黒鎧の救世主
第十一話 脇
「この辺りの敵は、久しぶりに戦ったな」
リートさんのレベルはマジだ。その調子で近づいた敵はすべてリートさんに任せた。彼も戦うことは好きなようなので、近づくユグリーマンを大剣で掃除していく。魔物が可哀想なくらい一方的だ。
ずっと突っ立ているだけで、時間は過ぎていく。いつの間にか夕陽がフィールドを照らしている。そろそろ、智也の勤務時間も終わりだ。特に問題も起きない。ただ突っ立っているだけで、金が手に入る。これだけラクな仕事は中々ない。
ダンジョンの中から多くの人が出てくる。夜にダンジョンに入る人間もいるが、多くは昼間なので今の時間帯は切り上げるのにちょうどいいのだろう。
そんな中アッソが一人で戻ってくる。
(一人……?)
「一人か? 残りの三人はどうしたんだ?」
智也と同じようにリートさんも疑問に思ったようで、ぴくりと眉が動く。
「あぁ? 中で別れただけだ。そのうち来るんじゃないか?」
アッソはどうでもよさそうに歩き去ろうとする。
「ちょっと待て、探しにいかないのか?」
けっけっけっと笑い声をあげるアッソはそのままエアストの街へ向かうが、リートさんが僅かに表情を硬くして、肩を押さえる。
「探しに行くわけないだろ? あいつらだってガキじゃねえんだよ。騎士様は過保護だな」
リートさんの腕をアッソが振り払う。激しく動いたことにより、智也は、脇の部分に赤い血が付着しているのを見つける。
アッソ自身も気づいていないようで、
「アッソさん、今日はどのくらいまで潜っていたんですか?」
智也は出来る限り友好的な笑みを浮かべて、アッソに近寄る。怒りが少しずつ煮え立っているが、智也はきわめて涼しい顔だ。
「地下三階までだ。なんだ、うるせえな」
「リートさん三階までの魔物に赤い血を出す魔物はいましたか?」
「少し待て……一、二ドクビー、三はポイズンイモムシだな。一、二、三すべて緑の血だ」
なら、赤い血はどこでついたのか。智也は嫌な予感がして、アッソを睨む。
「リートさん」
アッソにばれないように耳元で、先ほど気づいたことを指摘する。
リートさんの目が鋭くなり、体から怒りが発せられる。
「アッソ、両腕をあげろ」
「はぁ? 意味わかんねえな。おらよ」
智也の見間違いではなく、そこには爪の大きさくらいの血がついていた。
「その脇についてる赤い染みはなんだ?」
リートさんの注意を受けて、アッソの顔色が僅かに悪くなる。アッソ自身も焦ったように脇を見て、それから息を吐き出す。
(こいつ、まさか……本当に殺したのか?)
迷宮、ダンジョン内では人殺しを証明できない。魔物にやられたかもしれないし、死体だってある程度したら取り込まれてしまう。だから、ダンジョン、迷宮内での殺しは許されてしまう。
ここで、殺した証拠を見つけても意味はない。
とはいえ、智也にとっては許せることではなくふつふつと怒りが湧き上がる。
「……それは俺が怪我したからだよ」
白々しい嘘だと智也は笑う――どうせ嘘をつくのなら、回復丸を理由にすればよかったのにな。
それでもそんな場所を怪我しておいて、服が綺麗な状態という時点でおかしいのだが。
リートさんの鋭い目つきに射抜かれているわりにアッソの動揺は少ない。これが初めてではないのかもしれない。
「傷治ってるだろうが」
「仲間が、治癒魔法を使えるんだよ」
リートさんがこちらを見る。智也はそれを証明できる。
「あなたのパーティーに、治癒魔法のスキルを持った人はいませんでした」
「忘れてんだろ。そんなに全員覚えてられるのかよ、ただのガキに」
「あなたが特別印象に残ってますから」
(リートさんがいるから少し大きく出れるぞ)
気分は盗賊の下っ端だ。アッソはまだ言おうとするが、リートさんに強く睨まれて黙りこむ。それから開き直るように、アッソはふんぞり返った。
「証明するものがどこにあるんだよ。物的証拠なんて皆無だろ、天破騎士だかなんだか知らないが、騎士ってのは冒険者を犯罪者にしたてあげてぇのか?」
(俺だって、証拠までは見破れない。どうすればいいんだ?)
