ガチ百合ハーレム戦記
通信、謎多き女騎士
「そうと決まれば、早速その方法を考えなきゃな」
「はい、道のりは険しゅうございます」
想い通じ合った二人は、高揚する気持ちを抑えつつ、再びテーブルについた。
今度は向かい合ってではなく、隣り合って。
リーンはひとまず、飲みかけだった紅茶をズッとすすって一息つく。
「ふうっ」
そしてまず、自分達がしようとしていたことを、アルメダに話した。
「俺たちは、国王のおっちゃんを、王座から引きずり下ろそうと考えていたんだ」
「はい、存じております」
「そのために、みんなであちこち調べまわってた。オレはちょっと予定通りにいかなくて、親方の農場で働くことになっちまってたけど」
「はい」
「それで……、そう、ことによっちゃオレは、国王をぶっ倒そうとさえ思ってたんだ」
リーンはアルメダの目をしかと見て言う。
「でも、アルメダはそんなの嫌だろう? 実のオヤジさんなんだからな」
「いいえ、リーン。必要とあらば、私はそれも厭わないのです」
「なにっ? そうなのか……!?」
アルメダは静かに頷くと、空中で手を振って魔法映写を表示させた。
「これは……」
一際大きく表示された魔法映写には、夥しい数の兵士達がエヴァーハルから出征していく光景が映し出されていた。
「魔物討伐……という名目で、各地に大量の兵士が送り込まれています。これは知っての通り、諸侯の叛乱を封じ込める目的で行われています」
それはつい先日、バルザーの口から告げられたことだった。
「お父様は、どこか事を急いているようなのです。一刻も早く、アルデシア大陸を取り囲む大防壁を築く……。そのことに、異様なまでに執着なさっているのです」
アルメダは、さらに手を振って新しい魔法映写を表示させる。
それには、役人達に尋問される男の姿が映っていた。
「親方……!」
それはリーンがニールとして働いていた農場の親方だった。
「農場の長は今、王都警備団の取調室にいます。そこには私の写真が飾られていますので、こうしてつぶさに様子を確認することができます」
「なんてこった、親方が犯人なわけがないんだ!」
アルメダは小さく頷いた。
「はい。このお方は無実です。ワインの貯蔵庫に鉛板を仕込んだのは、取り調べをしている役人の方です」
アルメダは親方の目の前にいる男を指差す。
その男は、親方を農場から連行していった役人の一人だった。
「くそっ! やっぱりこいつらだったのか!」
「はい、この役人は、どうやら宰相ゴーンから賄賂を掴まされて事に及んだようです」
「宰相だって?!」
それは、リーンに呪われた剣を渡した張本人。
「宰相が絡んでいるとなると、私には何もできません。彼は間違いなくお父様の指示を受けて動いているはずだからです。私がお父様のすることに口を挟むことは、一切許されていません」
「なんてこった、想像以上に込み入った話になってきたぜ」
「宰相ゴーンが、農場から農場長を引き離した理由は、その娘であるエリィさんの身柄を確保するためだったようです。でも、その目的まではわかりません。ゴーンの指示をうけた役人達には、一切その目的が告げられていません」
リーンは、アルメダの話を聞きつつ、空中に浮かんでいる魔法映写を睨んだ。
親方は、いくらか憔悴しているものの、まだ十分な気力を保っているようだった。
「この方でしたら心配はいりません。二、三日のうちに解放されるでしょう。問題は、その娘さんの方です。どうして宰相ゴーンは……そして、恐らくはお父様も、エリィさんの身柄を取り押さえたのでしょう。私には嫌な予感がしてなりません」
アルメダは、手を振って全ての魔法映写を消すと、沈鬱な表情でリーンを見つめた。
「エヴァーハルの国民にとって、アルデシア大陸全体にとって、よからぬことを考えているように思えてなりません」
リーンもまた、真剣な眼差しでアルメダを見返す。
「もし、そうなのだとしたら、私は全力でお父様の企みを阻止しなければなりません。この地に住まう、全ての人達のために」
王女の瞳に、一切のくもりはなかった。
アルメダは、この地で暮す人々のことを心から想っている。
そうリーンは確信する。
「自分のオヤジさんのことより、国のみんなのことを大事にしたいんだな」
