幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月結城

ビーチバレー

 カジノ地下。椅子に座って何か作業をしている男のいる部屋に一人の男が息を上げて入ってきた。

「ボス!! 見つけました!!!」
「何処だ?」
「この島のビーチで遊んでいる所を目撃した模様です。それと、そいつの周りに三人の男女が、こんな顔の奴らです」
「……分かった。それで、そいつらは今何をやってる?」
「えっと、確かビーチバレーだったと……」
「そうか。それじゃ、そいつらを早速捕まえて来い。男は殺して構わない。女は、良い顔してるじゃねぇか。こいつは傷つけるんじゃねぇぞ」
「はっ!」
「お前も、一応用意しておけ」




「おら!」
「まだまだ!!」
「ノルメ!」
「はい!」
「あっ!」
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」

 その砂浜では、ビーチバレーと呼ばれる遊びが出来るようで、四人で遊んでいた。ビーチバレーを始めた当初は周りには誰も居なかったが、今では観戦者が100人程いて周りを囲んでいた。

「やったね、ノルメ」
「はい! フォレス兄さんのお陰です」
「負けられないぞ。カリーナ」
「分かってるわよ。リュクス」
「「フォレスには絶対に!! 負けない!!」」
「……頼むからやり過ぎるなよ」

 みんな楽しんでいるのは良いが、常識の範囲内でやって欲しい。こんなに観戦者もいるからバレたら直ぐに広がりそうだ。
 ってか、そんない僕に向かって殺意向けないで……。

「行くぞ。フォレス!」
「よし、来い!!」

 けれど、こうやって遊ぶのはやはり楽しく、少しぐらい常識を超えても良いかもと思っている自分もいる。

 サーブはリュクス。足場の悪い砂場をものともしない踏切で高くジャンプした。その高さから放たれるサーブはまさに弾丸。観戦者でそれが見えた人は0。プレイヤーでそれが見えたのは3人。フォレス、カリーナ、そして、ノルメ。

「兄さん!!」
「任せろ!」

 そのサーブの着弾地点は丁度フォレスとノルメの中間地点。着弾地点に一瞬で移動したフォレスは、自分の腕に球が当たる瞬間に腕を少し引いた。そうする事で球の勢いを殺し、球を上にあげた。

「ノルメ!」
「はい!」
「取るか今の……」
「来るよ!!」
「分かってるよ!」

 フォレスが上げた球の下に移動し、球を上げる準備に入った。

(兄さんの助走はいつも通り。姉さんとあの人は隙がないなぁ。でも、兄さんなら大丈夫だよね)
「兄さん!!」
「あいよ!」

 ノルメから上がった球はフォレスの好きなネットから少し離れた高いところへのパス。助走を付け、その球からもちょっと離れた位置から跳んだ。

 フォレスから放たれた球はカリーナの正面に飛んで行った。

「正面なんて……!?!? やばっ!」

 カリーナの正面に飛んで行ったかのように見えた球は、縦回転の球ではなく斜め右下の回転が掛かっていた。その為、球は真っ直ぐ飛ばず、飛んで来る最中にガクッと落ちた。

 しかし、そこは勇者。持ち前の動体視力でなんとか体が反応した。

「リュクス! ごめん!」
「任せろ!!」

 なんとか体が反応して上がった球は、リュクスより離れた位置に飛んで行った。それを上げに球の着地点に移動した。

「カリーナ!」
「分かった!」

 球がリュクスの手に吸い付き、カリーナが飛んだ位置に球が一瞬で移動し、フォレスの陣地に打ち下ろされた。

 砂埃が高く舞いそれが落ち着いた時、球はフォレス達の陣地では無くリュクス達の陣地に球は落ちていた。

「・・・くっそぉぉぉ!!」
「えぇぇぇえ!!」
「いぇーい!」
「やったー!!」
「「……何が起きた……?」」

 何が起きたのか。それは簡単だ。不自然なほど高く上がった砂埃。それが目眩しとなってフォレス達の動きが見えなかった。

 カリーナが打った球が地面に落ちる前にフォレスが地面に向かって魔力をぶつけた。それで高い砂埃が上がった。そして、カリーナの球が地面に落ちる前に上に上げて、ノルメがそれをリュクス達の陣地に叩き落としたのだ。

 そして、試合は終わり口々に感想を言いながら観客達は散っていった。

「いやー、ビーチバレーも楽しいね」
「そうだな。またやりたいな」
「にしても、お腹すいたな」
「私もお腹空きました」
「それじゃ、まだおやつ頃だし、何か食べに行こうか」

 何を食べるか決めずに四人でぶらぶらと散歩をしていると美味しそうなものを見つけた。

「「フルーツの盛り合わせ!!」」

 そう声をあげたのはカリーナとノルメの二人だった。

「ねぇねぇ、フォレス! あれ食べようよ」
「うん。良いよ」

「あいよ。四人で1200Sシェルだよ」
「これで、ぴったりですね」
「おう」
「ねぇ、おじさん。明日のお祭りって何か知ってる?」
「明日か? 明日は別の島で魔導具の祭典だったかな」
「……魔導具」
「ありがとう、おじさん」

 その後は、フルーツの盛り合わせを食べながらブラブラして、暗くなって来たので帰ることになった。

「それじゃ、ノルメ。また明日ね」
「……う、うん」
「? どうかした?」
「え? い、いや、えっと……」
「何かあるならはっきり話せ」
「……私、帰る場所が無いの」
「「「え?」」」

 それじゃ、ノルメと会ってからの二日間は野宿をしていたのか? 
 そう思っていると、ノルメのすぐそばに一人の男が現れた。

「何を当たり前のことを言ってるんだ」
「「「「!?!?」」」」

 何処からとも無く現れたその男は、ノルメの腕を掴んで現れた。

「ほら、帰るぞ」
「……い、いや!」
「逆らうのか?」
「!! ……」
「お前らも大変だなぁ」
「!? やめて! 言わないで!」

 ノルメはその男の腕を掴んで懇願した。しかし、男はノルメを一瞬見てそのまま言葉を繋げた。

「こんなに絡まれるなんてなぁ!!」
「……あ、あぁ……」
「ほら、帰るぞ。まぁ、帰ったら折檻の時間だがな」
「いやだ、あれはやだ……」
「お前に、それを拒否する権利も何かを選ぶ権利すら無いんだよ。それとも、『命令』でもされたいか?」
「……」
「いい子だ。それじゃ、こいつは連れて行かせてもらうぞ」

 ノルメはそのまま男に連れて行かれ、チラッとフォレス達の方を見た。その時、三人の顔がどんな顔だったのか見ることが出来なかったが、怒っている事、覚悟を決めろと言わらているようなものを感じた。

「……けて」
「あ? 何だって?」
「助けて!!!」

「「「任せろ」」」

 その言葉と共に、男の後ろからガラの悪い十数人の男達が現れた。

「お前たち。やってしまえ」

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