Unlucky!
第二十話 チェンジャー
俺が墓地に座り込んで、何もしないのを確認すると、葵はよよよと長い服の袖で涙を拭くような仕草をする。
葵の格好は相変わらず奇妙だ。俺が駆け出しの冒険者だとしたら、彼女は巫女の駆け出し、みたいな。
巫女服に似ているが、ところどころ違う。巫女服の裾にゴスロリのふりふりをつけたような、そんな奇妙なモノ。
「女の子を奴隷のようにこき使って、そういう趣味があるんですね」
「俺はSでもMでもどっちでもいけるぜ」
「聞きたくもない情報ありがとうございます」
葵は腰に刺していた剣を取り出す。以前はナイフを使っていたが、変えたようだ。
「今現在の私はノーマルスタイルです」
「どう考えてもSだろ」
「性癖の話じゃありません」
葵は俺へ説明しながら戦闘を開始する。
攻撃を避ける技術、敵の隙を容赦なく突く姿は様になっている。
暗殺者とか向いてそうだな、葵には。
「スタイルチェンジというスキルによりスタイルを変えます」
葵がスタイルチェンジと言った瞬間に足場に黄色い魔法陣が浮かぶ。
同時に、装備も変わっている。今は大きな盾と頑丈そうな鎧が目につく。
「赤がアタック、青がマジック、黄がディフェンス、橙がスピード、黒がパーフェクトです」
「パーフェクトって何だ?」
「全ステータスが最高状態です。はっきり言ってクソ強いです。ですが、50回使って1回出る程度の確率です」
それは狙うようなモノじゃないな。普通に戦闘していてたまたま出たら嬉しいみたいな。
葵は体を左右に揺らしながら、スキルを発動させる。
盾を使って敵の攻撃を跳ね返し、剣により連撃で倒す。
「今のはカウンターガードです。タイミングよくガードをすると、敵をふらつかせます。パリィとも言われてますね。スタイルチェンジ」
今度は赤い魔法陣――アタックだ。
武器が巨大な鉄製のハンマーになる。本当に大きい。なぜ、あれを持てるのか気になって仕方がない。
どうやら、各スタイルごとに装備も変わるようだ。今度も鎧に身を包んでいるが先ほどよりも軽そうだ。
全スタイルの武器と防具を用意しているのか。
いくらこいつが鍛冶師だからって、金がかかりすぎだろう。
ハンマーを横ぶり。
スケルトンには打撃系が効くのは明白だな。一瞬でHPがなくなる。
振り戻しに巻き込まれたスケルトンもいなくなる。
これで、スケルトンは倒した。敵の種類が減れば、攻撃のパターンも減るのでだいぶ戦いやすくなるな。
ゾンビが放ってきた溶解液をハンマーで叩いて消し飛ばす。ゴーストが使った火の弾も同様に打ち消した。
普通に流しそうになり、俺は思わず叫ぶ。
「いやいや、なんだそのガード。無茶すぎだろ」
「あなたのスケルトンガードに言われたくありませんね。自分も気持ち悪さ極まりない動きをしているのに気づいてください」
葵は駆け出しながら、スタイルチェンジと呟く。誰が気持ち悪いだ。
今度は青色――魔法使いか。
杖を装備した葵はゾンビのゆっくりとしたはたき攻撃をよけて、ポコンと杖で叩く。ダメージというよりも敵を回避するためだけの攻撃だな。
そうしながらも、足場には赤い魔法陣が浮かぶ。
あれは、スタイルチェンジとは少々違う。
「ファイアーサークル」
杖をゾンビへ向ける。
丸い円陣が浮かび、火の手のようなモノがたくさん出現。
地獄へ引き連れるようにゾンビとゴーストへ火属性ダメージを与えていく。
どちらも弱点らしく、一気に削りきった。
ぱしぱしと埃を落とすように服と手を叩きながら、葵が自慢顔で戻ってくる。
「どうですか。見た目的も美しい戦いでしたでしょう」
「ああ、胸が結構揺れてたな。パンチラがなかったのは残念だったな」
「そういうのじゃない。それに、見たいなら見せてあげようか?」
「偶然がいいんだ。与えられたエロに興味はねえ」
葵の凍えるような視線が刺さったので、俺は肩を竦める。
