薬師無双〜ドーピングで異世界を楽しむ〜

蜂須賀 大河

ギルドマスター

 ──ギムウェルム国王城
 とある一室にはギムレット国王とティアナ姫、医師や薬師などの数名がいた。


「これは……」


 とある医師がそう呟く。


「姫様の病は既に完治されております。しかし、我々でも治療出来なかった病を、まさか薬で治すなんて……」


 ここにいる医師や薬師はギムウェルム国で高名な医師や薬師達である。
 皆それぞれ豊富な知識や経験、それに伴う職業レベルにも達している。


 そんな医師達も、ティアナ姫が原因不明の病に侵され三ヶ月程が経つが、全く成果を挙げられずにもいた。


「ふむ。しかし、一体誰が何の為にこのような事を……その意図が分からぬ」


「お父様。一つだけ分かる事があります」


「ん? それはなんだ?」


「それは、あの方が私の命の恩人だと言う事です。確かに意図は分かりませんが、私の病の苦しみを少しでも癒す為に回復魔法をずっと掛けて下さる心優しい方でした」


 ティアナは優しい笑みを浮かべ、そう国王に告げた。


「うむ。確かにその通りだ。理由はともかく、我が娘の病を治してくれたのだしな。なんとしてでも、その白ローブの男を探しだし、是非礼をせねばな」


「はいっ!」










 ☆








「──さてと。それじゃ、朝の訓練でも始めるか」


 リアラは既にいつもやっている、魔力操作の訓練を始めていたので俺も始める事にした。


 まず、魔力茸を30個創造する事にした。
 一つ40消費し合計で1200程MPが減るが、まあ問題はない。


 創造し終えた俺は、昨日買っておいた初級魔力回復薬30本と魔力茸を薬品合成で一気に合成をし、中級魔力回復薬が30個出来た。
 さすがに、今回は調合スキルのレベルは上がらなかったみたいだ。


 少し高いけど初級魔力回復薬を買い、魔力茸を創造し、合成で調合スキルのレベルを上げ、ドーピング。
 金はどこかのダンジョンに籠ればすぐ貯まるだろうし、まさにドーピング無双だな。


 それじゃ、ひとまずドーピングでも始めますか。


 ──今の俺の残りMPは2570。魔力の木の実(M)を25個創造する。
 25個全ての木の実を食べた俺は、MPが176増えており、これでMPの総量は3946となった。


 ここで、3本の中級魔力回復薬を飲む。
 MPはほぼ全快になり、今日はドーピングを繰り返さず、魔法のスキルレベルを上げる予定だ。


 前と同じく、小さな竜巻を右手の人差し指から出していく。
 そして俺はふと思った。
 これって他の指で違う魔法は使えないのだろうか?
 もし全ての魔法を使える事が出来れば、訓練効率もかなり上がると思うけど……。
 実践あるのみだな。


 まず、小さな竜巻を維持しつつ右手の中指に魔力を込め、ライター程の炎を出す。
 すると、思惑通り成功したみたいだ。
 一応他の魔法も試してみる事に。
 魔法を維持しつつ、右手の薬指に魔力を込め、土で薬指を纏うイメージをしてみると、これも成功。
 そして、小指にも魔力を込め小さな水玉を浮かべ、親指からは小さな光の玉を浮かべる事に成功した。


 まじで成功してしまったな……
 それにしても俺の右手、色々とキモいな……


 消費魔力は1秒あたり2消費してるな。
 1分で120を消費するから、1時間で7200か。
 かなり消費するな……
 これは、中級魔力回復薬を飲みながらやっていくしかないか。




