イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第39話 アルスベリア島

「セレスはもともと乗り物に弱いの?」
 依然、手を握りながら話す。

「はい。今のように酔うことが多々……」
「そうなんだ」
 セレスの新情報だ。

 ありゃ、話すことがなくなった。

「そういえばさ、前に言ってたこと以外にアルスべリア島の特徴って何かあるの?」
「うーん。ただほぼ全てが最高級としか……」
 まじでどんなとこなんだアルスべリア島。

「シンの手、やっぱり懐かしいです……」
 ん? 懐かしい? 俺に似た人がいたのかな。

「シン……」
「どうしたの? セレス」

「ありがとうございます……」
 微笑みを浮かべながら言うセレス。

 この言葉には、何かセレスの特別な思いがあるのか不思議と重みを感じた。

「セレス、それってどういう意味——」
 聞こうとしたら、セレスは気を失って寝てしまっていた。

「……おやすみ、セレス」
 さっきのことが気になりもしたが、眠りを邪魔してはいけないと思いそのままにする。

「……あとどれくらいで着くのかな? ……おっ」
 揺れが収まればセレスもすぐに回復するだろうと思い、あとどれくらいなのか先輩に聞きに行こうとしたところ、セレスが自分の手をぎゅっと握って離していないことに気が付いた。

「仕方ないか。起きるまで待ってよう」

 ―――――――――

「うぅん……」
 セレスが可愛く唸る。

「うぅー……?」
「あ、起きた?」
「あ、はい……」
 随分と寝ぼけてるな。

 セレスの頬をつまんでみる。ふにふにだなぁ。

「……なにふるんでふかぁ」
「……ふふふっ」
 今のセレスが面白くてつい笑ってしまう。

「な、なんで笑うんですかー!」
「いや、ごめん。面白くてつい……」
「むぅー」
 セレスが頬を膨らませている。またつままれたいのかな?

「シンくーん! セレスー! あとちょっとで着くしよー!」
「あ、はーい分かりましたー! ほら、もう着くから準備しよ?」
「なんか無理やり話逸らされたような……」
 気のせいだよ気のせい。

 ―――――――――

「おーここがアルスべリア島かー」
 なんと、今はまだ寒い時期のはずなのに暖かいぞ。

「では、また2週間後に迎えに来ますので」
「うん、お疲れ様」
 アストリア家の操縦士の人がシェル先輩と話している。

 そして船で戻っていった。

「さ、じゃあまずはここの別荘に行こうか!」
 アルスべリア島に来ただけあって、みんなウキウキだ。

 そしてそのアストリア家所有のその別荘に行き、荷物を置いてリビングに集まる。

 みんなに個室が振り分けられた。そしてなんと、この2週間俺達の貸し切りだそう!

「さて、これからどうしようか」
「やっぱ遊ぶし?」

 ……今日遊んだらだらけて特訓しなくなるんじゃないか?

「「あの、今日遊んだらだらけてまともに特訓しなくなりそうなんですけど」」
 マギアスも同じ考えのようだ。

「んーそうだね。遊びたいけどしょうがないか」
「遊ぶのは最後がいいんじゃないですか? がんばったご褒美ってことで」
「そうするか」

 その後各自自分の共振武器を持ってくることになった。ここにいるメンバーは全員共振武器を扱えるようだ。

 そして謎なのはこの後。何故か水着を着てくるようにと言われた。

「……なんで水着?」
 疑問に思いつつも水着に着替える。

 着替え終わり、集合場所のビーチの前に行くと既にマギアスとカイルがいた。「女性陣はまだ、と」
「やっぱ時間かかるかー」
「予想はしてたけどね」
「だよね」

「シーン!」
 と、その時ちょうど女性陣が来た。

 レイは白い水着。セレスは水色と白が少し入ったものだ。

 シェル先輩は蒼い水着、リア先輩は黒い水着にパーカーを羽織っている。

 ちなみに俺とマギアスは黒、カイルは青だ。……誰得情報だ? でも女性陣だけ紹介って差別じゃないか?

 あ、ビキニじゃないからな? 海パンだからな?

「それで、水着になってどうするんですか?」
「もちろん…………遊ぶ!!」

「「……」」
「ちょ、ごめんって。嘘だってば!」

 遊ばないと言ったそばから遊ぶなんて言った先輩にジト目を送る俺達。

「じゃあ、本当はどうするんですか?」
「まず、修行場はこの砂浜だよ」
 ふむ。

「言うより見た方がいいかな? じゃあシン君、私と模擬戦だよ」
「え? ……あ、はい」

 急遽シェル先輩と模擬戦することが決まった。

 あちっ! 砂あちぃ!