「はい、その誓いを守ることこそ、王女たる私の使命」
アルメダは再び空中で手を振って、魔法映写を表示させた。
今度は一枚だけ。
これまでのものとは、少し感じが違う。
音と景色が、相互に通じ合っているようだ。
魔法映写には、エヴァー湖周辺の草原で馬にのって哨戒するジュアの姿が映っていた。
「ジュア」
《あら、王女さま。いかがされましたか?》
すぐに馬をとめたジュアは、まるで目の前にアルメダ姫がいるかのようにそう答えてきた。
「これも魔法なのか……?!」
「はい、ジュアには相互通信をするための、特別なブローチを渡してあります」
映写の向こうのジュアが、リーンに目を向ける。
《まあ、どこぞの勇者さまも一緒におられるのね》
「ジュアっ! これは一体どういうことなんだ?! どうしてオレを襲った?! エリィはどうした!」
《どうもこうもないわ。王女さまには、あなたを連れてきて欲しいって頼まれていたし、宰相さまには、あの女の子の身柄を確保せよとの命が下されていたし。職務に忠実な私は、それを一石二鳥でやっただけ》
そう言ってジュアは怪しく微笑んだ。
《エリィの居場所は教えられないわ、極秘命令だからね》
「ジュア!」
「リーン、私からみ聞いてみます」
言われてリーンは、魔法映写に食いつかんばかりに乗り出していた体を引いた。
代わってアルメダがジュアに話しかける。
「ジュア。あなたは、お父様達がよからぬことを企んでいるのを知ってやっているのですか?」
《王女さま。今の私は一介の兵士にすぎません。王女さまとは、近衛兵だったころと代わらない関係を保って頂いてますが、それでもゴーン様の命に逆らう権利は、今の私にはないのです》
「そうですか……、確かに、そうかもしれません。ここで私が無理に聞き出せば、あなたはその立場を危うくしてしまうのでしょう」
《ええ、私はこれからもずっと、王女さまとのお付合いを続けさせていただきたいと願っています。だから国王さま方の不審を買うわけにはいきません》
「私もです、ジュア。私に対して、物怖じせずに話をしてくれた近衛兵は、あなただけでしたから」
《恐れ多きお言葉ですわ、王女さま》
そこでアルメダは、一旦言葉を切った。
その瞳の奥に決意が満ちる。
「私は、あなたを友人と見込んで、一つ無理なお願いをしたいと思います。ヒントをください。ジュア」
《ヒント……ですか?》
ジュアはその表情をいっそう厳しくし、アルメダもまた口元を緊張させている。
リーンは息をのんだ。
「ジュア、貴方は一体、エルグァ族の……何なのでしょう」
部屋の空気がピンと張りつめた。
ジュアの表情に変化はないが、その変化のなさが、かえって質問の重みを表してしまっているようだった。
《私が何者なのか……、それが王女さまにとってのヒントになるということですか?》
「はい」
《…………》
ジュアはしばらく沈黙した。
それほどまでに明かしづらい事実なのだ。
《そうですね……》
リーンには、アルメダ姫の質問の意図が読めなかった。
だがそれでも、彼女が大変な質問をしたのだということはわかった。
《ふふふ……》
「答えては、頂けませんか?」
《そうですね、でもせっかくの王女さまの頼みです、半分だけお答えしましょう。私は……エルグァ族の“庶民”ではありません。これ以上は言えません》
「いいえ、それで十分です。ありがとう、私の大切な友達。この借りはいつか必ず」
《どういたしまして、我が親愛なる王女さま》
ジュアのことを友達と呼ぶアルメダに対し、ジュアの言葉はどこか他人行儀だった。
《では、そろそろ仕事に戻ります》
「ええ、時間をとらせてごめんなさい」
《いいえ、とんでもございませんわ……》
そして通信が切れる。
隣で聞いていたリーンが、目をぱちくりさせながら言う。
「これで、何がわかったんだ……?」
「ジュアが、只者ではないことがわかりました」
「まあ、そりゃずっと前から思ってたけど……ん?」
リーンの脳裏に何かが引っかかった。
「アルメダは、ジュアの心を読めないのか……?」
「はい」
「それってつまり……」
「はい」
ジュアのレベルは、アルメダよりも上ということだ。
67以上の、どこか。
「でもオレ、一度戦って勝ってるぞ……はっ!」
それはつまり、手加減されたということだ。
しかし何故。
