俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件
第19話 俺は幼馴染を食事に誘う
朝食はお互い色々あって食べていなかった。
まあ、そもそも普段から俺は朝食を食べない派の人間だから、別にいいんだがな。
……とはいえ、昼食の時間には結構腹も空いてきた。
お昼はどうする?
そう夏希に聞けばいいのだが――聞くのは少しはばかられた。
……というのも、朝の俺の発言が原因だ。
掃除は俺、食事はおまえ。今思い返せば無理やり彼女を料理担当にしてしまったこの発言だ。
……まあ、この発言自体を取り消すことはできないので後悔することはやめたのだが――問題はこの料理。
料理は一日三食。まあ、今日は二食だが……全部作れよ? といっているようなものだ。
おまけに一度の料理にかかる時間は、三十分から一時間程度はあるだろう。
それに、健康を考えるのであればそれなりのメニューを考える必要がある。
俺の家の掃除なんて、掃除機をかける程度のもの。たまに埃を払ったりもするが、一日にかかる時間は一時間程度だろう。
――そう、明らかに仕事の量に違いがある。
なので、ごはんを炊くのであればそのくらいは手伝うし、皿を出せと言われればすぐに出す程度の手伝いはする。
それでも、仕事量には大きな差があるだろう。
俺は朝、何も考えずなんてことを頼んでしまったのだろうか。
そりゃあ嫌われるよな……と思いつつ、俺はリビングにいた彼女を見る。
……俺が今悩んでいるのは、お昼をどうするか、だ。
外食というのもありだろう。両親が毎月それなりの金額を家に入れてくれるし、今月も正直一か月間毎日外食しても大丈夫なんじゃないかってくらいの余裕があった。
夏希の両親も給料はそれほど変わらないだろうし、似たような金額を使えるはずだ。
だから、外食という選択肢もあるのだが――その提案を中々出せずにいた。
この沈黙が支配する空間で、一体俺はなんと答えればよいのだろうか。
ちらと、夏希を見た。
とてもキレイに背筋をぴんと伸ばしている。
……俺なんて家じゃわりとゆったりしているのだが、彼女はどこでもこうなのだろうか。
こういう人がきっと、芸能界とかで活躍できるんだろう。そういえば、前に芸能事務所に誘われたことがあるとかなんとか、風の噂にのって俺のもとに届いたことがあったな。
そろそろ十三時になる。いい加減……話した方がいいか。
「なあ、夏希」
「なんですか?」
「昼、どうする? 近くのファミレスにでも行くか?」
よし、自然な感じだ。
……あ、あれ? けどこれってつまり二人きりで出かけるってことだよな……?
……これはこれで、デート、みたいじゃないか!?
顔が熱くなってきた。というか、昼はそれぞれで食べるか? みたいに提案すればよかったんじゃないか!?
あー、くそ! 数秒前に戻って俺は、自分を殴りたい!
タイムマシンを一度だけ使えるのなら、俺は確実に今使っていたっ。い、いややっぱり夏希に嫌われる前に戻りたい。
そんな切実な願いが頭の中をぐるぐると回っていると、
「……そう、ですね。ファミレスに行きましょうか」
ほら見ろ! すっごい複雑そうな顔をしていらっしゃる!
といっても、やっぱやめよう! なんていえばそれはそれで「なんだこいつ?」みたいに見られてしまうだろう。
俺は小さく息を吐いて、頷いた。
「それじゃあ、少し準備してから行くか」
「はい」
俺は逃げるようにソファから立ち上がり、二階へと向かった。
……部屋に入ってから、へなへなと体の力が抜ける。
やっちまったな、俺。
い、いやでも……こんなことでもなければ彼女を食事に誘うことはできなかっただろう。
これは良い機会だ。頑張ってどうにか好感度アップしないとな!
          
「俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
アパートのとなりに引っ越して来た年上のお姉さんが美人でしかも巨乳だったけど、紳士でいたいからひたすら目を逸らしていたら『普通に見て良いよ』と言ってくれた
-
21
-
-
なぜかウザカワ後輩美少女に惚れられました
-
36
-
-
家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった
-
28
-
-
となりの席の女が俺にだけ毒舌なので理由を聞いたら『将来、あなたと結婚したいから』と言われて学園生活が一気に楽しくなった
-
59
-
-
ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。
-
14
-
-
学年で1番怖いと噂のヤンキー娘が隣の席になって学園生活終了と思ったけど、実は超良い子でおまけに金髪・碧眼・巨乳の三拍子が揃った美少女だった
-
58
-
-
色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった
-
33
-
-
俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
-
24
-
-
女神様(比喩)と出会って、人生変わりました
-
14
-
-
お隣さんの可愛い後輩が俺にだけ滅茶苦茶優しい
-
37
-
-
絶対お兄ちゃん主義!
-
40
-
-
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら疎遠だった幼馴染が怖い 〜学年のアイドルが俺のことを好きだなんて絶対に信じられない〜
-
72
-
-
ツンデレ妹は今日も兄に甘える。
-
29
-
-
妖精の魔法で俺にモテ期到来!?
-
9
-
-
学園一のお嬢様が風呂無しボロアパートに引越してきたんだが
-
24
-
-
人間嫌いな俺とビッチな少女
-
23
-
-
【完結】クールな白刃さんはデレで殺す
-
21
-
-
お兄ちゃんに、私の初恋を捧げます。~なにも知らない純真美少女のお兄ちゃんになって、イチャイチャしちゃう物語~
-
13
-
-
上京して一人暮らしを始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった
-
61
-
-
後輩は積極的IF
-
12
-
コメント