イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜
第54話 再会。そして……秘密。
「せんぱーい……なんか、よく分かんないけど感動しましたぁ~!!」
レイ、先輩達の雰囲気に呑まれたね。
先輩達が楽しんでいたことは、魔力の高ぶりですぐに分かった。
「ふふふ、よしよし……あ、そうだ、ルーちゃんから聞いたんだけどね?」
先輩が何か思い出したように切り出す。
「ルーちゃん?」
だが俺はそこが気になってしまった。
「あ、ごめんね。ルーちゃんっていうのは今私が戦ったローレイ₌クライアちゃんのことだよ」
「そうだったんですか」
「でね」
全員が納得したところで、さっきの話に戻ろうとする先輩。
「どうやら、フェラス学園にも、超大型新人が編入してきたんだって」
にも?
……あぁ、俺やレイと同じでって言いたいの?
いや、確かに俺達が実力ある方なのは流石に分かるけど、超ではなくね?
俺のそんな思いも、次の先輩の言葉でどうでも良くなった。
「ルーちゃんが言うには、『その子はこの世界の理から外れてる』って。それで、その子の名前が確か————マキ」
「「————!!!!!」」
先輩がその名前を出すと、俺とレイは驚愕によって、思考が停止した。
「「…………マ……キ……?」」
「どうしたの? 何か、気になることでもある?」
「「…………」」
先輩の問いも全く入ってこず、ただ、立ち尽くす。
しばらくすると、俺達に正気が戻った。
「えっと……大丈夫……?」
「その『マキ』って、苗字聞きました!?」
勢いで、心配してくれたというのに、返事をしないという失礼なことをしてしまったが、今の俺にはそんなこと考える余裕が全くなかった。
「えっと、聞いてないけど……」
「「そ、そうですか……」」
もしも苗字がハナミヤだったなら、俺達の知るマキで間違いないだろう。
でも、今持っている情報だけじゃ、まだ『マキ』と言う名の別人と言う可能性もある。
「えっと、シン君……?」
シェル先輩が顔を赤くしながら俺の名前を呼んだ。
なぜ赤くなっているのか分からず、原因を探ろうと、シェル先輩のことをさらに凝視する。
「その……手……」
見れば、先輩の肩に手を置いたままだった。
さっき勢いで掴みかかってしまった時からそのままだった。
「あ……すみません……」
悪いことをしてしまったと思い、すぐに離す。
「あ……うん」
先輩の声には、寂しさや悲しさや、照れや感謝の気持ちなど、色々な感情が読み取れた。
普段なら気になるだろうが、『マキ』の名が出てきたことにより全く気にしなかった。
学園対抗戦初日は、『代表対戦』だけで終わり、俺の出番はなかった。
他の対戦内容は、全く頭に入ってこなかった……。
―――――――――
「シン、フェラス学園に編入したっていう、マキ。どう思う?」
「……正直まだ分からないよ。でも、真姫だと、思いたい」
「……だよね」
「ちょっと、いいですか?」
「ん、何?」
「その真姫さんと言うのは、シン達のもう一人の幼馴染み……ですか?」
真姫の存在は、名前を除いて、セレスも把握している。
「そうだよ。俺達の、もう一人の……幼馴染み」
「早く……逢いたいですね?」
「……うん」
でも、心のどこかで、逢うのが怖いと思ってる自分もいる。
真姫1人を置いてこの世界に来たこと。真姫のいない場所で、自分の居場所を作っていたことなど。
真姫に知られるのが、怖い。
責められるのが、怖い。
真姫を悲しませるのが……怖い。
だが、俺のそんな心配を知らずにか、それとも知っていてか。
運命は、俺達を早く引き合わせようと必死に動き、その事件を起こした。
学園対抗戦初日の次の日。
選手が万全の状態で挑めるようにと、一日おきに本戦は行われる。
よって、今日は休みだ。
あのぶつかっちゃった人、いないかな……。
俺は、もしかするとあの人を、見つけられるかなという気持ちで、早朝から散歩することにした。
「……ら。ルーラ。ルーラのラララ……」
と、どこかからそんな声が聞こえてきた。
「——!!!」
その瞬間、俺は戦慄し、思い出す。
『ルーラ』
これは、ある、俺の親しい人が気分が良い時に無意識に出る、いわば口癖だ。
そんな変わった口癖を持つ人物を、俺は、一人しか知らない。
今思えば、あの時もそうだったのかも——。
―――――――――
「……ら」
「……ん?」
後ろから、何か聞こえたので振り向く。
今のは……さっきの人が呟いたのかな?
