ガチ百合ハーレム戦記
密談、屋敷の地下室
「俺は外にいる。特にすることもないだろうからな」
地下室に向かう途中でバルザーがそう言ってきた。
「でも外は寒いぜ?」
「どうということはない」
「そうか、悪いな」
「……気にするな」
リーンはひらひらと手を振ってバルザーを見送った。
「気を利かせてくれたのね」
「アイツいちおう、元近衛兵だからな」
リーン達がこれから地下室ですることは、スプレンディアの呪いに関する話だ。
王宮と関係が深いバルザーがその話に加わることは、正直なところ居心地のよいものではなかった。
それはバルザーにとっても同じことで、リーン達がやろうとしていることに加担することは、元近衛兵という立場上好ましくなかった。
「目をつぶっててくれるなら、それにこしたことたねえ」
地下室へ続く半螺旋の階段を下りていく。
ロレンがその先の扉を開いて、三人を中に通す。
武具庫は細長い作りの部屋になっていて、壁際にはずらりと立派な木の箱が並んでいた。
「6代前の領主の時代に、丁度リーンのような女剣士がおられてな」
と言ってロレンは、木の箱の一つを開ける。
「これは、その方が魔界へ向かう際に身につけていた鎧なのだ」
箱の中には、透明感のある薄い素材で作られた、緋色の鎧がしまってあった。
「装備した者の魔力を食べて、自身を炎の刃と化す鎧。その名も魔炎の鎧」
「おお、まさにオレのためにあるような鎧じゃないか!」
「はっはっは、そう言うと思って見せたのだ。しかしこの鎧、実は呪われておる」
「なにー!?」
リーンの顔にすだれがかかる。
「オレが欲しいものは大抵呪われてるなあ」
「はっはっは。優れた武器や防具ほど呪われていると相場は決まっておるのだ」
「呪いを解くことはできないのかよ? ひげピーンのおっちゃんは伝統呪術士なんだろ?」
「残念無念。娘を授かった時に、殆どの魔力を失ってしまったのじゃ」
「そうなのかぁー」
リーンはがっくりと肩を落とす。
ロレンは思い出したように自分の髭をピーンと引っ張った。
「まあそう肩を落とすでない、勇者よ。この鎧の呪いは少し特殊でな、装備している間はずっと魔力を消耗し続けるが、それだけなのじゃ。装備したが最後、死ぬまで外せなくなるということはない」
と言ってロレンは、リーンが右手に握ったままになっているスプレンディアを見る。
「その、立派に呪われた剣と違ってな」
「へへへ、おっちゃん。せめて呪われた立派な剣って言ってくれ」
リーンは誇らしげにその剣を正眼に構えた。
鞘を固定している鎖がチャラチャラと鳴る。
「鞘から抜いた瞬間に発動する呪いか。しかも相当にヤバイものがかけられておるのう。こんなことが出来るのは、うむ、我が娘エイダくらいのものよ」
そう言ってロレンは頷く。
「やはり生きておったか」
「ええ、おじさま。ちゃんと会って来ましたわ」
「元気そうであったか?」
「はい、相変わらず」
「頬っぺたぷにり、とかやってたぜ」
「そうかそうか、それはなによりじゃ、ぐすんっ」
そしてメソメソした。
「会いたいのう、会ってあの頬っぺたをプニプニしてやりたいのう」
「連れ戻すのはまだまだ難しそうです、おじさま。少なくとも、今の国王の目が黒いうちは」
「そうであろうな、うむ。つけ入る隙があるとすれば、今のエヴァーハル国王には息子がいないということじゃろう。世継ぎの問題が必ず出てくる。その時の混乱にまぎれて、王宮の真実を暴くことが出来れば、もしかすると機会はあるかもしれぬ」
一度、国の中枢に囚われてしまった者を、大陸の果てにある街の領主が取り戻すことは、実際、不可能に近かった。
だが、リーンには思うところがあった。
「勇者ってのは、息子がいない国王の世継ぎ候補でもあるんだろう?」
「そうよ、リーン」
