イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜
第68話 見誤るな
走り始めると見晴らしが良いからか、それとも魔物《モンスター》が多いからか、すぐに見つけることが出来た。
今度は、青い体をした細身の魔物《モンスター》だった。骨が無いかのようにだらんとした姿勢をしており、且つ筋肉が無いかのように脱力しているように見える。
2体しか見えないが、その2体は持っている武器が違う。片方は槍で、もう片方は鎌だ。
「——!」
次に瞬きをして目を開けたとき、ソイツはすぐ目の前にいた。勝手に身体が反応していた。
精一杯に魔力をぶつけ、その反動と全力のステップで必死に距離をとる。自分の間合いにギリギリ入るくらいの距離を。
「……やっっばぁ、さっきのとは比にならない魔物《モンスター》だ絶対」
うーん、もしこれがSランクだったらどうしよ。でもだからって、Aの可能性だってあるんだ。だから、退くって選択肢はないな。
「グギギギャグア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
奇声のような、笑い声のような、不快な音を上げながら槍の方がとてつもない速度で襲ってくる。
そういえば、この種目での安否って、どうなるんだろう? ふと至ってしまった。死ぬ可能性はないのかな? 死ぬのは、やだなぁ……。
どういう訳か焦っていた気持ちが急に落ち着き、穏やかになった。
目に見えない速度でそいつらは暴れ、次々に何もかも破壊していく。まるで、自分らの力を誇示するように。格下に見せつけるように。
その暴挙に引かれたのか、他の魔物《モンスター》も寄せられるように集まってきた。
黒い鬼のような奴が、棍棒を肩にかけている者。私達がこの世界に来てすぐに戦うことになった……そう、セレスと関わるきっかけになったあのブラックオーガにまるで似ている。
そして、私の半身ほどしかない身長の小鬼が、ナイフを持っている。
その暴れぶりを見ていると、大体のランクが分かる。
小鬼がD、ドラゴンがC、オーガがB、このだらっとした奴がA。そして、中に一体だけいる、あの異様な魔物《モンスター》。あれがSランクと言ったところだろうか。
全身を黒いローブで覆い隠し、手に柄が黒く刃が銀に輝くいかにもな名鎌と見える大鎌をぶら下げている。なのに全く動かず、ただ私の姿を傍観している。
「……今、だよね」
『レイ、完成したみたいだな』
心底嬉しそうに私のことを褒めてくれたプロットさん。
『でも、使いどころを見誤るなよ。お前の力は決して誰かを傷つけるためのものじゃない。守る力……ま、そんなことは分かってっか。守る時だけってのは……身が狭すぎるな。んー……だから、大切な人の為に動けるとき。そんなときに使え』
軽いノリで言っていたプロットさんの言葉は、何故か、私の心に強烈に響いた。
学園のみんなの為に、私は動きたい。だから、今本気で突き破る——。
「神雷纏い」
周りの暴挙のせいで常に爆音が鳴っている最中だというのに、私の声は何かを帯びたように鮮明に響いた。
神雷纏い……稲妻纏いの上格。つまり、英雄級ということだ。
「拾ノ型」
魔力の変化により、Bランク以上の魔物《モンスター》は暴動をやめ私の方を向く。
今更必死に止めようと動きを見せるが、もう遅い。遅すぎる。
「——荒紫天濤《こうしてんとう》!!!」
轟音には似つかわしくない景色。あまりの疾さに、稲妻を捉えることが出来た者すらいないだろう。だが稲妻の姿は消えたとしても受けるダメージは残る、見えない稲妻と同じだ。
少しだけ、パリパリと煌めくナニカが視認出来る。
いや、この技はあり得ないほどの速度で静電気の生産を繰り返してる。それと同時に、消えるのも早い。
そして最後の仕上げに……。
ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッッ!!!!!!!