「ジュアはエルグァ族の中心人物なのでしょう。そして意思をもってこのエヴァーハル宮殿にやってきた。恐らくは、一族の命運に関わる使命を帯びて」
「そのジュアが、あのはげちゃびんの宰相から極秘命令を受けているんだな?」
「はい。ただならぬ関係にあると考えてよいでしょう。だとすれば、間違いなく天人のことが絡んでいます。そしてゴーンに身柄を押さえられたエリィという少女は……かつて、湖の生贄になった女性、エリィシェンの末裔」
「天……人……」
「おぼろげですが見えてきました、リーン」
「どうやらそのようだぜ」
* * *
アルメダ姫の私室。
その一角には、非常用の隠し通路がある。
「この床板を外していただけますか」
「おうよ」
絨毯をめくった下に、石の蓋がある。
リーンはそれを持ち上げてずらす。
「おひょー」
その下には縦穴がどこまで続いていて、その壁には梯子が取り付けられていた。
「ここを下まで降りて、そこから洞窟を真っ直ぐ進むと、エヴァーハル転移陣の近くに出られます」
「ジュアはここからオレを運んできたんだな」
「はい。魔法をかけて透明にして、宙に浮かべて運んできたのです」
「すごい奴だ」
アルメダはリーンに金色のブローチを渡してきた。
「これがあれば、いつでも私と話すことが出来ます。それと……これもお持ちください」
それは、金貨の入った袋だった。
「こんなにっ!」
少なく見積もっても、十万ルコピーは入っていた。
「無駄遣いしてはいけませんよ、あ・な・た」
「あはははは……大事に使うぜ」
すでに財布の紐を握られていた。
「じゃあ、行くな。アルメダ、元気でな」
「リーンも気をつけて」
リーンは縦穴に入ると、自分で石の蓋をしめた。
真っ暗になった穴の中を、手探りで下りていく。
『エンデ』
-炎よ-
時々、炎を点して下を確認する。
通常の建物にして5階分ほどの高さを下ったところで、はしごが途切れた。
そのすぐ下が洞窟になっている。
リーンははしごから飛び降りた。
「おおお……」
洞窟の天井を見上げると、そこにはもう、縦穴はなかった。
幻術を使って隠してあるのだ。
「来る時はこの辺でアルメダに連絡いれればいいんだな」
リーンはその辺りの様子をぐるりと確認すると、出口に向かって歩き始めた。
「はい、道のりは険しゅうございます」
想い通じ合った二人は、高揚する気持ちを抑えつつ、再びテーブルについた。
今度は向かい合ってではなく、隣り合って。
リーンはひとまず、飲みかけだった紅茶をズッとすすって一息つく。
「ふうっ」
そしてまず、自分達がしようとしていたことを、アルメダに話した。
「俺たちは、国王のおっちゃんを、王座から引きずり下ろそうと考えていたんだ」
「はい、存じております」
「そのために、みんなであちこち調べまわってた。オレはちょっと予定通りにいかなくて、親方の農場で働くことになっちまってたけど」
「はい」
「それで……、そう、ことによっちゃオレは、国王をぶっ倒そうとさえ思ってたんだ」
リーンはアルメダの目をしかと見て言う。
「でも、アルメダはそんなの嫌だろう? 実のオヤジさんなんだからな」
「いいえ、リーン。必要とあらば、私はそれも厭わないのです」
「なにっ? そうなのか……!?」
アルメダは静かに頷くと、空中で手を振って魔法映写を表示させた。
「これは……」
一際大きく表示された魔法映写には、夥しい数の兵士達がエヴァーハルから出征していく光景が映し出されていた。
「魔物討伐……という名目で、各地に大量の兵士が送り込まれています。これは知っての通り、諸侯の叛乱を封じ込める目的で行われています」
それはつい先日、バルザーの口から告げられたことだった。
「お父様は、どこか事を急いているようなのです。一刻も早く、アルデシア大陸を取り囲む大防壁を築く……。そのことに、異様なまでに執着なさっているのです」
アルメダは、さらに手を振って新しい魔法映写を表示させる。
それには、役人達に尋問される男の姿が映っていた。
「親方……!」
それはリーンがニールとして働いていた農場の親方だった。
「農場の長は今、王都警備団の取調室にいます。そこには私の写真が飾られていますので、こうしてつぶさに様子を確認することができます」
