俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件
第10話 私はタオル一枚で幼馴染と対面する
浴室には鍵がついている。
けど私はかけなかった。
……ちょ、ちょっとほら、覗かれるとかそういうの、期待して。
洗濯機に衣服をすべて放りいれ、洗濯機を操作する。
そういえば、洗濯機を使っていいと湊は言っていた。
……い、一緒に洗濯したくないとかそういうものだろうか? 私も父と一緒に洗われるのは嫌だった。なんか汚そうだったから。
も、もしかして……同じようなことを考えているのかもしれない。そ、そこまで私のことが嫌いなのだろうか……。
軽く絶望しながら、私は風呂へと入った。
鏡を見ながら思うのは……これから私すっぴんを見せるんだってこと。
……ナチュラルメイク、程度ではあるけど私は化粧をしていた。
昔は、化粧とか全然気にしていなかったけど、いつしか気になるようになっていた。
……やっぱり、少しでもよく見られたいから。
それでも私と彼との間の溝はどんどん深くなっていってしまったけど。
メイクを落としてから、体を洗い、それから湯船につかった。
湯船につかると一気に全身の疲れが抜け落ちたような気がした。
……やっぱり、今日一日で結構疲れていた。
けど、好きな人のことを考えて疲れるのは、悪い気はしなかった。
それに、今までよりは私のことを意識してくれるかもしれないし。
私なんて前の数十倍は意識してしまっている。だから、きっと向こうだってそのうち色々と考えてくれるはず。
……わ、私意外と体つきは良いって言われているし。
そんなことをのんきに考えながら、体を洗いタオルで体を洗っていた。洗濯機はまだ終わっていない。
……ちょっと待って。
私ははっとなって周囲を見渡す。
……やってしまった。
裸のまま、私は頭を抱えた。
「着替え……全部……カバンに入れっぱなしです……」
……私のバカ!
マミー、ヘルプミー! 海外から着替え一式持ってきて! 呼んでも来てくれるはずがない。
……普段シャワーを浴びるときも、よく下着の準備を忘れる私だが、そういうときはいつも母が用意してくれた。
カバンはまだリビングに置きっぱなし。おそらくは、湊がいる……。
湊に頼むのだけは、絶対に無理……っ!
男だからではない。だって、父に頼むまではまだ許せる。……最悪の手段だけど。なんなら死にたくなるけど。死んじゃうかもだけど。
けど、まだどうにか許せる。切腹する気分で頼む。
――けど、けど……! さすがに大好きな人に下着含む着替えセットを持ってこさせるわけにはいかない!
それに相手は私のことを嫌っている! これでさらに嫌われるかもしれない!
私はしばらくシャワーを頭からかぶり、考える。
気分は滝行。
けど、いくら当てても良い考えは思いつかない。
候補自体はいくつかある。
一つ目は湊に持ってきてもらう。これが一番手っ取り早い手段だ。
二つ目は湊に家から出て行ってもらう。こんなこと頼んだら余計に嫌われるだろう。理由は話せないんだし。
三つ目は湊を気絶させる。呼びつけ、気を抜いた瞬間に意識を奪うんだ。いや、ダメでしょう私。記憶を消すほどの一撃を叩きこまないと下手したら私の裸まで見られてしまう。
……滝行の結果がこれしか思いつかないなんて、私の頭はポンコツなのかもしれない。いや違う、滝行が悪いんだ。
散々頭を抱えた私だが――恥をしのんで頼むしかないのではないかと思った。
いずれは、下着なんて干したときにでも見られるものだ。
そもそも、たかが下着ではないか。
体の大事な部分を守る程度の衣服だ。可愛らしい刺繍がされていたり、おしゃれなものだったり、それこそ勝負下着だったり――。
……絶対無理ぃぃぃ。
な、何かあっても良いようにってちょっとだけ大人っぽい下着を用意していたのだ。
何かって何よ……。嫌われている相手に何を期待しているの……。
無駄に能天気でお花畑の過去の自分を痛めつけた後、私は大きく息を吸った。
ちょうどそのタイミングで、天啓が舞い降りた。
私はバスタオルを身に着け、周囲の音に耳を傾けた。
……よ、よし。周囲に音はない。敵はまだリビングにいるようだ……!
私は足音を立てずに素早く廊下を移動する。
……作戦は簡単だ。
二階にあがり、「風呂出たから入っていいですよ」と伝え、湊を風呂場に誘導する。
それから、リビングに戻り、着替えを回収する。……見事な作戦でしょう?
だから私は足音をたてずに二階へつながる階段まで移動しようとしたのだが。
「は?」
「ふひ……っ!?」
ちょうどトイレから出てきた彼とばったりと出くわしてしまった。
「俺(私)のことが大嫌いな幼馴染と一緒に暮らすことになった件」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
アパートのとなりに引っ越して来た年上のお姉さんが美人でしかも巨乳だったけど、紳士でいたいからひたすら目を逸らしていたら『普通に見て良いよ』と言ってくれた
-
21
-
-
なぜかウザカワ後輩美少女に惚れられました
-
36
-
-
家出中の美女を拾ったら、僕が好きなあの子のお姉さんだった
-
28
-
-
となりの席の女が俺にだけ毒舌なので理由を聞いたら『将来、あなたと結婚したいから』と言われて学園生活が一気に楽しくなった
-
59
-
-
ワガママな後輩彼女にフラれたら、優しい先輩彼女とお付き合いすることになりました。
-
14
-
-
学年で1番怖いと噂のヤンキー娘が隣の席になって学園生活終了と思ったけど、実は超良い子でおまけに金髪・碧眼・巨乳の三拍子が揃った美少女だった
-
58
-
-
色気より食い気の俺が料理上手の幼馴染に『毎朝、お前の作ったみそ汁が飲みたい』と言ったらすぐ同居することになった
-
33
-
-
俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
-
24
-
-
女神様(比喩)と出会って、人生変わりました
-
14
-
-
お隣さんの可愛い後輩が俺にだけ滅茶苦茶優しい
-
37
-
-
絶対お兄ちゃん主義!
-
39
-
-
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら疎遠だった幼馴染が怖い 〜学年のアイドルが俺のことを好きだなんて絶対に信じられない〜
-
72
-
-
ツンデレ妹は今日も兄に甘える。
-
29
-
-
妖精の魔法で俺にモテ期到来!?
-
9
-
-
学園一のお嬢様が風呂無しボロアパートに引越してきたんだが
-
24
-
-
人間嫌いな俺とビッチな少女
-
23
-
-
【完結】クールな白刃さんはデレで殺す
-
21
-
-
お兄ちゃんに、私の初恋を捧げます。~なにも知らない純真美少女のお兄ちゃんになって、イチャイチャしちゃう物語~
-
13
-
-
上京して一人暮らしを始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった
-
61
-
-
後輩は積極的IF
-
12
-
コメント