勇者の名産地
宿屋
「いらっしゃいませ、こんにち……ふおおお!?」
入ってすぐのカウンターに立っていた宿屋の主人が、カトリ達を見るなり身を仰け反らせて驚いた。
「え!? な、なにか!?」
自分達に何か落ち度があったのかと、カトリはすぐさま自分達の身なりを確認する。特に異常はないと思うのだが、もしかすると三姉妹が汗臭すぎるのかもしれない。
宿屋の主人は恰幅の良い男で、口ひげを生やしており、見るからに裕福そうだった。しばしカトリ達の姿をジーっと凝視した後、いきなり奥の部屋に向かって叫んだ。
「ハーレム様ご一行、いらっしゃいましたぁー!」
「えええっー!?」
男一人に女三人。確かに傍から見ればハーレムっぽいかもしれない。しかしカトリは甚だ心外だった。それに、会っていきなりハーレム様ご一行とか、どうなのだろう。
「なにっ? ハーレムだって!?」
宿の女将らしき女が奥の部屋からチラリと顔を出す。
「本当だ!」「ハーレムだ!」
さらには従業員と思しき男が二人、やいのやいのと二階から降りてきた。
カトリは早くも、来ては行けない場所だったような気がしてきた。
「い、いいえ違います! 俺達はそんなパーティーではありません!」
ひとまずカトリは、自分達の出身地を告げ、三姉妹が幼馴染みであることを伝えた。
「ほっほっほ、そうでございましたが。これは失礼。お連れの方がとてもその……色っぽい方々だったもので、ついうっかり」
「わかって貰えたならそれで……」
言いつつカトリは、後ろでボケーっと店内を見渡している娘どもを見た。確かに年頃の娘ではり、スタイルもそれなりかもしれないが、その性格は野蛮の一言だ。
「あの、一番安い部屋をお願いしたいのですが……」
「なんですとお!?」
再び身を仰け反らせて驚く主人。
眼球がブルブルと震えている。その目はまるで、ケダモノを見るような目だった。
「つまりお兄さん……今夜はお楽しみですね!?」
「なんでそうなるんですか!?」
宿の主人が考えていることがさっぱりわからない。
「いや、だって、うちの一番安い部屋は、小さなベッドが一つしかないんですよ? そんな、小さなベッドの上で、若い娘を三人もだなんて、あなたも中々の好き者ですねっ!」
「そのような気は一切ないですよ!?」
この娘達は、どんなに小さなベッドであろうと、ケルベロスのようにまとまって上手に眠る。だからカトリは、その部屋のすみっこで耳栓をして寝るつもりだった。三姉妹のいびき・寝言・歯軋りの三重奏は、それはそれは壮大なのだ。お楽しみどころではない。
「あまり持ち合わせがないんです。部屋は出来るだけ安くして、お風呂を借りたいんです」
「そうでございますか……。お部屋ではなくお風呂で楽しまれるのですね……」
「何が何でもそういう話にもっていくか!」
もういっそ出て行きたかったが、ここ以外に宿は無いのだった。
「おっほん、お風呂でしたらございますよ。予約制になっているので、お時間を指定してくださいませ。ええ、大丈夫ですよ。誰も覗きやしませんから、フヒヒ」
やる気まんまんであることは、誰の目にも明らかだった。でもカトリは、この三人の裸なら別に見られても良いやと思った。
2アワワ後に風呂が空いていたので、カトリはその時間に予約を入れた。
「ありがとうございます。お部屋は二階の一番奥になります。食事はどうなさいますか?」
カトリは三姉妹の方を向いて、意見を聞く。
「初めて来た町だし」
「夕食くらいは」
「外で食べないか?」
実際、外で食べても宿で食べても値段は大して変わらない。
「じゃあ、朝食だけ四人分お願いします」
「わかりました。しめて60ヤンになります。前払いでお願いします」
「60ヤン?」
結構お高いぞとカトリは思った。カトリの知っている一番安い宿が、一部屋一泊5ヤンだ。ここは店構えの良い宿なので、それなりの料金を取るのかもしれない。でも部屋は一つしかとっていない。
「うちでは人数分頂いておりますので……」
店の主人が手をすりながら言う。
「じゃ、仕方ないですね……」
カトリは財布を取り出すと、しぶしぶと言った感じで60ヤンを支払った。
ぎりぎりぼったくられた感じがするが、きっと立派な部屋なのだろう。
「じゃあ、お前ら先に行って休んでてくれ」
長女のミーナに部屋の鍵を渡す。三人は「あいよー」と言って二階に上がっていった。
「まさに匂い立つような娘さん達ですなあ」
と言って主人は鼻の下を伸ばす。
「いえ、しばらく風呂に入ってないだけです」
財布は軽くなったが、カトリの気持ちは軽くならなかった。