「シンー? どうしたのー?」
「あ、ごめん、なんでもない。すぐ行くよ!」
そして俺が駆けていく姿を、階段の上からそっと見つめていた、一人の女性がいた。
急いでいることも相まい、そんなことには一切気付かずに走っていく俺。
その女性は、俺が見えなくなるまで、静かに見続けていたのだった——。
―――――――――
あの時の、よく聞こえなかったあの言葉も、その人物の口癖だったようにも思える。
そして、それを呟く声も、もう何回も耳にした、あの声と同じ。
いつ、何時足りとも離れなかった、欠け替えのない、大切な人の声と。
家族よりも強い絆で、固く結ばれた……俺の幼馴染みの声と。
「真姫……?」
「あ……」
俺がそう呟くと、綺麗な黒い髪を靡かせながら、こちらに振り向き、固まるその人。
「し……ん……?」
その舞台は、ただの木でできた簡素な廊下だったが、俺は、風が気持ちいい、どこまでも広がった草原だと錯覚した。
「真姫……真姫……!」
もう逢えないとさえ思っていた真姫と逢えて、色々な感情がごちゃ混ぜになり、脚がおぼつかなくなるが、真姫のところへ行きたいという思いで無理やりにも脚を動かす。
「真……!」
実際には短い距離だったが、俺には世界を超えたように感じ、真姫のそばに辿り着くと、安心のせいか、達成感のせいか、膝を落としてしまった。
「あ……真……」
脚が思うように動かないのは真姫も同じで、落ちる勢いで、俺の背中に手を掛ける。
俺も、それに縋るように真姫の背中に手をまわした。
「やっと……真に逢えた……!」
「う……うっ……!」
真姫の胸に顔を埋め、自分の情けない姿を必死に隠そうとするが、どうしても声が漏れてしまう。
早朝だったこともあり、俺達の再開を邪魔するものは、何もなかった。
―――――――――
一通りは感情を出し終え、少しは落ち着いた後、ゆっくり話そうと言うことで、真姫の部屋にひとまず行くことになった。
「えっと……聞いてもいい?」
「何?」
「真姫は、どうやってこの世界に?」
さっきは混乱してそんなこと、考えもしなかったが、少し冷静になると出てくる。当たり前の疑問だ。
「うん、それはね——」
そして、互いにここまでの経緯を打ち明かし合った。
そこで、俺は気になることがある。
……あのロリ神が、感情のない子……?
俺の時は、感情がありすぎてムカつく奴だったけど……。
どういう……?
それとも、俺の時のロリ神とは別神?
「真?」
「あ、ごめん」
考えに耽っていると、真姫に声を掛けられた。
「それで、最高神が言うにはこれからソルセルリ―学園に入る……ってこと?」
「私はそう言われたけど」
「……じゃあ、セレスに頼んでみるか」
セレス権力使うとこ意外とあるし。
「セレス? ってあぁ、王女様ね」
「そう」
「代表対戦で『純白の王女』っていたけど……」
「あれは俺も初耳だったよ……」
そのことに触れそうになると、シェル先輩がすごく嫌がっていたのでそれには触れないようにしておいた。
「どうする? 今すぐにソルセルリーに来る?」
「うーん、いや、もうちょっと後にするよ」
「ん、なんで?」
すぐに来ればいいのに?
