カタキリキズナ童話集
ひとりのライオン
 むかし、あるところにライオンの群れが住んでおりました。
 群れのリーダーのオスライオンはとても強く、このあたりの群れの中ではいちばん強いと言われてました。
 しかし、オスライオンは自分が強いのをいいことに、群れの中ではとても横暴で、仲間たちに威張り散らしていました。
 そのようすをずっとみていた一匹のこどもライオンは、そんなオスライオンを見て「かっこわるい。」と言いました。
「ぼくが大人になったら、誰にも負けないし誰にでも優しい、そんなライオンになるんだ!」こどもライオンは決意しました。
 それからこどもライオンは、たくさん狩りの練習をして、たくさん戦う練習をしました。誰にも負けないために、たくさんたくさん狩りと戦の練習をしました。
 そしてそれからしばらく経って、群れのリーダーは年老いて死にました。偉そうな態度を取っていたリーダーですが、死ぬ時はみんなに死を惜しまれていました。長年群れを守って支えてきたのは、いくらふんぞり返って横暴を働いていたとしてもやはり彼だったのです。
 成長したこどもライオン……若ライオンは、そんな彼の姿を見て「なんであんなかっこわるい奴がみんなに好かれているんだろう。」と思いました。
 群れのみんなは次のリーダーを選ぶため、話し合いをしています。
「狩りも戦も、誰よりも練習したし、誰よりも僕は詳しい。だから、新しいリーダーになるのは絶対に僕だ。」若ライオンはそう信じていました。
 しかし、実際に選ばれたのは死んだリーダーの息子でした。「どうして?」とみんなに聞くと、みんなは口を揃えて「リーダーの息子だから」と答えました。
 若ライオンはショックを受けました。たったそれだけで認められないんだ、と嘆きました。
 その日から、若ライオンの心はとても荒んでいきます。昼間、狩りにも出ず、群れを守りもせず。仲間の文句ばかり言っていました。
 新しいリーダーは失敗することなく、群れを守ったり、狩りをして自分の仕事をこなしていきます。「あんな奴が出来るなら、僕には簡単に出来る。」若ライオンはどれだけ新しいリーダーが結果を残そうと認めることはありませんでした。
 そのうちに、一頭、また一頭と若ライオンと距離を取るようになりました。そんな様子に若ライオンは腹を立て、仲間たちにもっともっとひどいことを言うようになりました。
「お前たちなんて、もう仲間じゃない。」若ライオンは、その言葉を言ってしまいました。大変なことをした、そう思った若ライオンは群れのみんなに頭を下げました。しかし、心が傷ついたみんなはついに若ライオンを許すことが出来なくなりました。
「お前はもうこの群れに置いておけない。」リーダーは厳しい表情で言いました。「認めてもらえないならこんな群れ、こっちから出ていってやる!」若ライオンは文句を言いながら群れを出ていきました。
 その日、若ライオンは生まれて初めてひとりの夜を過ごします。目を瞑ると、あれだけ文句を言って傷つけた仲間の顔が 
、何故だか思い浮かんできます。
「こんなこと、したくなかったのに。」そう若ライオンは呟くと、頬に熱いものが流れていくのを感じます。それがどんな涙かというのは、若ライオンには分かりませんでした。
 それから若ライオンは一人で生きて、考えて。その中でやっと知ることが出来ました。「僕はいつの間にか、僕がきらいだった人よりももっと嫌なものになっていたんだ」と。
 若ライオンは、ずっと誰かのためにやってきました。だから若ライオンはそれが叶わなかった時、その誰かにきつく当たってしまったのです。
 若ライオンは、いつの間にかその誰かのための爪と牙を、守るべき誰かに向けていたのです。
 そして、その爪と牙は他の者だけでなく、自分自身も切り裂いていたことを若ライオンは知ってしまいました。
「ごめんなさい。僕は取り返しのつかないことをしてしまった。」悲しく、若ライオンは吠えました。声が枯れるまで吠えても、返ってくるものは何もありませんでした。
