顔は真剣な面持ちだった。
「できれば短めにお願いします。友達を待たせているので」
そう言うと、先生は少し驚いた表情を見せる。
「ほぅ、もう友達ができたのか。周囲に馴染もうと努力しているようだな」
しかし、再び真剣な面持ちに変わる。
「率直に聞かせてもらう。…おまえ、何者なんだ?」
何を言っているんだこの人は?
何者って聞かれても、逆になんて答えたらいいか聞き返したくなるような質問の仕方だ。
「何者って、なんでそんなこと聞くんですか?」
そんな質問をする理由を尋ねてみる。
「この希望ヶ丘高校は入学する本人の願書があれば入学できる特殊な学校だ。生徒たちの中には特殊な事情を持つものもいるからな。だが、一応入学させる以上最低限の個人情報は調べる。しかし、おまえの場合、戸籍不明、家族構成不明、親族不明、経歴不明とパーソナルデータが何一つ判明しなかった」
なるほど、それでオレ本人に直接聞いてきたということか。
「こんな生徒は初めてだ。だからもう一度訊かせてもらいたい。おまえは何者なんだ?」
さて、なんて答えるか。
オレはあながち嘘でもない答えを返しておくことにした。
「小さい頃親に捨てられて、それで今まで一人で生きてきたんです。なにもかも不明なのはだからじゃないでしょうか」
けれど、榎本先生は納得していない様子だった。
「本当にそうなのか?」
覗きこむような視線でオレを見つめる。
オレはそれを正面から受け止める。
「はい、嘘は言っていません」
嘘はついていないが、正確に言えば少し違う。
だが、それはこの場ではどうでもいいこと。
全てを話すつもりはない。
「…分かった。そういうことにしておいてやる」
訝しげな視線で見つめてくるが、オレが無表情を貫いていたため諦めたようだ。
「もういいですか?あんまり長話をしている余裕もないので」
オレは待たせている友達のことが気になっていた。
できれば早く帰りたい。
「もう一ついいか?入試試験だが、この通り5教科全てが77点だった。これは偶然か?それともわざとか?」
解答用紙を机に並べてオレを見つめる。
「すごいですね、こんなことがあるなんて。オレも驚きました」
オレの様子を見ていた榎本先生は、ため息をつき、なにか諦めたような表情をしていた。
「…わかった、もう行っていいぞ」
「失礼しました」
オレはそそくさと退散し部屋を出た。
教壇に立ち、教室をぐるりと一周見た後自己紹介を始める。
「私が今日から君たちの担任をすることになった榎本遥だ、よろしくな。担当教科は数学を教える」
サバサバした口調の女の先生だった。
一瞬オレと目があったような気がしたが気のせいか…
まあ、目が合うことぐらいあるだろう。
そのまま数学の授業を始めだした。
退屈な授業を終え、放課後になる。
オレは思い切って宮崎くんに声をかけることにした。
「なぁ宮崎、一緒に帰らない?」
「うん、いいよ。僕も誘おうと思ってたんだ」
同じ気持ちだったことが少し嬉しかった。
快く承諾してくれて、オレ達は帰り支度をする。
帰り支度も終わり帰ろうと廊下に出ると榎本先生に声をかけられる。
「月田、悪いが今から生活指導室に来てくれ」
急に話しかけられて、しかも生活指導室。
オレは正直訳がわからなかった。
言うことだけ言うと、そのまま榎本先生は歩いて行ってしまった。
「月田くん、何かしたの?」
宮崎が不安そうに尋ねてくる。
「いや、何もしてないはずだけど…。ちょっと行ってくるよ」
思い当たる節がなくそう答えるしかなかった。
「わかった、じゃあ靴箱のところで待ってるね」
「ありがとう、なるべく早く済ませるよ」
そう言うと、オレは生活指導室に向かった。
生活指導室に入ると中には榎本先生がいた。
ドアを閉めると外の音が全く聞こえなくなる。
どうやら、この部屋は防音設備になっているようだ。
「よくきた月田、まぁ座れ」
そう促されてオレはイスに座る。
先生の顔は真剣な面持ちだった。
「できれば短めにお願いします。友達を待たせているので」
そう言うと、先生は少し驚いた表情を見せる。
「ほぅ、もう友達ができたのか。周囲に馴染もうと努力しているようだな」
しかし、再び真剣な面持ちに変わる。
「率直に聞かせてもらう。…おまえ、何者なんだ?」
何を言っているんだこの人は?
何者って聞かれても、逆になんて答えたらいいか聞き返したくなるような質問の仕方だ。
「何者って、なんでそんなこと聞くんですか?」
そんな質問をする理由を尋ねてみる。
「この希望ヶ丘高校は入学する本人の願書があれば入学できる特殊な学校だ。生徒たちの中には特殊な事情を持つものもいるからな。だが、一応入学させる以上最低限の個人情報は調べる。しかし、おまえの場合、戸籍不明、家族構成不明、親族不明、経歴不明とパーソナルデータが何一つ判明しなかった」
なるほど、それでオレ本人に直接聞いてきたということか。
「こんな生徒は初めてだ。だからもう一度訊かせてもらいたい。おまえは何者なんだ?」
さて、なんて答えるか。
オレはあながち嘘でもない答えを返しておくことにした。
「小さい頃親に捨てられて、それで今まで一人で生きてきたんです。なにもかも不明なのはだからじゃないでしょうか」
けれど、榎本先生は納得していない様子だった。
「本当にそうなのか?」
覗きこむような視線でオレを見つめる。
オレはそれを正面から受け止める。
「はい、嘘は言っていません」
嘘はついていないが、正確に言えば少し違う。
だが、それはこの場ではどうでもいいこと。
全てを話すつもりはない。
「…分かった。そういうことにしておいてやる」
訝しげな視線で見つめてくるが、オレが無表情を貫いていたため諦めたようだ。
「もういいですか?あんまり長話をしている余裕もないので」
オレは待たせている友達のことが気になっていた。
できれば早く帰りたい。
「もう一ついいか?入試試験だが、この通り5教科全てが77点だった。これは偶然か?それともわざとか?」
解答用紙を机に並べてオレを見つめる。
「すごいですね、こんなことがあるなんて。オレも驚きました」
オレの様子を見ていた榎本先生は、ため息をつき、なにか諦めたような表情をしていた。
「…わかった、もう行っていいぞ」
「失礼しました」
オレはそそくさと退散し部屋を出た。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
93
-
-
75
-
-
3087
-
-
55
-
-
6
-
-
2
-
-
439
-
-
2813
-
-
49989
コメント