50年前に滅びた世界で

たかき

第36話 歌の意味

「ふーん。つまりその、うぇすとばーじにあって所に行きたいってこと?」
「いや、正確には故郷……自分が生まれ育ったところまで行きたいってことを歌った感じかな」

この歌の本質は恐らくそっちだろう。曲作った人はウェストバージニア生まれではなくそこを通り抜けただけだという。そもそも俺もウェストバージニア行ったことないし。ブルーリッジ山脈だったか、あれはウェストバージニア州にはかかっていないみたいだし、シェナンドー川も掠っているだけらしいので、割とガバガバである。

「故郷、ふるさとに帰りたいなぁっていう思いがこもってる……てことでいいと思う」

別に俺がこの曲を作曲したわけではないが、この解釈は間違ってないとおもう。

「ふるさと……つまりユウトだと、元の星に帰りたいっていう感じだよね」
「うーん、まあそうなるかな。やっぱ地球、というか日本に戻りたいなぁ。家族にも会いたいし、学校にも行きたいし、撮りためたアニメとかあるし……」

この世界が嫌という訳ではないが、やはり日本が恋しい。確かに異世界に憧れたりなんかはしたが、いざ実際に飛ばされるとやはり日本に戻りたくなってしまう。さっき歌った時はそんなことは考えていなかったのだが、言われてみると帰ってみたい気持ちになってくる。それを正直に彼女に伝えた。

「……やっぱり帰りたいの?」
「ん? えっと……まあ、はい」
「そう……なんだ」

俺は再び来たアンジェラからの質問に素直に答えた。この異世界も最初に思っていたよりかはいい感じだとは思うが、それでもやっぱり日本に帰りたい。そう思って答えたのだが、そしたら彼女はなんだか落ち込んでいる様子だった。

「……どしたん?」
「えっと……もしユウトが帰ったら、また1人ぼっちになるのかなって」
「え、あ、いやえっと……」

失言だった。別に一緒に居たくないからとか、1人ぼっちにさせたいからそう言ったわけではないのだが、どうも彼女を傷つけてしまったみたいだった。カントリーロードを歌ったのは別に帰りたいという思いをこめてというわけではないのだが……

「大丈夫だよ。私も1人でいるのは慣れてるし……少し」

そういいながら、彼女は笑っている表情を見せた。だが、これは作り笑いだと俺は感じた。
彼女の言葉は多分ウソだ。1人ぼっちは寂しかっただろうし、1人でいることになれているとは思えない。
そんな彼女に対してどんなことを言えばいいのか、というのを考える。まずは彼女を安心させるべきだ。そして安心させる言葉は……

「……1人ぼっちにさせるつもりはないよ」
「……え?」

彼女は意外そうな声を出した。俺は話を続ける。

「確かに帰りたいと思ったりもするけど、でもまだ帰りたくないんだ。この世界で何があったのかとか知らないこともいっぱいあるし、アンジェラちゃんともっと一緒に居たいと思ってる。だから、やっぱりまだ帰りたくないし、アンジェラちゃんが1人ぼっちになったりもしないよ。そんな悲しまなくてもいいんだよ」

これが俺の本心だった。帰りたくないわけではないが、その前にもっとこの世界について知りたいし、彼女と別れたくないと、そう思っているのだ。なぜ別れたくないと思っているのか、それは彼女に対して庇護欲を持っているとか、一緒に居て楽しいからとか……自分でも完全にはこの思いの理由はわからないが、とにかく一緒に居たいという気持ちは本当だった。
今の俺の話を聞いて、彼女は少しの間をおいて、俺に話しかけた。

「……一緒に居たいって、まだ帰りたくないって、本当なの?」
「うん、本当だよ」
「ほんとに? ぜったいに?」
「うーん……うん、絶対に」
「そう……よかったぁ」

彼女は少し笑っていた。今度は作り笑いではない。そう俺は確信した。まだまだ帰りたくない、これからも2人で一緒に居たいと聞いて、ひとまず彼女は安心したみたいだ。
だが、それも永遠に、という訳ではないだろう。いつかは別れる時が来るのだろうか。もしそんな時が訪れたとき、彼女はどんな反応をするのだろう。俺はその時どうすれば……
いや、今そんなことを考えてもしょうがないかもしれない。少なくともしばらくは2人でこの世界を過ごすことになるはずなのだから。
俺は多分、遠い未来に起こるだろう出来事を深く考えないことにした。




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