「私、フェラスの対抗戦メンバーなんだよ」
「あ、最後まで貫きたいと」
「そゆこと。それに、真や零とも戦ってみたいしね」
……真姫と戦闘関係のことで関わるのは遠慮したいです。
「あ、そういえば、ローレイさん? が言ってたみたいなんだけど、真姫がこの世界の理から外れてるって、どういうこと?」
「あー……なんか言われたなぁ、そんなこと」
真姫自身にも、心当たりはあるみたいだ。
「あれって、どういう意味なの?」
「んーま、それはその時までのお楽しみってことで?」
「良くないです」
「今は秘密ってことで?」
「だめです」
「む……相変わらずだぁ……」
呆れるような、それでいて懐かしむような温かい表情を浮かべながら、真姫は呟いた。
「だって気になるじゃんよ」
「好奇心旺盛なお年頃の子供かっ」
まるで昔に戻ったように、笑い合い、この時、こんな時間がずっと続けばいいとさえ望んだ。
「……零にも、ちゃんと説明しなきゃね」
……零も、相当驚くだろうな。
「……」
そう思いはしたが、どう返せばいいのか分からず黙り込んでしまった。
「今、レイはどんな感じ? ……楽しそう?」
どんな感じと言われても、何をどう言えばいいのか分からず困惑したところ、真姫は聞き方を変えて聞いてくれた。
「……うん。楽しそうだよ」
——でも、俺には、真姫に逢えない寂しさと悲しみを、必死に押し込めているように見えてならなかった。
「そっ……か」
「……やっぱ、真姫と零には、隠し事は出来ないか……」
真姫が雰囲気から、俺の思ったことを勘付いたように、俺も真姫が勘付いたことに勘付いた。
「でも、この生活を楽しんでることは確かだよ」
自分より、俺とレイを優先する癖がある真姫が、『自分のせいで悲しませてしまった』なんて考えていると思い、少し慌て気味に修正する。
「ふふっ……大丈夫だよ」
「そ、そっか……」
もっと話したい気持ちもあるが、悲しみ、嬉しさ、不安、安心など、自分でも分からないくらいごちゃ混ぜになって、言葉を発せなくなる。
「真、確認したいことがあるんだけど……」
「ん、どうした?」
真姫が覚悟を決めたような顔をしていたので、その点も気になった。
「レイは、ソルセルリ―学園を大切に思って、る?」
「…………はぁ」
俺は、真姫のその質問に、微笑を浮かべながら溜息を吐く。
「分かってるくせに?」
「まぁ、そりゃそうか」
真姫がそんなことが分からないはずがないと、煽り気味にそう言うと。
真姫は半分嬉しさ、半分自嘲気味にそう言った。
「そこで提案なんだけどさ」
上がった口角を戻し、先に見えた覚悟を決めたような顔付きに戻ると、そんな妙案を出してきた。
「零には、私の存在を、秘密にしておいてくれない?」
「…………え?」
レイ、先輩達の雰囲気に呑まれたね。
先輩達が楽しんでいたことは、魔力の高ぶりですぐに分かった。
「ふふふ、よしよし……あ、そうだ、ルーちゃんから聞いたんだけどね?」
先輩が何か思い出したように切り出す。
「ルーちゃん?」
だが俺はそこが気になってしまった。
「あ、ごめんね。ルーちゃんっていうのは今私が戦ったローレイ₌クライアちゃんのことだよ」
「そうだったんですか」
「でね」
全員が納得したところで、さっきの話に戻ろうとする先輩。
「どうやら、フェラス学園にも、超大型新人が編入してきたんだって」
にも?
……あぁ、俺やレイと同じでって言いたいの?
いや、確かに俺達が実力ある方なのは流石に分かるけど、超ではなくね?