調査といえどそこまで優秀ではない。
「確かに、ダンジョン内で殺しをしても許されるが。あいにくオレは仲間を見殺しにする人間が大嫌いだ」
リートさんが静かに言い捨てて、アッソの体を解放する。リートさんはちらと周囲を眺め、
「とにかく、一度中に入って見てくる」
「レベル制限は大丈夫なんですか?」
「緊急事態なら、認められてる。認められていなくても、知るかそんなもん」
そそくさと中に行ってしまう。
(出来れば、アッソをどうにかしてから行ってほしかった)
この先ここを一人で警備するのかと思うとため息も吐きたくなる。それでも三人の冒険者は心配だ。
アッソはリートさんがいなくなったのを認めてから、こちらに近づいてくる。
(ちょ、ちょっと待って。リートさんが戻ってくるまで俺に手出ししないでくれよっ。さっき言ったことは謝る。ごめん)
内心焦りながらも表情には出さない。最近一番意識していることなので、たぶん大丈夫だ。気持ち悪く出っ張った腹を見せつけながら、アッソは吐き気を催す笑みを浮かべる。
「面倒な男と組んでるな、けっけっけっ」
(あんたに比べたら全然マシだ)
「仲間は、心配じゃないんですか?」
答えはわかりきっている。
「俺は利害が一致しただけだ。あんなヤツらがどうなろうとも構いはしない」
「そう、ですか」
(別に、正義感があるとは思っていなかったけどな)
目の前の男をぶん殴りたい。殴った後に蹴り飛ばしたい。
仮にも、一度パーティーを組んだ相手が、どうなろうとも構わないなんて、智也には考えられなかった。
一度でも関わりを持った人間が死んだと聞けば、多少は悲しむと思う。
(まだまだ、甘いんだろうな)
こんなのではダメだと思っても、甘さを捨てきれない自分がいる。どこかで何か事件でも起きなければ、この考えは一生変わらないかもしれない。
「じゃあな」
(逃げるのか?)
とはいえなかった。現在のステータスではやり合っても五分五分。相手のほうが戦いの経験はあるのだから、負ける確率のほうが高い。殺し合いは避けたい。
「……はぁ」
やっぱりまだまだ自分はダメだ。一つの悪意を見つけても、止める術を持っていない。
智也は落ち込みながらダンジョンの入り口を見つめる。
リートさんがすぐに戻ってくることを祈り、自分の仕事に集中する。
それからは誰もやってこない平和な時間が過ぎ、やがてリートさんが戻ってきた。その少し後ろから、パーティーにいた一人の女の子がついてきた。
生き残りがいたことにホッとして、それから智也はリートさんへ訊ねる。
「リートさん、他の人は?」
「この子だけだったな。オレがついたらもう二人はこの子を庇うように死んでた。死体を運び出せば、証拠になるのでアッソをどうにかできると思ったが、すぐにダンジョンに取り込まれてしまったな」
どんな光景だったのだろうか。リートさんは悔しくそうに顔を歪める。ダンジョン内、塔迷宮内。どちらも死体は残らない。
がたがたと震えているリートさんの後ろの少女に、智也はできるだけ優しく微笑みかけた。会話なんて、慣れてはいないが、目の前で怯えている少女をはげますくらいはしたい。
「大丈夫、ですか?」
「やめて、近づかないで! やめてくださいっ、お願いしますっ、殺さないで、殺さないでっ!」
伸ばした手は叩き落とされ、少女はその場に蹲ってしまう。 何て言葉をかければいいのか、全くわからず智也の表情も暗くなる。
「地下二階にいたんだが、こんなんだから連れてくるのに時間がかかった。すまない。そろそろ時間だな、オレも後で行くが、ギルドに彼女をつれてってくれないか?」
リートさんはまだ仕事なのだから、離れるわけにはいかないのだろう。
「リートさん。これ、全部アッソが、やったんですよね」
「たぶん、そうだな。あいつが何をやったのか、この子の発言だけではどうにもできない。現行犯で捕まえない限りは無意味だ」
確かに証拠は一切ない。死体には何かが残っているかもしれないが、迷宮内では長い時間は残らない。
犯罪として利用するにはこれほどいい条件の場所はない。
「まあ、気にするな。知らない他人のことまで心配していたら、疲れるだけだ。オレにあわせる必要はないさ」
自分を気にかけての言葉なのはわかっている。