重い腰をあげて、伸びを一つ。ふう、固まった体がほぐれたぜ。
「帰るか」
「誰が。これからメインですよ」
ったるいな。
首を回しながら、腰に手を当てて肩を落とす。
すると痺れを切らしたように、少々強引気味に手を掴まれる。
「早く行きますよ。のんびりしている暇はありません。ボス戦に残す時間は30分。現在2時30分です。ということは?」
「良い子は寝てる時間だな」
「バカですか。それとも脳ミソが腐りましたか」
「たぶん、腐ってはいないんじゃないか? 凍り付いて思考停止はしてるかもしれないが」
「……はぁ。これから1時間はレベル上げ。それからボスに挑みます」
具体的な計画を発表される。
レベル上げか。ここの効率のよさを考えれば1時間で2レベルくらいあがるかもしれない。
ドン・ゴブリンの例をあげるなら、ボスはダンジョンの雑魚よりかレベルが低い可能性もある。
五分五分といったところか。
「パーティー戦での基本は分かりますよね」
「頑張ってる仲間を後ろから倒すんだろ?」
「気をつけてくださいね。あなたに全力をぶつけます」
「勘弁してくれ。息を合わせて、仲良く敵を倒せばいいんだろ」
「私には無理」
「だったら、言わせんじゃねえ!」
俺と葵はムカつくがコンビネーションはいい方だ。
そりゃ四六時中一緒にいりゃお互いの呼吸も分かるってモノだ。
「来ましたね」
「足引っ張るなよ?」
「手ならいい?」
「デートのときにしてくれ」
今までで一番多い魔物の群れ。
肩を回しながら、敵を注視する。
「あなたって、戦闘になると素晴らしく悪人面になりますね。これから、人でも殺しに行くんですか?」
そこまで酷いか、俺の顔は。
戦闘時の笑顔は自分で見たことない。戦闘中に鏡がある状況なんてねえからな。
迫ってきた、敵。
入り乱れる敵たちを俺と葵が息の合ったコンビネーションで捌いていく。
「頭下げろっ!」
「あなたに下げる頭なんてありません」
「黙れ、カスッ!」
葵の背後へ振られた骨を剣で弾き、左拳を首にぶつける。
ひるんだスケルトンを投げると、葵がハンマーを叩きつける。
見事だ、バックスクリーン一直線だろう。
「スタイルチェンジ」
今度は青く光る、マジックモードか。
葵は瞬時に瞳をつぶり、チャージモードになる。
「このまま、逃げていいか?」
「魔法をぶつけますが?」
葵をかばうように前に立ち、迫るアンデットの群れを睨みつける。
6体ほどの魔物がよってたかっていじめてくるが、適当に反撃しながらあしらう。
「ファイアーサークル!」
俺を中心に赤い魔法陣が発動。
巻き込まれてもダメージはないが、ひるむのでさっさとバク転で回避する。
炎がめらめらと揺れて、さらに一体増えていて7体の魔物が焼けていく。
火から逃れるようにこちらに手を伸ばすゾンビを俺は笑いながら見ていた。
「苦しんでる姿って、見てて愉快だな」
「人として最悪。一般市民の生活を守る職業につくのに、それってないわー」
「テメェだって似たようなモンだろっ!」
「私は困ってる姿だから。まあ、でも、苦しんでる姿は見物ですね。普段強気な態度をとってるどこかの男とかだったらもっといいんですけどね」
「男ってのは見栄を張りたがるからな、まあ俺には関係ないか」
さらに魔物が出現する。
「このままだと、ボス戦に行けませんね。全く、雑魚共がざわざわ沸いてこないで欲しいですね」
「だが、経験値効率はよさそうだな」
さっきの戦闘でLv21になった。
ぐいぐい経験値が溜まっていくので、気分がいい。
「ボスのLvは25ですから」
「じゃあ、もっとレベルをあげてから挑んだほうがいいな」
「装備的には20後半近くはありますけどね」
ふふんと大きな胸を張る。
ちょいちょい自慢をはさんでくるな。
のんびり会話をしていると、またもややってくる。
「さっさときやがりな! 全員仲良く潰してやるよっ!」
「黙りなさい、中二病。自分の痛い行動を見つめなおしてください」
