ツイートピア
ツイートピア41~61
(41)
ノルコはお風呂に入ってパジャマに着替え、自室のベッドでゴロゴロしていた。ルイ「ノルの明日のアホ毛はね、きっと3本!」 ノルコ「そのアホ毛というのをやめなさい……」 時々クラスメートからリプライが飛んでくる。レイタ「おま! 風呂長が……」 即効ブロック。
(42)
ピヨッター「今日のシュウマイのうほほ」 机の上のひよこ型BOTのピヨッターがわけの分からないことをツイート。ノルコ「今日はとんだシュウマイだったぜ」 ピヨッター「とんだアフレルの糊が爆発」 ノルコはプッとふき出してしまった。ノルコ「はしたないわっ」 
(43)
ノルコは部屋TLを操作して三日分巻き戻した。三日前、友だちがノルの部屋に遊びに来たときの光景が再現される。ノルコ「あっ」 友だちのルイが床に落としたボッキーを、みんなに見られないようにコッソリ口に運んでいた。ノルコ「5秒ルール?!」  ノルコは速攻問い詰めた。
(44)
ルイ「だって、もったいないじゃないか……」 ノルコ「ちゃんと毎日掃除してるんだから。汚くなんかないんだから!」 ルイ「え? そういう理由で怒ってるのか?」 ルイを小一時間問い詰めた後、ノルコはコロコロで丹念に床を掃除した。ノルコ「10秒だって1分だって大丈夫なんだから!」 
(45)
いい加減じゅうたんがむしれてきたころ、母からDMが来た。ヨコ《よるほー》 ノルコ「あっ!」 そしてあわてて時計を見た。10時を回ろうとしていた。ノルコ「ねなきゃ!」 ノルコはベッドに飛び込むと、地球のみんなに向かって「おやすみー」とつぶやき、目を閉じた。
(46)
ピピピ……ピピピ……。朝の目覚まし時計がなる。ノルコはパッチリ目を開いて起き上がる。ノルコ「おはよ……う?」 自分の頭をさわってみたら、今日は寝癖がついていなくシットリしていた。窓の外からシトシトと雨音がきこえてくる。ノルコ「今日は雨なのか」
(47)
ノルコは朝ごはんを食べる前にトイレに行く派だ。ノルコ「TLがないことを確認……と」 そういって耳たぶをつまむ。トイレ内にTLを置くことは法律で禁止されているのだ。ノルコは確認を終えると便座に座った。ちなみに、けなげな美少女はウ〇コなんてしません。
(48)
食卓にて。ワク「マアム、ソイソースプリーズ!」 アフレル「おっ、ちょっと円安になった」 ノルコは厚焼き卵をご飯に埋めてギュウギュウ固めて、なんちゃって卵おにぎりにして食べるのが好き。ノルコ「うーん」 天気が悪いと何となく家の中が陰鬱だな、とノルコは思ったり。 
(49)
ノルコは今日も玄関の前でみんなを待つ。花柄傘クルクル。ワク「袈裟斬り! 袈裟斬り!」 弟は自分の傘(別名、聖剣シッツシュバルト)で雨を切ろうと頑張るもズブ濡れだった。ルイ「のーるー!」 友だちがやってきた。ルイ「むう、ノーアホ毛か」 ノルコはルイにチョップした。
(50)
ノルコ「あっ、またあの怪しい人」 校門の近くに真っ黒なレインコートを着た謎の男が立っていた。一同はリプライどころか足まで止めてしまった。男「雨……レイン……今日は重大なことが起きそうだぞ……。ビバーチェ!」 そして男はスキップしながら去っていった。ノルコ「なんなのかー?」 
(51)
ノルコ「はっくしゅ!」 算数の授業中くしゃみをしてしまった。ノルコ「ティッシュがないなう」 RT「ティッシュ RT「ティッシュ誰か RT「てぃしゅー RT「てぃしゅを誰に? RT「亭主をノルに RT「ノルの亭主? RT「どういうことなの? 
(52)
レイタ「なあ、なんで俺がノルの亭主なん?」 ノルコは問答無用でこぶしをみぞおちに叩き込んだ。レイタ「ぅふぐう!」 そして隣りのリンちゃんがくれたティッシュを受け取る。ノルコ「ありがとう、みんな!」 そして鼻をかんだ。あくまでもおしとやかに。ノルコ「ちーん」
(53)
次の授業もノルコの大好きな体育だ。みんなで跳び箱やらマットやらを用意する。ノルコ(なんか頭がボーっとするな……) ルイ「ノルコ顔赤いよ? 風邪ひいたんじゃないか?」 ノルコ「しかし体育は休みたくないなう」 体育館の屋根を叩く、雨の音が響いていた。
(54)
跳び箱が得意な子のグループは、台上前転の練習をしていた。レイタ「俺、兄ちゃんからすっげえ技教わったんだぜー!」といってレイタは台上宙返りをやってのけた。「うおぉぉ」 体育館中がその大技にどよめいた。ノルコはそれを見て、ムッとしてしまった。勝手なことをしては危険が危ないじゃないか。
(55)
ノルコ「先生やっていいって言ってないじゃない、怒られるよ?」 レイタ「なんだー? ひがみかー?」 ノルコ「違うもん! あのくらい私にも出来るし!」 レイタ「じゃ、やってみろよー」 ノルコ「やらないよ!」 そう言い捨てて、ノルコは跳び箱に向かう。 
(56)
ノルコ(宙返りくらい、出来るよ……) ノルコは助走の途中、ふとそう思ってしまった。ノルコ(ロイタ板を強くけって、体が浮いてから手を突けばいいだけなの) しかし、そんなことをする気はさらさらなかった。ノルコはただ台上前転をするだけのつもりだった。しかし……。
(57)
跳び箱が間近に迫っていた。ノルコはいつも通り飛ぼうと板に踏み込む。その時だった。ノルコ(んん?!) 頭の中がムズっとした。そして気がつけば板をかなり強く蹴ってしまっていた。体が予想以上に高く舞い上がった。ノルコ「うそ!」 あぶない! その場の誰もがそう思った。 
(58)
ノルコは前転とも前方宙返りともいえぬ、中途半端な姿勢で跳び箱に突っ込んだ。「キャアアアアー!」 ツイートではない本物の悲鳴が、場の空気をつんざいた。頭から突っ込んだノルコは台の上でバウンドし、そのままマットに向かって放りだされた。誰もが唖然とし、凍りついた。 
(59)
そしてノルコは気絶した。目を覚ました場所は保健室だった。保健医のジェネ先生がそばにいた。ノルコ(ううん……) ジェネ「気がついたのね」 先生は身を起こそうとしたノルコを制しつつ。ジェネ「頭を強く打って気を失ったのよ、まだ横になっていた方がいいわ」 ノルコは小さく頷いた。 
(60)
リジェネ「どこか痛むところは?」 ノルコは首を横にふる。特にどこも痛くなかった。リジェネ「そう、今は大丈夫でも後から症状が出るかもしれないから。あとで病院で検査するからね」 ノルコは再び、ただ黙って頷いた。その様子を見て、先生が不審げに首を傾けた。
(61)
ノルコはけして大人しい子ではない。先生もそれを知っている。そのノルコがまだ一言もツイートしていないのだ。リジェネ「もしかして……ちょっと、何かつぶやいてみてくれない?」 ノルコ「っ……ぅ……」 二人はみるみる青ざめた。ノルコは――つぶやけなくなった。
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