もう一度姿を現して終わる。
威力は最初から最後まで常に増大し続け、2度目に現れたときに、そのピークを迎える全方位中距離破壊技。
それが、荒紫天濤《こうしてんとう》。
鳴り終えると、魔物《モンスター》が破片に変わる音が連鎖した。
残ったのは、たった一体。Sランクと思われるあの不気味な奴だ。あちこちボロボロになって傷付いているが、倒すには至らなかった。
……今ので倒せないとなると、かなりの苦戦を強いられそうだ。こんな強敵を倒してやっと4ポイント……。
「全く、割に合わないなぁ」
―――――――――
少年は、レイが荒紫天濤《こうしてんとう》を放つまで、なんら行動を起こさなかった。観戦用の魔道具も少年の居場所とは全く違うところを映していて、違和感を持つものは誰一人としていなかった。
実はこの魔道具、今回だけ人を映すわけじゃなく、魔力の動きによってそれが激しいところを映すよう設定されている。
まだ一回も魔力を使っていない少年が映す対象になるわけがなかった。
レイによっての2度目の轟音が耳に入ると、少年は立ち上がった。少年に当たる風は、その威厳を知らしめようとしているとさえ思えた。
「対象決定《ロックオン》」
恐るべき視力の良さで街のそこらにうじゃうじゃといる魔物《モンスター》、確実に倒せるAランク以下のを全て対象《ターゲット》にする。
今全て倒したとしても、すぐに魔物《モンスター》は生成される。他の代表者に迷惑がかかることはない。
「サァ、出番だよ。みんな? 今から、堕とそう! 堕墜《だつい》の彗楼《すいろう》!」
手を大きく広げ、意気揚々と叫ぶ。パーティーを開催するみたいに、はしゃいで。
天《そら》からナニカが降りて来、幾万いや、幾億ものそれは隕石が突き刺さるようにお祭り騒ぎを起こした。
1つ1つの攻撃の大きさはそれほどでもないが、数が数だけにのあまりの騒動に、全ての魔道具が少年の姿を映した。
だが大きさは別として、攻撃力で見ればシンの影鰐《かげわに》にも劣らない。
「はぁ……全く、アイツは……マキほどじゃないにしても、アイツも外れてたわ……」
同じ学園の生徒、そして同じ学園対抗戦メンバーの、『静寂の戦姫』と謳われている。ローレイ=クライアはシェルに、このことも忠告した方がよかったか? と後悔した。
「まー、これでとりあえず暫定1位かなぁ? …………じゃあ、もうなぁにやってもいいよねぇ!? アハハハハ!」
今度は、青い体をした細身の魔物《モンスター》だった。骨が無いかのようにだらんとした姿勢をしており、且つ筋肉が無いかのように脱力しているように見える。
2体しか見えないが、その2体は持っている武器が違う。片方は槍で、もう片方は鎌だ。
「——!」
次に瞬きをして目を開けたとき、ソイツはすぐ目の前にいた。勝手に身体が反応していた。
精一杯に魔力をぶつけ、その反動と全力のステップで必死に距離をとる。自分の間合いにギリギリ入るくらいの距離を。
「……やっっばぁ、さっきのとは比にならない魔物《モンスター》だ絶対」
うーん、もしこれがSランクだったらどうしよ。でもだからって、Aの可能性だってあるんだ。だから、退くって選択肢はないな。
「グギギギャグア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
奇声のような、笑い声のような、不快な音を上げながら槍の方がとてつもない速度で襲ってくる。
そういえば、この種目での安否って、どうなるんだろう? ふと至ってしまった。死ぬ可能性はないのかな? 死ぬのは、やだなぁ……。
どういう訳か焦っていた気持ちが急に落ち着き、穏やかになった。
目に見えない速度でそいつらは暴れ、次々に何もかも破壊していく。まるで、自分らの力を誇示するように。格下に見せつけるように。
その暴挙に引かれたのか、他の魔物《モンスター》も寄せられるように集まってきた。
黒い鬼のような奴が、棍棒を肩にかけている者。私達がこの世界に来てすぐに戦うことになった……そう、セレスと関わるきっかけになったあのブラックオーガにまるで似ている。
そして、私の半身ほどしかない身長の小鬼が、ナイフを持っている。
その暴れぶりを見ていると、大体のランクが分かる。
小鬼がD、ドラゴンがC、オーガがB、このだらっとした奴がA。そして、中に一体だけいる、あの異様な魔物《モンスター》。あれがSランクと言ったところだろうか。
