ツイートピア

ナガハシ

ツイートピア1266~1283



(1266)
 ヨコ「ひょえ!?」 ジェネ「なに!?」 コウチョウ「うわわ!」 アフレル「どういうこと!」 ルイ「え、ええー!!」 レイタ「シャベッタァァア?!」 リン「ノルちゃん!」 カズノリ「こ、このタイミングで!?」 ヤマオ「………うんっ」 クサヨシ「なにごと?!」 ワク「ねえちゃあああーん!」 ミギノウエ「時は来た」


(1267)
 ノルコ「トイレにTL置くなんて絶対ヤダヤダヤダー!! トイレ覗いていい法律なんてキモチ悪いよ! 中から外が見えちゃうなんて最悪! 絶対ダメだよ! おかしくなっちゃう! みんな動物になっちゃうよ! ロクなことにならないよお! ヒッグ、グスッ、ウエッ、オエェーッ、ゲッホゲッホ」


(1268)
 ノルコ「やだよぉぉおお……、もう一生トイレに入れなくなっちゃうよぉぉおお……。ひっぐ、ぐすっ、ずりゅ」 もう泣き落としもいいところだった。でも良く考えてみればノルコは小学5年生。はっきり言ってまだ子供なのだ。子供であるのなら、やはり子供らしくだだをこねるのが、最も合理的な自己主張だった。


(1269)
 セイ「……突然つぶやいたかと思ったら、なんだい?」 セイをふくめ、議事堂にいた全員が……いや、トイレ法に注目していた全国民が、ノルコのツイートを目にした。そして、多くの者が何かに目覚めた。バイオツイッターさえあれば何でも解決できると、我々はいつから思い込んでいたのだろう……と。


(1270)
 セイ「ははっ……いまさらそんな駄々をこねてもダメだよノルコ君。もう僕たちは何度も議論をかさねて、トイレTLは世の中を快適にするだろう結論付けたんだ、そんなに世の中は……甘くない……んだ……ぐぐ」 セイは言いながら感じ取っていた。国会の空気が、ノルコのツイートで一変してしまったことを。


(1271)
 セイ「こんな……こんなことがあってはならない……。僕が、僕たちが、いったいどれだけ時間をかけてここまで来たと思っているんだ」 終始穏やかだったセイの表情が、鬼の形相へと変貌していく。セイ「ここでトイレ法が否決されたらどうなるんだ! 僕たちトイレ被害者の思いはどうなるんだ!」


(1272)
 セイ「いまこうしている間にも、学校でトイレを覗かれている子達がいる。我慢している子達がいる。公園やスーパーのトイレで暴力をふるわれている人がいる! 悪い取引をしている輩がいる! それを黙って見てていいのか! 対策をとるべきなんじゃないか!? 違いますか?! みなさん!」


(1273)
 ノルコ「どうしてそれをツイッターでやるの!?」 セイ「他にどんな手がある!」 ノルコ「何かあるはずだよ! ツイッター頼らなくても出来ることが! きっと!」 二人は全ての思いを吐ききった。涙で顔をぬらしたノルコと、なりふりかまわぬ形相のセイ。二人はしばしそのままにらみ合った。


(1274) 
 アナウンス【それではこれより、トイレ法案衆院議決国会の、決議投票を行います。議員のみなさまは順次投票を開始してください】 ノルコの視界に投票カードが表示された。白票と青票だ。ノルコは青票をドラッグし、投票箱にドロップした。ノルコ「……これで全部おわり」 そしてガックリとベッドに倒れこんだ。


(1275)
 クサヨシ「さあワク君。こっちも終わらせよう!」 ワク「オーイエス! ハイパー! トルネード!」 ガンバールのブースターに反物質が投入された。限界ギリギリの加速で、8本足のエイリアンのまわりをグルグルと旋回する! アフレル「反物質燃料、残り15秒!」 ワク「ウリァァァァアアア!」


(1276)
 強力な旋回Gに、ガンバールの節々が悲鳴を上げる。そしてエイリアンは、自ら振り回した足によってグルグル巻きになっていく! クサヨシ「いける!」 イイズカ「ワク君! 敵を粉砕するのに必要なギリギリのパワーを算出した! チャンスは一回こっきりだ!」 ハッブル「しかも成功確率は0.23%なんだよ!」


(1277)
 敵の動きが完全にとまった。ゴムまりのように丸まったエイリアンの下方へと、ワクはガンバールを旋回させる。ワクはいま、ガンバールと完全に一体化していた。機体のどこにどれだけの負荷がかかっているか、ワクにはまるで自分の体のことのようにわかっていたのだ。


(1278)
 そして、ガンバールのどこが一番硬いかも、ワクは完璧に知っていた。いままで数え切れないほど遊んだ、ガンバールの対戦ゲームのなかで。ワク「フォーム! チェンジ!」 クサヨシ「む! ワク君! なんだその技は!?」 ワクはガンバールの体を腰から折りたたむと、お尻を突き出してエイリアンの方に向けた。


(1279)
 ワク「フルブースト!」 残りの反物質燃料を一斉投入。すさまじい閃光とともに爆発的な加速を得て、そのままケツから突っ込んでいく。アフレル「ヒップアタック?!」 ――ダセェエエエ!!-―悲鳴にもにた絶叫が、戦いを見守る全ての者の口から飛び出した。ワク「ヴェエエエエエイ!!」


(1280)
 ガンバールはタコ型エイリアンに突っ込むと、高密度の荷電粒子に阻まれて、一瞬押し戻された。頭から突っ込んでいれば、この時の衝撃で、腕や頭が吹っ飛んでいただろう。しかし、もっとも装甲が厚いお尻ならば、その心配はない。アフレル「おおお! これはいける!」 クサヨシ「ワク君! あと一息だ!」


(1281)
 いけええええええーー!! 世界中の声援を受け、ガンバールは最後のジェットを噴出した。エイリアンの体の下方には、地表に到達するほどの、長い、きらめく噴流が描かれた。エイリアンの体がグングン押し上げられ、とうとう荷電粒子の防壁を突き抜けた。絶叫! 『ギャアアアアアアアアアアーーース!』


(1282)
 断末魔の咆哮を上げて、エイリアンは爆裂した。分厚い荷電粒子の膜の中から、夥しい光の体液をぶちまけて、見る見るうちにしぼんでゆく。そして最後は霧のような姿となり、霞んで消えていった。ワク「ハア……ハア……ハア」 アフレル「お、終わったの?」 クサヨシ「ああ、我々人類の勝利だ!」 その瞬間、世界が歓声につつまれた!


(1283)
 2100年7月16日(金)――この日が、二重に人類が救われた日であることは、遠い未来の人々の知るところとなる。しかし今を生きる人々にとっては、トイレ法という法案が否決されただけの一日であり、タコのCG映像をエイリアンに見立てた、ガンバールの模擬戦闘が行われただけの一日であった。





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