ツイートピア
ツイートピア62~74
(62)
医者「ファイルが壊れている」 医者は出し抜けにそう言った。ヨコ「ええぇ!?」 ノルコは今、母の付き添いで病院に来ている。『壊れてる』という単語にノルコしたたかビビッたわけだが、何せ呟くことが出来ないのだった。ノルコ(どうなっちゃうんだろ……) 
(63)
ヨコ「な、治るんです?」 医者「再インストールすれば良い」 そう言って医者は、棚から小瓶を取り出した。そして中身をスプーンですくう。群青色のいかにも毒々しい液体だった。医者「はい、あーんして」 ノルコは小刻みに首を振った。どう見ても、マズそう。 
(64)
医者「注射にする?」 ノルコは速攻で口をあけた。注射は古代における拷問の一種である。もっての他だ。医者「じゃ、あーん」 ノルコ(?!~@¥☆!♪〒) なんとも例えようのない味がした。強いて言うなら、水色のビー玉を溶かしたような味? 
(65)
「ぎょくりっ」 ノルコはその怪しげな液体を一思いに飲み込んだ。横で母のヨコがおろおろしていた。医者「よしよし」 ヨコ「え、もう終わりです?」 医者「はい、10日ほどでファイルは修復されます……いや、2週間くらいだったかな?」 ノルコはとても心配だった。  
(66)
つぶやけなくなったノルコ。風邪で熱も出てきた。けな気で病弱な薄幸の美少女となったノルコは、自室のベッドに埋まっていた。ノルコ(うーん、うーん……) うなされ声すらTLに残らない。噂によると、人は100日つぶやかないと死んでしまうらしい……ブルブル。 
(67)
ルイ《ノル、無理しちゃだめだからね。明日はちゃんと休むんだよ? ノートは私がとっとくからさ》 友だちのルイからお見舞いDMが飛んできた。ノルコ(ありがとうルイちゃん、ついでに給食のミルメークも……) と返信しようとしたが出来なかった。ノルコ(歯がゆいわ!) 
(68)
《えっ、ほんとにツイートできなくなったの?》 《レイタのあんぽんたんが悪い!》 《ノルちゃんかわいそう……》 《100日もかからないって絶対!》 《つぶやけなくても元気だして!》 次々飛んでくるDM。しかし返信できない。たん的に言ってノルコは切なかった。 
(69)
ノルコは何が何でもツイートを返したくなった。「ぷぉ?」でも「うぇい!」でも良いからとにかく返したかった。ひとまず踏ん張ってみた。ノルコ(んー! んんー! いえやああー!) ノルコ「っとpu%;1:ヴぃ」 変なのが出た! みんな「無理しちゃだめー!!」×22リツイート。 
(70)
熱がさらに出てきたようだ。ノルコはTLを閉じた。「けふっ、けふっ」 咳は出る。しかしツイートにはならない。ノルコ(咳をしても……ノーツイート) 滅多に泣かないノルコも、流石にちょちょ切れそうになった。これが100日も続いたら、ホントに死んじゃうかもしれない。 
(71)
トントン――ノックの音。アフレル「はいるぞぉー、卵がゆだぞぉー」 ワクも父の側にいて心配そうにしていた。アフレル「あーんしてやるか?」 ノルコは首を横に振ってお椀とレンゲを受け取った。アフレル「大丈夫だぞ、すぐに良くなる」 そう言って父は娘の頭を撫でた。 
(72)
アフレル「父さんなぁ、もう少ししたら仕事がひと段落つくんだよ。それでな、ノルコの病気がよくなったらな、みんなで旅行でもしようと思ってるんだ。どこがいいかノルコも考えておいてくれよ」 そう言って再びノルコの頭を撫でて、父はサッと部屋を後にしたのだった。 
(73)
ノルコが『旅どんとcom』を調べていると、突然リプライが来た。レイタ「知ってるか? コーヒーはカフェインで牛乳はセロトニンだから、コーヒー牛乳飲みすぎるとオーバードーズ起こすんだぜ? 別名ゲリだぜ?」 なんのこっちゃ? ノルコは普通にスルーした。 
(74)
しかし何か気になって、ノルコはレイタのTLを訪問してみた。案の定、叩かれまくっていた。「お前何言ってんだ!」「諸悪の根源!」「お前のかあちゃんズンダモチ!」もしかしてレイタなりの贖罪なのか? レイタ「ちょっ、最後のヒデェ!」 そんなわけないか、寝よう寝よう。
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