入ってすぐのカウンターに立っていた宿屋の主人が、カトリ達を見るなり身を仰け反らせて驚いた。
「え!? な、なにか!?」
自分達に何か落ち度があったのかと、カトリはすぐさま自分達の身なりを確認する。特に異常はないと思うのだが、もしかすると三姉妹が汗臭すぎるのかもしれない。
宿屋の主人は恰幅の良い男で、口ひげを生やしており、見るからに裕福そうだった。しばしカトリ達の姿をジーっと凝視した後、いきなり奥の部屋に向かって叫んだ。
「ハーレム様ご一行、いらっしゃいましたぁー!」
「えええっー!?」
男一人に女三人。確かに傍から見ればハーレムっぽいかもしれない。しかしカトリは甚だ心外だった。それに、会っていきなりハーレム様ご一行とか、どうなのだろう。
「なにっ? ハーレムだって!?」
宿の女将らしき女が奥の部屋からチラリと顔を出す。
「本当だ!」「ハーレムだ!」
さらには従業員と思しき男が二人、やいのやいのと二階から降りてきた。
カトリは早くも、来ては行けない場所だったような気がしてきた。
「い、いいえ違います! 俺達はそんなパーティーではありません!」
ひとまずカトリは、自分達の出身地を告げ、三姉妹が幼馴染みであることを伝えた。
「ほっほっほ、そうでございましたが。これは失礼。お連れの方がとてもその……色っぽい方々だったもので、ついうっかり」
「わかって貰えたならそれで……」
言いつつカトリは、後ろでボケーっと店内を見渡している娘どもを見た。確かに年頃の娘ではり、スタイルもそれなりかもしれないが、その性格は野蛮の一言だ。
「あの、一番安い部屋をお願いしたいのですが……」
「なんですとお!?」
再び身を仰け反らせて驚く主人。
眼球がブルブルと震えている。その目はまるで、ケダモノを見るような目だった。
「つまりお兄さん……今夜はお楽しみですね!?」
「なんでそうなるんですか!?」
宿の主人が考えていることがさっぱりわからない。
「いや、だって、うちの一番安い部屋は、小さなベッドが一つしかないんですよ? そんな、小さなベッドの上で、若い娘を三人もだなんて、あなたも中々の好き者ですねっ!」
「そのような気は一切ないですよ!?」
この娘達は、どんなに小さなベッドであろうと、ケルベロスのようにまとまって上手に眠る。だからカトリは、その部屋のすみっこで耳栓をして寝るつもりだった。三姉妹のいびき・寝言・歯軋りの三重奏は、それはそれは壮大なのだ。お楽しみどころではない。
「あまり持ち合わせがないんです。部屋は出来るだけ安くして、お風呂を借りたいんです」
「そうでございますか……。お部屋ではなくお風呂で楽しまれるのですね……」
「何が何でもそういう話にもっていくか!」
もういっそ出て行きたかったが、ここ以外に宿は無いのだった。
「おっほん、お風呂でしたらございますよ。予約制になっているので、お時間を指定してくださいませ。ええ、大丈夫ですよ。誰も覗きやしませんから、フヒヒ」
やる気まんまんであることは、誰の目にも明らかだった。でもカトリは、この三人の裸なら別に見られても良いやと思った。
2アワワ後に風呂が空いていたので、カトリはその時間に予約を入れた。
「ありがとうございます。お部屋は二階の一番奥になります。食事はどうなさいますか?」
カトリは三姉妹の方を向いて、意見を聞く。
「初めて来た町だし」
「夕食くらいは」
「外で食べないか?」
実際、外で食べても宿で食べても値段は大して変わらない。
「じゃあ、朝食だけ四人分お願いします」
「わかりました。しめて60ヤンになります。前払いでお願いします」
「60ヤン?」
結構お高いぞとカトリは思った。カトリの知っている一番安い宿が、一部屋一泊5ヤンだ。ここは店構えの良い宿なので、それなりの料金を取るのかもしれない。でも部屋は一つしかとっていない。
「うちでは人数分頂いておりますので……」
店の主人が手をすりながら言う。
「じゃ、仕方ないですね……」
カトリは財布を取り出すと、しぶしぶと言った感じで60ヤンを支払った。
ぎりぎりぼったくられた感じがするが、きっと立派な部屋なのだろう。
「じゃあ、お前ら先に行って休んでてくれ」
長女のミーナに部屋の鍵を渡す。三人は「あいよー」と言って二階に上がっていった。
「まさに匂い立つような娘さん達ですなあ」
と言って主人は鼻の下を伸ばす。
「いえ、しばらく風呂に入ってないだけです」
財布は軽くなったが、カトリの気持ちは軽くならなかった。
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