「そう、ですね」
以前知らない誰かを助けようとして、命が切れそうになった智也には耳の痛い話だ。話していると新たな調査スキルを持った男がやってくる。
彼は特殊技ではなく、儀式スキルで手に入れたようだ。心に雲がかかったような気持ちのまま、交代した。
怯える少女に手を伸ばすが、やはり叩き落とされる。大きな傷を心に負ってしまったようで、いたたまれない。
(それにしても、凄い、スキルの数だな)
才能こそないが、多くのスキルを持った少女――アリス。
出来るならば、別の場所で出会っておきたかった。彼女は当分は冒険者としてやってはいけないだろう。
ギルドに行き、いつものギルド員に声をかえる。
事情を説明すると、アリスを優しく迎え入れてくれた。女性ならば、彼女も多少は落ち着けるようだ。
アッソが何か知らないのか、事情を聞くためにアッソを探す張り紙が出されたが、一週間もすれば撤廃されるようだ。命を落とす人間が一日にどれだけいるのか分からない世界だ。
アッソが犯罪者の可能性があるので、注意こそしているが、真偽は分からないので、どうにもならない。
アッソの罪を、アリスの発言だけで、犯罪者にすることはできない。ギルド員の残した言葉は残酷なモノだった。
もらった報酬は今までの中でかなり多い。嬉しかったが、沈んだ気持ちを高めるほどではなかった。
いつものように図書館に行き、知識を蓄える。とにかく集中して、嫌なことを考えないようにした。
武器、防具屋で武具精製のためにイメージを固める。最近では少しずつ剣を作る練習もしているので、それなりに形になってきた。
ある程度学んだら、クックさんの宿へ向かって一日分のお金を払い、久々のふかふかベッドでぶっ倒れるように眠った。
リートさんのレベルはマジだ。その調子で近づいた敵はすべてリートさんに任せた。彼も戦うことは好きなようなので、近づくユグリーマンを大剣で掃除していく。魔物が可哀想なくらい一方的だ。
ずっと突っ立ているだけで、時間は過ぎていく。いつの間にか夕陽がフィールドを照らしている。そろそろ、智也の勤務時間も終わりだ。特に問題も起きない。ただ突っ立っているだけで、金が手に入る。これだけラクな仕事は中々ない。
ダンジョンの中から多くの人が出てくる。夜にダンジョンに入る人間もいるが、多くは昼間なので今の時間帯は切り上げるのにちょうどいいのだろう。
そんな中アッソが一人で戻ってくる。
(一人……?)
「一人か? 残りの三人はどうしたんだ?」
智也と同じようにリートさんも疑問に思ったようで、ぴくりと眉が動く。
「あぁ? 中で別れただけだ。そのうち来るんじゃないか?」
アッソはどうでもよさそうに歩き去ろうとする。
「ちょっと待て、探しにいかないのか?」
けっけっけっと笑い声をあげるアッソはそのままエアストの街へ向かうが、リートさんが僅かに表情を硬くして、肩を押さえる。
「探しに行くわけないだろ? あいつらだってガキじゃねえんだよ。騎士様は過保護だな」
リートさんの腕をアッソが振り払う。激しく動いたことにより、智也は、脇の部分に赤い血が付着しているのを見つける。
アッソ自身も気づいていないようで、
「アッソさん、今日はどのくらいまで潜っていたんですか?」
智也は出来る限り友好的な笑みを浮かべて、アッソに近寄る。怒りが少しずつ煮え立っているが、智也はきわめて涼しい顔だ。
「地下三階までだ。なんだ、うるせえな」
「リートさん三階までの魔物に赤い血を出す魔物はいましたか?」
「少し待て……一、二ドクビー、三はポイズンイモムシだな。一、二、三すべて緑の血だ」
なら、赤い血はどこでついたのか。智也は嫌な予感がして、アッソを睨む。
「リートさん」
アッソにばれないように耳元で、先ほど気づいたことを指摘する。
リートさんの目が鋭くなり、体から怒りが発せられる。
「アッソ、両腕をあげろ」
「はぁ? 意味わかんねえな。おらよ」
智也の見間違いではなく、そこには爪の大きさくらいの血がついていた。
「その脇についてる赤い染みはなんだ?」
リートさんの注意を受けて、アッソの顔色が僅かに悪くなる。アッソ自身も焦ったように脇を見て、それから息を吐き出す。
(こいつ、まさか……本当に殺したのか?)