俺のそんな思いも、次の先輩の言葉でどうでも良くなった。
「ルーちゃんが言うには、『その子はこの世界の理から外れてる』って。それで、その子の名前が確か————マキ」
「「————!!!!!」」
先輩がその名前を出すと、俺とレイは驚愕によって、思考が停止した。
「「…………マ……キ……?」」
「どうしたの? 何か、気になることでもある?」
「「…………」」
先輩の問いも全く入ってこず、ただ、立ち尽くす。
しばらくすると、俺達に正気が戻った。
「えっと……大丈夫……?」
「その『マキ』って、苗字聞きました!?」
勢いで、心配してくれたというのに、返事をしないという失礼なことをしてしまったが、今の俺にはそんなこと考える余裕が全くなかった。
「えっと、聞いてないけど……」
「「そ、そうですか……」」
もしも苗字がハナミヤだったなら、俺達の知るマキで間違いないだろう。
でも、今持っている情報だけじゃ、まだ『マキ』と言う名の別人と言う可能性もある。
「えっと、シン君……?」
シェル先輩が顔を赤くしながら俺の名前を呼んだ。
なぜ赤くなっているのか分からず、原因を探ろうと、シェル先輩のことをさらに凝視する。
「その……手……」
見れば、先輩の肩に手を置いたままだった。
さっき勢いで掴みかかってしまった時からそのままだった。
「あ……すみません……」
悪いことをしてしまったと思い、すぐに離す。
「あ……うん」
先輩の声には、寂しさや悲しさや、照れや感謝の気持ちなど、色々な感情が読み取れた。
普段なら気になるだろうが、『マキ』の名が出てきたことにより全く気にしなかった。
学園対抗戦初日は、『代表対戦』だけで終わり、俺の出番はなかった。
他の対戦内容は、全く頭に入ってこなかった……。
―――――――――
「シン、フェラス学園に編入したっていう、マキ。どう思う?」
「……正直まだ分からないよ。でも、真姫だと、思いたい」
「……だよね」
「ちょっと、いいですか?」
「ん、何?」
「その真姫さんと言うのは、シン達のもう一人の幼馴染み……ですか?」
真姫の存在は、名前を除いて、セレスも把握している。
「そうだよ。俺達の、もう一人の……幼馴染み」
「早く……逢いたいですね?」
「……うん」
でも、心のどこかで、逢うのが怖いと思ってる自分もいる。
真姫1人を置いてこの世界に来たこと。真姫のいない場所で、自分の居場所を作っていたことなど。
真姫に知られるのが、怖い。
責められるのが、怖い。
真姫を悲しませるのが……怖い。
だが、俺のそんな心配を知らずにか、それとも知っていてか。
運命は、俺達を早く引き合わせようと必死に動き、その事件を起こした。
学園対抗戦初日の次の日。
選手が万全の状態で挑めるようにと、一日おきに本戦は行われる。
よって、今日は休みだ。
あのぶつかっちゃった人、いないかな……。
俺は、もしかするとあの人を、見つけられるかなという気持ちで、早朝から散歩することにした。
「……ら。ルーラ。ルーラのラララ……」
と、どこかからそんな声が聞こえてきた。
「——!!!」
その瞬間、俺は戦慄し、思い出す。
『ルーラ』
これは、ある、俺の親しい人が気分が良い時に無意識に出る、いわば口癖だ。
そんな変わった口癖を持つ人物を、俺は、一人しか知らない。
今思えば、あの時もそうだったのかも——。
―――――――――
「……ら」
「……ん?」
後ろから、何か聞こえたので振り向く。
今のは……さっきの人が呟いたのかな?
「シンー? どうしたのー?」
「あ、ごめん、なんでもない。すぐ行くよ!」
そして俺が駆けていく姿を、階段の上からそっと見つめていた、一人の女性がいた。
急いでいることも相まい、そんなことには一切気付かずに走っていく俺。
その女性は、俺が見えなくなるまで、静かに見続けていたのだった——。
―――――――――
あの時の、よく聞こえなかったあの言葉も、その人物の口癖だったようにも思える。
そして、それを呟く声も、もう何回も耳にした、あの声と同じ。
いつ、何時足りとも離れなかった、欠け替えのない、大切な人の声と。
家族よりも強い絆で、固く結ばれた……俺の幼馴染みの声と。
「真姫……?」
「あ……」
俺がそう呟くと、綺麗な黒い髪を靡かせながら、こちらに振り向き、固まるその人。
「し……ん……?」
その舞台は、ただの木でできた簡素な廊下だったが、俺は、風が気持ちいい、どこまでも広がった草原だと錯覚した。
「真姫……真姫……!」
もう逢えないとさえ思っていた真姫と逢えて、色々な感情がごちゃ混ぜになり、脚がおぼつかなくなるが、真姫のところへ行きたいという思いで無理やりにも脚を動かす。
「真……!」
実際には短い距離だったが、俺には世界を超えたように感じ、真姫のそばに辿り着くと、安心のせいか、達成感のせいか、膝を落としてしまった。
「あ……真……」
脚が思うように動かないのは真姫も同じで、落ちる勢いで、俺の背中に手を掛ける。
俺も、それに縋るように真姫の背中に手をまわした。
「やっと……真に逢えた……!」
「う……うっ……!」
真姫の胸に顔を埋め、自分の情けない姿を必死に隠そうとするが、どうしても声が漏れてしまう。
早朝だったこともあり、俺達の再開を邪魔するものは、何もなかった。
―――――――――
一通りは感情を出し終え、少しは落ち着いた後、ゆっくり話そうと言うことで、真姫の部屋にひとまず行くことになった。
「えっと……聞いてもいい?」
「何?」
「真姫は、どうやってこの世界に?」
さっきは混乱してそんなこと、考えもしなかったが、少し冷静になると出てくる。当たり前の疑問だ。
「うん、それはね——」
そして、互いにここまでの経緯を打ち明かし合った。
そこで、俺は気になることがある。
……あのロリ神が、感情のない子……?
