イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第16話 ソルセルリー学園

「楽しそう! 早く行こ!」
 絶叫系は無理だが、こういうのは何故かいけると思う。自分の意思で自由に動けるからな。

「では、この魔道具を装着して、こちらにお進み下さい」

 なんか暗いところに来た。
 周りが何も見えない……。

 と、その時、急に自分の体が浮遊感に包まれた。
「うわわっ!」

 気が付くと、王都の上空にいた。
「おぉ!」

 それから俺は好き勝手に飛んだ。
 めっちゃ楽しい!
 風がこんなに気持ちいいなんて思ったの初めてだ!

 でも、不思議なことに何故かみんな俺に気付かないんだよな。
 1回地上スレスレで飛んでみたが、誰も気付かなかった。

 さっきのバッジってそういう魔道具なのかな?

 10分程自由に飛んでいると、急に体の感覚がなくなった。

「……っ!?」
 何が起きた!?

 すぐに感覚は戻った。
 気が付くと、飛ぶ前にいた暗いところに俺はいた。

 ……?
 どうなってんだ?
 あとでセレスに聞こ。

 後ろの扉が開く。
 そこを通って受付のところに戻る。

「楽しめましたか?」
 セレスが聞いてくる。
「すごい楽しかった!」
「左に同じ」

 はしゃぐレイと、少し冷静な俺。さっきのが気になってるからな。

 気になったことは知りたい。どうしても俺はそう思ってしまう。

 知ることは無理かと分かった時は諦めが早いのだが、分かるかもって時は追求が激しいとレイとマキに前クレームを受けたことがある。

 だって気になるんだよ。

「んでさ、セレス」
「はい?」
「なんか最後いきなり体の感覚がなくなって気付いたらあそこに戻ってたんだけど、あれってどうなってるの?」
「あ、それ私も気になってた」

「あぁ、それはですね。実はあれは実際に空を飛んでるんじゃないんです」
「え、そうなの?」
「何かの魔道具で意志を読み取って、その通りに動いてるように見せているだそうです」

 そうだったのか……。
 でもそれでなんで感覚が切れるんだ?

「それで、なんで感覚が切れたのかと言うと、
 まず別の魔道具に感覚を移して、何かの魔道具で飛んでるように錯覚させ、読み取った意思の通りに見せる、などなどのやり方で浮遊体験が出来ているんだそうです」

 ふむ、つまりは色んな魔道具のお陰で浮遊体験が出来ていると。

「その感覚を移す時に、感覚が無くなるような風に感じるんですよ」
「なるほどな」

「他にももっと色々ありますよ?」
「行ってみたい!」
「俺も!」

「じゃあ行きましょう!」
「「おぉー!」」

 そっからは色々行った。
 やけにリアルな4次元ゾンビサバイバルゲームだったり、魔法禁止の無人島漂流体験だったり、パンチングマシンの魔法版で俺が3人の中で1位だったり。

 まぁそれは俺が影纏い使ったからってのもあるが……。
 まぁ、それは置いておくとして、とりあえず色々遊んだ。

 っていうか、もう6時前だな。
「いっぱい遊びましたし、もうそろそろ帰りましょ?」
「花火は?」
「歩きながらゆっくり見ましょう」
「おけ」

 俺たちは徒歩で王城に帰ることにした。

「花火っていつからなの?」
「もうそろそろ始まると思いますよ? いつもは5時半過ぎくらいに始まりま……」

 セレスが最後まで言う前に、バァンッ! と大きな音が聞こえた。

 花火が始まった。

 王都の至る所から打ち上げられている。

 地球にいた頃は想像も出来なかった。魔法があるからこそ出来る、俺たちにとっては特別な花火がそこにはあった……。

 俺たちが王城に着き、風呂に入り、夕食を食べ、自由時間になっても、まだ花火は続いている。

 俺はセレスとレイと一緒に、何故か俺の部屋の窓から花火を見ている。
 10時半になった辺りで花火は終わった。

「すごい綺麗だったね」
「ほんとにな」
「そうでしょう?」

「じゃあ、花火も終わったしそろそろ部屋に戻るよ」
「じゃあ、私も」

「うん。おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

 そう言ってレイたちは自分の部屋に戻っていった。

 今日は疲れたし、もう寝るか。
 ふゎ……。
 おやすみ……。

 ―――――――――

 朝7時になった頃。
 俺は既に目が覚めていた。

 何故かって?
 それは昨日いつもに比べて早く寝過ぎたからだ。
 そのせいで4時に起きてしまった。
 6時より前の記憶は薄いから合ってるか分からないが、おそらくそのくらいだろう。

 コンコンッ。
「シーン」
 と言いながらなんの躊躇もなく部屋に入ってくるレイ。

「あ……」
 既に着替えて立っている俺を見て、立ち尽くした。

「なんで……」
 3秒ほどの空白の後。
「シン大丈夫!?」
 と、叫びながら俺に迫ってきた。

 何が!?

