異世界転生した悪役魔女のリセットライフ

如月ゆかり

第四章 入学試験



「明日はとうとう入学試験だね」


「う、うん...」




とうとう明日に迫ってきた。ベルや、他の登場人物が通ってる『私立魔法学園』。そこに通うにはまず、入学試験で合格しなきゃならない。


ベルはやる気じゅうぶんみたい。今のベルを見てたら何事もなく合格しそうな気がする。


だとしたら、問題は私の方だ。今の私は他人事のように見てられない。私だって、試験を受ける生徒の一人なんだもの。ベルに教えてもらいながら、ある程度の文字なら読める様になった。だけど、試験の内容は分からない。何が起こるのか、予測出来ないの。




「ミッシェルに見せたいものがあるの」


「...え?」




突如、ベルがそう告げて人指し指を上に向けると、そこに小さな光が宿った。


―う、そ....―


その光景に私は驚き、目を見張った。




...ごめん、ベル...素直に喜んであげられない。


だって、それは...。


ゲームがある程度進んだ時に見られるベルの覚醒イベントだから。


その時にベルが初めて、光の魔力を授かったの。それはまだ先の話。間違っても今じゃないよ。




「...ミッシェル?」


「ハッ...す、すごいねベル!一気に差をつけられた感じ!」




どうしよ。このままじゃこのゲームの世界が崩壊しちゃうよ。


これってもしかして、ベルがヒロインじゃないの?私が知ってるゲームとは別ってこと?じゃあ、本当のヒロインは一体...。




「私が出来たんだもん。ミッシェルだってすぐに出来るようになるよ」


「ベル...。」




私にも、か...。


つまり、ベルに出来ることはミッシェルにも...。


だけど、本当は違う。


ミッシェルに出来ることはベルでも出来るんだよ。


ベルに出来ることを私は...できるの?


ミッシェルは、やれるの?




「ミッシェル?疲れてるようなら先に休んでる?」




ベルはいつも私を気にしてくれる。このまま此処に残っていても、ベルに迷惑が掛かりそうだしお言葉に甘えることにした。




多少、変な方向に行ってるとしても本編のストーリーはまだまだこれからだし、大丈夫だよ。


私は、自分でそう言い聞かせながら目を瞑った。






「ベル、ミッシェルちゃん...試験頑張ってね」


「君達が無事、試験に合格出来るよう祈ってるよ」


「任せてよ!」


「...行ってきます」




外で見送りをしてくれてるベルのお父さんとお母さんに挨拶をして二人で学園に向かった。


短かったような、長かったような距離を歩いて学園の門前までやってきた。そこには数えきれないほどの生徒が集まっていた。その中には見知った人物が何人か居る。


―ルイズだ―


先日に会ったルイズの姿を見つけた。今日も相変わらずミステリアスな雰囲気を持ち合わせている。




「ルイズ!」




私に気付いたルイズは此方に振り向いた。だけど、何時になってもルイズからの言葉がない。


―あれ、どうしたんだろう―


もう一度声を掛けようとしたら、ルイズは私に向き直って深くお辞儀をした。


―ルイズ?―




「お初にお目にかかります。ボクは、ルイズ・レイビスと申します。失礼ですが、何処かでお会いしましたか?」


「なに、言ってるの?」




なんで、初めて会ったみたいな言い方...。




「ミッシェル、知り合い?」




ベルが話し掛けてきた途端、ルイズは背を向けて無言で歩き出した。


人見知りなのかな...。まぁ、会ったこともない人が急に近くに来たら困るよね。




「なんか、不思議なオーラの人だね」




ベルはポツリと呟いた。それに私は無言で頷く。


きっと、ベルじゃなかったら嫌な印象を与えてたと思う。無言で立ち去るだなんて失礼だとか色々言われてたに違いない。だけどその事に触れないのは、ベルの性格の良さが現れてるからか。


暫くルイズの後ろ姿を見つめていると、チャイムが学園全体に鳴り響いた。チャイムがなった途端、一斉に中央に集まっていた。自然と私も人の波に流される様に中央まで来たんだけど.....。


さっきまで一緒に居たベルが見当たらなかった。


―えっ、はぐれた?―


ベルを探しに行こうとしても、人々が行く手を阻んでその場から動くことが出来ない。


その間に、一人の男性の声が響いた。その声を聞いて黄色い歓声があがる。




「ごきげんよう、入学希望者の諸君。私は、エヴァン・ライエス。この学園の生徒会長だ。」




そこには、無駄にカッコつけて登場し、高いとこから全生徒を見下ろしてる男が居た。




エヴァン・ライエス...。


二年生だけど、全生徒をまとめてる生徒会長。カリスマ性が溢れていて専用ファンクラブでは、超が付くほどの会員が居るんだけど.....。




「(フンッ、愚民ごときが俺と同じ舞台に立てるなんて凄いことなんだぞ...。お前達のつまらない学園生活、俺が存分に輝かせてやろう。何故ならば俺は、学園中...いや、世界中を導くキングだからな)」




