俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件
第26話 私は二年一組へ向かう
私たちはいよいよ、高校二年生としての第一日が始まる。
……正直言って、色々と不安はある。
だって、知っている人がクラスにいるかどうか。そういうのが気になってしまうから。
けど、湊は朝食を食べているときからずっといつもの通りの日常を過ごしていた。
……私と彼は同じ高校だ。
というのも、私が湊の進学する高校に行きたかったからだ。
今思えば、結構馬鹿な考えだったと思う。好きな人なだけで、同じ高校を目指すなんて。その後に何か関係があるわけでもなければ、仮に関係があったとしても高校三年間続くようなことはほとんどの場合ない。
付き合っている人同士が、同じ高校を目指して入学し、すぐに別れたなんて話も友達から聞いたことがある。
……まあ、それは相手に浮気されたから、って言っていたけど。
とにかく、私は愚かだった。何の関係もないのに、しいてあげるなら幼馴染というだけなのに、私は湊と同じ高校へと進学した。
「夏希、学校どうする? まさか、一緒にはいかないだろ?」
……密かに期待していた、一緒の登校。それは早々に彼によって蹴散らされた。
も、もちろん、そんな可能性はまずないんだろうとは思っていた。
けど、だからといって、全面から否定しなくても良いのにとは思わなくもなった。湊の表情は相変わらずの仏頂面であり、よっぽど私と一緒に登校したくないんだろうなと思えた。
「そう、ですね……。どちらかが先に家を出ればいいと思いますが、どうしますか?」
要は一緒に登校しているところが見られたくないのだろう。
私がそう提案すると、湊はこくりと頷いてソファから立ち上がった。
「それなら、俺が先に行く。鍵だけかけ忘れないでくれ」
「わかりました。いってらっしゃい」
……滅茶苦茶、緊張した。いってらっしゃいなんて、家族にしか使ったことがなかった。
だからこそ、その言葉をひねり出すのに大きな緊張をした。
「……いってきます」
湊の返事に、またもや動揺する。いや、その返事が来るのは分かっていた。
けど、「いってきます」と言われただけで、何だか心が跳ねるようにうれしかった。
……湊は滅茶苦茶不機嫌そうな顔だったんだけど。たぶん、わざわざそんなことで話しかけるなと思われちゃったのだろう。
私も少しして、家を出た。戸締りは問題ない。
カバンを担ぎあげ、少し離れた場所に湊を捉えながら歩いていく。
……これが、今の私と湊の距離、なんだと思う。
私生活では色々な補助のおかげもあって、湊と急接近できた。
ただ、それはあくまで物理的な距離なだけであって、それ以上は――何も変わっていない。
それは、嫌だな……。もっと、距離を縮めたい。
手を伸ばせば届くような距離に――。
気づけば私の歩く速度はあがっていて、信号待ちの際に湊の近くにまで来ていた。信号が変わると、スマホをいじっていた湊は出だしが遅くなり、私はその隣に並んだ。
……心の距離も、こんな風に簡単に近づければいいのに。
そう思いながら、私は彼を追い越して学校へと向かっていった。
学校についた私は、さっそく張り出された新しいクラス名簿を確認する。
私の名前は二年一組にあった。それからすぐに探したのは、湊の名前。
……よかった。あった。
一年のときは別のクラスだった。……何もないのに、クラスが一緒なだけでここまで嬉しいんだから私はやっぱり馬鹿だ。
「あっ、おはよう夏希ー」
「おはおはー」
そんな挨拶ともに、私のほうにやってきたのは一年のときから親しかった友人二人だ。
……運が良いことに彼女らとも同じクラスだ。
少しだけ、私の運は上向いているのかもしれない。
そんなことを考えながら、私は二年一組へと向かった。
          
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