「いや、何で!?」
「だってシンが起きてるなんておかしいじゃん!」

 ……。
 そういうことか……。
 俺舐められすぎじゃね?まぁ、それほど朝に弱いのは自覚はしてるけど……。

「……昨日早く寝すぎたから早く起きすぎたんだよ」
「あ、そういうことか。やっぱりそうだよね。シンが普通にこんな時間に起きてるなんておかしいもんね」

 とりあえずレイを小突いとく。

「……はぁ。とりあえず登校時間になるまではゆっくりしようぜ?」
「ま、それもそーだね」

「学園の授業ってどんな感じなんだろうな?」
「シンはなんの授業が楽しみ?」
「そりゃ魔法に決まってる!」
 魔法学園特有の授業だよな!

「ま、そうだよね」
「レイだって魔法だろ」
「当たり」
「やっぱそうだよなー。影纏いを使って戦ってもみたいな。もっかいエクセレトス先生と模擬戦したい」
「あ、私も纏い使いたいな」

「それも1つの楽しみだな」

 なんてことを話してたらすぐに時間になった。

 俺とレイとセレス、3人で登校する。
 転移碑があるから5分もせずに着いてしまうが。

「じゃあ、また後で」
「うん、また」
「またね!」

 まず俺たちは職員室に行く。

「すみませーん」
「ん? おーシンたちか! どうした? あ、そっか。今日から学園か」
 エクセレトス先生が応答する。
「はい」

「確かSクラスだったよな?」
「はい」
「運がいいな。なんと1年Sクラスの担任は俺だ」

 まじか。
 でも知ってる人でよかった。

「んじゃ、案内するから着いてこい」
 そうして俺たちは4階に来た。

「ここがSクラスな」
 既に5人ほど集まっていた。

 ピーンポーンパーンポーン。
 ピーンポーンパーンポーン。

 チャイムが鳴る。
「よし、ホームルーム始めるぞー。今日はみんなも知っての通り、2人転入生がいる。諸事情で入学が遅れちまったんだ。とりあえず自己紹介してもらっていいか?」

「シンサクライです。事情があって入学が遅れてしまいました。みんな気軽に話しかけてくれると嬉しいです。1年間よろしくお願いします」
「レイコウサキです。このシンと同じで、事情により入学が遅れてしまいました。皆さん仲良くしてくれると嬉しいです。1年間よろしくお願いします」

 ま、自己紹介なんて大体同じ内容になるよな。

 ちなみに王から言われていることだが、俺たちが転移者だということは、隠す方針らしい。

 名前を逆にしたのはその為だ。

「今日は転入生がいるから、普通の授業はなしだ。自由時間にするから、交友深めとけ」

 そうして、自由時間ということになった。
 さて、どうしようか。
 友達の作り方なんて覚えてないしなぁ……。

 と思っていたら2人の男子から声をかけられた。

「シンっていうのか? 俺はザック。よろしくな」
「僕はアレク=フォン=ライルだよ。よろしくね」

 ザックは青みがかった銀色の髪と眼で、活発そうだ。
 アレクは茶髪緑眼の、見るからに優しい青年って感じ。こいつモテるな。

「うん。よろしく」
 笑顔で返す。

「なぁ、お前Sクラスに入るくらいだから当然強いよな!?」
 ザックが突然聞いてきた。

「ちょっとザック。その癖やめようよ。すぐに戦おうとするの」
「いいじゃねぇか。なぁ、シン! 俺と模擬戦しないか!?」
 模擬戦か……。

 正直今の実力を試したいし、やりたい。

「まぁ、いいよ?」
「おっしゃ!」
「えぇ、いいの……?」

「お、シン模擬戦するのか?」
 そんな時エクセレトス先生がやってきた。

「あ、はい。ザックとすることに……」

「いいじゃねぇか。怪我しても俺が回復させてやるから思う存分やれ」

「おし! じゃあ決闘場行こうぜ!」
 え、なんか物騒な名前。

 いいんですか? という視線をエクセレトス先生に送る。

 その視線に気付いたらエクセレトス先生はいいぜという風に頷く。

 そうして、俺はザックと模擬戦することになった……。
 模擬戦なのに決闘場……。

 不安だ。

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