50年前に滅びた世界で

たかき

第18話 市長室

資料室を後にすると、この建物の探索を引き続きやることにした。室内で読んだ3冊の本はもっていくことにし、今は学生鞄の中に入っている。今は読む気力はないが、そのうち回復するだろう。
そうして探索をつづけたのだが、食べ物もなければ特に面白そうなものもなかった。まあ役所に面白そうなものが置いてあるだなんて期待していなかったが、それにしてももっと何かあってもいいのではないだろうか。
そんなこんなで3階までたどり着いてしまった。

「よっと……この扉は……市長室って書いてあるから市長室か」

3階に上がって一番最初に見つけた扉、その扉の上にある古びた金属製のプレートには市長室と書いてある。市長室だがら今まで見たドアの中で一番ゴージャス……なんてことはなく、見た感じ他のドアと変わらなさそうだった。

「ここがこのあたりで一番偉かった人がいたところってこと?」
「まあ市長室って書いてあるからそうだろうね」
「じゃあこの部屋にお宝があるんだよねぇ」
「え? それマジ?」
「えっ、て……ユウトがお宝とかがあるって言ってたじゃん。しふくがどーのこーのって」
「あ……えっと、まあ、そうだよ」
「何があるんだろうねぇ、ちょっと楽しみだなぁ」
「ソソ、ソウデスネェ」

完璧に忘れていたが、そういえば勢いでそんなことを言ってしまった気がする。彼女は結構期待しているみたいだが、実際早々お宝とかなんてあるわけない。が、お宝がなかったら俺が言ったことが間違っていたということになってしまう。それはあり得ないことなので、この部屋にはお宝があるのだ。QED証明完了である。

「まあ、何かあるっしょ。いざ御開帳!」

俺が作ってしまった期待をしり目に、俺は扉を開ける。ギイイィィという扉を開ける音をまき散らしながら部屋の中へと入った。
部屋に入って正面には市長が執務を行うのに使っていたであろう木製のデスクや椅子、本棚、大きな時計や絵画などがあった。デスクの後ろには旗が2つ、恐らくこの街の旗とこの街がある国の国旗だ。国旗で思い出したが、未だに今いる国の国名がわかっていないのだ。先ほどの資料室ではここの街は 市という名前ということはわかったが、肝心の国名が分かるものはなかった。そこにある旗にブラジルの国旗みたいに何かが書いてあるなんてことはなく、普通に緑、黄色、オレンジ、青の4色縦縞の旗だった。
だが、この部屋の中で旗以上にひときわ目を引くものがあった。

「……あれって骸骨っすか?」
「うーん、そうかも」

デスクの上に人間の頭蓋骨と思しきものがあった。恐る恐る近づいてみるが、椅子には服と共に体や腕の保手があったり、床に足とか手とかの骨が落ちてたりしている。ここにあるのは正真正銘、人間の骸骨だった。

「うわ、返事をしないただの屍やん。え、これ本物? あーでもそうだよな……」

今まで見つけこそしなかったが、考えれば50年前に世界が滅んだんだから白骨死体の1つや2つあってもおかしくはない。
見た感じこの椅子に座りながら死んだみたいだが、この屍は市長なのだろうか。遺体を包むようにある服もなんか市長っぽいし、この部屋で死んだということはそうなのかもしれない。

「とりあえず合掌でもしておくか……」

海外だと酒をかけたり花束を置いたりしてそうだが、そんなものないし俺は日本人なのでそんなことはせず、手を合わせ、目を閉じることにした。特に故人の思い出とかは全くないが、遺体が目の前にあるのでなんとなくやらなければと感じてしまった。

「何やってるの?」
「これは合掌って言って……なんというか、死んだ人を哀悼する? 弔う? まあとにかく死んだ人に対してやることだよ」
「ふーん……私もやってみよ」

俺と同じように手を合わせて目を閉じる。俺も同じようにもう一度やることにした。
この空間に数秒の沈黙が訪れた。

「……こんな感じでいいのかな。ねえ、これって骸骨1つに一回ずつやればいいの? 骸骨いっぱいの時はどうするの?」
「あー、あんまり知らないけど一杯あるときは一回だけやればおkなんじゃない? というか骸骨一杯の所とかあるの?」
「昔の病院っていうところにいっぱいあるよ。ベッドの上とかに」
「マジ? ちょっとそこには近づきたくないなぁ……」