「なんてこった、親方が犯人なわけがないんだ!」
アルメダは小さく頷いた。
「はい。このお方は無実です。ワインの貯蔵庫に鉛板を仕込んだのは、取り調べをしている役人の方です」
アルメダは親方の目の前にいる男を指差す。
その男は、親方を農場から連行していった役人の一人だった。
「くそっ! やっぱりこいつらだったのか!」
「はい、この役人は、どうやら宰相ゴーンから賄賂を掴まされて事に及んだようです」
「宰相だって?!」
それは、リーンに呪われた剣を渡した張本人。
「宰相が絡んでいるとなると、私には何もできません。彼は間違いなくお父様の指示を受けて動いているはずだからです。私がお父様のすることに口を挟むことは、一切許されていません」
「なんてこった、想像以上に込み入った話になってきたぜ」
「宰相ゴーンが、農場から農場長を引き離した理由は、その娘であるエリィさんの身柄を確保するためだったようです。でも、その目的まではわかりません。ゴーンの指示をうけた役人達には、一切その目的が告げられていません」
リーンは、アルメダの話を聞きつつ、空中に浮かんでいる魔法映写を睨んだ。
親方は、いくらか憔悴しているものの、まだ十分な気力を保っているようだった。
「この方でしたら心配はいりません。二、三日のうちに解放されるでしょう。問題は、その娘さんの方です。どうして宰相ゴーンは……そして、恐らくはお父様も、エリィさんの身柄を取り押さえたのでしょう。私には嫌な予感がしてなりません」
アルメダは、手を振って全ての魔法映写を消すと、沈鬱な表情でリーンを見つめた。
「エヴァーハルの国民にとって、アルデシア大陸全体にとって、よからぬことを考えているように思えてなりません」
リーンもまた、真剣な眼差しでアルメダを見返す。
「もし、そうなのだとしたら、私は全力でお父様の企みを阻止しなければなりません。この地に住まう、全ての人達のために」
王女の瞳に、一切のくもりはなかった。
アルメダは、この地で暮す人々のことを心から想っている。
そうリーンは確信する。
「自分のオヤジさんのことより、国のみんなのことを大事にしたいんだな」
「はい、その誓いを守ることこそ、王女たる私の使命」
アルメダは再び空中で手を振って、魔法映写を表示させた。
今度は一枚だけ。
これまでのものとは、少し感じが違う。
音と景色が、相互に通じ合っているようだ。
魔法映写には、エヴァー湖周辺の草原で馬にのって哨戒するジュアの姿が映っていた。
「ジュア」
《あら、王女さま。いかがされましたか?》
すぐに馬をとめたジュアは、まるで目の前にアルメダ姫がいるかのようにそう答えてきた。
「これも魔法なのか……?!」
「はい、ジュアには相互通信をするための、特別なブローチを渡してあります」
映写の向こうのジュアが、リーンに目を向ける。
《まあ、どこぞの勇者さまも一緒におられるのね》
「ジュアっ! これは一体どういうことなんだ?! どうしてオレを襲った?! エリィはどうした!」
《どうもこうもないわ。王女さまには、あなたを連れてきて欲しいって頼まれていたし、宰相さまには、あの女の子の身柄を確保せよとの命が下されていたし。職務に忠実な私は、それを一石二鳥でやっただけ》
そう言ってジュアは怪しく微笑んだ。
《エリィの居場所は教えられないわ、極秘命令だからね》
「ジュア!」
「リーン、私からみ聞いてみます」
言われてリーンは、魔法映写に食いつかんばかりに乗り出していた体を引いた。
代わってアルメダがジュアに話しかける。
「ジュア。あなたは、お父様達がよからぬことを企んでいるのを知ってやっているのですか?」
《王女さま。今の私は一介の兵士にすぎません。王女さまとは、近衛兵だったころと代わらない関係を保って頂いてますが、それでもゴーン様の命に逆らう権利は、今の私にはないのです》
「そうですか……、確かに、そうかもしれません。ここで私が無理に聞き出せば、あなたはその立場を危うくしてしまうのでしょう」
《ええ、私はこれからもずっと、王女さまとのお付合いを続けさせていただきたいと願っています。だから国王さま方の不審を買うわけにはいきません》
「私もです、ジュア。私に対して、物怖じせずに話をしてくれた近衛兵は、あなただけでしたから」