葵の格好は相変わらず奇妙だ。俺が駆け出しの冒険者だとしたら、彼女は巫女の駆け出し、みたいな。
巫女服に似ているが、ところどころ違う。巫女服の裾にゴスロリのふりふりをつけたような、そんな奇妙なモノ。
「女の子を奴隷のようにこき使って、そういう趣味があるんですね」
「俺はSでもMでもどっちでもいけるぜ」
「聞きたくもない情報ありがとうございます」
葵は腰に刺していた剣を取り出す。以前はナイフを使っていたが、変えたようだ。
「今現在の私はノーマルスタイルです」
「どう考えてもSだろ」
「性癖の話じゃありません」
葵は俺へ説明しながら戦闘を開始する。
攻撃を避ける技術、敵の隙を容赦なく突く姿は様になっている。
暗殺者とか向いてそうだな、葵には。
「スタイルチェンジというスキルによりスタイルを変えます」
葵がスタイルチェンジと言った瞬間に足場に黄色い魔法陣が浮かぶ。
同時に、装備も変わっている。今は大きな盾と頑丈そうな鎧が目につく。
「赤がアタック、青がマジック、黄がディフェンス、橙がスピード、黒がパーフェクトです」
「パーフェクトって何だ?」
「全ステータスが最高状態です。はっきり言ってクソ強いです。ですが、50回使って1回出る程度の確率です」
それは狙うようなモノじゃないな。普通に戦闘していてたまたま出たら嬉しいみたいな。
葵は体を左右に揺らしながら、スキルを発動させる。
盾を使って敵の攻撃を跳ね返し、剣により連撃で倒す。
「今のはカウンターガードです。タイミングよくガードをすると、敵をふらつかせます。パリィとも言われてますね。スタイルチェンジ」
今度は赤い魔法陣――アタックだ。
武器が巨大な鉄製のハンマーになる。本当に大きい。なぜ、あれを持てるのか気になって仕方がない。
どうやら、各スタイルごとに装備も変わるようだ。今度も鎧に身を包んでいるが先ほどよりも軽そうだ。
全スタイルの武器と防具を用意しているのか。
いくらこいつが鍛冶師だからって、金がかかりすぎだろう。
ハンマーを横ぶり。
スケルトンには打撃系が効くのは明白だな。一瞬でHPがなくなる。
振り戻しに巻き込まれたスケルトンもいなくなる。
これで、スケルトンは倒した。敵の種類が減れば、攻撃のパターンも減るのでだいぶ戦いやすくなるな。
ゾンビが放ってきた溶解液をハンマーで叩いて消し飛ばす。ゴーストが使った火の弾も同様に打ち消した。
普通に流しそうになり、俺は思わず叫ぶ。
「いやいや、なんだそのガード。無茶すぎだろ」
「あなたのスケルトンガードに言われたくありませんね。自分も気持ち悪さ極まりない動きをしているのに気づいてください」
葵は駆け出しながら、スタイルチェンジと呟く。誰が気持ち悪いだ。
今度は青色――魔法使いか。
杖を装備した葵はゾンビのゆっくりとしたはたき攻撃をよけて、ポコンと杖で叩く。ダメージというよりも敵を回避するためだけの攻撃だな。
そうしながらも、足場には赤い魔法陣が浮かぶ。
あれは、スタイルチェンジとは少々違う。
「ファイアーサークル」
杖をゾンビへ向ける。
丸い円陣が浮かび、火の手のようなモノがたくさん出現。
地獄へ引き連れるようにゾンビとゴーストへ火属性ダメージを与えていく。
どちらも弱点らしく、一気に削りきった。
ぱしぱしと埃を落とすように服と手を叩きながら、葵が自慢顔で戻ってくる。
「どうですか。見た目的も美しい戦いでしたでしょう」
「ああ、胸が結構揺れてたな。パンチラがなかったのは残念だったな」
「そういうのじゃない。それに、見たいなら見せてあげようか?」
「偶然がいいんだ。与えられたエロに興味はねえ」
葵の凍えるような視線が刺さったので、俺は肩を竦める。
重い腰をあげて、伸びを一つ。ふう、固まった体がほぐれたぜ。
「帰るか」
「誰が。これからメインですよ」
ったるいな。
首を回しながら、腰に手を当てて肩を落とす。
