平穏を求める実力者

月田優魔

初めての友達

 絡まれていた佐竹を助けた次の日の朝、オレは昨日と同じように学校へ向かう。
 昨日あんなことがあったせいか、気になって公園の横を通って学校へ向かう。
 偶然にも同じことを思っている人がいたようだ。
 公園の近くの道に学校へ向かう佐竹を見つける。


「あ………?」


 オレは声をかけようとすると、佐竹の後ろから近づく妙な人影が目に入る。
 かなり早く歩いているようで佐竹に近づいていく。
 もしかしたら佐竹を狙っているのかもしれない。


「おーい、おはよう佐竹」


 オレは急いで声をかける。
 佐竹はオレの存在に気付き、驚きの表情になる。


「あ、あなたは昨日の………」


 オレは走って佐竹の隣に並ぶ。
 こうしてオレがいれば、後ろの男が手を出してくることはないだろう。


「なぁ、こっちの道から行かないか?美味しいたい焼き屋があるんだ」


 敷地内はとても広くて色んな店がある。
 オレは佐竹に気づかれないように人が多い道に誘導する。
 後ろの男の存在を教えて、震えて動けなくなられたりしたら大変だ。
 今は佐竹に気づかれないように男から引き離す。


「はい、分かりました」


 佐竹の了承を得るとオレ達は、人通りの多いほうへ歩き出す。












 たい焼きを食べながらオレ達は歩いていた。
 この道はまっすぐ歩けば学校に着く大通り。
 登校する時間なので、たくさんの生徒が歩いている。
 オレはさりげなく後ろを見る。
 ひと安心、そう思っていると、佐竹に声をかけられる。


「あの、昨日は本当にありがとうございました」


「いやいいよ。別に大したことないしたわけじゃないし」


 謙遜ではなく本当に大したことはしていない。
 ただ声をかけただけだ。


「そんなことないです。すごく勇気のある方なんですね。素敵でした」


 女の子に素敵なんて言われると、なんだか照れくさいな。
 オレ達は学校の正門を抜ける。


「それじゃそろそろお別れだな。教室別々だし」


「そうですね。あの、本当にありがとうございました!」


 深々のお辞儀をした後、佐竹は走ってくつ箱の方へ行ってしまった。
 オレもくつをはきかえ教室に向かう。
 教室に入ると、オレは一瞬立ち尽くす。


「あれ?」


 見るとオレの教室の中に佐竹がいる。


「あ、月田さんじゃないですか。なんだ、同じクラスだったんですね」


 クラスメイトだったのか。
 同じクラスの人を全員覚えていたわけじゃないから気づかなかった。


「ん?美春、誰この人。知り合い?」


 佐竹の隣に立っている女の子に声をかけられる。


「そうだよ柚木ゆずきちゃん。昨日困ってるところを助けてくれたんだよ」


 佐竹が柚木と呼んでいる子にオレのことを説明してくれる。


「ありがとう、美春を助けてくれて。友達としてお礼をいわせてもらうね。私は樟葉柚木くずのはゆずき。よろしくね、月田くん」


 樟葉はオレに近づいてきてお礼を言う。
 短めの髪に薄い茶髪がかった色。顔も整っていて、第一印象はかわいい女の子、という感じだ。


「よろしく、月田優希です」


 つい緊張して、かしこまって挨拶してしまった。
 オレはそのまま自分の席へ向かう。


「おはよう優希。今日は遅かったね」


 座ってすぐに後ろの翔太から挨拶される。


「まぁ、ちょっとたい焼き買いに寄ったら遅くなってな」


 本当は妙な男から逃げる為だが翔太を不安にさせるわけにはいかない。
 今朝の男のことは誰にも話さず秘密にしておこう。


「朝から買い食いなんて、健康に悪いよ」


 そんな風に翔太に軽く叱られる。
 買い食いしたくてしたわけじゃないんだがな。


「次から気をつけるよ」


 秘密なので軽く流しておく。


「それより翔太、携帯の番号交換しないか?」


 オレは昨日から思っていたことを思い切って言ってみた。


「いいよ。友達なんだし交換しようか」


 友達と認められたようで、そのことが少し嬉しかった。
 初めてできた友達だ。
 オレ達は番号を交換しあった。





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