幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

遺跡の宝

 壁画から目を離し、みんなで手分けして球場が丸々一個入る広間を探索していた。
 ノルメが何もないところで転んだりしていたが……
 結果、僕たちの前には三つの宝箱と銅の鍵が一つ見つかった。この遺跡に来るまで熱い火山の麓を歩いてきて大変な思いをして遺跡に到着したのだ。お宝も良いものを期待している。

 まぁ、僕たちは聖女の力を使って涼しくしてもらってこの遺跡に辿り着いたからそこまでつらくなかったけどね。

 まぁ、そんなことは置いておいて、今は宝箱の中身だ。

「誰が開ける?」

 みんなの方を見ると、ひとりものすごく開けたそうな顔をした人がいた。

「カリーナ。開けていいよ」
「え、いいの?」

 カリーナは一番左の宝箱の前に立った。緊張しているのか宝箱を開ける手が少し震えていた。
 震える手が宝箱の蓋に触れ上にあげた。

 カリーナがその宝箱の中を見ると僕の方に勢いよく顔を向けた。

 少しびっくりしたが、僕も宝箱の中を見て驚いた。
 そこには、魔王と勇者の真の能力と書かれた本が入っていた。

「え……えぇ、嘘でしょ。あ、はは、なんだろ、言葉に表せないや……」

 なんて言って喜べばいいのか分からない感情が湧き出てきた。
 この本は大切に保管しよう。それに、みんなも気になるみたいで覗き込んでくる。

「あとで見せるからほかの宝箱開けよう」

 次の宝箱を開けて中を確認すると、見たことのない黒く光るインゴットが宝箱いっぱいに入っていた。
 それをみんなが確認すると、リュクスだけがそれが何か知っていた。

「みんな、オリハルコンって知ってるよな。世界最高峰の硬さを持つ鉱石だ。この鉱石は、はるか昔に勇者と魔王の戦いの余波にさらされたオリハルコンがその魔力を吸収して進化した鉱石、ブラッグレイ鉱石だ。何度か見たことあるけどこんなにいっぱいあるのは初めて見たよ」

 リュクスの説明にみんなが感心して驚いていると、それを一つ取り出して槍を構えた。

「ちょっと、なにしてるんですか!?」

 そんな貴重な鉱石をどうするのかとノルメが叫んでいたが、リュクスは返事をせずに行動で示した。
 その鉱石を空中に放り出し槍に魔力を流し、そして思いっきり突いた。

 鉱石から耳を劈くつんざく音がその広間に木霊し、鉱石は一瞬で遠くの壁に当たり壁に埋まった。
 その行動に驚いていると、リュクスは鉱石を取ってきて見せてくれた。
 誰もが、砕けっちている鉱石を想像したがブラッグレイ鉱石はその形のまま傷一つ付いていなかった。

「これが、ブラッグレイ鉱石の凄いところで、見た通り破壊不可能な硬さを持ってるんだ。これ作った武器は刃こぼれしないし武器が作れるんだよ」

 そんな風に語っているリュクスは好きなものを語る顔になっていた。
 こんなリュクスは初めて見た。

 でも、こんな硬い鉱石をどうやって加工するのか、予想がつかない。

「加工の仕方も特殊で、普通の炎で熔かすなんてできない。煉獄の炎だけがこの鉱石を熔かせるんだ。剣の型を取ったとしても、普通の砥石では歯が立たない。そこで役に立つのがオリハルコン製の砥石だ。これも一個じゃダメなんだよ。十個以上使ってようやく研ぎ終わる。それほどにこの鉱石の武器を作るのは大変なんだよ」

 煉獄だったり、オリハルコン鉱石だったり、まだ見たことのない聞いたことのないものがまだまだありそうで僕は興奮していた。

 そこまで話終えたリュクスは恥ずかしいそうに顔を赤らめて顔を背けてしまった。
 幼馴染の僕たちにも隠していた趣味がばれて恥ずかしそうだった。

「もしかして、リュクスって武器作れたりするの?」
「……作れる」
「じゃあさ、今度これで僕に使える武器作ってよ」
「良いけど、さっきも言ったけど時間かかるからな。煉獄は俺でもきつい場所だし。オリハルコンの砥石なんてあってないようなもんだし」
「良いよ。旅に時間が出来たら作ろうよ」

 そして、最後の宝箱だ。

 今までの宝箱には魔王と勇者の真の能力が書かれた本。
 オリハルコンを超えるブラッグレイ鉱石が宝箱いっぱいに入っていた。
 最後の宝箱だ。どんな珍しいものが入っているのか、みんなワクワクして見守っている。

 最後の宝箱を開けて中を覗く。

 みんな、固まって何も言わない。
 最初に口を開いたのは院長だった。

「……果物?」

 そう、中に入っていたのはピンク色で丸く皮が少しふわふわと毛が生えている果物。
 まるで、桃のような果物が入っていた。

 入っていたのは桃だけではない。その隣には緑色でサッカーボールぐらいの大きさの野菜が入っていた。
 まるで、メロンのような野菜が入っていた。

「……魔王と勇者の好物?」

 何で魔王と勇者の遺跡にこんなのがあるのか、考えた結果それが浮かんできた。
 ノルメも院長も同じ考えに辿り着いたみたいでうんうんと頷いていた。

 幼馴染ある、リュクスとカリーナを見るとよだれを垂らしてそれぞれ果物を見ていた。

「これは、俺とカリーナで預かっておくよ。な」
「う、うん。そうだね」

 こいつら、ただ食べたいだけだ。

 さて、一旦宝箱の中身をカリーナの『収納』に入れておいて、この鍵が何なのか探さないと。

 この鍵があった場所に案内してもらい、その周辺から探すことにした。
 しかし、そう簡単に見つからず地面に座って休んでいると、ノルメが少し先でまた転んでいた。

「ノルメ、さっきも同じ場所で転んでなかった?」
「あはは、何もないのに何で転んだんでしょう?」

 リュクスがノルメに近づいて手を伸ばしていた。
 起き上がるの手伝うのかなって思ったら起き上がる寸前で手を放してノルメを転ばせて遊んでいた。

「やっぱり、嫌い!!!」

 ノルメはそう言ってリスのように頬を膨らませて横を向いてしまった。
 またリュクスを叱ろうかと思って立ちかがった時、ノルメは何かに気づいたみたいで四つん這いで歩いてある一点目指して歩いて行った。

「? あれって……」

 ノルメが見つけたのは、鍵穴だった。
 さっきから、ノルメはこの鍵穴に足をつまずかせて転んでいたのだ。

 早速、その穴に鍵を入れて開けてみた。

「階段か」

 早速、その階段を下りていった。そこにあったのは真っ赤な魔石だった。
 それも、野球のボールぐらい大きい魔石だった。

 魔石は、自然にしか生成されないとても貴重な石だ。
 魔力溜りにある吸魔石と呼ばれる石が空気中の自然な魔力を吸い込んだ時にしか作られない。

「これ、どうしようか?」
「あとで、考えよう。そろそろ出ないとピーカックが暇してるかもよ」
「「「「……」」」」
「お前たち、忘れてただろ?」

 院長が聞いてきて、僕たちは目を逸らすことしか出来なかった。

「まだ、一日も経ってないのに可哀想な奴」

 院長はそう言って上を見上げていた。

「へっくし! ? 風邪でも引いたか?」

 ピーカックは大人しく入口で座って僕たちの帰りを待っていた。

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