50年前に滅びた世界で

たかき

第17話 読書の時間

「えっと……『世界樹の森の不思議』『魔法大全』『ボスリャニア大陸史総集編』……有益そうなのはこれくらいかなぁ」

探し始めて十数分は経っただろうか。もう少し時間が必要だと思っていたのだが存外早く終わってしまった。調べた結果、この3冊の本を見つけることができた。
この3冊以外にも読めそうな本はいくつかあったのだが、住民の台帳とかの役所関係の奴だったり、なんかよくわからない小説だったり、小難しい社会に関する本だったりしたので、一番有益だったりおもしろそうなこの3冊だけ読むことにした。
全く知らない言語もすらすら読めるという地味なチート能力を利用しながら、俺はとりあえず『ボスリャニア大陸史総集編』を読み上げ始めた。といっても最初のページからではなく、適当に開いたページからである。どの本も辞書ほどの厚みがあるわけではないが、それでもいつも読んでいるラノベとかの1.5倍以上は厚さがある。そんな本を全部読むような気はしなかった。

「何々……ボスリャニア大陸の東半分を占めるグレンド・パリスティア自由帝国に対抗するために創設されたシェルトリムズ連盟は、自由帝国と永世中立を謳うステリジャフ共同体以外、ボスリャニア大陸すべての国家が加盟している機関です。この連盟は881年に交わされた永久の盟約に基づき、当時のベリヤ独立国家連合とソンブ公国、カーディア王国の3国が原加盟国となり構成された機関でした。この連盟設立によって当時勢力を拡大し続けていた自由帝国の肥大化を防ぎました。連盟の構成国は軍事的、経済的に強固な関係を築いており、その関係は現代にも続いています……なるほどなるほど、よくわかった」
「んー……えーっと……」

俺はすべてを理解したかのような表情を浮かべさせた。一方のアンジェラは、どういうことか、よくわかっていないみたいだった。

「……聞いても私にはよくわかんないや。どういうことなの?」
「フフ……少女よ、驚くがいい」

俺はアンジェラの方を向き、そして。

「俺も急に色々と国の名前とか出てたしよくわからん!」

堂々とそう宣告する。はっきり言ってちんぷんかんぷんである。そんないきなり知らない国の名前だとか出されても普通に困る。

「ええ!? でもさっきなるほどとか、わかったとか言ってたじゃん!」
「いやあれは大してわかんないということが分かったって意味だから」
「しょんなー」

無知の知が大切だって昔の偉い人が言っていたような気がするし、わかっていないというのをわかっているというのはそれだけで偉いのだ。多分。
ただ、そうは言っても今読んだ内容を完全に理解していないわけではない。今のを見た限りだと、このなんちゃら連盟は自由帝国とかいうなんだか矛盾してそうな名前の国に対抗するために3つの国が永久の盟約とかいうかっこよさそうな名前のやつをもとに作られた機関みたいだ。軍事や経済の同盟と書いてあるので、NATOとかEUみたいな感じの国際機関なのだろうか。
この文章を見ると、自由帝国と他の国との仲はあまりよくないように感じる。
もしかして、50年ほど前に起きたという戦争も自由帝国とか連盟とかが関係しているのかもしれない。

「よし、じゃあ次の本を読もう!」
「え、この本はもう読まないの?」
「俺かわいいイラストとかついてないと本を読む集中力が半減するからこれ以上無理」

アンジェラの提案を俺は一蹴した。今時かわいい女の子だとかのイラストがついていない書籍だろか時代遅れも甚だしいったらあらしない。現代でもイラストがついていない本は結構多い気がするが、俺は未来に生きているので問題はない。

