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ピエロとサーカス

34話 精霊騎士は頭がおかしい

 タダヒロの妹のカスミ、
 いつもそのように言われてきたカスミは、自分を見てほしいがために、
 自我を強めることとした。


 自分のオリジナルの性格と、役を演じるように最初はしていた。
 バカでもなければ、真面目でもない、ごく普通の根暗なカスミは、自分自身を周りに見てほしいがために、


 オリジナルの性格と演ずることとした。


 それは頭のおかしい人そのものであった。


 そうするとカスミはなんとなくこの頭の可笑しい自分自身が本当のオリジナルだと思い、
 どんどんと崩壊していった。


 そしてついには異世界に召喚され、勇者じゃないとわかると、即座に牢獄に閉じ込められてしまった。


 それはとてつもなく怖いものではなく、
 新しい冒険へと向かっていくのだと、
 そうカスミは思っていた。


 そして今目の前に巨大な豚の炎のゴーストがいるわけだ。


 頭の中に情報として入っている精霊騎士、
 なぜ精霊騎士の情報が頭に入っているのかは知らない、
 それが職業だからと言ったらそれまでなのかもしれない、


「いっくよー」


 カスミは右手に虫網を握り、左手に虫網を握る。


 ひたすら全速力で走り出す。
 後ろではナナコが応援しており、反対方向には土に体をなすりつけてもがくレックスがいる。


 カスミは走り出す。
 無邪気にカブトムシを捕まえにきた少女のように、


 その動き方、
 その歩き方、走り方、全力疾走の仕方。


 まるで子供そのものであり、
 それでも大きな豚は容赦せず、
 一緒に突撃した。
 すれ違った瞬間、


 豚が消滅した。


 虫網に入っているのは白い塊みたいな、そうそれは魂そのものであった。


 カスミはその魂をゆっくりと虫網から解き放つ、
 一方にはサラマンダーがいた。


 サラマンダーの小さな体の精霊は、


 どうやら豚の魂と融合することにより、


 あれほどの巨大で燃え盛る化け物になってしまったようだ。


 その豚たちの墓場には忽然と先程のパニックはなくなり、


 カスミはナナコを見て。


「やっちまったぜ」


「ご苦労様、そのサラマンダーどうするの? かわいいわね、なんとなくだけど小さなドラゴンって感じだわね」


「なんかこの子、僕に触りたいみたい」


 カスミは右手を差し出すと、
 サラマンダーは軽く右手をかじった。
 次の瞬間、サラマンダーはカスミの体の中に吸収された。


「おおお、びっくりした」
「それで冷静なあんたは異常よ、それで体は痛くない?」
「もちろんいたくないよーだいえいえい」
「ちょっとは心配したうちの気にもなりなさい、さてお葬式は終了したので、オークの村に戻るわよ」
「えいえいおー」


 カスミとナナコとい無言を貫くレックス、オークの村の中にある豚の墓場から豚小屋にと移動をすることに。


―――豚小屋―――


 カスミたちは豚小屋に入っているわけだが、
 死体はなくなり、汚染物質もなんとか減った。
 しかしすでに汚染されてしまった豚たちは毒消し草で解毒しないと、食べてはいけない。


 それでも豚たちは一生懸命穀物などを食べながら、
 鳴き声をあげて、日常の生活を送っている。




 ナナコ先輩は顎に手を当てている。
 レックスは豚小屋に入ることができないので、外で門番のようになっている。


 カスミはいろいろと頭がおかしくなっている状態で考える。
 精霊で、初めて吸収したのがサラマンダー。


 精霊騎士とは沢山の精霊を吸収しまくり、
 強くなっていくのだと、
 本能が知っている。


 おそらく本能ではなく、
 そういうこの世界の設定みたいなものなのだろう、


 カスミはそう自分に言い聞かせることにしている。


「ねえねえはサラマンダーで毒を燃やすのってどうかな」


「んーと、どゆこと?」


「つまりね、僕が先程吸収したサラマンダーの力で、豚についている毒物質を炎で駆除するおよ」
「できるの? それは体内にもってこと?」
「やってみないとわからないけど、やってみようと思うぜい」


「じゃあ任せて」


 ナナコは豚と格闘しながら、1頭の毒まみれの豚をつれてくる。
 体の皮膚という皮膚が紫で汚れてしまっている。
 その紫がどうやら豚を弱らせているようだ。


 カスミはこくりと頷き、
 毒消し草ではない解毒の方法を見つけ出してしまったのかもしれないと、
 わくわくはらはらしながら、
 右手に全神経を集中する。


 カスミはいつもバカなことをしている。
 カスミはいつもどうでもいいことをしている。
 カスミは意味がわからない、


 三拍子そろってカスミは頭がおかしいとされている。


 だけどカスミはきっとナナコよりもレックスよりも命を大事にしている。
 それが家畜として、それが食べられる運命だとしても、
 それはそれなりの豚の生き方なのだから。


 右手にちくちくと炎がほとばしると、
 カスミはゆっくりとその炎を豚の体を覆う、
 豚は気持ちよさそうに瞳がとろんとして、
 ゆっくりとそこにすやすやと眠り、
 全身の毒がなくなっていた。


 あとは体内の毒だ。


 炎をゆっくりと、豚の口の中から体内にいれていく、
 あとはサラマンダーの炎が告げてくれる情報を体で認識しながら、
 毒を倒していく。
 そしてすべての毒を解除したとき、


 豚は大きな声をあげて、立ち上がり、
 元気いっぱいに歩きだした。


 しかしカスミの神経はもはや限界になり、 
 そこにぶっ倒れた。
 ぜいぜいと息を吸いながら。


「ねえねえ、ちょっと豚の大群ではサラマンダーの治療は使えないのだ」


「もうあんたもバカだね、毒消し部隊を信じましょう」


「そうなのだ。ねいねいちょっと眠るね」


「はいはい、御姉さまの背中で寝てなさい」


 その日はねいねいの背中から見れる青空が輝いて見えた気がした。
 1頭だけの豚はやはり元気はつらつであった。





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