50年前に滅びた世界で

たかき

第16話 中の探索

建物に入ってすぐは吹き抜けのエリアが続いていた。1階の入り口から3階までを見渡すことができる。その上はガラス張りの天井があり、お天道様をのぞくことができる。建物のデザインは結構雰囲気がよさげである。建物の中はシダなどはほとんど見受けられなかったが、他の建物と変わらずボロボロである。

「やっぱボロボロやなー……っと」

建物の中をゆっくりと進んでいく。全体がコンクリート製だからか強度の方は問題なさそうだが、コンクリの一部が欠けているところもあるし、手すりなんかは木製みたいなので大部分が腐食しているみたいだ。

「ここってどんな建物なのかな、食べ物とかいっぱいあるかなぁ」
「うーん、役場に食べ物とかは置いてないんじゃないかな……」
「そう……やくばってなんなの?」
「このあたりの偉い人がいるところ、って説明であってるのかな……」

この子に行政だとか公共事務だとかを一から教えるのは骨が折れそうだし、俺もそこまで詳しいわけではない。まあ、役所って市長とかがいるところだしこの説明は間違っていないだろう。

「へー……じゃあここには何があるのかなぁ」
「どうだろう、大したものはないかも……いや、もしかしたらここの市長が私腹を肥やしていてなんかすごいお宝とかがあるかもしれない!」
「お宝って……ぽてちみたいな?」
「いやいや、それはちょっとしょぼすぎる。やっぱり金銀ダイア、ルビーサファイアエメラルドとかかなぁ。宝石って知ってる?」
「ダイアとかは聞いたことがあるよ。昔はすごく価値があったキラキラしたものだって……」
「昔かー。まあ、そうだよなぁ」

この滅びてしまった世界で今も宝石類の価値があるのかはわからないが、少なくともロマンはある。ここいらの村長だか町長だか市長だか県知事だかが本当に私腹を肥やしていたのかなんてわかるわけないが、そういうことにしとこう。
全く根拠のない期待感を膨らませながら、建物の奥へと進んでいく。役場らしく受付のカウンターがいくつもあったり、奥には多くの机や棚がある。恐らく役場の職員以外は入れないエレアを堂々と進む。
入ってすぐの所は吹き抜けだったり窓があったりで結構明るいのだが、奥の方は暗い空間が広がっていた。このまま進むのは嫌なのでポケットに入れていたスマホを取り出してライトをつける。

「その手に持っているのって何なの?」
「スマートフォンっていう電子機器なんだけど、いろいろ便利でっせ」
「ふーん、火がなくても明るくできるんだね」
「いやまあ、それ以外にもいろいろできるけどね……」

懐中電灯機能を使って周囲を照らしながら進んでいく。広い空間から廊下みたいなところへと足を運ぶと、いくつかの部屋の入り口があった。とりあえず、一番近くの扉を開けてみる。
扉を開けてまず最初に目に入ったのは、本が入っている本棚だった。次に目に入ったのは本が入っている本棚、その次に目に入ったのは本が入っている本棚……と、とにかく多くの本棚が目に入った。

「ここは図書館……いや、図書室なのかな」

役場内に作られた図書室、資料室といったほうがいいだろう。大きめの学校の図書室と同じくらいの収容量だ。だが、一部の棚は倒れており、本も半数以上は棚から落ちてしまっている。

「割と収容量は多いみたいだな……なんか面白そうなのはないかな」

日本史や世界史はそこまで好きではないが、この世界がどのような世界なのかはかなり興味があった。そこいらがわかるような資料があればいいのだが……
とはいっても、そう簡単にはいかないだろう。世界が50年前に滅びたというのなら、当然ここにある本は50年以上前に作られたものということになる。50年以上もたてば紙は劣化し、ボロボロになって読めなかったり、湿気でダメになるということも考えられる。現に昨日の探索では本らしきものを見かけることはなかった。確かにここには大量の本が残っているが、保存状態がいいというわけではなさそうだし、ここにある本すべてが読むことができるという訳ではない。いや、読めなさそうなのがほとんどを占めている。

「うへぇ、どれもボロボロだな……カビとか生えてるかもなぁ。マスクと手袋が欲しい……」

残念なことにマスクも手袋も持っていないので、左腕で口のあたりを覆うしかない。一方のアンジェラはそんなことを気にする素振りを全く見せていない。なんて子なんだ。

「本がいっぱいあるね……大丈夫? お口隠しているけど」
「うーん、まあ大丈夫、って程ではないけど……まあ、俺のことはいいから本とかいろいろ探しましょ」
「そう……わかったけど」

とりあえず、読めそうな本を探してみるか。口を覆っている腕の手にスマホを持ちながら、もう片方の手でよさそうな本を手当たり次第探しはじめる。アンジェラも俺の近くで本を探してくれているようだ。書籍はどれもがかなり劣化しており、中には手に持っただけで崩れてしまいそうなものもある。それでも、数百、数千冊の本の中には一応読めそうな本とかもあるだろう。

「……そういえば、アンジェラちゃんは本とかって読めるの?」
「一応読めるけど……でもあんまり。お父さんに教わったりしたけど、読めない文字とかもあるよ」
「なるほど……俺は読めないと言いたいところだけどすっげえ読める。これってタイトルは世界樹の森の不思議、で合ってるよね?」
「えっと……うん、合ってるよ」

手に持っている本に書かれている言葉は日本語……なんてことはなく、アラビア文字だとかペルシャ文字だとかアルファベットとかがごっちゃになった感じの文字だった。国語の成績が3、英語の成績が2の俺からしたらちんぷんかんぷんかと思いきや、もはやネイティブといっていいほどすらすらと読める。日本語を見ているのと何ら変わらないほどだった。
考えてみるとアンジェラとも普通に会話できているし、恐らく召喚された時に魔法的な何かでこの世界の言葉を理解できるようになったのだろう。召喚した人が全く話が通じないようじゃ色々と不都合だろうし。
地味なチート能力を駆使しながら、2人でこの部屋の本を片っ端から見続けた。



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