全身を黒いローブで覆い隠し、手に柄が黒く刃が銀に輝くいかにもな名鎌と見える大鎌をぶら下げている。なのに全く動かず、ただ私の姿を傍観している。
「……今、だよね」
『レイ、完成したみたいだな』
心底嬉しそうに私のことを褒めてくれたプロットさん。
『でも、使いどころを見誤るなよ。お前の力は決して誰かを傷つけるためのものじゃない。守る力……ま、そんなことは分かってっか。守る時だけってのは……身が狭すぎるな。んー……だから、大切な人の為に動けるとき。そんなときに使え』
軽いノリで言っていたプロットさんの言葉は、何故か、私の心に強烈に響いた。
学園のみんなの為に、私は動きたい。だから、今本気で突き破る——。
「神雷纏い」
周りの暴挙のせいで常に爆音が鳴っている最中だというのに、私の声は何かを帯びたように鮮明に響いた。
神雷纏い……稲妻纏いの上格。つまり、英雄級ということだ。
「拾ノ型」
魔力の変化により、Bランク以上の魔物《モンスター》は暴動をやめ私の方を向く。
今更必死に止めようと動きを見せるが、もう遅い。遅すぎる。
「——荒紫天濤《こうしてんとう》!!!」
轟音には似つかわしくない景色。あまりの疾さに、稲妻を捉えることが出来た者すらいないだろう。だが稲妻の姿は消えたとしても受けるダメージは残る、見えない稲妻と同じだ。
少しだけ、パリパリと煌めくナニカが視認出来る。
いや、この技はあり得ないほどの速度で静電気の生産を繰り返してる。それと同時に、消えるのも早い。
そして最後の仕上げに……。
ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッッ!!!!!!!
もう一度姿を現して終わる。
威力は最初から最後まで常に増大し続け、2度目に現れたときに、そのピークを迎える全方位中距離破壊技。
それが、荒紫天濤《こうしてんとう》。
鳴り終えると、魔物《モンスター》が破片に変わる音が連鎖した。
残ったのは、たった一体。Sランクと思われるあの不気味な奴だ。あちこちボロボロになって傷付いているが、倒すには至らなかった。
……今ので倒せないとなると、かなりの苦戦を強いられそうだ。こんな強敵を倒してやっと4ポイント……。
「全く、割に合わないなぁ」
―――――――――
少年は、レイが荒紫天濤《こうしてんとう》を放つまで、なんら行動を起こさなかった。観戦用の魔道具も少年の居場所とは全く違うところを映していて、違和感を持つものは誰一人としていなかった。
実はこの魔道具、今回だけ人を映すわけじゃなく、魔力の動きによってそれが激しいところを映すよう設定されている。
まだ一回も魔力を使っていない少年が映す対象になるわけがなかった。
レイによっての2度目の轟音が耳に入ると、少年は立ち上がった。少年に当たる風は、その威厳を知らしめようとしているとさえ思えた。
「対象決定《ロックオン》」
恐るべき視力の良さで街のそこらにうじゃうじゃといる魔物《モンスター》、確実に倒せるAランク以下のを全て対象《ターゲット》にする。
今全て倒したとしても、すぐに魔物《モンスター》は生成される。他の代表者に迷惑がかかることはない。
「サァ、出番だよ。みんな? 今から、堕とそう! 堕墜《だつい》の彗楼《すいろう》!」
手を大きく広げ、意気揚々と叫ぶ。パーティーを開催するみたいに、はしゃいで。
天《そら》からナニカが降りて来、幾万いや、幾億ものそれは隕石が突き刺さるようにお祭り騒ぎを起こした。
1つ1つの攻撃の大きさはそれほどでもないが、数が数だけにのあまりの騒動に、全ての魔道具が少年の姿を映した。
だが大きさは別として、攻撃力で見ればシンの影鰐《かげわに》にも劣らない。
「はぁ……全く、アイツは……マキほどじゃないにしても、アイツも外れてたわ……」
同じ学園の生徒、そして同じ学園対抗戦メンバーの、『静寂の戦姫』と謳われている。ローレイ=クライアはシェルに、このことも忠告した方がよかったか? と後悔した。
「まー、これでとりあえず暫定1位かなぁ? …………じゃあ、もうなぁにやってもいいよねぇ!? アハハハハ!」
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