村人に転生したら、モンスターと会話できるようになってた。村人ライフしながらモンスター図鑑をつくろう!目指せモンスターキング!!

ピエロとサーカス

35話 全員集合

 ほうほうとフクロウのような動物の鳴き声が真夜中を支配しているなか、
 僕たちはオークの村で動きっぱなしとなっている。


 みんながそれぞれの役割のために動いているし、


 僕ことタダヒロはひたすらドルイドであるチカちゃんの行動を見守っている。
 チカちゃんがドルイドの知識を利用して毒消し草を豚でも食べられる食物に調合しているのだ。


 オークたちもはらはらどきどきしながら、
 早くしてくれと願っているようだ。


 僕たちはそれぞれの役目を終えて、それぞれのやるべきことにいそしみ、 
 リザードマンの事は一応名前だけは教えておいた。


 シェイキンという名前はそう簡単に忘れることはないだろう、


 それからやることのないものは睡眠にはいる。


 やることがあるのはドルイドのチカちゃんと弟子のジェシにゴブリンのカナードネちゃんであった。


 僕はただ見守っているだけだが、これもリーダーとしての役目だと思っている。


「ふぅ、ひと段落ねぇ、なんで私には覚えたことのない知識あるのかしら」


「おそらくだけど、それが職業ってやつなんじゃないの? 僕は村人って職業だからさ、あまり違いが分からないけどさ、とほほ」


「師匠、安心してください、元からきっと村人です」


「ジェシ、お仕置きするよ?」


「ハラスメントです」


「だれに教わったんだが」


「うん、私」


「ってチカちゃんかい」


「まったく心配して見に来てみれば」


 バナーネ皇女がやってきた。
 寝間着姿なのがとてつもなく可愛らしい、
 いつも鎧姿なのだが、
 鎧で押しつぶされている爆乳が解放されて、
 ぼよんぼよんとなっている。


「あ、タダヒロ君エッチなこと考えたでしょ」


「いや、ちが」


「ふむ、タダヒロなら一緒に寝てもいいぞ眠らせないぞ」


「それ男が言うセリフ」


「ちなみに眠らせないとはずっと殴り続けることだからね」


「何気に皇女ドメスティックバイオレンスかい」


「なんだそのトキメキバイオレンスは」


「皇女様、それとんでもない誤差が」


「ぷ、ははは、人間ってこんなに面白いセリフを言うものなの?」


「カナードネちゃんはゴブリンの女子だから、わからないかもしれないけど、人間の会話って大抵こんなくだらないものばかりだよ」


「へぇ、そうなんだ。いつかこの世界がモンスターも人間も言葉が通じればいいのになぁ」


 その場にいる全員がフリーズした。
 もちろん僕だって、そしてバナーネ皇女もジェシ弟子、みんながそれぞれフリーズしながら、


 僕の心臓がドクンと脈打った。
 まるで太陽が昇ってきたかのように、
 今は夜中になったばかり、こんなに早く朝日なんて昇らない、
 そんなことはわかりきっている。


 それでも僕は何かとても大切な何かを見つめていた気がしたんだ。


 だからカナードネちゃんのような小さな願い、大きな願い、
 それを大事にする必要がある。


 きっとこの場にいる全員が僕と同じようなことを思っているに違いない。


「ふう、できた」


 チカちゃんがゆっくりとその巨大な樽に入った毒消し草で作られた毒消し薬をつくることに成功した。


 オークたちがそれを合図とばかりにまってましたーと走ってくる。
 そこには長身であり、オークらしくない、オークキングがやってくる。
 彼は眼鏡をつけているのに、浅黒い肌はやはりオークである証なのだ。


「これは村人たちどの、ドルイドのお嬢様が薬ができたという合図を送っていただいたそうで、あとはオークたちにお任せください」


「あ、まってオークキングさん」


 そう呼びかけたのは、チカちゃんだった。


「みんなに薬の量などを教えたいので、まず私の説明を聞いてからにしてください」


「お、それは失礼いたした。みなのものあつまれい」


 沢山のオークたちその数は数十体だけど、
 彼らの背丈はやはりドワーフかと勘違いされるほどとても小さくて、
 豚と同じ豚鼻でもある。


 僕とバナーネ皇女とジェシ弟子とゴブリンのカナードネは静かにそれを見守っている。


「えっと、薬の量はこの大きさのコップ一杯です。強すぎる薬ですので、本当に少量でいいですし、豚の大好きな臭いと味がしています。これはドルイドの知恵でなんとかしてみました。なので、戻すことはないです。あとはですね、そうですね豚を大切にしてください」


