50年前に滅びた世界で

たかき

第35話 演奏会

再び王様が居そうな間の所まで戻ってきた。荘厳な感じは変わらずだが、さっきよりも太陽が結構沈んでおり、夕陽が崩れ落ちた天井から差し込んでいたため、先ほどよりも少し印象は違った。
俺はこの間にある、王様が座っていたであろう椅子……ではなく、その近くの地面で胡坐をかいて座っていた。あの椅子で弾こうとするとひじ掛けが邪魔になるし、演奏ミスとかしたら祟りを受けそうなのでやめておいた。観客の方は、俺のすぐ前に体育座りをして演奏を今か今かと待ちわびているみたいだ。

「何弾こうかなぁ……アニソンとか……いや、ちょっとこの世界の雰囲気に似合いそうな曲がいいな……」

この世界に来て初めて弾く曲で、さらに恐らくアンジェラが人生で最初に聞く曲だと思うので、心に残るような名曲とかを弾いてみたいという思いはある。
という訳でどんな曲を弾こうかと悩んでいるのだが、自分の弾ける曲というとアニソンやボカロばっかである。それも悪くないのだが、せっかく異世界に来たんだからこの異世界に合いそうな曲がいいのではないか。そうなると何を弾くべきだろうか……自分が弾ける曲で何が……

「……あー、あの曲ならピッタリかもな」

かなり有名な曲が、この廃れた異世界にピッタリなのではないかと思いついた。一応アニメやゲームでも使われているし、かなり有名な名曲だと思う。といってもこの子は知らないだろうが。

「じゃあ一曲、イングリッシュで歌って音楽を奏でます」
「いんぐ……よくわかんないけど、わかった」

この曲には日本語版と原曲の英語版があるが、ここは英語版の方がよさそうな気がする。観客は1人しかいないが、それでも十分だろう。
ギターのボディを叩いてリズムを作る。短い前奏を引き、そして歌を歌いだす。

「オールモストヘェブン、ウェストバージニァ―――」

俺はカントリーロードを、ギターの音色に乗せながら歌い始めた。廃れた建物と50年前から手付かずの自然が広がるこの世界、この雰囲気に妙にマッチしているのではないだろうか。歌詞も故郷に帰りたいって感じだし、76のBGMにも使われているしで、まさにぴったりだ。それに、曲自体もかなりいい曲だと思う。この曲が自分の一番好きな曲、というわけではないが、結構好きな曲だ。
サビに入る前あたりで、観客の反応はどんな感じなのだろうかと思いちらりと彼女を見る。彼女は、なんだか曲を聴いて呆然としているみたいだった。なんか不味いところでもあったのだろうか。そこまで大きなミスはしていないと思うが……弾くのを途中でやめるのもなんか嫌なので、弾き続けはするが。
歌もギターも特別上手いわけではないが、それでもそれなりの演奏は見せられていると思うのだが。

「―――テイクミ―ホーム、カントリーロード……こんなもんかな」

そつない演奏をこなし、そして終えた。自分としてはそれなりの演奏はできたと思うが、やっぱり楽譜なしでやるとうろ覚えの所とかでミスが増えてしまう。スマホに楽譜でも保存しておけばよかったか。
とにかく、俺は演奏を終えた。観客の方を見ると、何やら固まったまま動こうとしない。

「あのー……どうだったすか?」
「……す」
「す?」
「す……す、すごーーーい!!!」

ようやく口を開いたかと思えば、開口一番に俺の演奏を賞賛してきた。

「え、ああいや、どうも。まあそれほどでもありますけどね」
「あるある、あるよ! 」

彼女は少し興奮気味みたいだった。さっきよりも近くに来て、俺のことをほめ続ける。まあ、始めて歌というものを聞いたのなら、これくらい興奮するものなのだろうか。ちょっとそのあたりはわからないが、少なくとも俺の演奏がすごかったと思ってくれてるみたいだった。なんというか、彼女の様子を見るとギターをやっててよかったと少し思えてくる。

「いやどうもどうも、ありがとうございまし。ここまで喜ぶとは思わなかったけど。演奏、よかった?」
「すごい良かったよ! いまのが音楽……なんだね」
「そうだよ。音楽を聴くのは初めてみたいだけど……どうだった?」
「うーん、なんか……聞いてて楽しかった、かなぁ。もう一度聞いてみたいなって」
「お、いいねぇ。でもそれならほかにも色々な曲を弾けるから、せっかくだし……」
「今の以外にもあるの!?」
「ち、近い近い……」

アンジェラはさらに顔を近づけてきた。もう10cmもないくらいまで近づいている。俺の方から少し離れたが、顔の近さは特に気にしていないみたいで、早く教えてと言っているかのような気がしてくる。

「まあ、音楽はいまみたいに音の高低や強弱とかをつけて楽器を演奏したり、歌ったりするものなんだけど、その組み合わせですごいたくさんの音楽を作ることができるんだよ。今の歌もその中の1つだよ」
「へー!」

アンジェラはキラキラと目を輝かせ、音楽ってすごいな、みたいに思っているような雰囲気を醸し出していた。

「まあ、俺が知ってたり弾けたりする曲はほんの一部なんだけどね」
「そうなんだ……いま演奏してたのはどんな音楽なの?」
「どんな……えーと曲名はカントリーロードってやつね、多分世界的に有名な曲だと思うよ」
「へー、すごい音楽なの?」
「まあ、名曲ですよ。ビルボード全米2位取ったし、耳すまの挿入歌になったし、ウェストバージニア州の州歌にもなったし、76なんか予算の8割9割をこの曲につぎ込んでるし」
「ふーん……よくわかんないけど、すごい音楽なんだね」

たしかに、実際すごい音楽だとは思う。世界中の人が知っている……というのは言い過ぎだと思うが、かなり有名な曲だ。まあ、流石に異世界にまでは広まってないだろうが。

「歌の意味はよくわかんなかったけど……知らない言葉で歌ってたから」
「あー、今のはイングリッシュで歌ってたからね。この曲は英語版の方が好きかなぁ。日本語版も好きなんだけどね。えっと今の歌詞はねぇ……」

彼女は英語がわからないみたいなので、さっそく英語版歌詞の解説を進めていく。
そういえば今までずっと日本語で彼女に話していたのだが、どうやら英語は通じないみたいだ。魔法でこの世界にいる人にも伝わるようになっているのだろうと思っていたのだが、英語だと伝わらないらしい。これはいったい……
まあ、あまり深く考えてもしょうがないだろう。そんなわけで、俺は彼女に歌詞の意味を教えていった。




1月以上も間を開けてしまった……更新、しっかりとやっていきたいです。
感想、評価等していただけると嬉しいです。

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