Colors behavior
1 オワリノハジマリ
「ヤァッ!」
剣道場に鳴り響く、竹刀と竹刀がぶつかり合う音。素足が畳の上を滑る音。選手の息遣い。3年前は聞くだけで心踊らせていたが、今となってはもう耳に響くことはなくなってしまった。
「ハッ!」
仲間に向ける顔も無く、そっと出入口に向かう。
「・・・・おい一木、まだ試合あんぞ」
「・・・すまん、ちょっと帰ってから用事があって」
「試合の事なら気にしなくても」
「大丈夫!そのことじゃないから。じゃな!」
逃げるようにして市の総合体育館を後にした。
何なんだ
走る。
何をしているだよ、俺
走る。
あとちょっとだったのに。
走る。
 
あと一点の差だったのに。 
走る。
負けてしまった。
走る。
最後の試合だったのに。
不意に、目頭から熱いものが頬を伝った。
「・・・くっそ・・・・なんで・・・・っ」
強引に涙を拭い、走り続ける。
そう、俺は馬鹿だった。
馬鹿だったんだ。
もっと頭が良ければ。
----曲がり角から飛び出してきた影にも気づけたのかもしれない。
『起きてください、マスター』
突如頭に響いたその声に、ゆっくりと瞼を開ける。眼前には、不思議な光景が広がっていた。
「どこだ、ここ」
先程まで走っていた町とは打って変わって、周りにはテレビやゲームでしか見たことのないような、いかにも「魔王の間」みたいな王室が広がっていた。そして何やら俺は玉座見たいな物に座っている。
「・・・・・いや本当にどこだよ。てか何だよこの空間は」
来ていた筈のジャージは格好いいデザインのローブに変わってるし、ちゃっかり指にはゴッツイ指輪もはめている。しばらく自分の体を模索し続けていると、またあの声が聞こえた。
『上手く接続されたようですね。障害がある場合は何かしらの器官が正常に作動しないのですが・・・はい、大丈夫です。問題ありません。』
「だっ、誰!?てかどこ?」
『始めまして、加島 一木様。私はヘルスカウンセリングプログラムNo.2のイブといいます。今私は、マスターの精神的根源にインストールしている形になっており・・・』
「いやストップストップ!何言ってんのか全然分からねえ!」
するとイブは、口調を変えずに淡々と続けた。
『そうですね・・・。簡単に言うと、私は今マスターの心の中にいます。そこから魂に直接呼び掛けているのだと思ってくれたらいいです。』
・・・まず状況を整理しよう。ここはあれか?ラノベで嫌というほど見てきた異世界とかいうやつか?それなら話もつく。だがしかし。何で俺はここにいる?普通は死なない限り・・・
そこまで思考が辿り着いた瞬間、不意に微かな記憶が呼び戻される。曲がり角・・・・黒い影・・・そしてこれは・・血の匂いなのか・・・・?
『大変残酷ですが』
思考中の俺に割って入ったイブは、
『マスターは8月14日午後4時58分3秒、突如曲がり角から現れたトラックにより牽かれて』
とても鋭い口調で、
『死亡しました。』
そう呟いたのだった。
剣道場に鳴り響く、竹刀と竹刀がぶつかり合う音。素足が畳の上を滑る音。選手の息遣い。3年前は聞くだけで心踊らせていたが、今となってはもう耳に響くことはなくなってしまった。
「ハッ!」
仲間に向ける顔も無く、そっと出入口に向かう。
「・・・・おい一木、まだ試合あんぞ」
「・・・すまん、ちょっと帰ってから用事があって」
「試合の事なら気にしなくても」
「大丈夫!そのことじゃないから。じゃな!」
逃げるようにして市の総合体育館を後にした。
何なんだ
走る。
何をしているだよ、俺
走る。
あとちょっとだったのに。
走る。
 
あと一点の差だったのに。 
走る。
負けてしまった。
走る。
最後の試合だったのに。
不意に、目頭から熱いものが頬を伝った。
「・・・くっそ・・・・なんで・・・・っ」
強引に涙を拭い、走り続ける。
そう、俺は馬鹿だった。
馬鹿だったんだ。
もっと頭が良ければ。
----曲がり角から飛び出してきた影にも気づけたのかもしれない。
『起きてください、マスター』
突如頭に響いたその声に、ゆっくりと瞼を開ける。眼前には、不思議な光景が広がっていた。
「どこだ、ここ」
先程まで走っていた町とは打って変わって、周りにはテレビやゲームでしか見たことのないような、いかにも「魔王の間」みたいな王室が広がっていた。そして何やら俺は玉座見たいな物に座っている。
「・・・・・いや本当にどこだよ。てか何だよこの空間は」
来ていた筈のジャージは格好いいデザインのローブに変わってるし、ちゃっかり指にはゴッツイ指輪もはめている。しばらく自分の体を模索し続けていると、またあの声が聞こえた。
『上手く接続されたようですね。障害がある場合は何かしらの器官が正常に作動しないのですが・・・はい、大丈夫です。問題ありません。』
「だっ、誰!?てかどこ?」
『始めまして、加島 一木様。私はヘルスカウンセリングプログラムNo.2のイブといいます。今私は、マスターの精神的根源にインストールしている形になっており・・・』
「いやストップストップ!何言ってんのか全然分からねえ!」
するとイブは、口調を変えずに淡々と続けた。
『そうですね・・・。簡単に言うと、私は今マスターの心の中にいます。そこから魂に直接呼び掛けているのだと思ってくれたらいいです。』
・・・まず状況を整理しよう。ここはあれか?ラノベで嫌というほど見てきた異世界とかいうやつか?それなら話もつく。だがしかし。何で俺はここにいる?普通は死なない限り・・・
そこまで思考が辿り着いた瞬間、不意に微かな記憶が呼び戻される。曲がり角・・・・黒い影・・・そしてこれは・・血の匂いなのか・・・・?
『大変残酷ですが』
思考中の俺に割って入ったイブは、
『マスターは8月14日午後4時58分3秒、突如曲がり角から現れたトラックにより牽かれて』
とても鋭い口調で、
『死亡しました。』
そう呟いたのだった。
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