イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第28話 エクセレトスの危惧

「俺も完全完璧に本気でいくぞ」
 マギアスは構え直し、

「共果《きょうか》!!」
 そう叫んだ。
 その言葉を発した瞬間、マギアスが光に包まれた。
 思わず影の斬撃を3撃程飛ばしてしまう。

 だがその斬撃はすぐに相殺された。

 その光が収まり、次に視界に入ったのは、何ら変わらないマギアスであった。あれ、よく見たら刀を持ってない。どうゆうこと?
 でも、なんか知ってる気がする。なんだっけな? 思い出せない……

 少し考えた末、思い出せない為とりあえず襲うことにした。
 また新月状の斬撃を繰り出す。

 それに対するマギアスは……
「はぁぁぁ!!」
 その叫びと共に、マギアスの右手が消え光の剣に変わった。そしてまともに打ち合う。

 ……っ! なんだこれ。さっきとはまるで一撃の重さが違う。
 明らかに今の方が格段に攻撃力が上がっている。何故か消えた刀が原因か?

「冰纏い拾ノ型 白魔《はくま》大勢《たいせい》!」
「白魔《はくま》!」
 マギアスは両手を前に突き出し、そう叫ぶだけで俺と同等の攻撃を出てきた。
 まじで何が起こっているんだ?

 ……いや、そんなこと今はどうでもいいか。今大事なのはマギアスがパワーアップしたってことだけだ。

 そう思うと、先の集中状態に戻れた。

 とはいえ、恐らく今まで通りだとどちらの体力、または魔力が先に尽きるかの根比べになるから、あまり良策ではないな。
 ……なら、教えてもらっただけで1度もやったことがないあれをやってみるか。想像で試すから成功する確率は極めて低いだろう。……今の集中状態じゃなかったらの話だが!

あれ、俺はこの身体を動かせないのに、なんでそう思ったんだ?

「闇纏い壱ノ型 闇《あん》刃《じん》!」
 影纏いとは比べ物にならない威力。理由は格の違い。
 闇纏いは最上級、英雄級《えいゆうきゅう》の纏いだからだ。

 結果は成功。よく賭けに勝つな、俺。運いいのかな。前の世界では悪いとずっと思ってたが。

「闇纏い!?」
 マギアスは驚いた後、すぐに平静を取り戻して身体を光に変換し、光速移動で回避した。
 いや、何それ。

「闇纏い玖ノ型 漆黒の軍勢!」
 全方位超広範囲殲滅攻撃をみんなに届かない範囲に圧縮したものだ。圧縮した分威力も高い。

 マギアスは避けられないことを悟る。
「なら、最後まで足《あ》掻《が》かせてもらうよ!」
 そして呼吸を整え、

「極光《きょっこう》!!」
 それと同時にオーロラのようなものが闇に包まれた空間に神秘的に顕れる。

「はぁぁぁぁぁ!!!!」
 マギアスは最後まで足掻く。

 だが極光も俺の闇に破壊され、マギアスが何重にも作ったオーロラがどんどん減っていく。

 俺はその間に何か仕掛けられない為に、容赦なく仕掛ける。
「闇纏い漆ノ型 無明《むみょう》一閃《いっせん》」
 マギアスは俺が仕掛ける前にやられることに気付き、あらかじめ腕を剣に変えて構えていた。

 だが今の攻撃でオーロラはなくなり、マギアスも防御出来ない状態となった。

 後は待つだけ。

 闇と同化してダメージを受けないようにし、静かに待つ。

 だがそこで横槍が入った。
「ストップ! やめだ! そのまま行くと惨事になる!」
 と言ってエクセレトスが手を振るうと、大きな光がその闇を打ち消された。

 俺は今までの戦闘の流れでエクス先生を襲ってしまう。

「無明《むみょう》一閃《いっせん》」
 だがエクセレトスは異空間収納から刀を取り出し、それで受け止めた。しかも片手だけで。

 俺がそれに動揺した瞬間、身体の主導権が俺に戻った。
 そして急に強い倦怠感《けんたいかん》に襲われ、意識を失う。

 その後、マギアスも後を追うように気を失った。

 ―――――――――

「……まさか! シンが入ったってのか!? あの境地に!?」

 そしてその後、シンのあの闇纏いは流石に危険だと思い、すぐにそれを打ち消した。

 更にその後、シンが襲ってきた。

 ……はい? なんで? とりあえず抑えたけど、なんで?

 すると急にエクセレトスの前でシンが気を失った。

 ……今のシンは……もしかすると……あいつが関わってるのかも……いや、あいつが関わったんだ。

 でなければ、シンがあの境地に辿り着くこともありえないし、闇纏いも使えない、あの型も使えないはずだし、何よりあれだけやって魔力が持つわけがない。

 でも、どうやって? あいつは動けないはず……まさか、この世界に来てあんな戦闘をしたから、シンの抑制力が一時的に弱まったのか?