「よし、次はこの本にしよう。魔法覚えたいし」

というわけで次に『魔法技術大全』というタイトルの本を見てみることにした。例のごとく途中のページからである。

「えーっと……魔法の歴史はとても古く、有史以前には既に存在していたものと推測されている。世界樹の森から出される魔素は、すべての魔法の源となっているが、この森は少なくとも800万年以上前には既に存在している。古来、魔法は大半の動物であれば利用できており、人間、エルフ、ドワーフなども例外ではない。だが、今日見られている魔法理論、魔術式計算をはじめとした体系的魔法学は、今から2000年以上前にその基礎が形作られた。科学技術の発展する今日においても、魔法は重要な役割を果たしている……おい、そういうのはいいから早く魔法の使い方とか見せろ!」

こっちは今すぐにでも魔法を使ってみたいというのに、この本は前置きが長い。いいから早く本題に入れよ。
というわけでパラパラとページをめくっていく。が、それらしいページは見つからなかった。

「うーん、この本に載っていると思うんだけどなぁ」
「ちょっと見せてみて……」

アンジェラが探してくれるみたいなので、彼女に本を渡す。俺とは違って最初のページから1枚、1枚とめくっていく。やがてパラパラと一気にページをめくるようになった。

「……この本、魔法の覚え方とかは乗っていないみたい」
「えー、この本使えねーなおい、タイトル詐欺ちゃいます? まあ別の本さがすか」
「でも……見た感じほかに読めそうな本はないよ。魔法書もないみたいだし……」
「は? これはもう俺の人生終わった、さようなら皆さん、さようなら……」
「ま、まだ終わってないよ!」

そんなこと言われても、まだ魔法が使えないだなんて生殺しされているようなものである。こっちははよ使ってみたいと思っているというのに。

「というか、魔法書なしでも魔法とか教えられないの?」

そういえば、彼女は俺の前で披露したように色々と魔法を使えるのだから、彼女から教わればいいのではないだろうか。そんなに魔法書がないといけないのだろうか。

「ええ、それはちょっと。魔法書がないことには何も……」
「うわぁ……まあしょうがないか……」

どうやら魔法書無しでは何も始められないみたいだ。俺はかなり落胆した。だがいつまでも無い物ねだりをしていてもしょうがない。楽しみは後にとって置いといたほうがいいというし、ひとまず諦めておこう。
気を取り直して、最後に『世界樹の森の不思議』を見ることにした。そういえばさっきの本に世界樹の森から魔素が出ているだとか書いてあった気がする。この本はその森について詳しく書いてあるに違いない。

「えーっと、ソンブ公国に存在する世界樹の森は魔法の源となる魔素を出す森である。この森は文字通り世界的な影響を与えており、世界樹から出される魔素はあらゆる魔法の源となっている。この森は少なくとも800万年以上前から存在しており、魔素も同様にそのころから存在していた。この森がどのような成り立ちで形成されたかについてはほとんど解明されていない。
この森の木々から出される魔素はすべての魔法の源になっているが、この魔素についても研究は進んでいない。だが、魔素の濃度が一定値を超えると生物へ有害な影響をもたらす可能性が高いと近年の研究で明らかになっている。放出される魔素の量は現在は安定しているものの、もしこの量が増加してしまえば、健康被害などが発生する懸念もある。現在各国の研究者たちが世界樹の森の成り立ちや魔素発生のメカニズムなどを研究しているが、いまだ解明されていない謎も多く残っている……さっきの本にも載っていたけど、魔法には魔素ってやつが必要なのか」
「うん。見えないけど、周りには魔素がいっぱいあるんだよ。それがないと魔法は使えないの」
「あっ、知ってたんすね」

どうやら魔法を使うときには周りにある魔素とやらが必要不可欠みたいだ。そしてその魔素とやらが世界樹の森というところから出ているということも。
同じページにはとても多くの木々がある森が写ったモノクロ写真が載っていた。これが世界樹の森なのだろうか。モノクロだからか日本とかにもあるような感じがするが……実物は違って感じるのだろうか。
まだまだ知らないことは数多くあるが、俺はこの本3冊で異世界についての知識を少しだけ得ることができた気がする。




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