50年前に滅びた世界で

たかき

第25話 異世界の星空②

「……しかしなぁ、こんだけ星があるんだったら星座とかもいっぱいありそうだな……」

満天の星空眺めている中、ふと思ったことをぼそりとつぶやいた。東京の星空なんかだとせいぜいオリオン座とか、夏の大三角(星座ではないが)とか、数えるほどの星座しか見ることはできなかったが、この星の数を見るに凄くおおくの星座を見ることができそうだと感じた。

「……せーざって何なの?」
「星と星を線でつないでいって、それを色々なものに例えているもののことだよ」
「へー……面白そうだね」

どうも彼女は星座というものを知らないみたいだ。この世界に星座というものは存在しないのか、あるいは彼女が知らなかっただけなのか、それはわからないが、少なくとも俺にはこの世界の星座の知識は全くなかった。

「まあ……勝手に作っちゃうか! アンジェラちゃんもなんか作ってみれば?」
「じゃあ……あの星とあの星と……あの星とあの星、それとあの星でぽてち座」
「ごめん、どの星をさしているのか全く分からない。あとポテチ座って何」

星の数があまりに多すぎてどの星をさしているのか全然わからない。明るい星、暗い星を合わせるとそれこそ天文学的な数字になりかねない程の数が空の上を舞っている。なんとなく指さしている方向は分かるが、その方向にも多くの星があるので俺にはどの星がポテチ座を構成しているのか分からなかった。

「えー、だからあの星とあの星と……どの星だっけ」
「……あっはっは!」

どうも彼女はどの星がポテチ座の一部の星なのか、わからないみたいだ。それがおかしくて、俺は笑った。
笑われた彼女の方は、ちょっと顔を赤くして怒ったような表情を浮かべている。

「うー、別に笑わなくたっていいじゃん!」
「ひゃーひゃ、ごめんごめん、今のはちょっと面白かったし」
「もう……」
「まあまあ……いやーでもそうだなぁ、俺もなんか作ってみるか……じゃああの星とあの星、あとあの星でぬっこ座で。あとあの星とあの星、あの星でいっぬ座ね」
「……いっぬ、とぬっこって?」
「いっぬもぬっこも動物だよ、スマホに画像あったかな……」

何枚か保存していた画像があったはずだ。早速スマホを出して保存していた画像を見る。

「あったあった、これがいっぬね」
「うぁあ、かわいい」
「そうでしょ、そしてこっちがぬっこね」
「へぇー……どっちもかわいいね」

どうやらいっぬやぬっこの可愛さは異世界でも通用するらしい。この可愛さは万国共通……というより、世界共通とでもいうべきか。

「でも、それだったらもっとたくさんの星を使わないと、いっぬとかになんないんじゃないの?」
「いや、別にそんなしっかりとやんなくても、何本か線があるだけで大丈夫らしい」

オリオン座なんか最初は砂時計座の方がいいと思っていたし、他の星座も何の星座なのか言われてもほとんどそれに見えない。星座ってそんなものだろう。

「ふーん、変なの……あ!」

俺の話を聞き、彼女は何かを思いついたらしい。少しにやりとした顔をしている。一体何を思いついたのやら。

「お、どしたどした?」
「少し聞きたいんだけど……いっぬ座とぬっこ座、どれなの?」
「え? あーなるほど……」

アンジェラが顔をにやつかせながら聞いてきたからなんだと思ったが、どうやら先ほどの仕返しをしてきたみたいだ。今のは無しとは全く関係なかった。
まったく、なめられたものだ。そんなの即答できる。俺は再び星空に視点を戻し、いっぬ座とぬっこ座を指さそうとする。

「えーだからえーっと……」

が、空を見てみると満天の星空がそこにはあった。それはいいのだが、満天すぎてどの星がいっぬ座やぬっこ座を構成しているのかが全く分からない。これはまずい。
彼女は相変わらずにやいているし、このままでは俺は敗北者になってしまう。
しかし、それは嫌だ。俺は敗北者になるつもりは全くなかった。

