50年前に滅びた世界で

たかき

第28話 建物の上へ

何とか中心部へとたどり着いたが、そこにあったのは廃墟ばかりである。一部の建物は崩れていたり、中には完全に横にへし折れたりしている建物もある。
ただ、全部が全部崩れているわけではない。むしろ焼けてはいるが一応は無事な建物が大半を占めている。
そんなわけで、建物の中の探索をしようということになった。が。

「……中も焼けてるな」

この辺りも戦争で爆撃されたみたいだが、建物自体はしっかりと残っているのだ。しかし、中に置いてあったものはほとんど焼けてなくなってしまっているみたいだった。

「ほとんど何もないねぇ」
「うーん……この分だと他の建物もそうかもなあ。でも建物自体はしっかりと残っているけど」

今入った建物は十数階建てのビルだが、外から見た限りだと崩れたところはなかった。代わりにかなり焼け焦げているが、構造の方に問題はなさそうである。

「ちょっと……一番上まで行ってみるか」
「おー、いいねいいね」

この建物がこのあたりで3番目ぐらいに高いみたいだし、上から見たら何か見つかるかもしれない。そう思い、この建物の一番上まで上ることにした。
階段は入ってすぐの所にあったので、そこから最上階を目指して上っていく。のだが。

「ふう……ふう……結構キツ!」
「ほらほら、もう少しだよ」

東京タワーの階段を上るわけじゃないからいいか、なんて思って上ってみると結構きつい。外から見た感じ十数階建てみたいなので、大体50mか60mくらいだろうか。50mといっても、平坦なところを歩くのと階段を上っていくのとでは訳が違う。もう別に最上階まで上らなくてもいいのではないかと思えるほどだった。
それでも、息を切れ切れにしながらも一番上まで上ることができた。

「おお、これが屋上への出口……って、開かないな」

階段の一番上はちょっとした部屋みたいになっており、ここにはこげた箱だとかロッカーだとかがおいてあるので、恐らく物置みたいな感じで使っていたのかもしれない。そして、お目当ての屋上へとつながる扉もある。が、扉が開かない。
せっかくここまで来たというのに、屋上に出るための扉が閉まっている。鍵はかかっていないみたいだが、どうも立て付けが悪くなっているみたいだ。

「こんな時は体当たりで開けるに限る! ちょっと下がっててね」
「体当たりで開けて大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、そんな大したことはないよ。ただ扉を開けるだけだし」

映画とかでもしまっている扉を体当たりで開けるシーンとかあるし、鍵もかかっていないから体当たりで開くかもしれない。そんなわけで扉から距離を取り、そして扉に勢いよくぶつかった。
すると。

「うぉ開いた……!」

まさかの1発目で扉が開いたことに驚いた。こういうのは何回かやらないと開かないものじゃないのかと思っていたので、少し驚いた。が、驚いたのはそれだけではない。
なんと、扉を開けてすぐ目の前の床が崩れている。しかもかなり大きく崩れているみたいで、そこに落ちたら3、4階分は落ちてしまうだろう。もし落ちたら良くて重症、悪けりゃ死だ。
そして扉を体当たりで開けるために勢いがついていた俺は、今そこに落ちそうになっている。

「うおわぁえぁあ!」

落ちないように体を止めようとするも、急に止まったせいで体が前のめりになる。そして体が斜めになり、横になり、逆さまになっていく。
なんでここだけ崩れているんだ。外から見たときは特に崩れているところとかはなかったのに。まさか反対側は崩れていたのか。
これは本当に不味い。まさしく絶体絶命だった。

「危ない!」

もう終わりか、そう思いながら体がほとんど逆さまになったところで、誰かが俺の足を掴んだ。アンジェラだ。両足首を掴み、重力に逆らって俺が落ちないように必死になっている。
俺はひとまず助かった。が、それも長くはもたない。

「ふぅうぅぅん……落ちちゃう……」
「助かった……俺のこと上まで引っ張れる!?」
「うー、今やってる!」

アンジェラは今も俺を上に持ち上げようとしているみたいだが、現実には俺は少しずつ下に落ちていた。俺は何とか上体を起こして何かしようと思ったが、今は向かい合うような形で落ちているので起こしたところで何もできない。周りには掴めそうなものもない。

(このままじゃ……)

落ちる。落ちたら死ぬかもしれない。
恐怖の感情が頭を支配した。このままではいけない、何か打開策がなければ。だがどうすれば。周りに何かないのか。
と、辺りを見回すと、下の方に何かあるのがわかる。逆さに見えているが、あれは床だ。この床は一階下の床みたいだが、あそこに飛び移ることはできないだろうか。距離はそんなに離れていない、少し踏ん張れば行けるかもしれない。
そう考えていると左足首から彼女の手が離れた。もう時間がない。

「んー……だめ、落ちちゃう!」
「うー、なむさん!」

彼女の手が俺の右足首から離れた瞬間、俺は何とかその床を掴めないか腕を伸ばした。
やれるかやれないかではなく、もうやるしか道はない。
必死に腕を伸ばし、なんとか掴もうとする。
そして。

「うお、掴めた……!」

まさに間一髪というべきか、屋上の一階下の床に何とかへばりつくことができた。腕と上半身の一部を床につけ、何とか数階分落下するという事態は避けられた。先ほどと同じく宙ぶらりんになっているのは変わらないが、それでもさっきの逆さまになっていた時よりはだいぶマシだ。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。幸いにもこの体勢ならすぐによじ登れる。というわけでよじ登ろうとすると、床からみしり、という音が聞こえた。

「……ミシリ?」

嫌な予感がする。大急ぎでよじ登って離れなければ、そう思い体を引き上げようとしたが、それと同時にへばりついていた床が崩れはじめた。これは俺がへばりついて衝撃などを与えたせいだろうか。
よじ登る間もなく再び俺は落下した。ふわふわとした浮遊感が再び訪れた。
今度こそ不味い。どれくらい落ちるのかわからないが、無事では済まないかもしれない。とにかく頭だけでも守らなければ。そう思い腕で頭を覆う。
体全体を強い衝撃が襲った。




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