骸骨の山があるそうだが、そんなところにわざわざ行く気はしなかった。病院のほかに軍事施設とかにも骸骨がいっぱいかもしれない。

「市長さんの前でちょっと申し訳ないけど、部屋の中色々探してみるか」

遺体に見られながら探すというのは何か罰が当たりそうな気がするが、だいぶ前に死んだっぽいから多分祟られたりとかはしないだろう。多分。
しかし、探すといっても大して広い部屋ではないし、本棚とデスクの棚くらいしか探すところはなさそうである。
とりあえずデスクの棚を開けてみる。1段目の棚にはオイルライターやたばこ、たばこの灰皿、懐中時計、ペンといったものがあったが、それだけである。2段目、3段目と開けてみるが、こちらには何も入っていなかった。
本棚にはいくつかの本が入っているみたいだが、全滅しているみたいで読めそうなのはなかった。

「うーん、この部屋にはやっぱ大したものはないっぽいな……」

もう一度周りをぐるっと見渡したが、どうやらこの部屋に貴重そうだったり価値がありそうなものはないみたいである。この部屋の中で一番価値がありそうなのは飾ってある肖像画くらいだろうか。結構ぼろくなっているが、何を書いているものなのかはわかる。男の人で、お高そうな服に身を包み王冠をかぶっている絵だ。この人は国王的な何かなのだろうか。芸術のことはよくわからないが、結構いい画なのではないだろうか。とにかく一番価値がありそうなのがそれくらいだった。

「そうなの? それじゃあお宝はどこにあるの?」
「え、えーっと……」

見た感じ、お宝と呼べるようなものはどこにもなかった。一方で彼女はお宝がある気満々のようだ。まずい、これはまずいぞ。ここはどうやって切り抜けるべきだろうか。やはり正直にお宝はないとでも話すか。

「あー……ないっぽいすね」
「そんなー、さっきはお宝があるって言ってたじゃん!」
「いや先ほどの発言はお宝があるかもしれないという推察を述べただけであり、お宝があると断定するものではなかったと私共は認識しております」
「えっと、つまり?」
「お宝があるかどうかはわからなかったってこと」
「えー、なんかやな感じ……」
「やぁすいませんねぇ。いやでも、きっとどこかに隠し扉的なものがあるかもしれないぞ!」
「隠し扉?」

俺が言ったことに、彼女は首を傾げた。

「そうそう。もしかしてそのボタンがどっかにあるかもしれないよ」
「ええー、それってどこにあるの?」
「まあそうですねぇ、隠し扉のボタンなんだからボタンの方も隠れてなきゃいけないからねぇ、その机の下とか本棚の裏とか……」
「机の下? 見てみよっと……あっ、ここにボタンみたいなのがあるよ」
「そうそう、机の下とかに……え、マジで!?」

彼女の言ったことに驚いてデスクの下を覗いてみると、腕一本入るような隙間の所にそれはあった。暗くてよく見えないのでスマホのライトで照らしてみると、間違いなく、緑色のボタンがそこにあった。

「これは……完全にボタンですな。これはもう押すしかないな!」

ボタンがあったらとにかく押すものだ。俺はファミレスなんかではボタンを押しまくるし、アメリカ大統領になったらまずは核発射ボタンを押すつもりでいる。市長の骸骨がすぐ近くにあるにもかかわらず、俺は机の下に腕を伸ばすと躊躇なくそのボタンを押した。
ボタンを押してすぐに、ガチャンだとか、ギシギシというが音が聞こえる。なんというべきか、歯車とかが回っているような音だ。

「何なの、この音?」
「いやぁー何が起きるんでしょうねぇ。なんかこっちの方から音がきこえてるなぁ」

本棚がある方から音がしているみたいなので、棚に耳を近づけ、そして引っ付ける。どうやらこの奥から音がしているみたいだ。
突然、寄っかかっていた本棚が回転し始めた。驚いて距離をとる。数秒もたたないうちに本棚が90度回転して、隠されていた空間が明らかになった。

「……うわぁぁ! うわぁぁ!」

大事なことなので2回言った。これは完ぺきに隠し扉である。まさか本当にこんなものが存在していただなんて……

「すごい、なにこれ!」

アンジェラはおそらく初めて見たのであろう隠し扉を見て、少し驚きながらもはしゃいでいる。
かくいう俺もテレビとかでは見ても実物を見たことはなかったので、同じく驚き、そして同じようにはしゃいだ。

「すごいすごい、これはもうお宝が隠れているに違いありませんなぁ」

どうやら俺の予想は当たっていたみたいだ。ここの長はやはり私腹を肥やしていたに違いない。きっとこの先にはすごいお宝があるのではないだろうか。

「こりゃもう入るしかありませんねぇ」

絶対に何かがある。そう確信した俺は、その出現した空間へと足を運んだ。



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