「じゃあオレがアルメダ姫を嫁にもらって国王になればいいんだ。そしたらエイダちゃんを解放して……」
そこでリーンは言葉を呑む。
いや、あまり解放したくないかも……あの子かなり可愛かったから、あのままオレのハーレムの一員に……。
とか下卑たことを考える。
「どうしたのリーン?」
「いや、解放してやれる、だろー?」
無理して言う。
「まあそうだけど」
だがロレンとメイリーは、いかがなものかと首を傾げた。
「女勇者が王女を娶るであるか、ふーむ」
「それって実際どうなのかしら?」
聞いたこともない話だった。
「人間その気になれば何だって出来るさ! それにはともかく魔王を倒しに行かなきゃならねえ。強力な武器と防具があったほうが良いに決まってる。というわけでひげピーンのおっちゃん。その鎧、オレにくれ!」
「はっはっは、ここまで遠慮がないとかえって清清しいわ。よろしい、魔界に行く時にはこれを装備していくがよい」
「おおおー、さすがひげピーン! 犬に好かれるだけあるな!」
「はっはっは、だがその前に、その剣の呪いを何とかせねばなるまい?」
「おお、そうだったぜ。それが一番の目的だったんだ。オレは一度この剣の呪いを食らって死にかけるから、おっちゃんには剣の呪いが解けた瞬間を見極めて欲しいんだ」
「ふむふむ、そしてその瞬間を見計らって、エルレン医法師が回復術をかけるのじゃな?」
「そうなんだ」
「それであれば、そもそもワシの力など必要はないぞリーン。剣の呪いが解ける時、それはそなたの手から剣が離れた時なのじゃから」
「え?」
リーンの表情が凍りついた。
「え?」
メイリーもまた言葉を失った。
「それってつまり、ここまで来る意味なかったってことか?」
「うむ、どこでも出来たことじゃ」
リーンはそのままポカーンと口を開けた。
そして、エイダに一杯食わされたことに気付いた。
「頬っぺたぷにりにしてやられたのか!」
「はっはっは、まあ良いではないか。私は子犬を貰う事が出来たし、リーンは鎧を手に入れることが出来たのだからな、はっはっは」
「うむむー?」
どうにも捉えどころのない親子だとリーンは思った。
「うーん、でもな、もしかして……」
案外、深く考えてのことだったのかもしれない、とも思った。
リーンの性格から言って、呪いを解く方法を知れば、すぐにでもそれを実行するだろう。
つまり、エヴァーハル国王のお膝元で堂々とだ。
それでは恐らく、ろくなことにはならないだろう。
スノーフルまで来たことによって、リーンは国王の目から離れて、こっそり色んなことをやれる状況を得たのだ。
「エイダちゃん、天然と見せかけて実はキレキレってわけか」
と言ってリーンは改めてスプレンディアを見る。
「それじゃあ一つ、やってみるか」
「やるってなにを?」
メイリーが聞く。
「決まってるじゃないかメイリー」
リーンは口元に笑みを浮かべて言う。
「国王のおっちゃんを騙すんだ」
その言葉を受けて、ロレンとメイリーもまたニヤリと笑った。
話についていけないエルレンだけが一人、目を白黒させている。
「そういやエルレン、術は使えるようになったか?」
「え? うーん、どうでしょう」
「何かやってみたらどうだ?」
「はい、でもみなさんお元気そうですし」
「エルレン医法師よ。実はワシ、近頃肩こり酷いのだ」
「そうなのですか?」
「うむ、ワシでよければ実験台になろう」
と言ってロレンは身を低くする。
「よろしいのですか? 色々と保証できませんが……」
「かまわんかまわん。ワシとて魔術師の端くれ。ヤバイと思ったらすぐに離れる」
「はい、では、お願いしますっ」
エルレンはその肩に手をあてて詠唱した。
『ブラディ・サーロ』
―血流促進―
エルレンの手の中が光る。
だがその光りの強さは安定していない。