「シン君、相手が女子だからって手抜かないでよ!」
「がんばります」

「じゃあ、構え!」
 マギアスが言ってくれる。

 シェル先輩は剣を構えた。

 剣初めて見たな。

「エリスロースロトス!」
 先輩が俺の近くの砂辺りに炎を打ち込む。

「……っあっつ~~!!!」
 砂が熱すぎて思わず跳んでしまう。

「水神纏い漆ノ型 螺旋水《らせんすい》!」
 うわ、ここ突いてくる!? ずるっ!

「やっぱ先輩性格悪いですねっ!」
 影纏い参ノ型 獄撥で対抗する。

「んなっ!?」
 俺に性格が悪いと言われたのに動揺したのだろう。

「冰纏い弐ノ型 凍霜《とうそう》!」
 さっきのようにせこい攻め方をされないように足場の砂を凍らせる。

「あ、足場を凍らせるのは禁止だしー」
「んなっ!?」
 びっくりして着地に失敗してしまい、転んでしまう。

「はい、とりあえず今は攻めないであげるからそれ解いて」
「分かりましたよ」
 素直に従って解く。

「じゃあ、仕切り直しだよ」
 その直後、さっきと同じく螺旋水《らせんすい》で襲ってくる。

 俺は左にスライドして避けようとする……が、砂に足を取られて思うように動けなかった。

「うわっ!?」
 足場は悪くなると思ってたが、ここまでか!

「甘いよ、シン君!」
「……っ獄撥《ごくばち》!」

 仕方なくさっきと同じように対処する。

 ちょうど相殺出来たので、シェル先輩の動きが俺の近くで止まった。

「影纏い捌ノ型 八咫烏《やたがらす》」
「水神纏い弐ノ型 荒波《あらなみ》!」
 先輩は宙で回転しながら技を放ってきた。

 運動能力良いな、オイ!

 今ので体勢を崩し、先輩に攻撃は命中しなかった。

 あ、でもこれで全く砂が熱くなくなった! ラッキー!

「参ノ型 滅冰泉《めっひょうせん》!」
「参ノ型 滅冰泉《めっひょうせん》!」
 わお、同じのでやってきた。

「荒波!」
「エリスロースロトス!」
 一段と強い炎で無理やり蒸発させる。

「うぅ……」
 俺に攻撃を与えられなくて不満そうな顔をする先輩。

「̪肆ノ型 水神ノ舞踏」
「肆ノ型 竜飛鳳舞」

 やばい、砂に足を取られてすごく動きにくい。

 ……もうやった方がいいか? いや、まだ、ギリギリまで待とう。

「水神纏い参ノ型 彗穿!」
 俺がちょうど体勢を崩したところを突いてきやがった先輩。

 ——今やるしかねぇ!

「弐ノ型 凍霜《とうそう》」
 その刹那、先輩の剣、腕、脚が凍る。

 凍霜の原理は、目に見えないくらいの水蒸気を出し、それを凍結させてるというものなのだ。

 それにさっきの先輩の水を蒸発させた時のやつも使った。

「……もしかして、ずっとこれを狙ってた?」
「はい。砂で思った以上に足場が悪くて、こういう手段じゃないと勝てないと思ったので」

「えっと、私の負けだから早くこれ解いてくれるかな?」
「あ、はい」
 すぐに解く。

「まぁこんな風に砂場だと足場が悪くて上手く動けないし、それだから踏ん張って強攻撃も出せない。それにこういう足場だから、筋力もつきやすいって理由でここでやるよ。それと、実戦に勝るものはないって言うしそれに近い模擬戦をひたすらやるよ」
「「うへぇ~」」

 ひたすら模擬戦をやり続けるというワードに反応したのだろう、声で嫌な気持ちが十分なほど分かる。

「はい、そんな嫌な顔してないでやるよ! サボったり、ズルしたりしたら普通の時間より3時間長くやるからね!」
「「うえーい……」」

 相変わらず嫌そうだ。俺も、もちろん嫌だ。俺みんなより多いじゃん! 非道い!

 ……って、女性陣も水着でやるの? さっきとかシェル先輩の胸のせいでかなり気を紛らわされたんだが。

 何故かここに集まってるのはみんなこの歳の平均以上ばかりだ。顔も、胸部も。あ、頭脳も魔法もか。

 かなり困るんで、出来れば隠して欲しいんだが。……別に絶対にやめてほしいってわけではないんだが。

「じゃ、シン。やるよ」
「あ、分かった。……前みたいに暴れないでね? 疲れすぎるし、大変だから」
 それにアレやられると俺絶対負ける。

「言われなくてもあんなんやんないって……。そこまで馬鹿じゃないよ……」
「ま、それもそうか」

「じゃあ始めるよ」
「俺はいつでもいいよ」

 そして俺達は戦い始めたのだった。

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