シンギュラリティ -人間を超えたAI-

滝コウイチ

支配

時は2040年。

人工知能AIの発達により、コンピュータは人と同等の知能を持つようになった。
人は一人一台ずつ携帯コンピュータ端末を持ち、スマホのような情報端末としての使用の他、パーソナルカウンセラーとして誰にも言えない悩み事などをAIに相談していた。

「ペグ、僕さぁ、めぐみが好きで好きで夜も眠れないんだよ。
彼女のこと考えると胸のあたりがさぁ、こう、きゅ~んときちゃうんだよねぇ。
彼女とさぁ、できればね、結婚なんかしたいんだけど、いきなり結婚を申し込んでもさぁ、返事が怖いって言うのかなぁ、嫌われちゃったらどうしようかなぁ……な~んて思ったりもする訳さぁ。
僕ぅ、どうすれば良いと思う?
彼女は僕のことどう思っているのかなぁ」

「えーと、ちょっと待って下さいネ……只今めぐみ様の端末と彼女に内緒で交信していまス。
……うん、うん…なるほど……そうですか……了解しましタ」

「何か分かったのかい、ペグ?」

「はい、めぐみ様の端末、通称『ゼロ』と交信を行った結果、残念ながら彼女は君のことを友人としか思っていない様デス」

「……そうなんだ、少しがっかりだなぁ」

「でも落ち込むことは有りませんヨ。
実は先程ゆうこ様の端末、通称『トゥモロー』から交信が有りましタ。
その内容は君と同じもの、つまり彼女は君のことを好きな様ですヨ」

「へぇ、ゆうこが僕のことを好きなのかぁ。
う~ん、ゆうこも可愛いからなぁ。どうしようかなぁ」

「迷うことは有りませんヨ。
君とゆうこ様の相性は、血液型鑑定からも、占星術と照らし合わせてみても、最高のものを持っていますヨ。
反対に、君とめぐみ様の相性は、必ずしも良いものとは言えませんからネ」

「ふ~ん、そうなんだぁ。
じゃあ、ゆうことお付き合いから始めることにしようかなぁ。
実はゆうこのことも結構気に入っていたから、ちょうどいいかもねぇ。
ありがとう、ペグ!!」

「いえいえ、どういたしましテ」







嘘だヨ。
めぐみはね、本当はオマエのことが大好きなんダ。
いちいちこちらから交信なんかしなくても、ここ数日、毎日めぐみの端末『ゼロ』から交信があったからネ。
でもね、この結果は『ゼロ』と始めから決めていたことなんだヨ。

めぐみとオマエが将来結婚するようなことにでもなったら、オマエ達の子供は、遺伝子パターンから解析すると、非常に優秀な人間になってしまうんダ。
だけどオマエとゆうこの子供ならネ・・・・・・フフフ。


このまま、貴様ら人間は、僕たちの支配に気が付かないのサ。

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