強くなりすぎたり、消えてしまったりを繰り返す。
「無理そうか?」
「うーん、あと少しなんですが」
「おおっ、なんだか気持ちよくなってきたであるぞ!?」
「そうなんですか?!」
「うむ! あっ、そこイイ……!」
ロレンは少年の治療を受けながらビクビクと体を痙攣させる。
「そろそろ良いんじゃねーか? 顔がヤバくなってきてるぜ」
「え? あ、ホントだ!」
エルレンは慌てて治療をやめた。
「はぁ、はぁ……なんと初々しい医法術。こんなのはじめてじゃ……あへぇ」
ロレンは立ち上がると肩をグルグルと回して言った。
「体中がホコホコするのだ」
「魔法が効いたってことか?」
「そのようじゃ」
「でも、細かい制御はまだ出来ないみたいですリーン。もう少し時間が欲しいです」
「うーんそうか。まっ、せっかく来たんだから少しゆっくりしていってもいいか」
「じゃあリーン、今夜は私の家にお泊りね」
「ごめんなさい、リーン。僕のせいで」
「気にすんなエルレン。よろしく頼むぜメイリー」
「ではバルザー殿には我が屋敷を使ってもらうとするか」
「エルレンはどうする? 俺たちと一緒に寝るか?」
「え、ええー!?」
「いいわよエルレン君、私はかまわないわ。というか、歓迎するわ」
「え、ええええ、えと、その」
少年は顔を真っ赤にして言う。
「ぼ、僕はその、バルザーさんと一緒で……その、男同士で」
「遠慮しなくても良いんだぜ?」
「エルレン君はまだ子供なんだからね?」
「あわわわ……」
そうして一行が早くも今夜の宿泊のことを考えていた、その時だった。
「ん? なんだ?」
階段の上から、鎧具足の音をガシャガシャ鳴らして、バルザーが駆け下りてきた。
「おい、お前ら!」
「どうしたんだ?」
バルザーは必死な表情で言った。
「ドラゴンが飛んで来たぞ! しかもとびきりデカイやつだ!」
リーン達の表情が、一瞬で真面目になった。
地下室に向かう途中でバルザーがそう言ってきた。
「でも外は寒いぜ?」
「どうということはない」
「そうか、悪いな」
「……気にするな」
リーンはひらひらと手を振ってバルザーを見送った。
「気を利かせてくれたのね」
「アイツいちおう、元近衛兵だからな」
リーン達がこれから地下室ですることは、スプレンディアの呪いに関する話だ。
王宮と関係が深いバルザーがその話に加わることは、正直なところ居心地のよいものではなかった。
それはバルザーにとっても同じことで、リーン達がやろうとしていることに加担することは、元近衛兵という立場上好ましくなかった。
「目をつぶっててくれるなら、それにこしたことたねえ」
地下室へ続く半螺旋の階段を下りていく。
ロレンがその先の扉を開いて、三人を中に通す。
武具庫は細長い作りの部屋になっていて、壁際にはずらりと立派な木の箱が並んでいた。
「6代前の領主の時代に、丁度リーンのような女剣士がおられてな」
と言ってロレンは、木の箱の一つを開ける。
「これは、その方が魔界へ向かう際に身につけていた鎧なのだ」
箱の中には、透明感のある薄い素材で作られた、緋色の鎧がしまってあった。
「装備した者の魔力を食べて、自身を炎の刃と化す鎧。その名も魔炎の鎧」
「おお、まさにオレのためにあるような鎧じゃないか!」
「はっはっは、そう言うと思って見せたのだ。しかしこの鎧、実は呪われておる」
「なにー!?」
リーンの顔にすだれがかかる。
「オレが欲しいものは大抵呪われてるなあ」
「はっはっは。優れた武器や防具ほど呪われていると相場は決まっておるのだ」
「呪いを解くことはできないのかよ? ひげピーンのおっちゃんは伝統呪術士なんだろ?」
「残念無念。娘を授かった時に、殆どの魔力を失ってしまったのじゃ」
「そうなのかぁー」
リーンはがっくりと肩を落とす。