 チカちゃんはにかりと笑う、白いスカートと高校のブレザーをつけており、
 背丈は僕と同じくらい、高すぎもせず、小さすぎもしない、


 彼女はぺこぺこと頭を下げている。


 そして僕たちは仲間が休んでいるであろうオークの宿屋に向かっていき、
 僕たちも仲間たちと一緒に眠ることとなった。
 もちろん男性と女性は別々の部屋でだ。


―――オーク村宿屋―――


 夜があればきっと朝もある。
 なので僕たちは朝目を覚ますこととなった。


 不思議なもので、豚がどうなったのか、
 僕たち全員が気になっていたのか、
 早く起きることに成功している。


 宿屋といえども人間の生活する大きさではないので、
 オークキングが生活するスペースというものがあり、
 そこを活用させてもらい、


 大部屋が二つあるので男と女に分かれたというわけだ。


 食堂も少し小さいので、
 僕たちは火炎獅子の兄妹とレックスとベルという人型ではないモンスターと一緒に朝ごはんとなった。


 ゴブリンのザバンドとテナンドとカナードネは仲良しチームのごとく、3人で一緒に朝ごはんを食べている。


「テナンドそう慌てて食わないほうがいいよ、きっとたくさんあるから」
「何を言っているザバンド、オーク飯なんてめったに食えない、食いまくるぞ」
「安心してオーク飯もちゃんと覚えてザバンドに食べさせてあげるんだから」
「てか俺関係なくね?」


 僕はそのやり取りを見ていて苦笑を押し隠していた。
 オークが焼いたとされるパンをかじっていた。


 ドルイドのチカ、精霊騎士のカスミ、死霊術師のナナコという3名の女子たちは、まるで女子会でも開いているかの如く、上品に朝ごはんを食べている。


「カスミちゃんお野菜たべないと成長しないわ」
「チカのおっぱい分けてもらう」
「それはダメでしょ、きっとカスミちゃんのおっぱいも柔らかく成長できるから」
「にいにいにおっぱい触らせたの?」
「え、ええええええ」
「ふむ、後輩君やるなぁ」
「奈々子先輩、それちがいますから」
「何が違うのだ? あの朴念仁におっぱいを握らせるとは、さすがは色情魔」
「いつから私は色情魔になったんですか」
「高校にいるときからだが?」
「そんな前からですかい」


 なんか恐ろしい会話をしているので、
 僕は聞かないふりをしながら、
 ただじっと見つめていた。


 バナーネ皇女とジェシ弟子は2人して将棋を打っている。


「ふむ、王手ときたか、次はどういう方法があるかな」
「いえ王手であなたの負けです」


「何を言うか、ジェシよ、王手がかかってから物語が始まるものだ」
「いえ、終わってます」


「そうあせるな、ゆっくり考えらせろ、王族とは負けを認めてはいけぬ」
「はい、負けており、逃げようがありません、皇女様は首を両断されたら考えますか」
「それは考えるだろう、ふむ、王手から逃げる方法は」
「師匠、助けてください、この人に負けという概念がありません」


「は、はは」


 僕は失笑するだけだった。


 あとは火炎獅子のカヅとマヅとティラノサウルスのレックス、サーベルタイガーのベルは仲良し、こよしで安全な豚の肉を食らっている。


「うまいな豚というのは初めて食った。油がのっていますね」
「兄さん、こればかうめー」
「こら、女子がばかうめーなどというな」


「なぁベル、この肉で成長したら、豚になるんじゃね?」
「それはレックスだけよ」
「そうかな」
「そうよ」


 あとは片隅で太陽に向かって光合成をしているであろう木人がただひたすら空を見上げている。


 そこへオークキングがやってくる。
 周りにはオークの戦士たちが護衛している。
 オークキングは僕のところにくると、
 涙を沢山浮かべながら、


 僕の目の前でぽつりぽつりと大きな涙の粒が地面に落下していた。


 彼はこちらを見て、
 その右手で僕の右手を掴むと、
 思いっきり握手してくれた。


「本当にありがとう、あの毒消し薬のおかげで、すべての豚の毒が解除された。君たちはリザードマンを説得し、毒消し草を集め、死体を燃やしてくれた。命の恩人だ」


 オークキングが次に行ったのは、土下座であった。


 僕は唖然と口を開いていた。





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