幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

院長とお祭り〜1〜

 次の日、僕たちは宿屋前で園長を待っていた。

「いい、リュクス、カリーナ。園長が居るからって絶対にはしゃがないでよ」
「分かってる分かってるって」
「フォレスは、私たちを何だと思ってるの?」
「え、歩く災害」
「「酷い!!」」

 ひどいって言われても、家の前をボコボコしたり、街の前をあんなにボコボコにして、歩く災害以外に言葉が見つからない。
 そこに院長がやって来た。

「お前たち。お待たせ」
「院長さん、気合入ってますね」
「当たり前だ。なんたって、こいつらとの初めてのお祭りだ。楽しまなきゃ損ってもんだ」
「そうですね」
「なぁ、院長さんよ。お祭り終わったら、俺と……」
「フォレス。こいつ、また俺に決闘挑もうとしてるぞ」
「ちょっ、院長さん」
「ピーカック?」
「……はい」

 ピーカックを叱りつけ、院長が来てから数十分が経過して、やっと別の島に移動することができた。

「ねぇ、リュクス。フォレスさ……」
「あぁ、最近のフォレスは何というか逆らえないよな」
「うん、私たち、勇者と魔王なのにね」
「ほんと、まさか初めて恐怖感じたのが勇者の誰かじゃなくて唯の人間になるとわな」
「ただの人間に恐怖を感じる魔王。ふっ」
「あ? 死にたいのかピーカック」
「できるもんならやってみろ」

 別の場所では魔王とピーカックが喧嘩を始めていた。

「はぁ、院長、助けて」
「あー、ちょっと……」
「院長さんはこの四人の中で一番立場が弱いんですね」
「う、痛いところを付いてくる。」
「そんな、褒めても何も出ませんよ」
「「褒めてない」」
「って、あっち、止めなくていいんですか?」

 ちらっと、そっちを見ると殴り合いの喧嘩ではなく口喧嘩が勃発していた。

「お前みたいな、クソ雑魚なんか俺の指一本あれば十分に倒せるんだよ」
「は? 夢見すぎなんだよ。お前が俺様に勝てるわけないだろ」
「あ? それじゃ、やってみるか?」
「いいぞ。来いよ」
「はいはいはい。ストップストップ」
「「ゲッ」」
「そんなに勝負がしたいなら、今日のお祭りで勝負しない?」

 そして、僕たちは二つのチームに分かれた。

 チームリュクス
リーダー
・リュクス
団員
・フォレス

 チームピーカック
リーダー
・ピーカック
団員
・カリーナ
・ノルメ

審判
・園長

「今日のお祭りは魔道具の祭典だ。悪いものから良いもの、掘り出し物に詐欺まがいの魔道具、いろいろあるが、その中で一番良いと思ったものをそれぞれ三つ見つけてこい、それで勝負をしようじゃないか。でも、時間はお昼前まで、結果発表は夜の宿屋でやるからな」
「うん。分かった」
「あと、言い忘れてたが、お祭りは楽しめよ」
「「「「はーい」」」」

 院長は一人少ない僕たちに付いてきてくれるみたいだ。
 そして、勝負は始まった。

「なんで、私たちがこいつと一緒なのよ」
「それは、俺様のセリフだ。一人でいいって言ったのによ」
「まぁまぁ、お二人ともそんなこと言わずに……これからはずっと一緒なんですから仲良くしましょうよ」
「「無理」」
「……はぁ、お兄ちゃん。私大丈夫かな……?」

「フォレスは良い魔道具の見分け方って知ってるか?」
「いや、知らないけど、そんなのあるの?」
「あるぞ。ただ、高ければいいってもんじゃない、一旦俺のやり方見てろ」

 そう言って、リュクスはその島の中心部から少し外れた魔道具市場にやって来た。
 さっきまでいた場所はその島の中心部でそこら中に魔道具のお店が建っていたが、こっちは地面に敷物をしてその上に魔道具を並べていた。

「こっちは、大きな魔道具店と契約していない、個人が経営しているお店だ。魔道具店と契約した人達の魔道具は、なんていうか決まったものを量産するからそこまで良いものがないんだよ。だから、魔道具は個人店とかがいいんだ。そして、そこには掘り出し物がある」

 そう言って、物色すること数十秒、一つのお店の前で止まった。

「これ、いいな」
「!! わかるのですか!?」
「分かる。これ、いくらだ?」
「えっと、200シェルです」
「まじ!? 買いだな」
「あ、ありがとうございます」
「リュクス? 教えてくれない? なんで、それが良い魔道具なの?」

 リュクスは、ポケットか別の魔道具を取り出した。

「これ、ライターって名前なんだけど、どこでも簡単に火の魔法が使える魔道具なんだよ。普段、自分で火の魔法を使う五分の一の魔力量でこれには火が灯る。けど、これは、十分の一で火が灯るようになってる」
「え、なにそれ、凄いね」
「だろ? まぁ、俺は魔道具を見ただけで中の術式がわかるってだけなんだけどね」
「……は、え、ズルくね?」
「いやいや、大体の魔道具職人はやってれば身に付くスキルだ。な?」
「え、はい、そうですね」
「じゃあ、今の僕にはできないんだね」
「そんなこともない。フォレスなら簡単に身に着けることができる。俺が、保証する」

 そして、数十分後。

「これは、えっと、扇風機かな?」
「せ、正解、です」
「な、できただろ」
「うん、できた」
「す、凄い。この人達何者?」

 その頃、ピーカックたちは……

「かわいいお嬢さんには、これなんて似合うんじゃないかな」
「ほんとですか?!」
「おい、なんてもん付けさせようとしてるんだ。おい、それ貸せ。やっぱり、呪いの魔道具じゃないか」

(はぁ、こいつに傷一つ付けられねぇのに、自分から傷付けられに行くなよ……)

 ピーカックはピーカックで大変そうだった。
 意外にも世話を焼くのはノルメではなくてピーカックの様だ。

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