イレギュラー・レゾナンス 〜原初の世界を再び救う為の共振〜

新海 律希

第12話 魔道具ってなんかいいよね

 朝。

「おーいシーン。もう30分前だよー? 起きてるー?」
 扉を叩きながら呼びかけるレイ。
「……やな予感はしてたけどほんとにそうなるか……」

 俺はものすごく朝に弱い。
 つまりまだ起きていない。

 レイは気にする素振りも見せず部屋に入る。

 俺はレイの予想通り寝ていた。

「シーン」
 ゆさゆさと俺の体を揺らすレイ。

「……起きたらじゃがり君あげるよ?」

 バッ!
 俺は即効起きた。

「……じゃがり君どこ?」
 キョロキョロ周りを見回しながら俺は聞く。

「はい、ちゃんと起きた」
「じゃがり君どこ?」
「ないよ? シンを起こすために言った嘘だし」
「……」
 俺は絶望したように放心状態になる。

「……今日何する日か忘れてるわけじゃないでしょうね?」
「じゃがり君食べる日?」
 レイが俺の頭を強めに叩く。

「一緒に王都観光しよって言ってたでしょ?」
「……………あぁ」
 レイはさっきよりも強く頭を叩いた。

「……いたい」
「とりあえず寝ぼけてないで支度して。王都広いんだから時間無駄にしたくないよ?」

「……ふぁい」
 レイにほっぺをつねられている俺はそう答えた。


「ほら、まず着替えて。はい、服」
「ありがと」
 眠気も覚めた俺はいつも通り答える。

「……いつまでいるの?」
「シンがしっかり支度するか見張ってるから終わるまでだけど?」
「……」

「あ、何? 自分の体見られるの恥ずかしいの?」
 煽り気味にレイが言う。

「いや、そうじゃなくてお前女子なんだからもうちょいそこ気使おうぜ」
「別にいいでしよ今更」
「まぁ、そうだけど……」

 実際、レイ達とは保育園からずっと一緒の仲だし、俺が寝ぼけてる時に強制的に着替えさせられるとかもよくあったから、上半身とか見られても今更恥ずかしいとかいうことはない。

 それでも女子と男子なんだからもうちょっと気にしてもいいんだけどなぁ……。

 ―――――――――

 とりあえず着替え終わって王都に出てみた。
 この世界の服って日本にいた時のと同じのも違うのも、ほんとに色々あるから初め驚いたんだよなぁ。

「まずどこ行く?」
「うーん。考えてみれば全く何にも考えてなかったね」
「なにかしら考えとけ」

「シンだって考えてなかったじゃーん!」
「俺はギルドっていう案を出した。」
 ふふんという効果音が聞こえてきそうな顔でドヤ顔する。
「む…」

 そんなことを話しながら適当に歩いていたら、1つの店が俺の目に入った。

「魔道具屋?」
「うん?」
 レイも俺に続いてそこを見る。

「あそこ行ってみない?」
「いいよー」
 魔道具屋は異世界あるあるだよなー。
 わくわくする。

 でも、こういうのってラノベとかだと店主がそっち系の人とかやばい人が多いんだよな……。
 それでいてすごい人だったとか。

 カランコロン。

 店は200メートル四方はあって、3階までフロアがあるかなり大きい店だった。

「でっか……」
「ね……」

 俺たちは唖然としてしまった。

「おや? どうされたのですか?」
 唖然としていると、店員さんらしき人に声をかけられた。

「あ、いえ。ここの立派さに驚いてしまって」
「ふふふ、そうですか。ありがとうございます。
 今日は何かお求めですか?」
「特別何が欲しいというのはないですが、面白そうなものがあったら欲しいなと」

 ちなみに今の俺たちの所持金は金貨7枚と銀貨14枚の、計714万円だ。

 正直700万で十分過ぎる程だが、何かあったとき用の為に半端に持っている。

 それにあって困ることは無いしな。

「そうですか。では、私がある程度ご案内しましょうか?」
「いいんですか?」
「もちろん」
「では、お願いします」

 それから俺たちは、魔力を一定量込めれば家を隅々まで綺麗にしてくれるものや、プラネタリウムみたいなものを作るもの、その場に合わせて好きなビージーエムを流して雰囲気を良くするものなど、色々見せられた。

 すげぇな。
 これが最も正直で簡単な感想。

 色々見ていると、ある物が目に入った。

「あれは?」
「あぁ、あれはですね、今1部で流行っている武器です。」
「どんな物ですか?」
 俺が聞いた時、何か足音が聞こえた。

「あら、初めて見るお客様ね」
 そして現れた人は、蒼い髪のロングヘアで蒼い眼をした160センチくらいの優しそうな人だった。

「会頭!」
 会頭!?
 この優しそうな人が?

「初めまして。このセラール商会の会頭をしている、ウェンズ=フォン=セラールよ」
「コウサキレイです」
「あ、サクライシンです」
「えっと、後の名前が名前で前の方が名字でいいかしら?」
「はい」

「なるほど、あなた達転移者でしょ」

「え?」
 なんで分かったんだ?

「とりあえずこっちに来て」
「あ、はい」
 そう言って俺たちは奥の応接室らしい場所に行った。

「それでね、なんでここに来たのかと言うと、転移者っていうのはすごく珍しくて、まぁまぁの強さを持ってるけど、ここの知識が全くない人が大半なのよ」
 それは確かに。

「だからね、それを利用して悪いことしたりする人もいるから、誰にも聞かれないここに場所を移したの」
「そうだったんですか。それはありがとうございます」
「いいえ」

「それで、なんで転移者だって分かったんですか?」
「簡単なことよ。この世界ではね、名前が後に来る人はいないのよ」
「え」
 てことは、異世界あるあるの日本に似た国とかないの?
 えー残念。

 ん?
 じゃあセレスはあの時気付いてたのか?

「これで疑問は晴れた?」
「まぁ、はい」

「それでね、ここからが本題なんだけど」
 なんだろ。
 俺達この人に会うの初めてだよね?
 ほんとになんの要件だろ。

「さっき、これについて話してたわよね?」
「あ、はい」

 ウェンズさんが出したのは、さっき俺が見つけた刀のような武器だ。
 でも魔道具のはずだから、何か気になって聞いたんだ。

「この魔道具の特性はね、魔力連動なの」
「魔力連動?」
「えぇ、これに使う人の魔力を最初に流すの。
 そうしたら、これに魔法を流すようにするとそれを出したり、纏わせたりできるの。
 この魔道具を使った型や流派もいくつかあるわね。」

 え、かっこいい。
 ん? でもさっき1部で流行ってるって言ってたよな?
 なんでそんな物が1部でしか流行ってないんだ?

「なんでそんな物が1部でしか流行ってないんですか?」
「あぁ、それはね、この魔道具を使うのが難しすぎるからなの」

「難しい?」

「えぇ、これはかなりのレベルの魔力制御が出来ていないと使えないし、使えたとしてもそれを続けながら動くっていうのがみんな出来ないの。だから実力がある人の間でしか流行ってないの。軍でも大将以上の実力がなきゃ使える人はごく僅かよ。
 あ、あと値段の問題ね」

 あ、それなら俺達も使えるかもしれない。

 俺たちをずっと王城で訓練してくれていたのはプロットだ。
 なんかよく分かんないけど「俺今暇だから鍛えてやるよ!」と言われて、ちょうど良かったからその言葉に甘えてお願いした。

 んで、そのプロットに、魔力制御だけなら大将レベルには成長したなと言われたので使えることは確定だろう。

 どうしよう……。
 すごく使ってみたい。

「あの、その魔道具ってどんな物があるんですか?」

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