ロレンは思い出したように自分の髭をピーンと引っ張った。
「まあそう肩を落とすでない、勇者よ。この鎧の呪いは少し特殊でな、装備している間はずっと魔力を消耗し続けるが、それだけなのじゃ。装備したが最後、死ぬまで外せなくなるということはない」
と言ってロレンは、リーンが右手に握ったままになっているスプレンディアを見る。
「その、立派に呪われた剣と違ってな」
「へへへ、おっちゃん。せめて呪われた立派な剣って言ってくれ」
リーンは誇らしげにその剣を正眼に構えた。
鞘を固定している鎖がチャラチャラと鳴る。
「鞘から抜いた瞬間に発動する呪いか。しかも相当にヤバイものがかけられておるのう。こんなことが出来るのは、うむ、我が娘エイダくらいのものよ」
そう言ってロレンは頷く。
「やはり生きておったか」
「ええ、おじさま。ちゃんと会って来ましたわ」
「元気そうであったか?」
「はい、相変わらず」
「頬っぺたぷにり、とかやってたぜ」
「そうかそうか、それはなによりじゃ、ぐすんっ」
そしてメソメソした。
「会いたいのう、会ってあの頬っぺたをプニプニしてやりたいのう」
「連れ戻すのはまだまだ難しそうです、おじさま。少なくとも、今の国王の目が黒いうちは」
「そうであろうな、うむ。つけ入る隙があるとすれば、今のエヴァーハル国王には息子がいないということじゃろう。世継ぎの問題が必ず出てくる。その時の混乱にまぎれて、王宮の真実を暴くことが出来れば、もしかすると機会はあるかもしれぬ」
一度、国の中枢に囚われてしまった者を、大陸の果てにある街の領主が取り戻すことは、実際、不可能に近かった。
だが、リーンには思うところがあった。
「勇者ってのは、息子がいない国王の世継ぎ候補でもあるんだろう?」
「そうよ、リーン」
「じゃあオレがアルメダ姫を嫁にもらって国王になればいいんだ。そしたらエイダちゃんを解放して……」
そこでリーンは言葉を呑む。
いや、あまり解放したくないかも……あの子かなり可愛かったから、あのままオレのハーレムの一員に……。
とか下卑たことを考える。
「どうしたのリーン?」
「いや、解放してやれる、だろー?」
無理して言う。
「まあそうだけど」
だがロレンとメイリーは、いかがなものかと首を傾げた。
「女勇者が王女を娶るであるか、ふーむ」
「それって実際どうなのかしら?」
聞いたこともない話だった。
「人間その気になれば何だって出来るさ! それにはともかく魔王を倒しに行かなきゃならねえ。強力な武器と防具があったほうが良いに決まってる。というわけでひげピーンのおっちゃん。その鎧、オレにくれ!」
「はっはっは、ここまで遠慮がないとかえって清清しいわ。よろしい、魔界に行く時にはこれを装備していくがよい」
「おおおー、さすがひげピーン! 犬に好かれるだけあるな!」
「はっはっは、だがその前に、その剣の呪いを何とかせねばなるまい?」
「おお、そうだったぜ。それが一番の目的だったんだ。オレは一度この剣の呪いを食らって死にかけるから、おっちゃんには剣の呪いが解けた瞬間を見極めて欲しいんだ」
「ふむふむ、そしてその瞬間を見計らって、エルレン医法師が回復術をかけるのじゃな?」
「そうなんだ」
「それであれば、そもそもワシの力など必要はないぞリーン。剣の呪いが解ける時、それはそなたの手から剣が離れた時なのじゃから」
「え?」
リーンの表情が凍りついた。
「え?」
メイリーもまた言葉を失った。
「それってつまり、ここまで来る意味なかったってことか?」
「うむ、どこでも出来たことじゃ」
リーンはそのままポカーンと口を開けた。
そして、エイダに一杯食わされたことに気付いた。
「頬っぺたぷにりにしてやられたのか!」
「はっはっは、まあ良いではないか。私は子犬を貰う事が出来たし、リーンは鎧を手に入れることが出来たのだからな、はっはっは」
