闇鍋スキルの乱法師

西洋躑躅

第四話:変態爆誕


ここは静謐な雰囲気が漂う教会、敬虔な信徒達が神に祈りを捧げる神聖な場所。

今日もまた司祭がアナロイの前に立ち、信徒達と共に神に祈りを捧げていた――その時だ。

突如、天空から光の柱が教会内部へと落ちてくる。

「こ、これは……!?」
「まさか、我らが主が!」

神が降臨なされたと、信徒達が光の柱に向かって跪き、頭を垂れる。

教会内の全ての人間が静かにその降誕を見守る中、光の中からその者が姿を現した。

顔は血で汚れたホッケーマスクで隠れ表情は見えず、背中にチェーンソーを背負い、胴体には薄い胸を隠すビキニアーマー、腰には主張の激しい白鳥の頭が付いたドレス、両手にはキャットグローブをはめ、網タイツを履いた紛うことなき変態である。

全員が唖然とそれを見つめる中、それはキャットグローブをつけたまま器用に背中からチェーンソーを手に取ると、紐を引いてチェンソーのエンジンを噴かせる。

ドゥルルルルン!ドゥルルルン!ブィィィィィィィィィン!!

「ば、化け物だぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

その騒音に我に返った信徒達が我先にと教会の外へと逃げ出していく。

やがて教会内には変態と、変態が手に持つチェーンソーから発せられる騒音だけになった時、変態がチェーンソーを止める。

「どうやら本当にモンスターも居ない安全地帯らしいな。つーか視界が悪すぎ!」

そう言いながら変態がホッケーマスクをずらす。

ホッケーマスクの裏から現れたのは森 乱丸ことジャイアント・モリであった。










『だからちゃんと安全な場所に降ろすって約束しただろう?』
「最初に出発地点ランダムにしようなんて言い出した奴の言葉なんか信じられるかよ」

脳裏に響いて来る声に俺は答えながら周囲を見渡す。

さっきまで視界が悪くて良くは見えなかったが、どうやらここは教会らしい。
すぐにチェーンソーを構えて臨戦態勢に入ったが無駄な心配に終わったようだ。

「さて」

周囲の安全は確認できたので、今度は俺自身を確認する。
正直見たくも無いのだが、見ない事には始まらない。

「……」
『あれ、どうしたんだい?急に黙り込んだりして』
「いや、今の自分の姿を見てすげぇ死にたくなっただけだ」

この世界に降り立つためにと名前を変更した後、次に身なりを決めようという話になった。
もうその段階で嫌な予感はしていたのだが、案の定それもダイスでということになった。
しかも頭、胴、腰、腕、脚、武器ごとに全部ランダムというのだから統一感が無くなる事は必死、そしてやってみた結果は御覧の通り

【武器】チェーンソー
【頭】ホッケーマスク
【胴】ビキニアーマー
【腰】白鳥ドレス
【腕】キャットグローブ
【脚】網タイツ

字面だけでもヤバかったのに、いざ実際に目撃するとその衝撃的な光景にもう死にたくなってしまった。

『死ぬだなんて、そりゃ困るよ!君にはランダマイザの力を極めて貰わないと!』
「だったらせめてもうちょっと選ばせてくれ」

この姿はあんまりにも酷過ぎる。

『んーしょうがないなぁ。店の場所を教えるからその装備を売ってちゃんとした服を調達しに行こうか。でもその前に――』
「おい、ここにその化け物が居るのか!?」
「は、はい、私達が主に祈りを捧げていたら突然空から」

何時の間にか、何やら教会の外が騒がしくなっており、どうやら逃げ出した信徒達が衛兵を連れて戻ってきたようだった。

『今は逃げよう!』
「畜生!なんでこうなるんだ!」

顔を隠すためにホッケーマスクを被り直し、垂れていた暗幕を引き摺り下ろして身体に巻きつけ、教会の入口から入って来る衛兵達から逃れるように教会奥のステンドガラスをぶち破って脱出する。

背後から聞こえてくる衛兵達の怒号を聞きながら、俺は見事衛兵達を振り切る事に成功したのであった。

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