《恐れ多きお言葉ですわ、王女さま》
そこでアルメダは、一旦言葉を切った。
その瞳の奥に決意が満ちる。
「私は、あなたを友人と見込んで、一つ無理なお願いをしたいと思います。ヒントをください。ジュア」
《ヒント……ですか?》
ジュアはその表情をいっそう厳しくし、アルメダもまた口元を緊張させている。
リーンは息をのんだ。
「ジュア、貴方は一体、エルグァ族の……何なのでしょう」
部屋の空気がピンと張りつめた。
ジュアの表情に変化はないが、その変化のなさが、かえって質問の重みを表してしまっているようだった。
《私が何者なのか……、それが王女さまにとってのヒントになるということですか?》
「はい」
《…………》
ジュアはしばらく沈黙した。
それほどまでに明かしづらい事実なのだ。
《そうですね……》
リーンには、アルメダ姫の質問の意図が読めなかった。
だがそれでも、彼女が大変な質問をしたのだということはわかった。
《ふふふ……》
「答えては、頂けませんか?」
《そうですね、でもせっかくの王女さまの頼みです、半分だけお答えしましょう。私は……エルグァ族の“庶民”ではありません。これ以上は言えません》
「いいえ、それで十分です。ありがとう、私の大切な友達。この借りはいつか必ず」
《どういたしまして、我が親愛なる王女さま》
ジュアのことを友達と呼ぶアルメダに対し、ジュアの言葉はどこか他人行儀だった。
《では、そろそろ仕事に戻ります》
「ええ、時間をとらせてごめんなさい」
《いいえ、とんでもございませんわ……》
そして通信が切れる。
隣で聞いていたリーンが、目をぱちくりさせながら言う。
「これで、何がわかったんだ……?」
「ジュアが、只者ではないことがわかりました」
「まあ、そりゃずっと前から思ってたけど……ん?」
リーンの脳裏に何かが引っかかった。
「アルメダは、ジュアの心を読めないのか……?」
「はい」
「それってつまり……」
「はい」
ジュアのレベルは、アルメダよりも上ということだ。
67以上の、どこか。
「でもオレ、一度戦って勝ってるぞ……はっ!」
それはつまり、手加減されたということだ。
しかし何故。
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「そのジュアが、あのはげちゃびんの宰相から極秘命令を受けているんだな?」
「はい。ただならぬ関係にあると考えてよいでしょう。だとすれば、間違いなく天人のことが絡んでいます。そしてゴーンに身柄を押さえられたエリィという少女は……かつて、湖の生贄になった女性、エリィシェンの末裔」
「天……人……」
「おぼろげですが見えてきました、リーン」
「どうやらそのようだぜ」
* * *
アルメダ姫の私室。
その一角には、非常用の隠し通路がある。
「この床板を外していただけますか」
「おうよ」
絨毯をめくった下に、石の蓋がある。
リーンはそれを持ち上げてずらす。
「おひょー」
その下には縦穴がどこまで続いていて、その壁には梯子が取り付けられていた。
「ここを下まで降りて、そこから洞窟を真っ直ぐ進むと、エヴァーハル転移陣の近くに出られます」
「ジュアはここからオレを運んできたんだな」
「はい。魔法をかけて透明にして、宙に浮かべて運んできたのです」
「すごい奴だ」
アルメダはリーンに金色のブローチを渡してきた。
「これがあれば、いつでも私と話すことが出来ます。それと……これもお持ちください」
それは、金貨の入った袋だった。
「こんなにっ!」
少なく見積もっても、十万ルコピーは入っていた。
「無駄遣いしてはいけませんよ、あ・な・た」
「あはははは……大事に使うぜ」
すでに財布の紐を握られていた。
「じゃあ、行くな。アルメダ、元気でな」
「リーンも気をつけて」
リーンは縦穴に入ると、自分で石の蓋をしめた。
真っ暗になった穴の中を、手探りで下りていく。
『エンデ』
-炎よ-
時々、炎を点して下を確認する。
通常の建物にして5階分ほどの高さを下ったところで、はしごが途切れた。
そのすぐ下が洞窟になっている。
リーンははしごから飛び降りた。
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