 ……だとしたらまずいな。シンがあのことを知ってしまっては……シンが崩壊する恐れがある。

「……後でそっと探りを入れとくか」

 その後すぐに2人を保健室に寝かせ、みんなの元に戻る。

 ―――――――――

「なんか……エクス先生はあの2人で雰囲気上げてやろうって言ってたけど……あんなの見せられた後には、やりにくいよね……」
「だよねぇ……」
「「……」」

 私はその静寂がどうにも心地悪くて、その静寂を無理矢理破った。

「ね、セレス。私達でテストしよ!」
「あ、私達で、ですか?」
「うん! しよ!」
「は、はい! 分かりました!」
 セレスも私の意図を途中で読み取ったそうで、すぐに承諾してくれた。

 その時、ちょうどエクス先生が戻ってきた。

「先生! 私とセレスでやります」
「お、そうか。いいけどシンとマギアスみたいに暴れるなよ」
「言われなくてもあんなに出来ません」

「それもそうか。っと、これじゃやりにくいか」
 エクス先生はそう言いながら戦う場所を見る。
 そこには、さっきまでシン達が戦っていたせいで無惨にもかなり荒らされた地面があった。

「「……」」
「直すか。スフラギラ」
 その一言でそこら一帯が元に戻る。

「ありがとうございます」

「いいいい。はい、構え!」

 私は雷華とアポロンの双銃を、セレスも双銃を構える。

 ……え? セレス、双銃持ってるの? 嘘、しかもあれ共振武器じゃない? なんで?

「……セレス、1つ聞いていい?」
「なんですか?」
「その双銃、共振武器だよね」
「はい、そうですよ」
「いつ手に入れたの?」
「かなり前から所持はしていましたよ。ただ、しっかりと扱えるようになったのが最近なんです」
「そういうこと」
「はい」

 会話が一通り終わり、脳が平和から戦闘に切り替わる。

「光纏い、雷纏い捌ノ型 八咫烏《やたがらす》!」
 先制の意味も込めて打つ。

「天空纏い捌ノ型 八咫烏《やたがらす》!」
 セレスは時間差で2回八咫烏《やたがらす》を使い、私の16の弾を消した。

 っていうか天空か……私と同じ上級、これならなんとかできるかも!

「天空纏い弐ノ型 太刀風《たちかぜ》・翼《つばさ》!」
 翼の形をした風の攻撃なんだろう。……多分。

 風だから見えないよ! 探査魔法に引っかかるからどこかは分かるけど、これもしかしてセレス私を魔力切れにさせる作戦なのかな。

 だとしたらまずいなー。魔力使わなかったらどこに攻撃があるか分からないし……

 よし、なんとかこっちのペースに巻き込むしかないか。

「光纏い伍ノ型 豪華絢爛」
 恐らくこの声は聞こえてないだろう。豪華絢爛はシンの日裏の朧とほぼ一緒だ。

 私の幻がセレスの攻撃を避けてるフリをしている間に、セレスを狙える絶好の位置に移動する。

 ……実行!

「雷纏い参ノ型 万雷の圧・八方!」
 セレスの周り全方位にそれが現れる。

「え!? ……きゃあ!」
 どうやら上手く引っかかってくれたようだ。

「レイさん……仕返しです! 海纏い肆ノ型 海《うみ》の舞踏《ぶとう》」
 銃口から大量の水が溢れ、まるで海が踊っているかのように荒れている。

「光纏い参ノ型 光《こう》鞭《べん》!」
 銃口から光の鞭が出る。それを2つにする。うわ……なんか触手みたい……きもちわる……

 まぁそれは気にしないようにして、荒れ狂う水達を退ける。


「海纏い伍ノ型 篠突く雨!」
 セレスは上空に向かって何度も打ち、篠突く雨を何重にもする。しかもまぁまぁ広範囲にしてるから避けるのも難しそう……

「万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧! 万雷の圧!」

 こちらも上空に向かって万雷の圧を打ち込んで防ぐ作戦だ。これで水を使って通電してそれに感電したら笑えないけど。

 万雷の圧の下にしっかりいたら大丈夫なはずだ。

「天空纏い肆ノ型 颶風《ぐふう》!」
 やっぱり妨害してくるよねぇ……

「雷纏い伍ノ型 雷電波!」
 相殺! どやぁ!

「天空纏い漆ノ型 疾矢《はや》!」
 もう! 邪魔して来ないで!

「雷纏い漆ノ型 迅雷《じんらい》!」
 またまた相殺! どやぁ!

 その時ちょうど篠突く雨が止んだ。
 よしっ! 私だってこれまで何もしてなかったわけじゃないんだから!

 ……シンの前でやって驚かせたかったな。なのにさっきのやつであんなに暴れて……そしたら急に気を失って……毎回勝手に……

 なんだかイライラしてきた……

「シンの……!」

 今からやるのは雷纏いの玖《きゅう》ノ型

「ばかぁぁぁぁ!!!!」

 玖《きゅう》ノ型 轟《とどろ》く裁雷《さいらい》!

 そのレイの叫びと技の轟音《ごうおん》は、外にいた人全員の視線を一気に集めたのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品