ツイートピア

ナガハシ

ツイートピア839~859



(839)
 クサヨシ「おおっ、それはいいアイデアだアフレル君!」 アフレル「え、そうですか?」 アフレルはガンバールの腕の試運転をしながら、昨夜の車の中で思いついたアイデアを伝えていた。クサヨシはやっぱり厨房にいて、ネギを刻んでいた。クサヨシ「なかなか大胆不敵なアイデアを思いつくじゃないか」


(840)
 アイデアというのは、純エネルギー生命体のエイリアンを発見する方法のことだ。光と一体化した彼らを発見することは、通常の方法では不可能なのだ。アフレルは昨夜のバーで見た2頭の馬から、アイデアの着想を得た。クサヨシ「言われてみればなるほど、生命体を認識できるのは生命体以外のなにものでもないわけだ」


(841)
 アフレルのアイデアは単純に言うと「バイオツイッターのネットワークをパッシブレーダとして使用する」というものだ。アフレル「はい、生命って、どこか生命自身にしか感じとることのできない『息吹』みたいなものを持っていると思ったんですよ」 その着想を、昨夜の馬の中に得たのだ。


(842)
 クサヨシ「さながら、われわれ自身の魂を受信機とするわけだな。いやはや、君も恐ろしいことを思いつく」 アフレル「そ、そうですか?」 クサヨシ「ああ。だってね君、その受信機は我々自身の心の実感であって、科学的に存在を証明できる代物ですらない。ある意味、科学への反逆、カルトと思われても仕方のない発想だ」


(843)
 クサヨシの言葉に、アフレルは冷や汗を流した。クサヨシ「しかしまあ、やってみる価値はある。科学は常にそれ自身を超克していくものだからね。それに、そのアイデアならすぐに実行できる」 アフレル「ええ?!」 クサヨシ「我々の技術力をなめてもらってはいけないな、2時間以内にプログラムを組み上げてみせよう」


(844)
 クサヨシは「すたたたんっ」と鮮やかにネギを刻み終えると、その場で割烹着を脱ぎ捨ててレーダーシステム開発室へと向かっていった。アフレル「ほへぇ……」 アフレルは鉄の腕をがっこんがっこん動かしながら嘆息した。イイヅカ「おーいアフレルもういいぞ、昼飯にしようぜ!」 ハッブル「腹ペコー」


(845)
 アフレル達は食堂へと向かうムーブウォークに足をかける。イイヅカ「なあアフレル、言いにくければ言わんでいいんだが、昨日のやたら長いログオフは一体なんだったんだ?」 アフレル「え? 気になる?」 イイヅカ「そりゃあな。殆ど半日ログオフしてたんだぜ?」 ハッブル「ファミリーとナニかあったん?」


(846)
 アフレル「いや、家族とはうまくやってるよ」 イイヅカ「ならいいんだが」 ハッブル「イインダガ」 そしてアフレルは少しためてからこう言った。アフレル「だって僕の奥さん超美人だしっ」 しばしポカーンとする二人。イイヅカ「こ、このやろぉ!」 ハッブル「やっぱりゼツリンだったんだな!?」 


(847)
 アフレルが職場で頭をグリグリされているころ、妻のヨコはリビングでテレビを見ていた。テレビ「本日の午前、呟音市近郊の山林で意識不明の状態の男性が発見されました。男性は洞窟の中に放置されていた箱の中から見つかりましたが、命に別状はないもようです。呟音市警察にて現在、身元の確認が進められています」


(848)
 ヨコ「あら、怖いわね。一体なにがあったのかしら?」 テレビ「それでは第一発見者のインタビューをご覧ください。クオ『は、箱の中に人が入っていて本当にビックリしたんだおっ、誰かの手によって隠されたような感じだったんだおっ。あ、カメラマンさん眠っちゃだめなんだおっ』」