迷宮、ダンジョン内では人殺しを証明できない。魔物にやられたかもしれないし、死体だってある程度したら取り込まれてしまう。だから、ダンジョン、迷宮内での殺しは許されてしまう。
ここで、殺した証拠を見つけても意味はない。
とはいえ、智也にとっては許せることではなくふつふつと怒りが湧き上がる。
「……それは俺が怪我したからだよ」
白々しい嘘だと智也は笑う――どうせ嘘をつくのなら、回復丸を理由にすればよかったのにな。
それでもそんな場所を怪我しておいて、服が綺麗な状態という時点でおかしいのだが。
リートさんの鋭い目つきに射抜かれているわりにアッソの動揺は少ない。これが初めてではないのかもしれない。
「傷治ってるだろうが」
「仲間が、治癒魔法を使えるんだよ」
リートさんがこちらを見る。智也はそれを証明できる。
「あなたのパーティーに、治癒魔法のスキルを持った人はいませんでした」
「忘れてんだろ。そんなに全員覚えてられるのかよ、ただのガキに」
「あなたが特別印象に残ってますから」
(リートさんがいるから少し大きく出れるぞ)
気分は盗賊の下っ端だ。アッソはまだ言おうとするが、リートさんに強く睨まれて黙りこむ。それから開き直るように、アッソはふんぞり返った。
「証明するものがどこにあるんだよ。物的証拠なんて皆無だろ、天破騎士だかなんだか知らないが、騎士ってのは冒険者を犯罪者にしたてあげてぇのか?」
(俺だって、証拠までは見破れない。どうすればいいんだ?)
調査といえどそこまで優秀ではない。
「確かに、ダンジョン内で殺しをしても許されるが。あいにくオレは仲間を見殺しにする人間が大嫌いだ」
リートさんが静かに言い捨てて、アッソの体を解放する。リートさんはちらと周囲を眺め、
「とにかく、一度中に入って見てくる」
「レベル制限は大丈夫なんですか?」
「緊急事態なら、認められてる。認められていなくても、知るかそんなもん」
そそくさと中に行ってしまう。
(出来れば、アッソをどうにかしてから行ってほしかった)
この先ここを一人で警備するのかと思うとため息も吐きたくなる。それでも三人の冒険者は心配だ。
アッソはリートさんがいなくなったのを認めてから、こちらに近づいてくる。
(ちょ、ちょっと待って。リートさんが戻ってくるまで俺に手出ししないでくれよっ。さっき言ったことは謝る。ごめん)
内心焦りながらも表情には出さない。最近一番意識していることなので、たぶん大丈夫だ。気持ち悪く出っ張った腹を見せつけながら、アッソは吐き気を催す笑みを浮かべる。
「面倒な男と組んでるな、けっけっけっ」
(あんたに比べたら全然マシだ)
「仲間は、心配じゃないんですか?」
答えはわかりきっている。
「俺は利害が一致しただけだ。あんなヤツらがどうなろうとも構いはしない」
「そう、ですか」
(別に、正義感があるとは思っていなかったけどな)
目の前の男をぶん殴りたい。殴った後に蹴り飛ばしたい。
仮にも、一度パーティーを組んだ相手が、どうなろうとも構わないなんて、智也には考えられなかった。
一度でも関わりを持った人間が死んだと聞けば、多少は悲しむと思う。
(まだまだ、甘いんだろうな)
こんなのではダメだと思っても、甘さを捨てきれない自分がいる。どこかで何か事件でも起きなければ、この考えは一生変わらないかもしれない。
「じゃあな」
(逃げるのか?)