...何を考えてるのかお見通しですよ。




この様に、たまにイキってる言動が目立つ。


表では爽やかな笑顔の好青年を演じているけど、裏では他人を見下してる。


このゲームの事を分かってる私には、貴方の張り付いた笑顔なんて通じないんだから。




「では、諸君らには今からあるゲームをしてもらう。なーに、そんなに構えなくてもいい。今から二人一組である森に行ってもらい魔法石を手に入れて帰ってきてもらうだけでいいんだ」




...なんだ、それだけか。二人一組だし、なんとか入学試験突破出来そうね。




「だが...魔法石は絶対一人一個ずつ持ってくる事、必ず二人で帰ってくる事...それが出来ない場合は即失格!そのペアには退場してもらう」




ちょっ、あまりにも無茶ぶりしすぎじゃない?だけど周りを見ても反対する者はいないし、逆に賛同の声があがって拍手まで起きているってどういうこと!?


ううん、賛成してるんじゃない...反対出来ないんだ。この学園は彼で成り立ってるとこもあるから。だから皆、


エヴァン・ライエスと言う男の言いなり。




「ペアを組むなら誰でも良い。では、ゲームの始まりだ!」




合図と共に慌てて皆が動き出す。直ぐにペアを見つけた人、なかなかペアが見つからなくうろついてたりと様々だ。


私も急いでベルを探そうと動き始めると、こちら側に来ようとしてた一人の少女とぶつかってしまう。




「ご、ごめんなさい!」




その子は、俯いたまま慌てて私に頭を下げてきた。長い前髪に隠れていてちゃんと顔が見えない。だけど多分、見たことがない子だ。




「ううん、私の方こそちゃんと見てなくてごめんなさい」


「い、いえ!私が悪いんです...」




別にそこまで謙虚にならなくていいのに。




「私、ミッシェル・エドワーズって言うんだけど、貴女の名前も聞いていい?」


「あっ、はい!...私は、レイラです。レイラ・フィオーネ。」


「レイラちゃんね。レイラちゃんはパートナー見つかった?」


「レイラで良いです...いえ、まだですけどミッシェルさんは?」


「私は今、友達を探してる途中なんだ」


「そ、そうなんですね」




レイラが少し肩を落とした気がした。レイラは、一人で此処に来たのかな。大人しそうな子だし自分から話しかけるなんて無理そうだもんね。一緒に組んであげたいけど、ベルのとこに行かなきゃだし...。ちらっと視線を横にやるとそこにはベルの姿が。


ベルは親しげに少し気が弱そうな男性と話していた。


誰だろ、あの人。


ベルとその彼の事が気になってずっと見ていると、ベルと目が合ってこちらに横の男性と一緒に近付いてきた。




「ミッシェル、ペア見つかった?」


「へっ?...そう言うベルは見つかったの?」




私達、てっきり一緒に組むと思ってたのに。ベルは少しもそんな気なかったなんて。




「私は横の彼と組むんだ。」


「初めまして、ケビン・フォスターです」




ショックだった。まだ恋人候補と組むなら良いけどサブにもなれないモブさんと組むなんて。




「...ベル、もしかして彼の事を...?」




いきなりすぎると思うけど確認せずにはいられなかった。ケビンさんに聞こえないようにベルに耳打ちをした。




「なに言ってるの、ミッシェル」




ベルは可笑しそうに笑っていた。良かった、ベルにはケビンさんに特別な感情がないと分かったから。




「だけど.....ああいう男性、ほっとけないんだよね」




なんで、そんなに頬を赤らめてるの?どうして、そんな女の子っぽく笑ってるの?




「ミッシェルは、後ろの彼女と組むんでしょ?」


「へっ?.....あっ、うん。」




ベルは私の後ろに居るレイラと私を交互に見ていた。ベルは私がレイラと組むと思ってるみたい。つい咄嗟にそう答えちゃったけどどうしよ。




「お互い、頑張ろーね」




完全取り残された。流石のコミュ力と言える。


でもこれで、レイラと一緒に居てあげられる。




「...えっと、私達組む?」


「っ!は、はい!」




良かった...。勢いで言っちゃったけど迷惑そうな顔をされたらどうしようかと思っちゃった。


私にそっと寄り添うレイラと共に魔法石を手に入れるため森に向かった。

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