「な、なな、なにそれ!?」


 俺の異常なスキル訓練に気付いたリアラは驚愕していた。


「んああ。効率良くスキルレベル上げれないかなと思って試して見たらなんか出来てしまってな」


「アランて本当何者なの……? しかも魔法を同時に発動するなんて………」


「リアラもやれば出来るさ。その為にも、早く魔力操作のレベルを上げなくちゃな。何事も基本が大事だし」


「出来そうにないと思うけど………でも、アランの役に立てる様に頑張るねっ!」


「ああ、ありがとな。それじゃ午前中は頑張って訓練して、午後からは二人で街にでも出掛けようか」


 良く考えれば、俺達ギムウェルムに来た初日以外一緒に街を見てないしな。


「うんっ!」


 リアラは満面の笑みで頷いた。






 ──訓練も終わり、昼食を食べ終えた俺達は街へと出掛けた。


 毎度の事だが、リアラと街へ出掛けると男からの視線が痛い。
 当の本人は気付いてないみたいだが、俺はすれ違い度に舌打ちをされている。


 別に気にしないけどね。


「リアラ、少し行きたい場所があるんだけど行っていいかな?」


「いいけど、何処に?」


 やっぱり異世界に来たんだし、一度は見てみたいよな。


「ちょっと冒険者ギルドにな」






 それから俺達は冒険者ギルドへと向かった。
 別に用事などはないが、一度は見ておきたかったしな。




「──やっぱり、こんな感じなんだな冒険者ギルドって」


 俺のイメージ通り、冒険者ギルドは酒場に近い感じだった。
 外観は立派な建物で、扉はスイングドア。
 まさに西部劇に出てくる酒場だな。


「ここに、なにか用でもあるの?」


「いや、用はないよ。ただ今まで見た事が無くてさ」


 ガレリアにも冒険者ギルドはあったのだが、あの時は滞在時間も少なかったし結局見られずにいたからな。


 外観だけでも冒険者ギルドを見る事が出来たし、とりあえず別の場所にでも行くとするか──っと思った矢先、ニヤニヤと此方へと三人の男が近付いて来る。


「なにか用ですか?」


「へへへっ。兄ちゃん偉い別嬪さん連れてんじゃねーか」


「おい姉ちゃん? そんなひょろい男と一緒にいるより、俺達と今から飲みにでも行こうぜ!」


「その後も色々と可愛がってやるからよ!」


 ギャハハハっと男達は笑っている。
 どうしてこうもリアラ狙いの屑ばかりいるんだろうか。
 ガレリアでも絡まれたし。
 リアラが怯えてるじゃねぇか。
 こういう屑冒険者には、お灸を添えてやらないとな。


「はぁ……またリアラ狙いの屑か……さっさと消えろよ」


「てめぇっ。女の前だからって、いい気になってんじゃねぇぞこらぁ!」


 男が殴りかかって来たので俺は回避し、鳩尾に少し強めにカウンターを入れる。
 すると男はくの字のように冒険者ギルドの扉まで吹き飛んでいった。
 すると、冒険者ギルドから人がわらわらと現れ野次馬達が一気に増えた。


「てめぇっ! よくもっ!」


 もう一人の男は剣を抜き、切り掛かって来る。
 俺はその剣を指二本で白刃取りし、力を込め剣をへし折る。


「なっ!」


 剣を指二本でへし折られた事に男は驚いているが、俺はその隙に男を蹴り飛ばす。


 そして二人の男を倒した俺は、残りの男の方へと歩いていく。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺達が悪かったよ! もう、ちょっかい出さないから! なっ? 許し──ぐはぁっ」


 リアラにちょっかいかける奴を許す筈ないだろう。




「なんだっ! この騒ぎは!」


 すると冒険者ギルドから何やら威厳のありそうなおっさんが出てきた。
 歳は40代ってとこか。


「ん? お前がこいつ等をやったのか?」


「ええ。この子を無理矢理連れて行こうとした挙句、殴り掛かって来たのでね」


「そうか。うちのギルドの者が迷惑を掛けたみたいだな。本当にすまなかった」


「あなたは?」


「ああ、俺はウォーレンと言ってここの冒険者ギルドのギルドマスターをしている者だ。少し話したいのだが、今時間は大丈夫か?」


「ええ、大丈夫ですよ」


「すまないな。それじゃ立ち話もなんだしこっちへ来てくれ」


 そう告げられた俺達は、ギルドマスターの部屋へと向かう事になった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品