『ヒカリ』

ノベルバユーザー406402

『間違えないために』

どうしよう、と迷う時がある。人は誰でも、必ず何かを決めながら生きている。実感がないだけで、毎日何十、何百とさまざまなことを決めている。今日、何を食べようか。雨が降りそうだけど、傘を持っていこうか、いや荷物になるから折り畳み傘にしよう......。例をあげたらきりがない。

しかし、そんな中で、しきりに迷うことがある。人生における分岐点、もし間違えたら今後の人生に関わる、そんな重大な問題に、生きていればいつか必ず出会う。そんなときに、果たしてどのような決断をすればいいのか。今回は、この疑問に私なりに応えたいと思う。

まず、このような疑問を投げかけると「とりあえずやるだけやってみたらいい」とか、「やらないで後悔するよりやって後悔するほうがいい」とか答える人もいる。しかし、本当に深刻に悩んでいる人に対してただ一方的に「やれ」と言うのはあまりに残酷なことではなかろうか。

ただこの答えは、確かに的を射ているとも言える。なぜならば、絶対に正しい答えなど存在しないからだ。ケースバイケースに、臨機応変に対応していくしかない。したがって私が出す答えは「考えろ」の一言に尽きるのだが、それではあまりにお粗末な答えだといえよう。そこで、もう少しこの答えを深堀りしていきたいと思う。





どうしようかと悩んでいるとき、そこには二つの要素がある。一つは感情。一つは理性だ。人間の頭の中にはこの二つの天秤がある。感情に従うとは、例えば、今目の前にやらなければならない仕事がある。

けれども、今夜はどうしても見たいテレビの番組がある。録画をしろよとかいう意見はおいておくとして、感情に従って判断するのであればこの場合はテレビを見ることになる。それによって心身の疲労やストレスを負うこともなく、快適に時間を過ごせる。逆に理性に従って判断する場合、この逆の答えが導き出される。

見たいテレビは諦め、仕事に集中する。仕事をしなければお金がもらえないし、同僚にも迷惑をかける。そのような考えが彼を仕事に向かわせる。

理性が感情を上回るとき、それを人は覚悟と呼ぶ。世間では「身を削って」とか、「リスクをかえりみず」とかいう覚悟をした人を、まるで英雄であるかのように評価するが、私は覚悟をすることを格好のいいものだとは思わない。逆に、格好の悪いものだとも思わない。要するに、なんとも思っていないのだ。

そもそも、理性とは何のためにあるのか。それは、幸せをつかむためだ。将来、出世してお金を稼いで楽するため、自分の夢をかなえるため。すなわち理性の最終的な目的とは、感情を満たすことに他ならない。理性と格好つけて言ったとしても、所詮は感情に従属するものでしかない。

故に、理性とは「長期的な感情である」と考えることができる。理性だろうが感情だろうがその求めるものは同じ。覚悟とは格好いいものじゃない。だから、それが出来なかったとしても、気負う必要はまったくない。







人間には他の生き物たちにはない、理性を与えられた。理性と感情の追い求めるものが本質的に同じだとしても、客観的に考えられるという点で、理性は非常に優れていると言える。人間の理性には、未来をつかもうとする力がある。現状を分析し、過去を今につなげ、より良い未来を模索する。

この未来をつかもうとする力こそが、人類が驚くべき速さで発展した要因だ。それは、一人一人、誰にも備わっている。大切なのは、その力を正しく使うことだ。「考える」という特権が与えられているのに、それをいたづらに浪費するのはもったいない。

ここで、具体的な方法に移ろう。何かについてどうしたらよいか迷っているとき、一旦感情は抜きにして、「長期的な感情」である理性のみで考えてみよう。それをするうえでメリットとデメリットを考えてみる。余裕があれば、紙などに書き出してみるのもいいだろう。そうしたうえで、どちらを優先すべきかを理性のみに従い判断し、そこに赤で丸を付けてみよう。次に、感情に従って判断し、そこに青で丸を付けてみよう。すると多くの場合、赤と青の丸はかぶらないはずだ。もしかぶったのなら、迷う必要はない。

さて、かぶらなかった場合だが、今度は赤い丸、すなわち理性で判断した選択だが、そこのメリットをさらにできるだけ多く書き出し、デメリットの中で感情によって判断したものを消していこう。するとどうだろう、どちらを選ぶかなんて、火を見るよりも明らかだ。

でもやはり、感情の力は強い。納得できないこともあるだろう。そんなときは、今まで私が述べてきたことを思い出してほしい。理性は決してあなたの敵ではない。あなたの幸せのためにある。あなたの最も頼りになる相棒だ。そしてその相棒には、未来を、光をつかむ力がある。理性に基づく判断は、必ずあなたを一歩前へ進ませる。










人間は間違える生き物である。どんなに真剣になって考えたとしても、どんなにたくさんの人に相談したとしても、必ず正しい答えには決してたどり着けない。理性に基づく判断をしても、間違うことはたくさんあるだろう。

だが、理性に基づいたそれらの間違いは決して無駄にはならない。それらはあなたの大切な経験となる。あなたの次の判断の材料になる。間違った数だけ、前に進める。失敗した数だけ、未来につながる。希望を持て、前に進め。




どうか、あなたに光あふれる未来が訪れることを切に願う。

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