「……あれとあれとあの星、あとあの星とあの星でいっぬ座、あれあれあれあれあれでぬっこ座ね」
「ふぇぇ……ちゃんとわかるんだ……」
「はっはっは小娘が!」

どうやら俺の勝ちみたいだ。勝ち誇るように笑い声をあげる。

「すごいね、どの星なのかしっかりわかるなんて……私は全然わからないけど」

彼女は素直に俺のことをすごいと認めているみたいだった。一応、ネタ晴らしでもしておくべきだろうか。

「いや全く分かんないし覚えてないから適当に言っただけだよ」
「え゛」

俺の予想外の返答に、アンジェラは困惑した様子を見せた。
さっきのは最初に作ったいっぬ座とぬっこ座を指していたわけではなく、第2いっぬ座と第2ぬっこ座を即席で作っただけである。はっきり言って第1いっぬ座と第1ぬっこ座がどの星なのかは全く覚えていない。

「うえぇ、ずるーい!」
「へっへっへ、何とでもいいたまえ」

イカサマも見抜けなければOKともいうし、ばれなきゃ犯罪じゃないとかいう言葉もあるんだから今のを見抜けなかった彼女が悪いんだろう。多分。

「ほらほら、それよりもっと星座を作ろうよ!」
「全く……もういいや、次はどんなのを作ろうかな……」

何とか話題をそらすことができた。よしよし計画通り。
という訳で再び星座づくりに勤しむことになった。

「俺はどうしようかな……よし、あれとあれ、あれ、あれ、それとあれで百合座で。あら^~」
「へー……ゆりってどんなのなの?」
「きれいなお花のことです、もしくは女の子と女の子が仲良くしていることですね」
「ふーん……じゃあ私とユウトが仲良くしているのは?」
「え、なんだろう……ボーイミーツガールとか? 合ってんのかなぁ……」
「ぼーい……ふーん」
「せっかくだしそれも作っちゃうか。うーむ、あれあれあれあれあれあれあれあれあれ……その他もろもろでボーイミーツガール座ね」
「……どれ?」

案の定どれなのかわからないみたいだ。制作者である俺も10秒すれば忘れそうである。ちなみにボーイミーツガール座はカタカナでボーイミーツガールと書かれている、そのまんまの星座である。

「そのぼーい……なんちゃらってのを作るより、私とユウトが仲良くしている星座を作ればいいんじゃない?」
「いやそれはちょっと恥ずかしい。自分の銅像とかを生きている間に作ろうとするやつにろくなのはいないって聞いたことあるし」
「えー……あ、じゃあ!」

どうやら彼女の電球が光ったみたいだ。何を思いついたのか。

「私がユウトの星座を作るから、ユウトは私の星座を作ってよ。それなら大丈夫でしょ?」
「ああ、それなら大丈夫……では、ないかなぁ、それもなんか恥ずかしいし」

それも結局自分の星座ができるわけだし、恥ずかしいのは変わっていない。やはり乗り気にはならない。

「まあまあ、勝手に作っちゃうから」
「マジか」

どうやら俺の意見は無視されているみたいだ。そんな勝手に作られても特に困ることはないが、やはり恥ずかしい。

「それじゃあ……えーっと……あそこにある星いっぱい使ってユウト座で!」
「いやくっそ雑やん」

思ったことをそのまま口に出してしまった。勝手に作られた上に星座を構成する星もかなり雑である。そんなんでいいのか。

「じゃあ俺も作ったるか……あそこら辺の星一杯でアンジェラ座だ!」
「ええー、なんか雑」
「別にええやろ」

彼女も俺のこと雑に星座にしていたが、考えると数十秒後にはどの星で構成されているのかわからなくなりそうだし、こんぐらい雑でもいいだろう。

「……そういえば仲良し要素は?」
「あ。忘れてた」

作った後に気づいたが、これではただ自分の星座を作っただけである。仲良し要素がどこにもないことに気が付いてしまった。これでいいのだろうか。

「でも、これはこれでいいんじゃない?」
「うーん、いいのか?」
「いいっていいって。それよりもっといっぱい作ろうよ!」

発案した人は満足しているみたいだし、これでいいのだろう。きっと。

「せやなぁー……もっといろいろ作ってみよっと」

彼女の言う通り、一緒に様々な星座をもっと作ろうではないか。
俺は星空を眺め、再びどんな星座を作ろうかを考えた。
結局、この日は2人で夜遅くまで星座作りに勤しむことになった。



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