すると痺れを切らしたように、少々強引気味に手を掴まれる。
「早く行きますよ。のんびりしている暇はありません。ボス戦に残す時間は30分。現在2時30分です。ということは?」
「良い子は寝てる時間だな」
「バカですか。それとも脳ミソが腐りましたか」
「たぶん、腐ってはいないんじゃないか? 凍り付いて思考停止はしてるかもしれないが」
「……はぁ。これから1時間はレベル上げ。それからボスに挑みます」
具体的な計画を発表される。
レベル上げか。ここの効率のよさを考えれば1時間で2レベルくらいあがるかもしれない。
ドン・ゴブリンの例をあげるなら、ボスはダンジョンの雑魚よりかレベルが低い可能性もある。
五分五分といったところか。
「パーティー戦での基本は分かりますよね」
「頑張ってる仲間を後ろから倒すんだろ?」
「気をつけてくださいね。あなたに全力をぶつけます」
「勘弁してくれ。息を合わせて、仲良く敵を倒せばいいんだろ」
「私には無理」
「だったら、言わせんじゃねえ!」
俺と葵はムカつくがコンビネーションはいい方だ。
そりゃ四六時中一緒にいりゃお互いの呼吸も分かるってモノだ。
「来ましたね」
「足引っ張るなよ?」
「手ならいい?」
「デートのときにしてくれ」
今までで一番多い魔物の群れ。
肩を回しながら、敵を注視する。
「あなたって、戦闘になると素晴らしく悪人面になりますね。これから、人でも殺しに行くんですか?」
そこまで酷いか、俺の顔は。
戦闘時の笑顔は自分で見たことない。戦闘中に鏡がある状況なんてねえからな。
迫ってきた、敵。
入り乱れる敵たちを俺と葵が息の合ったコンビネーションで捌いていく。
「頭下げろっ!」
「あなたに下げる頭なんてありません」
「黙れ、カスッ!」
葵の背後へ振られた骨を剣で弾き、左拳を首にぶつける。
ひるんだスケルトンを投げると、葵がハンマーを叩きつける。
見事だ、バックスクリーン一直線だろう。
「スタイルチェンジ」
今度は青く光る、マジックモードか。
葵は瞬時に瞳をつぶり、チャージモードになる。
「このまま、逃げていいか?」
「魔法をぶつけますが?」
葵をかばうように前に立ち、迫るアンデットの群れを睨みつける。
6体ほどの魔物がよってたかっていじめてくるが、適当に反撃しながらあしらう。
「ファイアーサークル!」
俺を中心に赤い魔法陣が発動。
巻き込まれてもダメージはないが、ひるむのでさっさとバク転で回避する。
炎がめらめらと揺れて、さらに一体増えていて7体の魔物が焼けていく。
火から逃れるようにこちらに手を伸ばすゾンビを俺は笑いながら見ていた。
「苦しんでる姿って、見てて愉快だな」
「人として最悪。一般市民の生活を守る職業につくのに、それってないわー」
「テメェだって似たようなモンだろっ!」
「私は困ってる姿だから。まあ、でも、苦しんでる姿は見物ですね。普段強気な態度をとってるどこかの男とかだったらもっといいんですけどね」
「男ってのは見栄を張りたがるからな、まあ俺には関係ないか」
さらに魔物が出現する。
「このままだと、ボス戦に行けませんね。全く、雑魚共がざわざわ沸いてこないで欲しいですね」
「だが、経験値効率はよさそうだな」
さっきの戦闘でLv21になった。
ぐいぐい経験値が溜まっていくので、気分がいい。
「ボスのLvは25ですから」
「じゃあ、もっとレベルをあげてから挑んだほうがいいな」
「装備的には20後半近くはありますけどね」
ふふんと大きな胸を張る。
ちょいちょい自慢をはさんでくるな。
のんびり会話をしていると、またもややってくる。
「さっさときやがりな! 全員仲良く潰してやるよっ!」
「黙りなさい、中二病。自分の痛い行動を見つめなおしてください」
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