(849)
 テレビ「ジェネ『なんというかこう、岩盤でフタをしてあったんです!』 クオ『そ、そうなんだおっ、結構重かったんだおっ。ちなみに僕たちはデート中だったんだおっおっお』」 ヨコはふぅむと唸りつつ、お茶を一口すすった。ヨコ「何はともあれ、怪我が無くてよかったわねー」 気がつけばテレビとお喋りしていたヨコだった。


(850)
 ヨコ「ふう……なんだか退屈」 ワクはガンバールフェスタに行っているし、ノルコは自室にこもって色んな人の意見に目を通しているらしい。ヨコも何か手伝ってあげたかったけど、何か聞かれたときに答えてあげる以上のことは出来ないのだった。ヨコ(あくまでも、ノルコが決めなきゃいけない問題なのよね……)


(851)
 ヨコ(そうだ! ホウ君は今なにをしているかしら!?) すっかりホウの友達になった気持ちでいる魔性の女ヨコは、チカコさんにリプライしてみた。チカコ「あら、ヨコさんこんにちは。ホウならさっき出掛けていきましたよ? なんだかとっても焦っているみたいだったんだけど、何かしらね?」


(852) 
 ヨコ「え、そうなんですか? お茶にでも招待しようかと思ったんですけど」 チカコ「うふふ、うちのホウを気に入ってもらえて何よりですわっ。ホウは午前にGPTLを見て気絶して、目を覚ましたかと思ったら飛び出て行ったんですよ」 ヨコ「まあ……それはちょっと気になりますねえ」 チカコ「ほんとにねえ」


(853) 
 チカコ「そうそう。今ですね、アップルパイ焼いてるんですよ? もしお暇でしたら食べにきませんこと?」 ヨコ「えっ、良いんでざますか? 我が家にも今ちょうど、良いお茶がございますのよ?」 チカコ「まあまあそれは! 是非と遊びにおいらしあそばせ。ホウもそのうち戻ってくるでしょう、おーほほほ」


(854)
 ヨコとチカコが貴族口調で優雅なティータイムを画策しているころ、ホウは近くの公園に向かって猛ダッシュしていた。ホウ「くっ……これは大変なことになりそうだ! GPTLが僕を裏切るなんて! 一体どういうことなんだ!」 GPTLが裏切った? それは一体どういう状況なのか?


(855)
 ホウはGPTLを見ることにより、大まかな未来の出来事を感じることが出来る。しかし、予想外の事件がおきたのだ。そう、呟音市近郊の山林で見つかった意識不明の人物のことである。ホウ「誰だ、一体誰なんだ。GPTLをかき乱しているやつは!」 ホウはGPTLのかく乱の根源が、近くの公園に現れることを感じていた。


(856)
 ホウは全体力を注ぎ込んだ猛ダッシュにより、3分で公園にたどり着いた。ホウ「はあはあ……」 何の変哲もない、ただの公園。ブランコがあって鉄棒があって砂場があってベンチがあってトイレがある。ホウ(どうやら、まだ来ていないようだ……ディッセスターレ) ホウはベンチに腰掛けて『その者』の訪れを待った。


(857)
 そのまま数分の時が経過した。まだ誰も来ない。木の上で小鳥がピィピィさえずっている。ホウ(……一体相手は誰だ……そして何が目的だ) ホウにわかっていることは唯一つ、正体不明の誰かが、人知れず人類の営みに干渉してきているということだ。その目的も、手段さえもわからない。


(858)
 ホウ(まさか……地球外文明の干渉?) どうにも人間の仕業ではなさそうだとホウは思う。今の人類の文明レベルでは到底不可能なことが起こっているのだ、と。地球外生命体……もとい、エイリアン。ホウ(なんて荒唐無稽な……むっ!) その時、公園の入り口に人影のようなものがよぎった。


(859) 
 ホウ(……あれは) 人影はそのまま公園の中に進入してきた。背の低い、小太りなシルエット。しかしその存在感は尋常ではない。切れ長にして眼光するどい双眸。驚異的にふくよかな福耳。ホウ(確か彼は、ノルコ君のクラスメートの……) カスガイ・ヤマオ――何故こんなところに? ホウの表情が、いっそう険しくなった。





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