闇鍋スキルの乱法師

西洋躑躅

第六話:冒険者になってみよう

神の案内で俺は街の中央に存在するギルドにまでやってきた。

扉を開けて中に入ると、正面にコの字のカウンターが配置されており、何人かの受付嬢らしき人物がこれまた冒険者らしき人間の対応を行っていた。

「ザ・冒険者ギルドって感じだな」
『依頼を受ける為の場所だからね。そう奇抜である必要はないだろう?』
「まぁな。とりあえず依頼を受けたいんだが、いきなり行って受けられるのか?」
『いや、まず登録を済ませよう。右奥が登録用のカウンターだよ』

その言葉に従い、俺は右奥のカウンターまで移動してカウンターの向こう側に声を掛ける。

「すみませーん、冒険者の登録をしたいのですが」
「あ、はーい少々お持ちください。ミーダ!登録希望の方が来たから対応お願い!」
「はぁーい」

受付嬢の一人がカウンター裏の扉に向かって声を掛けると、扉の向こう側から間延びした声が返ってきた。

それから間もなくして一人の女性が扉から出てやって来る。

ウェーブの掛かった茶髪に糸目と泣きボクロが特徴的な女性だった。

「冒険者登録希望の方ですかぁ?」
「あ、はい。初めてなので良く分からないのですが何するんですかね?」
「冒険者登録なんてそう何度もやるものですし、初めてなのは当たり前ですよぉ、可笑しな人ですねー」

女性はのほほんと笑いながら、一枚の紙とペンを取り出す。

「書類には私が書きますから、質問に答えてくださいー。それで登録は終了ですー」
「あぁ、はい」

マイペースな女性にこっちのペースを乱されながらも俺は女性の言う通りにする。

「ではまずお名前からー」
「な、名前、ですか?」
「はいー何かご不都合がー?」
「不都合と言うか……その、名乗るのが恥ずかしくて」
「あーもしかしてアレスってお名前ですかー?」
「アレス?いえ、そんな名前では無いですが」

別段普通っぽい名前だが、この世界じゃアレスって名前は何かあるのか?。

「そのアレスって言うのは恥ずかしい名前なんですか?」
「いえー、十数年前に活躍した英雄の名前で決して恥ずかしい名前という訳ではありませんよー。当時は英雄にあやかって子供にアレスと名付ける方が沢山おられましてー、立派な名前だとは思うのですがー英雄と同じ名前というのが恥ずかしいという方も大勢おられますのでー、年頃的に丁度アレス世代に見えたのでそうなのかなーと思った次第ですー」
「なるほど」

やっぱりどの世界にも実在の人物に憧れてその名前を子供に付ける親は居るんだなと、まだ見ぬアレス世代と呼ばれる子供達に同情する。

「ではー一体なんてお名前なのでしょうかー?」

そうだ名前どうしようかな。

「ちなみに偽名って有りですか?」
「無しでお願いしますー」
「ですよねー」

まぁ予想は出来てたけど、そうなるとマジでどうしよう。
ジャイアント・モリで登録とか流石に嫌すぎるんだが。

そうして悩みに悩んだ俺の出した答えは――

「俺の名前は」
「お名前はー?」
「モォリィです」

イントネーションで誤魔化す事にした。

「モーリーさん、ですかー?」
「モォリィです」
「えーとぉ……」
「モォリィです」
「……では、モーリーで申請しておきますねー」

よし、ゴリ押せた。

『ちょっと待ちなよ!君の名前はモリであってモーリーではないだろ!そもそもジャイアントも抜けてるし!』

うるせぇ、ちょっとモリをネイティブっぽく発音してみただけで、モーリーと勘違いしたのは向こうだから俺は悪くねぇ。

ちなみに和名なのにネイティブとは?というツッコミも受け付けない。

こうして俺はギャーギャーと騒ぎ立てる神を無視して冒険者モーリーとして登録を終えるのであった。

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