とはいえなかった。現在のステータスではやり合っても五分五分。相手のほうが戦いの経験はあるのだから、負ける確率のほうが高い。殺し合いは避けたい。
「……はぁ」
やっぱりまだまだ自分はダメだ。一つの悪意を見つけても、止める術を持っていない。
智也は落ち込みながらダンジョンの入り口を見つめる。
リートさんがすぐに戻ってくることを祈り、自分の仕事に集中する。
それからは誰もやってこない平和な時間が過ぎ、やがてリートさんが戻ってきた。その少し後ろから、パーティーにいた一人の女の子がついてきた。
生き残りがいたことにホッとして、それから智也はリートさんへ訊ねる。
「リートさん、他の人は?」
「この子だけだったな。オレがついたらもう二人はこの子を庇うように死んでた。死体を運び出せば、証拠になるのでアッソをどうにかできると思ったが、すぐにダンジョンに取り込まれてしまったな」
どんな光景だったのだろうか。リートさんは悔しくそうに顔を歪める。ダンジョン内、塔迷宮内。どちらも死体は残らない。
がたがたと震えているリートさんの後ろの少女に、智也はできるだけ優しく微笑みかけた。会話なんて、慣れてはいないが、目の前で怯えている少女をはげますくらいはしたい。
「大丈夫、ですか?」
「やめて、近づかないで! やめてくださいっ、お願いしますっ、殺さないで、殺さないでっ!」
伸ばした手は叩き落とされ、少女はその場に蹲ってしまう。 何て言葉をかければいいのか、全くわからず智也の表情も暗くなる。
「地下二階にいたんだが、こんなんだから連れてくるのに時間がかかった。すまない。そろそろ時間だな、オレも後で行くが、ギルドに彼女をつれてってくれないか?」
リートさんはまだ仕事なのだから、離れるわけにはいかないのだろう。
「リートさん。これ、全部アッソが、やったんですよね」
「たぶん、そうだな。あいつが何をやったのか、この子の発言だけではどうにもできない。現行犯で捕まえない限りは無意味だ」
確かに証拠は一切ない。死体には何かが残っているかもしれないが、迷宮内では長い時間は残らない。
犯罪として利用するにはこれほどいい条件の場所はない。
「まあ、気にするな。知らない他人のことまで心配していたら、疲れるだけだ。オレにあわせる必要はないさ」
自分を気にかけての言葉なのはわかっている。
「そう、ですね」
以前知らない誰かを助けようとして、命が切れそうになった智也には耳の痛い話だ。話していると新たな調査スキルを持った男がやってくる。
彼は特殊技ではなく、儀式スキルで手に入れたようだ。心に雲がかかったような気持ちのまま、交代した。
怯える少女に手を伸ばすが、やはり叩き落とされる。大きな傷を心に負ってしまったようで、いたたまれない。
(それにしても、凄い、スキルの数だな)
才能こそないが、多くのスキルを持った少女――アリス。
出来るならば、別の場所で出会っておきたかった。彼女は当分は冒険者としてやってはいけないだろう。
ギルドに行き、いつものギルド員に声をかえる。
事情を説明すると、アリスを優しく迎え入れてくれた。女性ならば、彼女も多少は落ち着けるようだ。
アッソが何か知らないのか、事情を聞くためにアッソを探す張り紙が出されたが、一週間もすれば撤廃されるようだ。命を落とす人間が一日にどれだけいるのか分からない世界だ。
アッソが犯罪者の可能性があるので、注意こそしているが、真偽は分からないので、どうにもならない。
アッソの罪を、アリスの発言だけで、犯罪者にすることはできない。ギルド員の残した言葉は残酷なモノだった。
もらった報酬は今までの中でかなり多い。嬉しかったが、沈んだ気持ちを高めるほどではなかった。
いつものように図書館に行き、知識を蓄える。とにかく集中して、嫌なことを考えないようにした。
武器、防具屋で武具精製のためにイメージを固める。最近では少しずつ剣を作る練習もしているので、それなりに形になってきた。
ある程度学んだら、クックさんの宿へ向かって一日分のお金を払い、久々のふかふかベッドでぶっ倒れるように眠った。
「その他」の人気作品
書籍化作品
-
-
1
-
-
3
-
-
221
-
-
127
-
-
1359
-
-
59
-
-
440
-
-
17
-
-
104
コメント