「うむむー?」
どうにも捉えどころのない親子だとリーンは思った。
「うーん、でもな、もしかして……」
案外、深く考えてのことだったのかもしれない、とも思った。
リーンの性格から言って、呪いを解く方法を知れば、すぐにでもそれを実行するだろう。
つまり、エヴァーハル国王のお膝元で堂々とだ。
それでは恐らく、ろくなことにはならないだろう。
スノーフルまで来たことによって、リーンは国王の目から離れて、こっそり色んなことをやれる状況を得たのだ。
「エイダちゃん、天然と見せかけて実はキレキレってわけか」
と言ってリーンは改めてスプレンディアを見る。
「それじゃあ一つ、やってみるか」
「やるってなにを?」
メイリーが聞く。
「決まってるじゃないかメイリー」
リーンは口元に笑みを浮かべて言う。
「国王のおっちゃんを騙すんだ」
その言葉を受けて、ロレンとメイリーもまたニヤリと笑った。
話についていけないエルレンだけが一人、目を白黒させている。
「そういやエルレン、術は使えるようになったか?」
「え? うーん、どうでしょう」
「何かやってみたらどうだ?」
「はい、でもみなさんお元気そうですし」
「エルレン医法師よ。実はワシ、近頃肩こり酷いのだ」
「そうなのですか?」
「うむ、ワシでよければ実験台になろう」
と言ってロレンは身を低くする。
「よろしいのですか? 色々と保証できませんが……」
「かまわんかまわん。ワシとて魔術師の端くれ。ヤバイと思ったらすぐに離れる」
「はい、では、お願いしますっ」
エルレンはその肩に手をあてて詠唱した。
『ブラディ・サーロ』
―血流促進―
エルレンの手の中が光る。
だがその光りの強さは安定していない。
強くなりすぎたり、消えてしまったりを繰り返す。
「無理そうか?」
「うーん、あと少しなんですが」
「おおっ、なんだか気持ちよくなってきたであるぞ!?」
「そうなんですか?!」
「うむ! あっ、そこイイ……!」
ロレンは少年の治療を受けながらビクビクと体を痙攣させる。
「そろそろ良いんじゃねーか? 顔がヤバくなってきてるぜ」
「え? あ、ホントだ!」
エルレンは慌てて治療をやめた。
「はぁ、はぁ……なんと初々しい医法術。こんなのはじめてじゃ……あへぇ」
ロレンは立ち上がると肩をグルグルと回して言った。
「体中がホコホコするのだ」
「魔法が効いたってことか?」
「そのようじゃ」
「でも、細かい制御はまだ出来ないみたいですリーン。もう少し時間が欲しいです」
「うーんそうか。まっ、せっかく来たんだから少しゆっくりしていってもいいか」
「じゃあリーン、今夜は私の家にお泊りね」
「ごめんなさい、リーン。僕のせいで」
「気にすんなエルレン。よろしく頼むぜメイリー」
「ではバルザー殿には我が屋敷を使ってもらうとするか」
「エルレンはどうする? 俺たちと一緒に寝るか?」
「え、ええー!?」
「いいわよエルレン君、私はかまわないわ。というか、歓迎するわ」
「え、ええええ、えと、その」
少年は顔を真っ赤にして言う。
「ぼ、僕はその、バルザーさんと一緒で……その、男同士で」
「遠慮しなくても良いんだぜ?」
「エルレン君はまだ子供なんだからね?」
「あわわわ……」
そうして一行が早くも今夜の宿泊のことを考えていた、その時だった。
「ん? なんだ?」
階段の上から、鎧具足の音をガシャガシャ鳴らして、バルザーが駆け下りてきた。
「おい、お前ら!」
「どうしたんだ?」
バルザーは必死な表情で言った。
「ドラゴンが飛んで来たぞ! しかもとびきりデカイやつだ!」
リーン達の表情が、一瞬で真面目になった。
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