 群れのリーダーのオスライオンはとても強く、このあたりの群れの中ではいちばん強いと言われてました。
 しかし、オスライオンは自分が強いのをいいことに、群れの中ではとても横暴で、仲間たちに威張り散らしていました。
 そのようすをずっとみていた一匹のこどもライオンは、そんなオスライオンを見て「かっこわるい。」と言いました。
「ぼくが大人になったら、誰にも負けないし誰にでも優しい、そんなライオンになるんだ!」こどもライオンは決意しました。
 それからこどもライオンは、たくさん狩りの練習をして、たくさん戦う練習をしました。誰にも負けないために、たくさんたくさん狩りと戦の練習をしました。
 そしてそれからしばらく経って、群れのリーダーは年老いて死にました。偉そうな態度を取っていたリーダーですが、死ぬ時はみんなに死を惜しまれていました。長年群れを守って支えてきたのは、いくらふんぞり返って横暴を働いていたとしてもやはり彼だったのです。
 成長したこどもライオン……若ライオンは、そんな彼の姿を見て「なんであんなかっこわるい奴がみんなに好かれているんだろう。」と思いました。
 群れのみんなは次のリーダーを選ぶため、話し合いをしています。
「狩りも戦も、誰よりも練習したし、誰よりも僕は詳しい。だから、新しいリーダーになるのは絶対に僕だ。」若ライオンはそう信じていました。
 しかし、実際に選ばれたのは死んだリーダーの息子でした。「どうして?」とみんなに聞くと、みんなは口を揃えて「リーダーの息子だから」と答えました。
 若ライオンはショックを受けました。たったそれだけで認められないんだ、と嘆きました。
 その日から、若ライオンの心はとても荒んでいきます。昼間、狩りにも出ず、群れを守りもせず。仲間の文句ばかり言っていました。
 新しいリーダーは失敗することなく、群れを守ったり、狩りをして自分の仕事をこなしていきます。「あんな奴が出来るなら、僕には簡単に出来る。」若ライオンはどれだけ新しいリーダーが結果を残そうと認めることはありませんでした。
 そのうちに、一頭、また一頭と若ライオンと距離を取るようになりました。そんな様子に若ライオンは腹を立て、仲間たちにもっともっとひどいことを言うようになりました。
「お前たちなんて、もう仲間じゃない。」若ライオンは、その言葉を言ってしまいました。大変なことをした、そう思った若ライオンは群れのみんなに頭を下げました。しかし、心が傷ついたみんなはついに若ライオンを許すことが出来なくなりました。
「お前はもうこの群れに置いておけない。」リーダーは厳しい表情で言いました。「認めてもらえないならこんな群れ、こっちから出ていってやる!」若ライオンは文句を言いながら群れを出ていきました。
 その日、若ライオンは生まれて初めてひとりの夜を過ごします。目を瞑ると、あれだけ文句を言って傷つけた仲間の顔が 
、何故だか思い浮かんできます。
「こんなこと、したくなかったのに。」そう若ライオンは呟くと、頬に熱いものが流れていくのを感じます。それがどんな涙かというのは、若ライオンには分かりませんでした。
 それから若ライオンは一人で生きて、考えて。その中でやっと知ることが出来ました。「僕はいつの間にか、僕がきらいだった人よりももっと嫌なものになっていたんだ」と。
 若ライオンは、ずっと誰かのためにやってきました。だから若ライオンはそれが叶わなかった時、その誰かにきつく当たってしまったのです。
 若ライオンは、いつの間にかその誰かのための爪と牙を、守るべき誰かに向けていたのです。
 そして、その爪と牙は他の者だけでなく、自分自身も切り裂いていたことを若ライオンは知ってしまいました。
「ごめんなさい。僕は取り返しのつかないことをしてしまった。」悲しく、若ライオンは吠えました。声が枯れるまで吠えても、返ってくるものは何もありませんでした。
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