俺の時は、感情がありすぎてムカつく奴だったけど……。
どういう……?
それとも、俺の時のロリ神とは別神?
「真?」
「あ、ごめん」
考えに耽っていると、真姫に声を掛けられた。
「それで、最高神が言うにはこれからソルセルリ―学園に入る……ってこと?」
「私はそう言われたけど」
「……じゃあ、セレスに頼んでみるか」
セレス権力使うとこ意外とあるし。
「セレス? ってあぁ、王女様ね」
「そう」
「代表対戦で『純白の王女』っていたけど……」
「あれは俺も初耳だったよ……」
そのことに触れそうになると、シェル先輩がすごく嫌がっていたのでそれには触れないようにしておいた。
「どうする? 今すぐにソルセルリーに来る?」
「うーん、いや、もうちょっと後にするよ」
「ん、なんで?」
すぐに来ればいいのに?
「私、フェラスの対抗戦メンバーなんだよ」
「あ、最後まで貫きたいと」
「そゆこと。それに、真や零とも戦ってみたいしね」
……真姫と戦闘関係のことで関わるのは遠慮したいです。
「あ、そういえば、ローレイさん? が言ってたみたいなんだけど、真姫がこの世界の理から外れてるって、どういうこと?」
「あー……なんか言われたなぁ、そんなこと」
真姫自身にも、心当たりはあるみたいだ。
「あれって、どういう意味なの?」
「んーま、それはその時までのお楽しみってことで?」
「良くないです」
「今は秘密ってことで?」
「だめです」
「む……相変わらずだぁ……」
呆れるような、それでいて懐かしむような温かい表情を浮かべながら、真姫は呟いた。
「だって気になるじゃんよ」
「好奇心旺盛なお年頃の子供かっ」
まるで昔に戻ったように、笑い合い、この時、こんな時間がずっと続けばいいとさえ望んだ。
「……零にも、ちゃんと説明しなきゃね」
……零も、相当驚くだろうな。
「……」
そう思いはしたが、どう返せばいいのか分からず黙り込んでしまった。
「今、レイはどんな感じ? ……楽しそう?」
どんな感じと言われても、何をどう言えばいいのか分からず困惑したところ、真姫は聞き方を変えて聞いてくれた。
「……うん。楽しそうだよ」
——でも、俺には、真姫に逢えない寂しさと悲しみを、必死に押し込めているように見えてならなかった。
「そっ……か」
「……やっぱ、真姫と零には、隠し事は出来ないか……」
真姫が雰囲気から、俺の思ったことを勘付いたように、俺も真姫が勘付いたことに勘付いた。
「でも、この生活を楽しんでることは確かだよ」
自分より、俺とレイを優先する癖がある真姫が、『自分のせいで悲しませてしまった』なんて考えていると思い、少し慌て気味に修正する。
「ふふっ……大丈夫だよ」
「そ、そっか……」
もっと話したい気持ちもあるが、悲しみ、嬉しさ、不安、安心など、自分でも分からないくらいごちゃ混ぜになって、言葉を発せなくなる。
「真、確認したいことがあるんだけど……」
「ん、どうした?」
真姫が覚悟を決めたような顔をしていたので、その点も気になった。
「レイは、ソルセルリ―学園を大切に思って、る?」
「…………はぁ」
俺は、真姫のその質問に、微笑を浮かべながら溜息を吐く。
「分かってるくせに?」
「まぁ、そりゃそうか」
真姫がそんなことが分からないはずがないと、煽り気味にそう言うと。
真姫は半分嬉しさ、半分自嘲気味にそう言った。
「そこで提案なんだけどさ」
上がった口角を戻し、先に見えた覚悟を決めたような顔付きに戻ると、そんな妙案を出してきた。
「零には、私の存在を、秘密にしておいてくれない?」
「…………え?」
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